軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1097 貴族家への道中

エスメラルダに雇われたフランは、早速リストにあった貴族の屋敷へと出撃していた。一緒に行くのは、兵士30人ほどと、ベイルリーズ伯爵、メイドさんだ。もう他の兵士と同じ装備に変えてしまったので、メイドじゃなくなったけど。

彼女は暗部の主力の1人であった。名前はブルー。まあ、偽名であるようだが。コードネーム的なものであるようだ。

フランもマスクを着けて、準備万端である。エスメラルダは顔を覚えられなくなると言っていたが、正確には印象に全く残らないって感じらしい。後々相手が思い出そうとしても、獣人族の女という程度の記憶しか残らないそうだ。

エスメラルダがダンジョンで見つけた高位の魔道具だという。彼女は軽く貸してくれたが、相当な貴重品であった。

そのエスメラルダはいない。彼女は王城で待機中である。他の実行部隊の指揮も兼ねているからだろう。

ベイルリーズ伯爵がフランと一緒にきたのは、偶然じゃないと思う。知人ということで、サポート役として同行者に選ばれたようだった。ただ、俺たちにとっても好都合だ。

ベルメリアと、ティラナリアの状況をどうにかして伝えたいと思っていたのである。城では、他の人の目があって中々上手くいかなかった。

今回こそは、成功してみせる!

まあ、やることは単純だが。

「ねぇ、今は騎士なの? 兵士なの?」

「うん? ああ、そこか。今は近衛騎士だが、今回は兵士の振りをしている。目立たないためだな。我が国の近衛騎士は、王の護衛以外にも様々な仕事を割り振られるので、このくらいはよくあるな」

「へー」

王様の使いっぱしりな感じ? 何でもできる奴じゃなきゃ、こなせないポジションなのだろう。ただ、これは前振りだ。相手の近況を聞いてから、こちらの近況を話すためのな!

「私はゴルディシア大陸行ってた」

「ほう! そうなのか?」

明らかに、ベイルリーズ伯爵が興味を持った顔をする。ただ、一瞬だけブルーを気にしたのは見逃さないぞ?

やはり、ベルメリアの居場所は何となく分かっているのだろう。ただ、そこをはっきりとは言えないのだ。

「ティラナリアに会った」

「そうか。あー、ただ、今任務中だ。あまり私的な話はしない方がいい」

フランがこのままの勢いで、ベルメリアのことまで話しかねないと思ったらしい。まあ、フランなら、普通に口に出しちゃいそうだもんな。

大丈夫、俺の指示通りに話してるだけだから。

「ティラナリア、色々あったけど、今は幸せに暮らしてる」

「そうか」

「ん。他の竜人とか、弟と一緒」

「! そうか!」

よかった、フランの超棒読みセリフでもちゃんと伝わったか。伯爵の配下で、ベルメリアの教育係でもあったフレデリック。その愛情はベルメリアに向いており、今も確実に一緒にいるはずだと、伯爵も分かっている。

そして、実は伯爵の愛妾でもあるティラナリアとは姉弟にあたり、ベルメリアにとっては叔父でもあった。邪竜人となったことで、大っぴらには語らないようにしていたんだろう。

しかし、伯爵本人が知らないはずはない。つまり、ティラナリアが弟と一緒にいるということは、その同行者であるベルメリアも一緒にいるはず。

そう伝わったはずである。

問題は、ブルーが明らかに訝しんでいることだろう。何せ、フランは棒読みだし、伯爵は挙動不審だった。暗部というからにはベルメリアの行方も捜しているだろうし、まずいか?

「ブルー、どうしたの?」

「いえ、何でもありません。伯爵様の私的な部分は、捨ておくようにと言われておりますから。聞かなかったことにします」

嘘じゃないようだ。どうやら国王からは、もうベルメリアを追わなくてもいい的な感じに言われているようだった。

表向きは賞金を懸けているが、わざわざ追跡する労力を割いてはいられないんだろう。

そうして歩いている内に、目的地に到着する。

「見えました」

「あそこが、オゼロ子爵の屋敷?」

「はい。まずは取次をして、中に入れようとしないならば実力行使で構いません」

「ん」

ブルーはどこか複雑そうな表情をしている。強硬突入をすることに、反対の気持ちもあるんだろう。だが、エスメラルダに殺気をぶつけられたことを思い出し、反対意見を言えないようだった。

あの一瞬で部下に恐怖を刻みつけて手綱を握るとは、さすが伝説的な暗部の頭領だ。

「では皆さま、よろしくお願いいたします」

「わかった! おい、行くぞ!」

「はっ!」

ブルーの声に、伯爵と兵士たちが反応する。普通なら、女と小娘の命令なんか聞きそうもない、叩き上げっぽい大男たちだ。

だが、彼らは暗部の存在もしっかり知る立場にいるらしく、ブルーの言葉にはしっかり従っていた。

ここからは、フランとブルーは、ベイルリーズ伯爵扮する兵士長の部下的な感じで振舞う。あくまでも兵士たちがメインであると思わせるためだ。

これで最後まで命令に従うようなら、白と考えてもいい。こちらには、捜査令状もしっかりあるのだ。兵士だからと適当にあしらおうとしたり、排除する素振りを見せたら、フランとブルーの出番であった。

伯爵が、オゼロ子爵邸の門番に取次を頼んでいる。さすがに、ここにいる奴らは下っ端過ぎて、こっちを拒否する権限なんかないよな。

問題はこの後だろう。

数分ほど待っていると、屋敷の中から現れた大勢の兵士が門まで駆けてくるのが見えた。明らかに臨戦態勢だ。そして、一番偉そうなやつが、偉そうな態度で怒鳴り声を上げる。

「ここをどこだと思っている! オゼロ子爵様の屋敷だぞ! たかが兵士が、立入捜査だと? 笑わせるな!」

「だが、こちらには正式な令状があります」

「貴様ら如きでは話にならん! もっと上の者を連れてこい!」

伯爵は、まだ兵士の振りをするようだ。近衛が動いているということは、極力知られたくないのだろう。

ただ、向こうの兵士が、完全にこちらを舐めている。いや、半分くらいは演技だろう。時間を稼ぐようにと、命令されているっぽかった。

屋敷の中で、急に大勢の人間が動き出したのだ。レイドスのスパイがいるかどうかは分からないが、見つかってはマズイものがあるのは間違いなさそうである。

「分かりました」

「分かればいいのだ! 帰れ!」

「いえ、従う気がないのが分かったと言ったのですよ」

伯爵が剣を抜いて、構えた。

「な、馬鹿な! き、貴様ら! 貴族に逆らって、どうなるか分からんのか!」

「お前らこそ馬鹿なのか? 国家に反逆して、どうなるか分からんのか?」

「なっ……! なぜ、ただの兵士にそこまでの権限なんぞ……」

「オゼロ子爵に国家への反逆意思がありと判断して、これより強制捜査へと踏みきる!」

伯爵がそう宣言した直後、フランとブルーが動いた。

20人の兵士を、瞬時に叩きのめす。殺していないが、しばらくは目覚めないだろう。フランと俺の放った雷鳴魔術に、兵士たちがちょっと驚いているが、こちらの被害はそれくらいだった。

「問答は無用。邸内の人間は全て捕縛。もしくは殺害せよ!」

「「「おう!」」」

「2人は自由に動いていい」

「ん」

「出入り口の封鎖をお願いします」

兵士たちと別れ、ブルーとフランがそれぞれ動き出す。門前の小さな庭を一気に突っ切り、屋敷の扉をフランが蹴破る音が響いていた。