軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1081 呪法魔術

水竜の救出は、想像以上に上手くいった。フランの内にいるマールの存在が、警戒感を解かせるのだろう。

鎖や胴衣を切り裂く間も、じっとしていてくれたのだ。2体を解放するまで、5分かからなかったんじゃないか?

最後の最後でレイドスの兵士に発見されたが、もう遅かった。

「クオォォォン!」

「キュルオォオ!」

水竜2体が雄叫びを上げながら、巨大な波を発生させる。結果、元水竜艦は2隻とも転覆し、大きな被害を出したのであった。

「師匠! 負けてられない!」

猛り暴れる水竜は、このままレイドス艦隊を全滅させる勢いだ。それを見て、このままでは獲物を全て持っていかれると焦ったのだろう。フランが慌てて飛び出した。

『水竜を巻き込んじまうから、雷鳴魔術は使えんな』

「だったら、斬る!」

『了解!』

斬艦モードに変形した俺を振り被り、フランが水竜たちとともにレイドス艦隊へと襲い掛かった。

大型の船も簡単に真っ二つにされ、属性剣によって燃え上がりながら沈んでいく。沈む前に海に飛び出した者もいるが、水竜の魔術で海面は大荒れになっており、溺れてすぐに沈んでいった。

フランの斬撃と水竜のブレスがレイドス艦隊を次々と沈め、30分もかからずレイドス王国の大艦隊は海の藻屑と化す。

生き残りはいないだろう。

強者に対抗するための特記戦力がいるかと思っていたんだが、出てこなかったな。そう思っていたら、水竜が何かを咥えて浮上してきた。

「こいつ、誰?」

「クオン!」

ひしゃげた鎧を着こんだ、男の遺体を差し出してくる。鑑定すると、亜魔人となっていた。

かなりの強者だった。暴風魔術を操る、高位の魔術師だ。肉体的な強度はさほどでもないが、魔術的な能力はランクA相当だろう。

しかも、ヴァルーザと同じ亜魔人ともなれば、再生力なども高いはずだ。

あと、鎧がかなり強い。オリハルコン製で、障壁と浮遊のスキルが付いている。さらに、水竜艦と魔力で繋がっているのが分かった。多分、水竜艦から魔力を供給されることで、無制限に魔力を使えるのだろう。

こいつが特記戦力かな? 海上であれば、想像以上に強いだろう。

しかし、マールのお陰で水竜艦からの魔力供給が停止したうえ、いきなり船を沈められて慌てて出撃。船外に出たところを水竜たちに攻撃されて、倒されたのだと思われた。

『……これで艦隊は片付いた』

「次はシャルス王国!」

『それじゃあ、シャルス王国を滅ぼしに行くみたいだぞ? 正確には、シャルス王国から侵攻してくる、レイドスの地上部隊だ』

「?」

フランの中では、シャルス王国はレイドスの仲間という扱いで、だったら倒す相手という認識なのかもしれない。

ただ、国から依頼されているわけでもないのにこちらから国境を越えて攻めてしまっては、明らかに国際問題になる。国境付近での迎撃がギリギリ許容範囲だろう。

『でも、その前に王女たちをどうするかだ』

今は意識を失っているが、目覚めれば奴隷の首輪に支配されるはずだ。場合によっては理性を失って暴れるようなことにもなるかもしれない。

奴隷契約を破棄させるには、契約書を破壊するか、上書きするしかないが……。解放されてないということは、水竜艦には保管されていなかったんだろう。

『契約魔術を――ダメか』

「上書きできない?」

『弾かれるな。俺よりもスキルレベルが高い奴が契約に関わってるんだろう』

「……ポイント使って、レベル上げる」

『……分かった。それしかなさそうだしな』

フランにとって闇奴隷商人というのは不倶戴天の敵。そんな相手から誰かを救うためなら、フランはどんなことでもするだろう。そんなフランの願いをかなえるためなら、自己進化ポイントくらい安いものだ。

『まずは契約魔術をカンストさせてみよう』

《契約魔術がLvMaxに達しました。呪法魔術Lv1がスキルに追加されます。フランが称号、契約術師を獲得しました》

以前、ベリオス王国でも存在を聞いた、呪法魔術をゲットできたな。これでどうだ?

俺は呪法魔術を使ってみることにした。契約魔術もそうだったが、使える術が1つしかないのだ。

『呪法!』

すると、明らかに契約に干渉できる感覚があった。上書きというよりは、契約を一部書き換えるような感じだ。

多分、相手がもっと格下だったら、完全に契約を破棄できるんだろう。ならば、さらにレベルを上げてみるか。

1つ2つと、感触を見ながらレベルを上げていく。そして、呪法魔術をレベル4にした時、王女たちの契約を完全に破壊できそうな感触があった。正直、まだレベルが足りていないかもしれないが、俺が頑張れば行けそうな気もする。

『呪法発動! 契約を全てぶち壊してやる!』

「頑張って、師匠」

『おう!』

かなりの反発がある。耐久値も魔力も、ガリガリと削れていくのだ。多分、生身の人間だったら、凄まじい激痛と憔悴によって、無事では済まなかったのではなかろうか? 下手したら、死ぬレベルだと思う。

『どりゃああぁぁ!』

「おー! 師匠すごい!」

俺が反発に耐えながら呪法魔術を使い続けると、数十秒ほどで王女の首輪が砕け、契約が全て消え去っていた。

こりゃあ、俺じゃなかったら、もっと呪法魔術のレベルを上げなきゃダメだったろうな。

「師匠! やった! やっぱ師匠は超かっこいい!」

『お、おう』

フランのはしゃぎようが凄い。フランにとって絶望の象徴である奴隷の首輪。それを正面からねじ伏せて破壊した俺の力は、まさに希望の光のように思えたのかもしれない。もっと早く覚えておけばよかったな。

『これからは、闇奴隷をドンドン助けてやれるぞ。どんな首輪だって、俺が外してやる』

「ん!」