軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1120 フランの逆鱗

散々騒ぐ義勇兵たちであったが、その傍若無人っぷりはこれで終わらなかった。見張りをサボって寝てしまう者や、酒盛りをし始める者が続出し、さらに物資を勝手に漁り出す者まで出る始末。

完全にフランが舐められていた。ここまで、直接的な被害がなかったため、好きにさせていたことが原因だろう。

だが、物資の無断使用はマズかった。というか、食料を持ち出したことが、フランの逆鱗に触れたのである。なんせ、前線で戦っている皆に食料を届けたいというのが、依頼を受けた動機の1つだったのだ。

「おい。こっちこい」

焚火を囲んでいる男たちを呼ぶフラン。声は小さいものの、聞こえているはずである。

しかし、完全に無視だ。やはり舐められている。

「おい」

「あー? なんだ――ぼが!」

「な、なにをす――ぶべっ!」

「べぼっ!」

男たちのムカつく顔を見て、問答する気も失せたんだろう。

スッと表情を消したフランは、男の顔面をぶん殴って吹き飛ばす。しかも、そこで終わらなかった。意識を失わないギリギリのところで、男たちをボコボコにしていく。

間抜けどものことを薄笑いを浮かべて見ていた他の義勇兵たちも、顔面が変形し、手足がへし折れる音が響くにつれ、段々と恐怖の表情を浮かべ始める。

それでもフランの拳は止まらなかった。3人が逃げられないように、適度に殴る相手を変えながら、30発ずつは殴っただろう。

制裁が終わった後には、全身の骨が折れた状態で胃液や血を吐きながら号泣する、哀れな冒険者たちの姿があった。

やり過ぎなようにも見えるが、他の義勇兵に対する見せしめとしてならこれくらいはやる必要はあるだろう。フランはそこまで考えて――。

(やり過ぎた)

『ちょ、フランさん?』

フラストレーションが溜まってたせいで、止め時を間違えただけだったー! 妙にスッキリした顔してるし! さては反省してないな!

『と、とりあえず治しておけ!』

「ん」

力加減を間違えて半殺しにしてしまった物資横領者たちを、魔術で癒す。全ての傷が治ったことを確認してから、フランが声を発する。

「……全員。そこに並ぶ」

3人をボコボコにしたフランの行動は、かなりの衝撃を義勇兵たちに与えたらしい。

フランの尋問を見たことがあるわけではないだろうが、あれだけの傷を一瞬で癒せるのであれば、もっと酷い制裁も……? 皆が、そう思ったようだ。

義勇兵の大半は言われるがままに、動き始めていた。だが、どんな状況でも一言文句を付けねばいられない輩というのはいるものだ。

「な、何を言ってやが――ぎゃぼっ!」

2メートルを超える大柄な男がフランに詰め寄ろうとして――10メートルほど吹き飛ばされた。金属鎧がベコリと凹んでいる。

拳一発で巨漢をぶっ飛ばしたフランを見れば、その圧倒的な強さは理解できるはずだ。しかも、回復魔術を飛ばしたフランが、甘えを許さぬ声で「立ってそこに並ぶ」と告げる。

今度は大男も一切の文句を言わずに、即立ち上がって背筋を伸ばした。その体は、可哀そうなほどに震えている。恐怖と、未だに残る痛み故だろう。

同じ目に遭わされてはたまらないと、義勇兵たちはさらに急いでフランの前に整列をするのであった。

「……」

「……」

青い顔の義勇兵たちを前に、フランは黙ったまま睨み続けている。

(師匠、こいつらどうしよう)

『え? 何も考えずに、並ばせたのか?』

(ん。とりあえず並ばせてみた)

どうやら、怒りのままに並べと命じたが、その後どうするか考えていなかったらしい。

ずっと黙っているフランは、男たちからすると怒りのあまり黙ってしまっているように見えるのだろう。ビクビクとしながら、息を殺して待機している。

ま、しばらくはこのままでもいいか。

『どうしたいとか、あるのか?』

(勝手なことしないようにしたい)

『見せしめになったし、しばらくは言うこと聞くんじゃないか?』

(でも、このままこいつら連れて行っても、役に立たない。どうせ、戦場でも勝手なことして迷惑かける)

『お、おお。そうかもな』

(みんなの迷惑になるような奴ら、連れていけない)

フランがそこまで考えてるだなんて! 今までだったらボコボコにして、とりあえずこの場だけでも言うことを聞かせるだけだったろう。それが、自分の怒りをぶつけるだけではなく、ちゃんと先のことまで考えているとは!

俺は感動したぞ!

『つまり、こいつらが我がまま言わず、真面目に働くようにしたいってことか? 今だけではなく、今後もずっと』

(ん。できる?)

『う、うーん?』

力関係を見せつければ今は大人しくなるだろうが、フラン以外のやつには同じことしそうだし……。

模擬戦でもして、心をへし折る? いや、それじゃボコボコにするのと変わらん。それに、時間もかかるんだよなぁ……。

移動しながら、それでいて素行不良者どもを更生させて大人しくさせる方法。

(師匠?)

『あー、その~。とりあえずこいつらを短期間で調教――じゃなくて、更生させればいいってことだよな? 問題児ばかりだし、かなり難しそうだがなぁ』

(調教……)

『ち、違うから! 言い間違えただけ! 更生! 更生な!』

(なるほど)

フランが軽く頷いた後、黙って考え込む。え? 本気で調教する気じゃないよね?