軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1047 ジルバード大陸の異変

「嬢ちゃん。本当にご苦労だったな。報告も受け取ったし、その働きにはこちらも満足している。依頼達成だ。支払いにはボーナスも付けよう」

「ん!」

「それにしても、今回のゴルディシア行きはメチャクチャだったよなぁ。嬢ちゃんとヒルトたちがいてくれて、本当に助かったぜ」

フランは船長室でブルネンと向かい合っていた。

行きは暇だった船旅だが、帰りは違っている。戻ったら提出しなければならない書類や報告を、帰りの船内で書かなくてはならないのだ。

フランとか、途中で燃え尽きていたね。

ゴルディシア大陸でも、あれほど精気の無いフランの眼は見られなかっただろう。

ただ、その甲斐もあり、フランが受けた依頼は完全達成と認められたらしい。

「酒宴でも開きてぇとこなんだが、帰りだからろくな物資を積んでいなくてな」

「仕方ない」

「戻ったらと言いたいとこなんだが、それも難しそうだ。国に帰ったら、すぐ国境まで行かなきゃならねぇ」

「お仕事?」

「おう。国境がどうにもきなくせぇらしくてな、鳥でわざわざ知らせてきた」

ベリオス王国の国境? いくつかの国と接していたと思うが?

「レイドス?」

「そうだ。向こうの国内で大規模な演習があるらしい。いきなり国境を越えてくるような真似はせんと思うが……」

「レイドスならやりかねない」

「そういうこった。おかげで、将軍職にあるものは緊急事態に備えて国境で待機よ」

激動のゴルディシア大陸から戻って即出動とは、軍の偉いさんというのも大変なんだな。

「報酬は全部金でよかったんだよな?」

「ん」

「じゃあ、ギルドの口座に振り込んでおこう。今回は助かったぜ。ヒルトたちと縁を結べたのも、嬢ちゃんのおかげだしな」

なんでも、ブルネンはヒルトたちと再契約を結んだらしい。国境の守りに、ランクA冒険者が加わるとなれば、最高の抑止力だからな。

「色々とありがとうよ」

「こちらこそ」

最後にブルネンと握手をして、船長室を出る。これで、とりあえずゴルディシア関係の話は全て完了だ。

フランがグーッと伸びをしながら、晴れやかな顔をしている。もう書類を書かなくてよくなり、解放感に包まれているのだろう。

『いやー、終わったなぁ。ジルバード大陸に戻ったら、魔術学院だ』

「ん!」

そこで天龍素材を得る。それが最初の目的だったからね。

『レイドスの動きも気になるが、それもウィーナに聞けばいいだろう』

「アレッサ、だいじょぶかな?」

『まあアマンダもジャンもいるし、大丈夫だとは思うけどな。クリムトもいるし』

あの町を攻略するには、ランクS級の戦力が必要だろう。

「たしかに」

「オン」

「魔術学院に戻ったら、これ直せるかな」

『王都とかでも大丈夫じゃないか?』

フランが取り出したのは、割れたマグカップだ。カステルで掘り出した、両親との思い出の品である。

色々と慌ただしいゴルディシア大陸では、錬金術師が捕まらなかった。ドワーフに頼めば直してもらえそうだったが、さすがに王族に頼むのはねぇ?

結局、ジルバード大陸に戻ってからゆっくり錬金術師を捜そうということになったのだ。

『ベリオスの王都なら、錬金術師もたくさんいるはずだしな』

「ん」

俺の言葉に安心したのか、フランはお腹を押さえる。

「お腹減った」

『じゃあ、飯を食うか!』

「ん!」

「オンオン!」

そんな風に、穏やかな船旅を満喫すること数日。

もう少しでジルバード大陸というところで、船内が慌ただしく動き始めていた。寄港準備をしているという様子ではない。

俺たちは甲板に出て、船員に話を聞いてみた。

「どうしたの?」

「港が燃えてるんでさぁ!」

「!」

なるほど、言われてみるとかなり遠くに赤い光が見える。まだ点にしか見えないが、夜の闇の中では目立っていた。

船員には、遠視スキル持ちが多い。彼らが、火の元が港であるとしっかり確認したんだろう。

しかも、異変はそれだけではなかった。

「船団が、こっちにきやす! 完全に捕捉されているようなんすよ!」

「船団?」

言われてみると、赤い炎の方角から、こっちに船が向かってくるのが分かる。こちらの船の灯りを見つけられたのだろう。

しかも、船員たちのこの慌てようは――。

「敵?」

「レイドス王国の紋章を掲げてやす。後は、シードラン海国の紋章も」

『シードラン? 確か、クランゼル王国の西の方にある、海洋国家だったよな?』

水竜艦という、強力な戦艦を所持し、世界有数の海上戦力を有する国だったはずだ。以前、そのシードラン海国での政争に負け、逃げ出してきた王族と戦ったことがある。

「レイドス王国とシードラン海国は、仲がいいの?」

「どうもレイドスがシードランを従属させたらしいんでさ」

つまり、実質レイドスの海軍ってことか。

「水竜艦は?」

「分かりやせん。ですが、明らかにこちらを追ってきますし、どう考えても穏やかじゃないんで……」

逃走中であるということなんだろう。

レイドス王国の軍船に拿捕されて、いい結果になるはずもない。確かに、逃げるべきだろう。

幸い水竜艦はいなかったらしく、俺たちは何とか逃げ切ることに成功していた。元々、何が何でも捕まえようという気もなかったらしい。

敵国であるベリオスの船だったから、とりあえず追ったという感じなんだろう。

「うーむ。大分南に来ちまったな」

「へい。すでにジルバード大陸の南部でさ」

「食料はかなり厳しいですね。倹約に努めてあと7日。どこかで補給しないと」

ブルネンや副船長たちが、地図を前に額を突き合わせて今後のことを相談している。

レイドス王国から逃げるために南へ南へと航路を取った結果、大陸の南側へと流れて来てしまっているらしい。

そもそも、内陸国であるベリオスに戻るためには、どこかで寄港して陸路で移動しなければならない。

だが、信用できるかどうかも分からない相手に、船を預ける訳にもいかないし、陸を移動するにしても南部から北上するのはかなり大変だ。

となると、信用できて、かつベリオスに近い国が都合がいい。

「クランゼル王国だな」

「それしかないでしょう。南部の小国群は、どこがレイドスと繋がっているか分からない状況ですから」

ということで、俺たちは急遽クランゼル王国の港町、バルボラへと向かうこととなったのであった。