軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第5章-16 隠し玉

次の試合から二回戦が始まる。

第一試合は前回準優勝チームとセイゲンテイマーズAの戦いだ。

本当ならこの試合は見ずに、そろそろ自分の試合の準備を始めるつもりだったのだが、前回の準優勝チームの一人が気になり、少し見ていくことにした。

そいつは中肉中背の男であまり強そうに見えないのだが、なぜだか不気味な感じがしたからだ。

闘技台の上には、すでにアグリ達が待っており、アグリの眷属である三頭のグラップラーエイプは、まるで人間の様に武器の調子を確かめている。三頭が持っているのは、片手剣に槍、そして弓である。

猿に槍が使えるのか?と思っていたら、槍を持っているエイプは槍を振り回したりしているので、どうやら棍棒代わりの槍のようだ。まともに使えているとは言いにくいが、人間を上回る筋力で振り回される槍は、先程からヒュンヒュンと風を切る音が聞こえているので、当たれば痛いでは済まない威力があるようだ。

その三頭の横に鎧姿の戦士もおり、少し遅れている相手チームにイラついているようだ。顔が見えないが、この間紹介されたアグリの孫だった筈だ。

対する相手チームは戦士と魔法使い、そして不気味な感じのする男が出て来た。

三人だけで戦うのかと思ったら、最後の男がバッグを取り出し、中から何かを出そうとしている。

少しもたつきながら出してきたのは、筋肉質の体に身の丈3m半はありそうな一つ目の巨人『サイクロプス』と、こちらも同じくらいの背丈だが、見るからに重量で上回っており、間の抜けたような顔をしている巨人『トロール』だ。二体は揃いの首輪をしており、簡単なつくりの服だけを身に付け、武器や防具は装備していない。

ギルドでは二体共Bランク以上の魔物とされており、攻撃力だけを見るならAランク以上の魔物に匹敵する事もある。

王都付近では巨人族の生息域には適さない為、めったに見かける事の無い魔物だ。(サイクロプスは山岳地帯、トロールは気温の低い地域の森などが主な生息地)

巨人の突然の登場に、観客席からは大きな歓声が飛んだ。何せ、二体の巨人が闘技台に上ると、ほとんど観客席の近くまで頭が来るのだ。観客席から離れていると言っても、その大きさ故に迫力がある。中には怯えている観客もいる程だ。

しかし、アグリ達にしてみればたまったものではないだろう。何せ、一回戦で五人いた相手チームを、三人で負かすくらいの力を持っているのに、さらに人外の戦力が加わったのだ。冷静に考えれば敗北は濃厚である。

だが、そんな状況に置いて、一番張り切っているのは戦士である。

男はニヤリと笑った後、おもむろに装備していた鎧の一部を残して外し始めた。外したのは兜に肩当などで、最終的には胸当てや腕、脛の部分しか残っていない。

男は鎧の外した部分を三頭のエイプ達に指示を出して、邪魔にならない様に台の外へと投げさせた。投げた鎧の一部が観客席の方に飛んで行ったが、観客席の所で待機していた魔法使いが障壁を張り、鎧を弾いていた。

観客席へと鎧を投げ入れそうになったエイプは、なぜかポージングを決め始めた。おそらくは『俺も力には自信がある』といったところであろうか?

あきれ顔のアグリは、すかさず男とエイプの頭を叩いていたが、観客にはそれが受けたようであちこちから笑い声が聞こえる。

前哨戦?は互角だ。戦力で負けているアグリ達が、どのような作戦で戦うのかがこの試合の見どころになりそうだ。

笑いが収まるのを待っていたように、審判が開始の合図を出した。

まず目立った動きをしているのは相手チームだ……と言うよりは、サイクロプスとトロールが戦士と共に、前の方にポジションを取っただけだ。だが、巨人が二体揃って動いただけでもかなりの迫力があり、ドシドシという足音が聞こえるだけで観客が湧いた。

