軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1028 フランの一撃

「黒雷神爪! 天断!」

フランは、黒雷神爪と天断の同時使用を成功させていた。アナウンスさんから供給された魔力を完全に操り、使いこなしている証拠だろう。

剣神化を使わないのは、威力を重視しているからだ。勿論、加護によって神属性が使えるようになったとしても、剣神化はフランの必殺技の一つである。

ただ、デカブツ相手に威力重視の攻撃をぶっ放すだけだったら、全ての力を攻撃に回せる黒雷神爪+天断の方が強いのだ。

剣神化は、最適化された動きをするために、色々なところに力を割り振らないといけないからな。

黒雷を纏った俺が、空間を斬り裂きながら巨大抗魔に迫る。

「はああああぁぁぁ!」

ウルシの穿った傷が再生する前に、同じところ目がけて斬撃が叩き込まれていた。

《仮称・巨大抗魔の体内を走査、廃棄神剣の情報を取得。接触に成功》

『これが、あの十字の剣か?』

巨大抗魔の中に、奴の物とは違う魔力を感じる。内部のどこかにあるというよりは、全体に混ざり込んでいるような感じだ。

普通なら、こんな溶け合っている中から廃棄神剣の魔力だけを探り当てるなんて、不可能だろう。だが、希望の運び手によってブースト状態にある今の俺たちなら、微かではあるが判別できた。

そして、相手の状態が分かっていれば、斬れる。

《情報の制御は任せてください》

『捉えたぞおぉぉぉぉぉ!』

アナウンスさんのお陰で、しっかりと廃棄神剣の魔力を捉えることができていた。俺自身の感知能力が全開になり、凄まじい負荷により耐久値が一気に減ってしまう。

巨大抗魔の中の廃棄神剣に、俺の刃が届いた感触があった。明らかに、斬り裂いたのだ。その確信があった。

同時に、刀身から直接注ぎ込まれたフランの黒雷と俺の魔力が暴れ狂い、内部から巨大抗魔の肉体を消滅させる。

『うおおぅ? これはっ……!』

廃棄神剣2本を同時に共食いしたからだろうか、かつてないほどの魔力が俺に流れ込む。

これは、やばい!

『ぐがっ! がああああああぁぁ!』

《魔力の流れを制御します。仮称・師匠は精神を強く持ってください》

『ぐ……ぎ……』

自分の中身がグチャグチャに掻き回されたのかと思うほどの、膨大な力の流れ。

『うがぁぁぁ!』

耐えようとするんだが、悲鳴が止められない。痛みではない。何と言えばいいだろう? 自分の中に数えきれないほどの無数の虫が入り込んで、体内で盛大に蠢きながら耳障りな声を上げ続けている?

とにかく、耐えがたい気持ち悪さが俺を襲い続けていた。

『あ、が……!』

(師匠? 師匠!)

『ふ、ら……』

(だいじょぶ?)

フランが不安げな顔をしている。ああ、なんて顔なんだ。そりゃあ、相棒が急に苦しみ出したら、心配になるよな。

情けない。ちょっと気持ち悪いくらいで、これ見よがしに苦しんで。何が師匠だよ。

『は、はは……。もんだいない。しんぱい、すんなよ……』

(でも)

『なに、すぐ、おさまるさ』

(ん……)

《魔力の制御完了まで、残り7秒》

7秒。短いようで、俺には驚くほど長い。だが、俺はもう呻き声の欠片も漏らさず、ひたすらに耐えた。

フランも、俺の状態が落ち着いたと思ったのか、少し表情が和らいだかな?

次第に症状が治まってきたおかげで、周囲を気にする余裕も出てきた。

巨大抗魔は、悲鳴のような金切り声を上げている。

「ギイイイイイィィイィィィィィィィ!」

断末魔――とはいかなかったか。

力は大幅に落ちたようで、即座に再生し始めるということはなかった。ただ、体の大部分を失い、廃棄神剣の力が奪われたというのに、まだ魔力を失っていない。

砕けたビルの残骸のような姿を晒しながらも、巨大抗魔は未だに強い魔力を放っていた。

(倒せなかった……)

『ああ』

《対象がこのまま消滅する確率0%》

このまま放置すれば、復活するのは確実ってことだ。魔力を使い果たしたのに巨大抗魔を倒せなかったフランは、地面にぺたんと座り込んだまま、ビクビクと蠢く抗魔を悔しそうに見つめている。

神剣と変わらないレベルのダメージを与えられたことは、誇っていいと思うんだがな。

《共食いスキルの発動によって得た力の制御、転化にて、高負荷が発生。仮称・アナウンスさんの消耗が、想定を大きく上回っています。再び休眠状態へと移行》

え? ちょっと! アナウンスさん?

《個体名・フランを、頼みます》

待って! 聞きたいことが色々あるんですけど!

《……》

ダメか。いつも通り、唐突だねぇ!

またしばらく、アナウンスさんの力は借りれないってことだろう。ポッカリと大きな穴が空いてしまった気分だ。

だが、それでも、俺たちには余裕がある。なんせ、頼れる仲間はまだいるからな。

『ここにいるのは俺たちだけじゃないんだ。後は仲間に任せよう』

(ん)

フランが目を向けたその先には、凄まじい神気を立ち上らせる、イザリオの姿があった。

「あとは、任せろ」