軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1113 渾身の突き

「剣神化ぁぁ!」

『神気操作、精霊の手全開! さらに、邪気もだぁ! ここが正念場だ! 邪神の欠片よ! 頼む!』

俺が生み出した神属性と、邪神の欠片から今まで以上に大量に流れ込んでくる邪属性の魔力を混ぜ、一つにしていく。

そこにフランの黒雷がさらに重なり、俺の刀身は普通では直視できないほどの光を放っていた。

「いく」

『おう! やってやろうぜ!』

いつもだったら空中跳躍で飛び上がって、落下の勢いを攻撃に乗せるところだ。だが、今回は町への被害を考えなくてはならない。

フランは宙に跳ばず、大地を這うように駆けた。

大精霊も、今の俺たちのヤバさが感じ取れているんだろう。

最早激しいとか、無数なんて言葉が可愛くなるほどの膨大な量の攻撃が放たれる。隙間なんぞどこにもなく、空間そのものを制圧するような攻撃を受け止め、こじ開けながらフランは大地を駆けた。

5重の障壁が一瞬で削り取られ、残り1枚になってしまう。だが、フランにはその一瞬で充分であった。

瞬間移動並の速度で、大精霊の足元まであっという間に近づく。

フランの見つめる先には、間違いなく大精霊の核があるのだろう。フランの中でマールの魔力が微かに動いているのは、フランを少しでもサポートしてくれているに違いない。

フランが、俺を構えた腕を折り畳みながら背後へと引き絞る。

フランの全身を駆け巡る膨大な魔力が唸り、俺の魔力と反応し合って激しく閃光を放った。

そして、踏みしめた大地の力を最大限利用するように、フランが伸び上がりながら俺を突き出す。全ての力が俺の刀身に集中し、凄まじい負荷がかかるのが分かった。

「るああああああああぁぁぁ!」

『うおおぉぉぉぉぉぉぉ!』

天に浮かぶ太陽目がけて捻り込むように繰り出された突きが、大精霊を突き抜ける。

剣神化の影響なのか、その突きの威力は想定以上であった。天断の突きバージョンとでも言おうか?

空間を、どこまでも突き抜ける感覚。今の俺なら、どんな相手だろうが貫ける。そんな、確信にも近い全能感とともに、精霊を穿っていた。

何か硬い物とぶつかり合う感覚とともに、大精霊を構成している風が消し飛ばされる。大精霊の力が大きく減じたのか、その体の輪郭が揺らぐ。さらに力を削ぐべく、魔力を吸収していたんだが……。

何かが、凄まじい速度で遠くへと飛んでいくのが見えた。核に実体があって、それが飛んでいったのかと思ったが、もっと細長い棒状の、人工物っぽい形状だ。

驚きなのは、そんなものが大精霊の内側にあったことではなく、俺たちの渾身の突きを受けても形状を保っている頑丈さだろう。

謎の物体を意識した瞬間、背筋がゾワッとする感覚に襲われる。もう見えないほど遠くに飛んで行ってしまったが、回収に行った方がいいか? だが、動く前にフランが耳を押さえた。

「むぅ……!」

『大精霊の声か?』

「ん。悲鳴上げてる……」

攻撃自体は大成功ってことだ。フランの突きが、確実に大精霊の力を削り、弱らせたことが分かる。

神気と邪気のお陰だけではなく、剣の神が大精霊の弱所を正確に撃ち抜いたのだろう。

しかも、凄まじい力が籠った突きでありながら、周辺に余波がない。全てのエネルギーが、突きに集中したおかげである。その分、突きの射線上には強烈な魔力は迸っているが。

これが町目がけて放たれていたら、家々が何十軒も消滅することになっていたんじゃないか?

「ふぅ」

『耐久値がごっそりもってかれたぜ……』

俺もフランも、たった一撃で相当消耗した。もう一度同じ攻撃を放てと言われても、今日は無理だろう。

(なんか、マールが変)

『なに? もしかして、力を使い過ぎたか?』

(うーん? 逆?)

『逆って、元気になったってことか?』

(そんな感じ)

大精霊が関係してるのか? 何かを吸い取ったとか? ただ、大精霊の状態をゆっくり観察している余裕はない。大精霊が再び攻撃を開始したのだ。先ほどよりも弱々しいが、まだまだ激しい。

『逃げるぞ!』

「ん」

俺たちはクリムトが上手くやってくれることを祈りながら、大精霊から距離を取るべく移動を開始した。

まだ精霊の悲鳴が聞こえ続けているらしく、フランがずっと渋い顔をしている。耳を押さえても意味がないようだ。ずっと苛立っていた。

しかし、不意にその表情が和らぐ。

「精霊の声、止まった」

『おお! 精霊が消え始めたぞ!』

フランの呟きの直後、大精霊に異変が起きていた。巨大な女性の姿をしていた大精霊が、虚空へと溶けていくように輪郭を失い出したのである。

クリムトを見ると、両腕を突き出して魔力を放出していた。封印やら送還やらが、佳境に突入しているらしい。

クリムトの放つ魔力が増せば増すほど、精霊の姿が消えていく。その代わりに、クリムトの周囲では風が渦巻き始めていた。

最初は微風程度だったのだが、すぐに旋風となり、今や竜巻と化している。慌ててフランたちが距離を取った。その後も、風はさらに勢いを増していく。

ク、クリムトは大丈夫なのか? 攻撃されてるわけじゃないよな? 生命力がドンドン減っているんだけど……。

少し心配になったが、やはり大丈夫であったらしい。竜巻が段々と力を失い、クリムトの内へと吸い込まれるかのように姿を消したのだ。

それと同時に、大精霊の放つ魔力がその場から消え去っていた。

精霊の気配なんか感じられなかったはずなのに、町の空気が和らいだというか、不思議な威圧感のようなものが消える。

『おわったのか……?』

「クリムト!」

直後、クリムトがその場に倒れ込んだ。