陣形は3-1-1と言った感じで、前列の両端にサイクロプスとトロールで、真ん中のやや下がった位置に戦士、戦士の後方に魔法使い、さらにその後方に テイマー(不気味な男) だ。

最後方に位置取っているのは、テイマーがやられてしまった場合に適用される 眷属の失格(・・・・・) を防ぐ為だろう。

対するアグリ達も同じような陣形だ。前列の両端が槍と剣のエイプで真ん中が戦士だが、こちらは相手と違い横並びである。その戦士の後ろに弓のエイプで、その後方がアグリである。だが、アグリは弓のエイプのすぐ後ろにおり、杖を構えている。

審判が後ろに下がったと同時に、地響きを立てながらサイクロプスとトロールが前に歩き出した。

弓のエイプが矢を放ち何本か命中させるが、二体の巨人は顔を歪めながらも前進を止めない。それを見た前列の二頭のエイプが、サイクロプスとトロールの横に回り込むように動き武器を構えた。

この動きに二体は気を取られ、足を止めた。その隙に身軽になったアグリ側の戦士が走り込み、トロールの脛を切りつける。トロールの体が頑丈な為、さほど深い傷ではないが、それでも痛みでトロールは悲鳴を上げた。

攻撃されて戦士に気付いたトロールは、腕を振り下ろして叩き潰そうとするが、もうそこには戦士はおらず、今度はサイクロプスの脛に切りかかっていた。

サイクロプスの方はトロールの反応を見て警戒しており、切りかかる直前でかわそうと動いたので、浅い傷しかつけられなかったが、サイクロプスの意識が戦士に向き、エイプから外れた。

剣のエイプはここぞとばかりに飛び上がり、サイクロプスの頭に剣を振り下ろす。

決まれば致命傷を与える事が出来たのだが、飛び上がった時にサイクロプスの腰のあたりを踏み台にした為、頭部への一撃は腕で防がれてしまった。

無防備なエイプにサイクロプスが腕を振るおうとするが、これは弓のエイプに牽制されて攻撃を外してしまう。

トロールの方は動きが鈍い為、敏捷性の高い槍のエイプに翻弄されてやや苦戦気味だ。

ここまではアグリ達が有利に事を運んでいるが、相手チームもさすがにこれ以上はまずいと思ったようで、戦士と魔法使いがテイマーを残して攻撃に加わろうとしてきた。

しかし、ここで相手チームにとって予想外の事が起こる。

エイプ達の後ろで待機していたアグリが、魔法を使い始めたのだ。

魔法自体は威力があまり高くないのだが使い方がいやらしく、炎をまるで生きている蛇の様に放ち、サイクロプスやトロールの体に巻き付かせたり、向かってくる戦士達に仕掛けている。

そしてその炎の蛇が、サイクロプスとトロールの顔に巻き付いた。

たまらず顔を掻きむしり、炎の蛇を打ち消す二体の巨人。

巻き付かれてすぐに消火する事が出来たが、それでも顔には蛇が巻き付いた形のやけどをしており、二体共まともに目が開けられない状態になっていた。

その状態でエイプ達の攻撃を受けた為、あたりかまわず攻撃を仕掛けるサイクロプスとトロール。その攻撃範囲に入っていた相手の戦士と魔法使いは巻き込まれ、避ける事に気を取られ過ぎてしまった。

そしてその2人に気が付かれない様に走り出す、アグリ側の戦士と剣のエイプ。

相手の戦士と魔法使いが、テイマーに向かって行った敵に気が付いた時、すでにテイマーは射程圏内に捕らわれていた。

走ったままの勢いを乗せて、剣を振るう一人と一頭。

決まった……と観客達が確信した瞬間、またも予想外の出来事が起こった。

振り下ろされる剣を防ぐように、テイマーの足元から石の柱が生えて来た。そして、襲い掛かった来た者に対して、別の石の柱が殴り飛ばすような形で腹部に突き刺さった。

口から液体を吐き出しながら、後方に吹き飛ぶ戦士に剣のエイプ。幸いにして、サイクロプス達の所までは飛ばなかったので、無防備な所に追撃を受けるような事にはならなかったが、誰が見てもこの試合で復帰する事は無理そうである。

