軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1106 レイドスの魔術師たち

お話はあっという間に済んでいた。訓練を受けているわけでもない兵士は、すぐに音を上げたのである。

敵の部隊であるが、彼らは土魔術師を多く抱える部隊で、地面の下に通路を掘って国境を抜けてきたらしい。それならば確かに気づかれない可能性はあるだろう。

その後、敵の――つまりはクランゼル王国の町を攻撃する予定だったそうだ。ただ、想定とは違う場所に出てしまい、アレッサの町を探している最中だった。

数は22人。土魔術師が7人に、その護衛が15人であるそうだ。ただ、この男を含めて4人は偵察に出ているそうなので、今は護衛が11人だろう。

戦闘力が分からないから、いきなり仕掛けるのは怖いよな。でも、この程度の実力の兵士を斥候に使わなきゃいけないってことは、そっち関係に明るい人間はいないはずだった。

『まずは偵察に出ているっていう残りの3人を確保しよう』

「わかった」

偵察兵は、すぐに発見できた。ウルシの鼻とフランの感覚に掛かれば、簡単なものなのだ。4人とも専門の斥候ではなく、やはり魔術師とその護衛だけで構成されているんだろう。

意識を奪った斥候兵は、簀巻きにして放置だ。連れていくのも面倒だしな。まあ、魔獣にやられなければ、あとで回収にくるさ。

4人から聞き出した場所へ向かうと、情報どおり、レイドス王国の魔術部隊が林の中で息を潜めている。

隠密で近づいても、向こうが気づく様子はない。斥候系のスキルを持った人間がいなければ、こんなものだろう。

『一番強い奴は、あの大地魔術師だな』

(ん。あと、その横の兵士)

『あれが部隊長だろうな』

魔術師たちは、総じてレベルが高かった。それなりに戦闘経験もありそうだ。対して、兵士はさほど強くはない。弱くはないが、冒険者で言えばランクE程度だろう。

隊長っぽい兵士もそれなりに強いが、フランの敵ではない。最初に魔術師を無力化し、その後兵士を捕らえるのが吉かな?

逃げ散られると追うのが面倒なので、逃げ道は塞いでからがいい。

『大地魔術で周囲を覆って、一気に制圧だ。ハイドマンを倒した時の要領だな。俺は雷鳴魔術をばら撒くから、フランは魔術師と兵士長っぽい奴をやれ』

(ん)

『ウルシも魔術師狙いで。ただ、何らかの方法で逃げ出す奴がいれば、そっちの対処だ』

(オン!)

気配を殺して近づいた俺たちはグレイトウォールを多重起動して、隠れているレイドスの部隊を包囲した。

轟音と土煙を上げてせり上がる大地の壁が、部隊の四方を囲い込む。

フランの姿はすでに大地の壁の上である。

「な、何がおき……。とりあえず脱出路を開くぞ!」

「「「はっ!」」」

おいおい、メッチャ動きがいいじゃないか。もっと慌てふためくと思ったのだが、魔術師たちがすぐに壁に向かって動き出す。兵士たちも、その動きに同調した。

何が起きたか確認する前に、まずは脱出しようと判断したらしい。夜の闇の中でも、急に壁が出現したことだけは分かっているようだ。土魔術系統の魔力を感じ取られたかな?

7人も土魔術師、大地魔術師が揃っていれば、あっという間に壁に穴があけられてしまうだろう。

俺たちは、逃げられる前に大急ぎで動き出すことにした。

未だにフランとウルシは発見されていない。俺が雷鳴魔術をばら撒きつつ、壁から飛び降りたフランが敵に斬りかかった。

「ぐぁ!」

「な――ぎゃぁ!」

暗闇に雷光が瞬き、轟音が鳴り響く混乱の中、フランが敵の指揮官格2人を不意打ちで倒す。命は奪っていないが、手足をぶった切られて重傷だ。

残りの者たちは、雷鳴魔術で麻痺するか、ウルシの闇魔術で拘束されていた。死んでいる者はいないだろう。

『よし、とりあえず指揮官から情報を聞き出そう。血止めをして、他の奴らと引き離すぞ。ウルシはこっちで監視だ』

「ウルシ、逃げようとするなら、殺しちゃってもいいよ」

「ガル!」

フランの脅しの言葉に、魔術師たちが震えあがるのが見えた。結構鍛えられているはずなんだが、夜のウルシは迫力満点だからな。しかも、今は恐怖スキルを使っている。

これは、自身が相手に与える恐怖を増すというスキルなんだが、普段はあまり使わないんだよね。戦闘中、ウルシに対して怖れを抱くような相手なら、スキルを使うまでもなく勝てるし、同格以上にはあまり効果がない。

まあ、こういう時に、相手を怯えさせる方法としては有用だろう。実際、斥候相手のお話でも効果があったのだ。

その後、大地魔術師たちの尋問なのだが――意外にも素直に情報を語っていた。

あまり交渉事が得意ではないらしい。自分や部下の命を救うためにも、嘘偽りなく情報を話さなくてはならないと考えたのだろう。

そもそも、この作戦自体に乗り気ではなかったようだ。

彼らは元々、今回の侵略軍を主導する南征公爵の配下ではなかった。町などを魔獣から守る部隊の人間で、赤騎士団の支援組織のような場所に所属していたらしい。

人間相手の交渉や戦闘に慣れていないのは、そのせいだろう。

それが、強権を使って無理やり配下に組み込まれ、使い捨てのような扱いを受けたのだった。そりゃあ、やる気もないだろう。

彼らの目的は、アレッサの城門や城壁の破壊にあった。それ故、大地魔術師や土魔術師が多いのだ。壁を直接崩せなくても、大地の下に空洞を作り、陥没させて城壁を崩す。

そうして国境を守る冒険者たちの動揺を誘い、あわよくば部隊のいくつかがアレッサに戻るように仕向ける目的があったようだ。

まじで鉄砲玉扱いだ。

「俺は小さいころから、クランゼル王国は酷い国で、レイドス王国が支配してやることが正義だって教わって育った」

「……」

「でもさ、生活してりゃ、自分たちの国が腐ってることくらい、分かるんだ。特に、俺みたいな、上と接することが多い立場にいる人間にはな。奴らが支配してやることが、クランゼルのためになる? はは、豚が人を支配するとか、お笑いだよな?」

兵士長がそう呟き、自嘲気味に笑った。