軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1040 ノクタに戻って

トリスメギストスたちに別れを告げた俺たちは、ノクタへと戻ってきていた。一度、この都市で体を休めるためだ。

「フラン! 無事だったのね!」

「フランよ! よく戻ってきたな!」

ノクタで俺たちを出迎えてくれたのは、先に撤退したソフィとメアであった。よかった、ソフィは意外と元気であるらしい。

護衛役のネルシュも、ソフィの背後にピッタリと付いている。巨大抗魔との戦いに置いていかれたことが余程応えているのか、もう離れないぞという強い意志を感じた。

分かれた時には意識を失っていたアースラースも、門に寄りかかってこっちに手を振っている。大事には至らなかったようだ。

「ん! 抗魔いなかったから、だいじょぶ」

「やはりか。我らの方も一切抗魔に出会わなかったのだ。これが、深淵喰らいが弱体化したとかいうことの証左か?」

「ん。なんか、数日は抗魔が出ないって。出ても少し?」

フランが、トリスメギストスが語っていたことを、2人に語る。まあ、難し過ぎてフランはあまり覚えてなかったが、大事な部分はしっかり理解できているのだ。

「戦えない者は、出ていけ……? そんなの無理に決まってるじゃない」

「うーむ。なかなか難しいことよなぁ」

ソフィは怒りを露わにし、メアは困惑している。ソフィ自身、この地に流れてきた側だ。ゴルディシアを抜けるということがどれだけ大変か、分かっているのだろう。

メアは、ゴルディシア大陸から脱出した後のことを考えているらしい。こんなお転婆でも、王女。難民的な人々を受け入れる難しさを、しっかり理解しているのだ。

「獣人の極一部ならば、我の権限だけでもどうにかなる。だが、何千人もの人間となると、国での協議が必要となろう」

「獣王なら、がははは、いいぜっていいそう」

「フランよ。それは馬鹿父の真似か? まあ、言いそうだが、あれでも王なのだ。簡単には頷かんよ」

獣王も豪快に見えて、しっかり王様をしていた。独断で重大なことを決定したりはしないだろう。

ましてや、ゴルディシアに暮らす人々は、各国の騎士や兵士、冒険者を除けば、ほとんどが重罪人やその子孫たちなのだ。可哀そうだからと受け入れるには、国としてのリスクが大きかった。

「とは言え、神のお言葉を持ち出されては、完全拒否も難しかろう。ゴルディシアの責務を利用してる各国の説得が先だろうが、最終的には大陸を出たい者たちを開拓者として受け入れることになるのではないか?」

開拓者というのは、こっちの世界ではかなりの重労働だ。まあ、地球でも楽な仕事ではなかったが、こちらの世界では危険の度合いが違う。

未だに人の手が入っていない場所というのは、そもそも魔獣が多く生息する危険地帯であることが多い。

そこを開拓するのは、普段であれば犯罪奴隷や、懲罰で苦役を科せられた貴族などになる。

つまり、ゴルディシアにいる時と変わらない。それどころか、ゴルディシアの各都市で普通に暮らしている人々にとっては、天国から地獄状態であった。

「そんなの……!」

「すまんな」

「ううん。メアのせいじゃない。でも、他に何か方法はないの?」

「うーむ……。済まんが、即座には出てこないな。だが、考えれば他にいい道があるかもしれん」

「ん! 私も考える」

「……ありがとう」

重要な話をしているんだけど、なんかほっこりしちゃったよ。少女たちの麗しき友情なのだ。フランもメアも、友達が増えてよかったな。

そこに、新たな人影が近寄ってくる。

「フラン!」

「ベルメリア!」

水色髪の竜人少女、ベルメリアだった。ボロボロになった姿を見たのが最後だったが、かなり回復したようだ。

ポニーテールを解いた姿は初めて見たが、白いワンピースと相まってお嬢様みたいだな。いや、貴族と巫女の間にできた子だから、お嬢様だった。

「フランとウルシに、命を助けられたって聞いたわ。ありがとう」

「無事でよかった」

「……戦いには、全然役に立てなかったけどね」

手も足も出ず、敵に操られ、最後はウルシに逃がしてもらった。戦士であることを自認するベルメリアにとって、今回の戦いは我慢ならないものだったのだろう。拳を握り締め、項垂れる。

「でも、生きてる」

「……そうね。それに、あなたのお陰で母とも再会できた」

少し離れた場所に、フレデリックとティラナリアが立っている。ティラナリアは操られた半狂乱の姿のイメージが強かったが、今は優しげな表情を浮かべていた。

髪の色は違えども、顔立ちはベルメリアによく似ているだろう。

「ベルメリアは、どうするの?」

ふと、フランがそんな質問を口にした。考えてみたら、ベルメリアってこの大陸から出れない筆頭だよな?

クランゼル王国やその周辺では指名手配されているし、半竜人だ。トリスメギストスの大陸から退去しろという要請の余波を、もろに受ける立場だ。

彼女も誰かからすでに話を聞いているらしいが、その顔はどこか吹っ切れた様子だ。

「私は戦士よ。母上は元々巫女としての立場がある。どうにかなるわよ。フレデリックも……まあ、どうにかなるんじゃない?」

フレデリックの場合、ベルメリアとは逆の立場である。竜人たちの法によって、この大陸にいてはいけないことになっているのだ。

それでもベルメリアが悲観している様子はないし、本当にどうにかなるのかもしれない。

フランの友人たちと再会を果たしてから1時間後。

難しい報告をイザリオたちに丸投げしたフランは、その足でムルサニのレディルア商会へと向かった。ナディアの容体を確認するためだったのだが――。

「フラン、心配かけちまったみたいだね」

「おばちゃん!」