動揺するアグリ達に対し、だいぶ視力の回復した二体の巨人と戦士と魔法使いが攻撃を始めた。

アグリ達は動揺からすぐに立ち直り、攻撃をしのいでいるが長くは続かなかった。

わずかな均衡が崩れ、槍のエイプがトロールの攻撃で弾かれた所で、すぐさまアグリが降参を告げた。

アグリの降参を聞き、審判が相手チームの勝利を宣言したが、トロールは倒れている槍のエイプに向かって行く。

すんでの所で、テイマーの命令を聞いたサイクロプスがトロールを抑え込んだが、明らかにトロールはエイプに止めを刺そうとしていた。

さすがに審判はその行為を放っておく事が出来ずにいたが、実際に攻撃をした訳では無いので厳重注意のみで終わったようだ。

槍のエイプはその後で立ち上がったが、テイマーに攻撃された戦士と剣のエイプは担架で運ばれて行った。担架に乗せられる時に両方とも起き上がろうとしていたので、緊急事態という訳ではないようだ。

「あのテイマー、魔法使いとしては一流くらいの力はあるんやろうけど、テイマーとしての実力は二流みたいやな」

俺の隣で試合を見ていたナミタロウが呟いた。

「どういう事だ?」

「何や、知らんかったんかい。あの首輪、奴隷に使う奴と同じような物やで。最も、あっちの方がめっちゃ珍しいけどな」

ナミタロウによると、巨人の首にはめられていた揃いの首輪は装飾品では無く、かなり珍しいマジックアイテムだそうで、効果は首輪をはめた対象を自分の支配下に置く事が出来る、との事だ。

支配下に置くにはいろいろな種類の条件があるそうだが、物によって条件が違うそうなので、どんな条件だかまでは分からないそうだ。

「だから二流なのか」

「そやで、あいつらテイマーの命令に対して少し遅れたりしとるけど、それは完全に自分の意思で従っとるわけやないんで、体が命令に抵抗しようとするのが原因で遅れるんや」

中々に博識なナミタロウに、思わず感心してしまう。何で知っているのか聞いてみると……

「昔、わいの首にもはめられそうになった事があるんや。そん時は首輪が、つるって滑ってはめられんかったんやけどな!因みに、わいにはめようとした奴は、川の底に沈んでもらったけどな!ついでにその時の首輪もあるけど……いる?」

「いらん!」

ナミタロウの差し出してきた首輪は、どうにか原型を保っているといった形の首輪で、ナミタロウ曰く、

「まあ古すぎて、ゴブリン相手でも効果を発揮せんやろうけどな!」

だそうだ。

「ナミタロウって、ちょくちょくやらかすよな……釣られたり、売られたり」

「まだまだ、あるでぇ~……聞きたい?」

なぜか話したそうなナミタロウに対し、俺は無言で首を横に振って拒否をした。

「何や、つまらんの~」

そうしているうちに、次の鬼兵隊が入場しようとしていたので、一旦控室に戻り係員を待つ事にした。

控室に着くなり、係員から急いで出入口付近に行くように指示された。移動すると、試合がちょうど終わった所だった。かなり早い決着であったが、ガリバーが無双したと聞いて納得した。

