軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1126 相性の悪さ

「神器だ! その神器は、我らにこそふさわしいぃ!」

だから神器ってなんだよ! マレフィセントたちが何かヤバイもの持ってるのか? 試験官が試験を混乱させるなよな!

いやでも、それじゃあフランを狙う理由にはならないな。

(あいつ、師匠みてる)

『え? 俺?』

(ん。間違いない)

つまり、神器ってのは俺?

いやぁ、こりゃ参ったなぁ。そりゃあ、神級鍛冶師に作られたし? 準神剣なんて言われることもあるけど、神器だなんて。

「小娘! その神器を! 剣を、我によこせぇ! 邪神様の力を感じる! その剣こそ、まさに邪神様の神器ぃぃ!」

アンデッドの狙いはマジで俺であった。俺の中に封印されている邪神の欠片を嗅ぎつけやがったらしい。

フランもみんなもすまん! 襲われたの、俺のせいでした!

「……私から、剣を奪う?」

「そうだ! 貴様のような小娘に、その神器は相応しくない! 我らによこせぇ!」

「……」

フランの顔から、表情が抜け落ちた。俺だけではなく、義勇兵たちにも分かっただろう。これは、フランが爆発する前兆であると。

そして、凄まじい殺気が撒き散らされた。

身構えていたはずの義勇兵はおろか、死の恐怖など薄いはずのグールたちでさえ、悲鳴を上げて後ずさる。自分たちが無残に斬り倒される姿を、想像してしまったのだろう。

それほどに、フランの殺気は濃密で、凶悪だった。だが、これでも仲間たちのことを僅かに考え、本気ではないのだ。

「マレフィセント。みんなと一緒に周りのを片づけて」

「わかりました」

マレフィセントとペルソナが、シンクロするかのようにコクコクと激しく頷く。

「私は――こいつを潰す」

フランが呟いた瞬間、今まで以上の殺気がグールに叩き付けられる。義勇兵たちが相手であれば、心臓が止まっていただろう。

俺を寄こせなどと言い放ってしまった指揮官グールも、フランの強さを理解したらしい。相手の力量を探る能力が低いようだが、これだけの殺気と威圧感をぶつけられれば、嫌でも理解するようだ。

だが、気圧されたのは一瞬だった。すぐに狂気の籠った叫びを上げながら、フランに跳びかかってきたのだ。

「うがああああぁぁぁ! 寄こせぇ! じんぎぃぃぃぃい!」

「渡さない!」

フランと指揮官グールがぶつかり合う。

グールの攻撃は長く伸ばした爪での斬撃なのだが、これが想像以上に硬い。なんせ、俺と正面から打ち合うことができるのだ。数合でへし折れるが、すぐに新たな爪が生えてきていた。

魔力は減るんだが、ダメージはない。爪はいくらでも再生可能であるらしかった。

だが、剣術の腕前は圧倒的にフランが上である。グールの爪は全て弾かれ、捌かれている。身体能力はフランを上回っているが、それもフランが閃華迅雷を使用するまでだった。

腕力は相手が圧倒的に上だが、当たらねばどうということはないというやつだ。速度と剣の腕で勝るフランに、全く付いてこられなくなっていた。

「ぬがぁぁぁ!」

奥の手とばかりに、グールが周囲へと毒を噴霧する。触れた相手を魔毒に冒し、さらには肉をジワジワと溶かしてしまうという、恐ろしい毒だ。触れただけで、生きとし生けるもの全ての命を奪う、ジェノサイド・グールの名に恥じぬ凶悪さである。これを水源や穀倉地帯で連発されたら、マジで国が亡ぶな。

だが、フランには意味がない。高い状態異常耐性、治癒魔術、浄化魔術、毒吸収などのスキル。

全ての生命に死を招く虐殺の毒煙も、ただの目晦まし以上の意味はなかった。一瞬、仲間たちを心配したようだが、あちらも問題ない。マレフィセントの広範囲結界が、優秀過ぎるのだ。セリアドットの手並みを思い出す。義勇兵1人1人を覆う結界が、毒を完全に無効化していた。彼らの姿を見て安堵したフランは、グールに向かって跳んだ。

グールの爪を全て躱し、毒煙を突っ切ったフランが、その赤黒い腐った体に斬撃を叩き込む。

「っ――!」

剣が閃き、悲鳴を上げる間すらなく首が飛んだ。同時に斬撃が奔り、手足と胴体が切り裂かれる。

さらに、体内では黒雷が暴れ狂い、グールの全身から煙が上がった。一部は炭化しているのが見える。普通であれば勝負アリだ。

しかし、このグールは普通ではなかった。元々高い再生力を持つ最上位種であるうえ、邪気で強化されているのである。

吹き飛んで地面に落下する前に、手足どころか首すら再生し、完全な体に戻っていた。そのまま何事もなかったかのように着地し、再び飛びかかってくる。

身体能力と再生力で、ひたすら押してくるタイプであった。しかも、その爪には元々複数の状態異常を引き起こす毒が仕込まれているうえ、死毒魔術まである。

掠りさえすれば、一気に有利になるという戦術だ。

まあ、毒と邪気が揃っていれば、格上相手でも勝てる可能性はあるんだろうけどさ。それこそ、ランクA冒険者でも、邪気でスキルを無効化された状態で毒を注ぎ込まれれば万が一があるかもしれなかった。

フランには無意味だけど。

「グウウゥゥ! なぜ、効かぬぅぅ! それに、我が力が、削がれて……! 神器の力なのか!」

まあ、その通りだ。正確には、俺が持つ破邪顕正スキルの効果であった。再生を完全に阻害するほどではないが、フランの斬撃が当たる度にグールの邪気が削れ、再生の速度が落ちていく。

破邪と治癒。国すら滅ぼせる最恐のグールにとって、天敵のような能力を俺たちは持っていた。相性が悪すぎたな。

ここで俺は、以前から考えていたことを試してみることにした。

『邪気征服、起動!』

今まで、邪気からフランの身を守ったり、俺の中に封印された邪神の欠片を制御することにしか使ってこなかったこのスキルだが、邪気を持った相手に直接使えば?

力を吸収したり、上手くすれば行動を操ったりできないのだろうか?

そう考えてスキルを使ったのだが、思いの外効いているようだった。

「ぐううぅ! こ、れは!」

グールの動きが目に見えて鈍ったのである。こいつは邪人ではなく、邪気を持っただけのアンデッドだが、この分なら邪人相手でも有効だろう。十分、対邪人での切り札に使えそうだった。

『この隙に、ガンガンやっちまえ! 斬って斬って斬りまくって、邪気を祓え!』

「ん! はぁぁぁ!」

「くそぉぉぉぉおぉ!」