軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1123 邪神信奉者の情報

マレフィセントが出してきた地図には、幾つかの道が描かれていた。彼はその中の2本を指さし、説明してくれる。

「ルート的に、こちらの方が長いんですが、平坦で敵の斥候などに出くわす可能性も低いと思われます。逆に、こちらはかなり短いのですが、少し不安な部分があります」

「不安?」

「この道は山を越えるルートなのですが、一部はまだレイドスの勢力圏内です」

レイドス王国内で大分勢力圏を広げるクランゼル王国勢だが、まだ国境線の付近を少し切り取っただけだ。支配領域と、まだ手を伸ばしていない部分とが入り組んで、斑状になってるらしい。

しかも、懸念はそれだけではなかった。

「この道中に、以前は邪神信奉者の集まる拠点があったのです」

東征公の領地の南部、クランゼルとの国境から程近い場所に、邪神信奉者の集まる砦があったそうだ。

「ミレニア砦といいます」

どっかで聞いたことがあるな?

「世界最大ともいわれる、邪神信奉者たちの拠点だった場所です。レイドスの国内にあったのですが、何者かによって滅ぼされました」

その後のマレフィセントの説明を聞いて、思い出した。

ゼロスリードによって滅ぼされた、奴らの本拠地だった場所のはずだ。

「聞いたことある」

「おお、そうですか。まあ、この大陸では有名な話でしたからね」

確かに邪神信奉者の巣窟ともなれば、かなり危険な場所だろう。リンフォードやゼロスリード並みの実力者がいれば、義勇兵たちに被害が出るかもしれない。

まあ、今も邪神信奉者が集まっていれば、の話だが。

「実は滅んでない?」

「いえ。邪神信奉者は姿を消し、人がいないように見えるらしいです」

「……なのに、危険だと思う理由は?」

「さて、ミレニア砦と邪神信奉者。この情報を聞いた時点で、少々妙だと思いませんか?」

「邪神信奉者が、どうやって砦を手に入れた?」

「勿論、そこもおかしいでしょう」

言われてみると、確かにおかしいな。

かなり大きな砦のようだが、レイドス王国が邪神信奉者に奪われたままにしておくか? 普通なら、赤騎士が動くんじゃないか?

それとも、邪神信奉者たちが勝手に作った砦だとか? いや、だとしても、赤騎士が放置する理由にはならないだろう。大陸中の噂になるほど長期間、邪教徒の拠点として利用され続けるのは違和感があった。

だが、マレフィセントの言うおかしい部分というのは、それだけではなかった。

「さて、この戦争の前後で、レイドス王国の情報は色々と明らかになってきました。しかし、それ以前に、いかほどの情報をお持ちでしたか?」

「?」

「碌な情報をお持ちではなかったのでは? 実際、レイドス王国の内情というのは、執拗に隠蔽され、外部に漏れることはほとんどありませんでした。そんな防諜に気を使うレイドス王国の中で、なぜミレニア砦の情報だけが広まっていたのでしょうか?」

「おー、確かに」

そうだ! 確かに! ミレニア砦という名前を、普通の冒険者が口に出している時点でおかしい!

あの時は、ゼロスリードに滅ぼされたと聞き、そんな場所があるのかという程度にしか感じなかったが……。

邪神信奉者が集まっている砦が壊滅したって話が、クランゼル王国に流れてくるのがそもそもおかしい。他の情報は全く遮断されているのに、なんでその話だけが広まる?

まるで、その情報だけ意図的にばら撒かれたのではないかと思ってしまうほどだ。逃げ散った邪神信奉者が噂を広めた可能性はあるだろうが……。何らかの意図があって、あえて広めた可能性はありそうだった。

もしかして、東征公は邪神信奉者と繋がりがあるのか? そして、何らかの理由があって、邪神信奉者の情報を広めた?

マレフィセントもそう推測しているらしく、近くを通るルートを使うかどうか悩んでいるらしかった。

(師匠、どする?)

『俺たちだけだったら偵察でもするところだが、今回は依頼の最中だ。安全策をとろう』

「ん。わかった。今回は安全なルート使う」

「分かりました。そちらを使いましょう。明日も、今日のような訓練を?」

「当然」

「まあ、一日中走らせるのであれば、初日の遅れも取り戻せるでしょう」

明日も一日中、ブートキャンプの継続が決定したな。

マレフィセントたちはそれだけ説明すると、そのまま離れていった。

英雄好きだとか言ってたし、もっと根掘り葉掘り聞かれることも覚悟してたんだがな……。ただ、こちらに興味がないわけではないらしく、マレフィセントもペルソナもこちらをチラチラと見ているのだ。

仕事中ということで、遠慮しているらしかった。そこら辺、ランクAなのに常識的なんだな。

翌日。

朝から肉とパンをガッツリと食べさせた義勇兵を、昨日と同じように走らせていた。もうフランに逆らうものは誰もいない。

1日たっても忘れられないほど、しっかりと恐怖が刷り込まれたらしい。まあ、あの惨劇を、一晩程度で忘れられるはずもないか。

朝から、フランの声が響いている。

「ゴブリン以下ども。もっとテンポよく、楽しそうに走る!」

「……」

「返事!」

「「「はい! 隊長!」」」

うんうん。フランズブートキャンプは順調だな。俺、ほとんど助言とかしてないんだけど、まじで軍曹してるんだよね。

俺が感心していると、フランが義勇兵たちにさらに言葉を投げかける。

「お前らに、魔法の言葉を教えてやる」

魔法の言葉?

「返事の後に、カレーってつける!」

「「「?」」」

『?』

「返事は?」

「「「はい、隊長! カレー!」」」

「ん。それでいい」

よくないから! サーを付けろみたいなこと? いや、俺マジで何も教えてないから! フランの中に眠る軍曹の才能が開花してしまったということか?

「今日もカレーを食べさせてやる。そのことを想像しながら、カレーって叫べば、元気が出る!」

「「「はい、隊長! カレー!」」」