作品タイトル不明
99 バルボラ
「バルボラが見えたぞ!」
出航から3日目。俺たちはようやくバルボラに到着していた。
いやー、色々あったぜ。
日付は3月30日。噂の月宴祭には間に合ったな。
ミドガルズオルムから逃げ切った後。俺たちは予定通り海賊のアジトへ乗り込み、留守番役の海賊たちを蹴散らしてお宝をいただいていた。ゴルド、金銀財宝、香辛料、武具など、結構ため込んでいたな。
こういった場合、お宝は発見者の物になる。名前が書いている訳でもないしね。国によってはこの制度を利用して、私掠船なんかで稼いでいる国もあるらしい。私掠船で奪い、国が奪還した振りをして国庫に入れるっていう寸法だ。
商人でもあるレンギル船長の見立てでは、総額で1億ゴルド。あまりにも高額すぎて、実感わかないね。ただ、これでも沈んだ海賊船を買い直すことは無理なんだと。船は推進装置や砲撃用の魔道具など、高価な魔道具が大量に使われているし、高価なんだろうな。
依頼中に盗賊を殲滅してお宝を奪い返した場合、普通は依頼主であるフィリアース王国と、発見者であるルシール商会に大幅な権利があるらしい。冒険者や船員には、多少のボーナスが支払われて終わりと言うことが多いみたいだ。
ただ、スパイの捕縛や、王族を救った事。船を2度に渡って守ったことを評価され、お宝の分け前が貰えることになった。
何が欲しいか聞かれたので、まずは大量の香辛料を貰うことにする。見たことのない香辛料や、高価な香辛料もかなりあったし。これでカレー作ったら、1万食くらい作れちゃうんじゃないか? これだけでも軽く10万ゴルドを超えると思う。
財宝類も持って行って良いと言われたので、遠慮なく頂くことにする。まあ、宝石や装飾品の良し悪しなんか分からんから、中の詰まった小さめの宝石箱を1つと、錬金術ギルドの紋章が描かれた謎の金属箱を貰うことにした。こういう、中に何が入っているか分からない箱とか、ワクワクするんだよね。
実はこれらの現物支給とは別に報奨金もきちんともらっているので、気持ちに余裕があるというのもあるが。とりあえず、手持が200万ゴルドになるくらいは貰えたし。いや、とりあえずとか言ってるけど、凄まじい収支なのだ。所持金倍増だし。
これで、バルボラではお金の心配せずに豪遊できそうだ。フランが。
「フラン、本当に世話になったな」
「色々とありがとうございました」
2日間経ち、双子の気分も落ち着いたみたいだな。まだ表情に陰りはあるものの、笑顔も見せてくれるようになっていた。
「君が居なければ、こうして無事にバルボラへたどり着くことも無かっただろう。礼を言う」
真実の剣の辺りから急に態度が軟化したセリドも、深々と頭を下げていた。どうもそれまではサルートの仲間だと思われていたらしい。
「私たちは1週間ほどバルボラに滞在する。領主の館に落ち着いたら訪ねてくれ。殿下たちもお喜びになる」
「ん。分かった」
「領主には伝えておく故」
さすが王族。領主の館か。
「私からも感謝を。波乱もありましたが、無事に航海を終えることが出来ました」
「ん」
「かなりの儲けも出ましたし。何か困ったことがあったら、ルシール商会を頼ってください。出来る限りの事はさせていただきますので」
「私のことは――」
「はい。無論、誰にも言いません。船員たちにも厳しく言い含めてありますので」
「我らもだ。兵士たちには、今回のことは秘密にするように言ってある」
真実の剣に操剣演舞と、でっち上げた嘘が広まると色々と目立ってしまうだろう。特に真実の剣は、思ったよりも大事らしいし。レンギルとセリドが揃って剣を譲ってくれと頼んできた上、セリドなどは3千万ゴルド出すとさえ言ってきたからな。
ばらしたらどうなるか分からないと、威圧も込めて脅しておいた。絶対とは言えんが、ここはセリドとレンギルの統率力に期待するとしよう。
フランが最後に双子と握手を交わし、別れを惜しんでいる。そうだな、フランの為にも、双子の下を1回は訪ねてみよう。まあ、門前払いされなければ、だけどね。
「君に渡された書類は、責任を持って領主に届ける」
「お願い」
俺たちが闇奴隷商人のアジトで手に入れた書類は、セリドに託すことにした。彼ならレイドスとは敵対しているし、クランゼルの上層部にも顔が利く。きっと悪いようにはならないだろう。
「じゃ」
「ああ、ありがとう」
「また会いましょう」
「ばいばい」
船を降りて30分後。
『あそこがレンギルが教えてくれた宿だろうな』
「高そう」
「オン」
『高級宿だっていう話だし』
この時期、宿を探すのが大変という話をしたら、レンギルが知り合いの宿を紹介してくれたのだ。少々お高いらしいが、レンギルの名を出せば割引してくれるらしいし、お金もたんまりあるからな。このくらいの贅沢は許されるだろう。従魔オッケーの宿っていうのも有り難い。
「こんちわ」
「いらっしゃいませ」
さすが高級宿。出迎えたのは恰幅の良いおばちゃんではなく、いかにも出来る感じのダンディさんだった。
「1部屋とりたい」
「申し訳ございません。現在部屋が空いていないのです」
「ん、これ」
ルシール商会の紋章の入ったコインを見せる。
「これは……。どなたからのご紹介ですか?」
「レンギル船長」
「なるほど。分かりました」
コインの効果は劇的だった。どうやら一見さんお断りの常連用の部屋があるらしく、そちらを用意してくれるとのことだった。
なんと1泊2食付きで4000ゴルド。アレッサで泊っていた宿の10倍だ。お高いが、これでも大分割り引いてくれてるらしい。とりあえず5泊分お願いしておいた。
『宿も取れたし、どうする?』
「ごはん」
「オン!」
『了解。あと、現物支給で貰った、謎の箱を開けてみるか。何が入ってるか分からないしな』
「ん。楽しみ」
「オウン!」