軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1104 謎の視線

領主館から出たフランは、侵入者を捜すべく早速気配を探り出す。

「……あっちに人がたくさん」

『アンデッドを追ってるって言う冒険者たちだろう』

町の西側で、動き回っている大勢の人間の気配があった。ただ、誰かを追いつめているという感じの動きではない。

まだ捜している段階なんだろう。

領主の館の前でどう動くか思案していると、不意にフランとウルシが身構えた。

「……」

「グルル」

俺も、即座に魔術が撃てるように思考を切り替える。

『今、誰かが見ていたな』

(ん。町の外で感じたのと同じ)

『あの視線か……』

アレッサに入る時に、ほんの一瞬だけ感じた視線。今俺たちを見ていたのは、同一人物で間違いないだろう。

最初はクリムトの精霊かと思ったんだが、どうやらそれとも違うようだ。俺の精霊察知も、フランの勘も、違うと言っている。

『だが、どうやっているんだ?』

最初に感じた視線は、明らかに町の外からのものであった。これが侵入者のものだとすると、おかしいことになる。

何せ、あの時にはすでにアンデッドが侵入したという騒ぎが起きていたはずなのだ。敵は観測者と侵入者、最低でも2人いる?

だが、町の外からここにいる俺たちを監視するなんて芸当、可能か? いや、見るだけならできる者はいるだろうが、俺たちに居場所を特定されないなんてこと、不可能じゃなかろうか? 精霊の監視すらすり抜けて。

ともかく、俺たちは一瞬だけ視線を感じた方向へと動くことにした。

移動はウルシに任せて、俺とフランは気配の察知に集中する。魔術もスキルも全開にして、広域に意識を配るのだ。

そうやって全力で捜しているはずなんだが、成果は上がらなかった。時折怪しい気配を見つけるんだが、火事場泥棒だったり、サボっている冒険者だったりするのだ。

そいつらにはとりあえず制裁を加えたうえで、縛って転がしてきた。事件が解決したら捕まえればいいだろう。

その後も幾度か視線を感じ、その大元目指して動くのだが、やはり敵はどこにもいない。俺たちに発見されたと感じた直後には、移動してしまうのだろう。

(エスメラルダみたい)

『なに? いや、確かに』

フランの言う通りだ。エスメラルダの砂であれば、同じことができるかもしれない。つまり、敵は何かを操って監視などを行い、本体は隠れている状態なのかもしれない。

(見てるぞってあえてばらして、違う方向に誘われてる気がする)

『な、なるほど』

エスメラルダと同じような能力を持った相手なのであれば、視線の大元に何もいないのは合点が行く。ということはフランが言う通り、視線はブラフで、まんまと見当違いの方向へと誘導されていたのだろう。

『ちっ。想定以上に厄介かもしれん』

(ん。どする?)

『ちょっと待てよ』

誘導された自分たちの動きを、思い返す。東と南側を歩かされたようだ。そして、西側にはランクC以上の冒険者たちが集まっている。彼らも視線で誘導されているのだろう。

残りは、北だ。

レイドスに近い北側ではアンデッドの攻勢が強く、多くの冒険者が防衛のために集結している。物資や怪我人の移送のため、城壁の上以外でも冒険者の出入りが激しいはずの場所であった。

無意識にそちらはないと思ってしまっていたが……。これだけ強かで能力が高い相手なら、下級冒険者の真っただ中でも隠れていられるかもしれない。

『北だ。北側へ行こう』

「ん」

「オン!」

俺たちはうざったい視線を無視すると、一気に北目指して動き出した。人の数が多く、気配を探るのもかなり難しい。木を隠すなら森の中ってことなのかもな。

しかし、フランもウルシも、極上の感覚の持ち主だ。あっという間に怪しい気配に当りを付けていた。というか、既に経験済みだったことで、スムーズに怪しい場所を探り当てることができたようだ。

フランたちが怪しいと感じる場所へと向かうと、俺にも分かった。

『この感じ……。ハイドマンと一緒だな』

(ん)

(オン!)

王都で倒した黒骸兵団の幹部、隠密特化のハイドマンにそっくりな感覚である。いるのは分かるのに、大元が探り当てられない。

『この倉庫だな。まずは浄化魔術を撃ってみるぞ』

「わかった!」

そして、王都と同じ光景が繰り返された。今回はエリア・アンデッドリターンだけだが。

「ぬぐおぉおぉぉぉ!」

「でた」

『ハイドマン……?』

鑑定ではハイドマンと出る。しかし、その外見は似ても似つかなかった。王都のハイドマンよりもかなり小さいゾンビであったのだ。スキルもステータスも少し違うし。

「小娘ぇ! またもや、くそぉぉぉ!」

『また自爆か!』

「はぁぁ!」

情報を取られまいとしたのか、自爆装置を起動しやがった。俺とフランは王都と同じようにハイドマンを攻撃し、爆発を防いだのだが……。

「情報、手に入らなかった」

『いや、1つ分かった。奴は、明らかにフランを知ってた。聞きかじった情報じゃなくてな。どうも、王都のハイドマンと中身は同じだったっぽい』

「なるほど」

複数いて記憶を共有しているのか、外身を入れ替えて復活できるのか……。ともかく、ハイドマンはまだ滅んでいないというのは確かだろう。

あのクラスの隠密が不死身って、下手な敵よりもよほど恐ろしいぞ……。そもそも、王都は大丈夫か?

とりあえず、頭を失ったハイドマンの体を探る。やはり、ローブは隠密能力を与える魔道具だ。量産できているのかもしれない。ただ、使用者を限定するようで、俺たちには使えそうもなかった。

それと、アイテム袋が1つ。やはり使用者が限定されているな。消耗覚悟で開くかどうか迷ったが、フランは先に城壁へと行きたいらしい。

「みんなのとこ、いく!」

『そうだな。先にアンデッドを片づけちまおう』