作品タイトル不明
1093 バルボラ復興
アイテム袋を開いてから数日。発見した書類はガムドに預けた。彼がギルドマスター権限を使い、国王へと直接送ってくれたそうだ。これで、下手なところで握り潰されるようなことにはならないだろう。
今日は、俺たちのバルボラでの最終日である。国から兵士なども送られてきて、作業の引継ぎがほぼ終わったのだ。
この数日は畑を作っていた。砲撃で潰された農地を直すだけではなく、家屋などが潰されて空き地化した場所を畑に作り替えたりもしたのだ。
勿論、勝手にやったわけではなく、領主からの依頼である。戦争状態の今、少しでも自力で食料を得ようということらしい。山竜の肉だけじゃ、栄養が偏るしね。
二十日大根に似た、短期間で栽培可能な野菜を植えておいた。味は微妙だが、栄養価はまあまあであるらしい。
実は、樹木魔術をLv4まであげてある。グロウ・プラントという、植物を急成長させる魔術を試してみたかったのだ。
二十日大根モドキが、僅か3日で収穫できてしまった。育てた自分たちでさえ、ちょっと引くくらいの成長力であったのだ。手伝ってくれた農家さんたちも、ビビってたね。
しかも、成長が早くなる代わりに、メチャクチャ味が悪くなったらしい。無理に育てれば、反動が出るってことなのだろう。フランが無言になるレベルだった。
カレーに入れて誤魔化したけどね! フランはカレーへの冒涜だと不満顔だったけど、住民の皆さんは笑顔で食べてくれていたのだ。
とりあえず、それなりの量を収穫しておいたので、数日分の食料の確保はできただろう。俺の魔力がスッカラカンになるまで、樹木魔術を使い続けたのだ。
バルボラみたいな大都市の数日分となれば、結構凄いからね? 味はアレだけど、そこはきっとフェルムスとか、他の料理ギルド員たちが何とかしてくれるに違いない。山竜肉と混ぜて誤魔化すとかね。
領主さんからはこれからも頼めないかと打診されたが、フランは断っていた。延々農作業を続けるのは性に合わないのだろう。
俺は意外と嫌いじゃなかったんだがな。クワモードに変形し、大地魔術と水魔術で畑を作る作業は、案外面白かった。それに、人間だった頃にはゲーム内で畑を作ったりしたこともあるのだ。そのことを少し思い出して、珍しくおセンチな気分になったりもした。
まあ、フランに適した作業でないことは、すぐに分かったけど。薬草採取とかもそうだったけど、フランは同じことを繰り返す作業が苦手なのだ。剣の素振りなんかは平気なのにね。
ただ、その前に最後の炊き出しである。フランがバルボラで配るとなれば、あれしかないだろう。
「竜膳屋と黒しっぽ亭のコラボ料理、竜膳カレーです!」
「おいしーですよー! どーぞー!」
「無料でお配りしてまーす!」
バルボラの各所で、冒険者ギルドの受付さんたちに手伝ってもらってカレーを配っていく。
しかも、受付さんたちが言う通り、フェルムスと協力して作り上げた特製のカレーであった。
フェルムスが解体した山竜肉と、彼が竜骨から取った出汁を使い、俺が調合したスパイスを使った本気のカレーである。
フランが無言で三杯かき込むレベルの出来であった。竜肉を使っているし、俺やフェルムスが本気を出したのだ。
ここ以外の場所でも配っているはずだが、どこでも大盛況であるらしい。
「ねぇ。黒しっぽ亭の子よね?」
「ん」
「また炊き出しありがとうね!」
「本当に助かるよ!」
以前の騒動の時にもカレーパンを配って回ったが、その時のことを覚えてくれている人も多いらしい。
何度も頭を下げられたし、何度も握手を求められたのだ。今回は特に無償だと広まっているから、余計に感謝されるんだろう。
どうやら、ガムドがフランの功績を稼ぐために、気を利かせてくれたようだった。いつの間にか、バルボラのために竜を狩ってきて、それをタダで配ってる心優しい黒猫族の少女扱いになっていたんだよな。
さすがに盛り過ぎなんだけど、否定して回るほどじゃないし……。結局そのままにしてしまったのだった。フランはちょっとモヤモヤしてるみたいだけどね。
その分、美味しいカレーを提供させていただくので、許してください。
全てを配り終えたフランは、ギルドの屋上から広場を見下ろしつつカレーを食べている。足をプラプラさせながら人々を見つめるフランの顔には、強い憤りが浮かんでいた。
人々の笑顔を見たことで、改めてレイドス王国への怒りがわいてきたんだろう。だが、そんなフランのやさぐれた気持ちを落ち着けたのは、その隣でカレーを貪り食うウルシであった。
「オフオフ!」
「ウルシ、おいしい?」
「オン!」
約束通り、超激辛カレー食べ放題中だ。
フランでさえ1杯で満足という真っ赤なカレーを、既に鍋一杯食っているだろう。口どころか顔中真っ赤だが、もう浄化するのは諦めた。綺麗にする端からカレーで汚れるので、食べ終わってから一気に洗うのがいいだろう。
バッサバッサと尻尾を振りながらご機嫌でカレーを頬張るウルシを見て、毒気が抜かれたらしい。フランは微かに笑って、その体を撫でている。
『フラン。自己進化ポイントが200を超えてるんだが、何かレベルを上げたいスキルはないか? 今なら上げたい放題だぞ?』
「おー、それじゃ呪法魔術と浄化魔術!」
『どっちもあんま戦闘に関係ないけど、いいのか?』
「ん! この2つあれば、闇奴隷にされてる人を助けられる!」
『そうか。分かった! 呪法魔術と、浄化魔術をカンストさせちまおう!』
呪法魔術、浄化魔術をともにLvMaxへと成長させる。
《呪法魔術がLvMaxに達しました。呪法強化がスキルに追加されます。フランが称号、呪法術師を獲得しました》
《浄化魔術がLvMaxに達しました。聖浄魔術がスキルに追加されます。フランが称号、浄化術師を獲得しました》
スキル2つをカンストさせても、まだ自己進化ポイントは200ちょうど残っている。他の魔術をカンストさせてもいいんだが、あまりスキルレベルを上げ過ぎても、使いこなせないだろう。
時間をかけて、少しずつ上げていけばいいか。
『フラン。呪法魔術はカンストさせたが、無理に使おうとするなよ? 俺が必ず、フランが助けたい人を解放してやるから。な?』
「ん。わかった」
いざとなったら無茶する返事!