軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1100 隠れるモノ

「あ、ああ……」

「お屋敷が……」

ノアレ男爵やメイドさんたちが、愕然とした様子でへたり込む。

巨大な壁で遮られているせいで、その内部は詳しく見えないだろう。だが、雷鳴魔術が降り注ぎ、最後には巨大な雷が落とされたのは分かるはずだ。

開いている上部から、激しい閃光が何度も放たれているしな。

ただ、フランは不満げな顔だ。未だに、気配の主が出てこないからだろう。隠れている気配はある。しかし、発見できない。

『まだやるか?』

「やる!」

意地になっているフランは、さらに魔術を連打した。雷鳴魔術が効かないと考え、今度は火炎魔術である。

無数の炎の槍が、何度も屋敷へと降り注ぐ。半壊状態だった屋敷が全壊になってしまったな。残った部分も燃えているし。

しかも、フランが放った術はそれだけではない。聖浄魔術を覚えたことで新たに覚えた魔術、エリアピュリファイを間に挟んでいる。

隠れている相手が、アンデッドであることも視野に入れての行動だろう。

そして、それが事態を打開する。

「ぎいぁあぁぁぁぁぁぁぁ!」

「なんかいる!」

『ああ、急に気配が濃くなったな! アンデッドだ!』

壁の囲いの中に、突如として強力なアンデッドが出現していた。聖浄魔術によって、隠れていられなくなったのだろう。

着ているローブがボロボロだが、あれも魔道具の類に見えるな。鑑定すると、かなり強力な隠蔽系の魔道具だ。ただ、フランの火炎魔術で半分燃えてしまっており、その効果はほとんど失われている。

火炎魔術も意味があったらしい。

『戦闘力は、思ったよりも低いな。名前はハイドマン』

かくれんぼ上手って意味か? だとすると、隠密特化型なのも納得だ。隠密、気配遮断、希薄化、透明化などのスキルに加え、影潜りや影渡りのスキルまで所持している。さらに、存在隠蔽というユニークスキルまであった。

こいつ自身の能力に加え、それを補助するローブまであれば、凄まじい隠密能力を得ることになるだろう。

フランが放った魔術は影潜りでやり過ごしていたんだろうが、範囲浄化は影の中にいても防ぎきれなかったようだ。そして、影の中から出たところで炎をもろに浴びて、姿を現したらしい。

「ぐぅ……小娘! やってくれたな!」

「お前はレイドス王国の密偵?」

「……ふん」

ハイドマンはフランの質問には答えず、そっぽを向いた。いや、そんな素振りをしながら、逃走の隙を捜しているな。

「ウルシ」

「オン!」

影渡りを使って逃げようとしたらしいが、即座にウルシによって阻止されていた。影に潜るよりも早く、ウルシがその影から出現したのだ。

他者が使っている影は使えない。使うなら、相手より多くの魔力と干渉力が必要となるのだ。結果、ハイドマンは転移に失敗していた。高性能のアンデッドとはいえ、ウルシにはかなわないのだ。

真下からウルシの頭突きをくらい、高々とかちあげられるハイドマン。

フランは即座に駆け寄ると、手足を斬り落としたうえでその首をガッチリと掴んで捕らえた。アンデッドなので痛みも息苦しさも感じていないが、関係ない。

「ピュリファイ」

「ぎゃぁぁ!」

「ピュリファイ」

「ぎぃぃぃぃ!」

弱点である浄化魔術を食らい、その度にハイドマンが悲鳴を上げた。痛覚などないはずのアンデッドだが、浄化されることは苦しいらしい。

これが、図らずも拷問の代わりとなっていた。浄化魔術によって弱体化するとともに、感じたことのないような苦痛を与えられ、ハイドマンが疲れたような表情をしている。

ハイドマンの外見は全身干乾びたミイラ風だったんだが、微妙に表情が動くのだ。それによって、何となく感情を読むことができた。

まあ、それでも口は堅いが、虚言の理を使うことで多少の情報は仕入れることができたのだ。

こいつはレイドス王国の黒骸兵団の幹部で、デリクを追ってここまで来たらしい。しかし、王城の牢獄の守りが堅く、様子を見るためにノアレ男爵の家に潜んでいたようだ。

結構危なかったんじゃないか? デリクの移送がもう少し遅れていれば、ハイドマンによって奪還されていたかもしれない。

俺たちはウルシの足を使って一気に王都にきたが、どうやって追い付いてきたのか? 長距離転移の道具でもあるのかと思ったんだが、違っていた。

気配を消した状態で、ただひたすら駆け抜けてきたらしい。疲労を感じず、気配も希薄なアンデッドであるからこそできる芸当だろう。

ここまでの尋問で、色々と情報が漏れたことが分かるのだろう。ハイドマンが悔し気に呻いている。

「まさか、この私から情報が抜かれることになろうとは……。黒骸兵団第6席ハイドマン、痛恨の極み……」

「!」

『フラン! 斬れ!』

「はぁぁぁ!」

ハイドマンの頭部から、凄まじい魔力が湧き上がる。それこそ、極大魔術並だろう。何が発動しようとしているかは分からないが、絶対に碌なことにはならない。

俺たちはそう判断し、ハイドマンを攻撃していた。フランの斬撃がハイドマンを十字に裂き、俺の火炎魔術がその頭部を灰にする。

『阻止、できたか……』

「ん……」

頭部には、大爆発を起こすような魔道具が内蔵されていたらしい。周囲の敵を殲滅、自分の口を封じることも可能な、自決装置って感じなのかもしれない。

結局、ハイドマンの身柄を確保することはできなかったか……。屋敷跡へと落下していくハイドマンの残骸を見つめながら、フランは悔し気に眉をしかめていた。

だが、収穫がなかったわけではないのだ。

『南征公が、何か大きな動きを起こすらしい。それは、国へと伝えておこう』

「ん」

まあ、どうせエスメラルダは砂を通じて聞いているだろうがな。