軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1105 アンデッド排除

城壁の上に辿り着くと、事態が急変していた。

アンデッドの姿が城壁の上にあったのだ。しかも、複数。

どうやら、長い鉤爪を持つグールたちが、壁を登ってきたらしい。暗いせいで、気づけなかったのだろう。

さほど強い相手ではないんだが、闇の中では勝手が違うようだ。しかも、対処している中には下級の冒険者や、若い兵士もいる。

(師匠!)

『おう! まずはあれを片づけるぞ!』

「ん!」

フランは冒険者たちの間にするりと入り込むと、暴れているグールを瞬殺していった。やはり特殊な個体ではないらしい。

4体のグールを瞬く間に切り捨てた少女の登場に、周囲の冒険者たちが固まってしまう。だが、すぐに大きな歓声が上がった。

『フラン。このまま派手にアンデッドを蹴散らして、より士気を上げよう』

「わかった」

『ウルシは周囲に人がいないか探ってくれ』

「オン!」

ただ、その前にエレベントに確認だ。

「こっちの死霊術師の人たちは?」

「もう下げた! 城壁の上も下も、全部敵のアンデッドだ!」

『よし! なら派手にぶっ放して大丈夫だな!』

「ん!」

城壁の下に集っているアンデッドを処理するだけなら、ウルシの使うボトムレス・シャドウが非常に有効だろう。

城壁にダメージ無く、広範囲のアンデッドを倒すことができる。見た感じ下級のゾンビばかりだし、魔石にも期待できないしね。

何より今は夜。暗黒魔術が最も力を発揮する時間なのだ。今なら、数百体くらいはまとめて、影に呑み込めるかもしれない。

ただ、問題が1つ。

非常に地味なのだ。視界が悪い夜に、影が敵を呑み込むような術を使っても、皆何が起こっているか分からないだろう。

それでは士気も上がらない。

だとしたら、美少女が派手な攻撃でバッタバッタと敵を蹴散らす方が、冒険者たちのテンションも上がるというものだ。

『まずは、盛大な花火と行こうか!』

「ん!」

城壁から宙へと飛び出したフランと俺は、眼下のアンデッドどもに魔術を叩き込んだ。

火炎魔術フレアエクスプロードの多重起動である。広範囲を攻撃できる、攻撃的な術であった。

大爆発が連鎖し、周囲の死霊たちが粉々に砕けて吹き飛ぶ姿が見える。一部は松明のように燃えながら、仲間にぶつかって被害を拡大しているな。

冒険者たちが盛大に歓声を上げている。

『お次は浄化魔術だ!』

「ん!」

真っ白な光が一気に広がって、夜の闇を侵食していく。光に触れたアンデッドたちは、次々と崩れ去っていた。

効果が弱い内はアンデッドを退散させる効果しかない術だが、高い魔力を持つ俺たちが使えば話は変わる。アンデッドを浄化する、強力な対死霊魔術と化すのだ。

城壁の周囲を空中跳躍で回りながら、白い光を放っていけば、あっという間にアンデッドが全滅していた。

今は闇が覆い隠しているが、城壁周辺にはアンデッドが崩れ去って生まれた砂のような残骸が散乱していることだろう。

明日片づけなきゃならんかね? 冒険者たちに頼めばいいか? せっかく上昇させた士気が、駄々下がりしちゃいそうだな。

『ウルシ、どうだ?』

(オンオン!)

『見つけたか! 今行く!』

なんと、ウルシが怪しい人間を発見したらしい。捕らえたようなので、俺たちもその場へと向かう。

アレッサから1キロほど離れた小高い丘の上。そこには、半身を闇に呑み込まれた1人の男性が、ぐったりとした様子で捕らえられていた。逃れようと暴れて、精も根も尽き果てたのだろう。

ボトムレス・シャドウではなく、シャドウ・バインドという捕獲用の術だな。

「ウルシ。こいつがそう?」

「オン」

「! だ、誰だ!」

男が怯えたような表情で、こちらを見た。

「それはこっちのセリフ。お前は誰?」

「お、俺は冒険者だ。北の戦況を知らせるための伝令だ。アレッサに向かおうとしていたら、こんなことに……」

「ふうん」

「この狼は君の従魔かい? お願いだから、拘束を解いてはくれないか?」

そう言って、懇願するようにフランに頭を下げる。これだけ見ると、勘違いで捕らえられた憐れな冒険者に見えなくもない。

ただ、胡散臭いね。フランもそう考えたらしい。

「じゃあ、冒険者カード出して」

「え? いや、今は持っていなくて……」

「じゃあ、どうやってアレッサで身分を証明するつもりだった?」

「と、登録はしてあるし、名前も顔もアレッサでなら知られているから」

「? 私はお前を見たことがないけど?」

「いや、その……」

「本当にアレッサの冒険者?」

「そうだ!」

「じゃあ、なんで私のこと知らない?」

「……くっ」

すぐボロが出たな! 冒険者に関する知識が少ないせいで、偽装もままならないらしい。諜報関連の人間なら詳しく調べてあるんだろうが、この男はどう見ても一般兵士だ。

多分、急遽斥候のような役目を振られただけなのだろう。

ただ、それはつまり、周辺の情報を知りたがっているある程度の集団が、この辺に隠れている可能性があるということだった。

さて、こいつをどうしようか? 本当は、町まで連れ帰って尋問するのがいいんだろう。だが、それではこの周辺に侵入したかもしれない敵部隊に逃げられるかもしれない。

だとしたら、こいつにこの場で喋ってもらうのが手っ取り早かった。ウルシの自白毒に任せる前に、軽く小手調べといこうか。あれを使うと相手はしばらくは動けなくなるし、こいつは案外喋りそうだしな。

『仕方ない。少しお話を聞くとしようか』

「ん」

「な、なんで剣を振り上げるんだ? お、俺は仲間だ!」