係員のチェックを受けて入場すると、反対側からも相手チームが入場してきた。やはり、前衛の三人が俺を睨んでいる。

「二回戦、第二試合。『オラシオン』対『ローエン・グリン』、試合開始!」

審判の声と同時に、『ローエン・グリン』と呼ばれた相手チームが陣形を整え始めた。

しかし、今回の審判はかなり身軽なようで、合図を出してすぐに射程圏外まで退避をしていた。

なので俺達は陣形など取らずに、すぐさまそれぞれの標的に向かって走り出した。

まず飛び出したのはシロウマルで、少し遅れてナミタロウが続く。

ソロモンは飛び上がる動作が入った為、三番手となった。

俺とスラリンは相手の様子を見ながら動いたので、三匹からは少し遅れている。

「ガァア!」

「どりゃ!」

シロウマルは右側にいた戦士に飛びかかり、武器を持っている右手に噛みつこうとしている。

ナミタロウは謎の推進力で勢いをつけて、左側にいた戦士に突進していった。

シロウマルの噛みつきに、相手の戦士は咄嗟に体をずらして腕を引いたため、ダメージを受ける事は無かったが、持っていた剣を噛まれシロウマルに奪われてしまっている。

もう一人の戦士はナミタロウの突進に、タイミングを合わせて剣を振るうが……

「ク〇イフターン!」

などと叫び、くるくると横回転をしながら相手のタイミングをずらして背後を取った……最も、ナミタロウの回転技は、俺の知っているク〇イフターンとは似ても似つかないものであり、ターンと言うよりも『ナミタロウ独楽』と言った方がしっくりとくる。

「しまっ……ブフゥ」

相手が振り返るよりも先に、ナミタロウの体当たりが背中に命中する。相手の戦士は背後からの体当たりで前に倒れた。

戦士が倒れたのを見て剣士がナミタロウに切りかかるが、その攻撃もナミタロウは回転しながら躱している。

と、その時……

「きゃあぁぁーーーーー!」

女性の悲鳴が響き渡った。

反射的に悲鳴の聞こえた方を見てみると、ソロモンが弓兵の脚をくわえて上空を飛び回っていた。

幸い弓兵はスカートではなかったので、下着が見えると言ったハプニングは無かった。

弓兵がいた場所を見ると弓が落ちていた。どうやら、ソロモンにくわえられた時に落としたようだ。

宙ぶらりんになりながらも、弓兵はソロモンに蹴りをくらわしていたが、ソロモンにはほとんどダメージ与えられていないようだ。

弓兵が何度目かの蹴りを放った時、ソロモンがくわえていた弓兵のブーツが脱げてしまった。

「いやぁああーーーーー!」

真っ逆さまに落ちていく弓兵。ソロモンは口をあけて一瞬、「やっちまった!」みたいな顔をして急降下を始めた。

何とか弓兵が地面に激突する前に回収する事に成功したが、ソロモンは俺の顔色をうかがいながら闘技台の端の方に弓兵を降ろしに行った。

降ろされた弓兵は気絶しているようで、審判に担架で運ばれて行った。

弓兵が落ちた瞬間、一時的に戦闘を行っていた双方の動きが止まり、シロウマルが弓兵を受け止めようとした動きを見せていたが、それよりも早くスラリンが落下地点に待機していたので、万が一ソロモンが回収できなくても弓兵に怪我は無かったと思われる。

「テンマ!いったで!」

ナミタロウの声とほぼ同時に、ソロモンを見ていた俺に数発のエアボールが襲い掛かってきた。

「危ないな……」

魔法使いは俺の不意を突いたつもりだろうが、よそを見ながらも魔法使いに気を配っていた俺には意味がなかった。

俺はすでに準備していた魔法障壁を張り、エアボールをすべて防いだ。

俺の不意を突いて放った魔法が、何一つ掠る事無くすべて防がれてしまった魔法使いは、かなり驚いた顔をしていたがすぐに引き締め、新たな魔法の詠唱を始めた。

だが、 それ(詠唱) は少し遅かったようだ。

なぜなら背後にナミタロウが、左右にはスラリンとシロウマルが魔法使いを包囲するように睨んでいる。

「くそっ!あいつらは何をしているんだ!」

魔法使いが剣士と戦士達を探すと、三人はいつの間にかナミタロウ達にやられており、折り重なって放置されていた。

「他のメンバーはあの状態だけど……どうする?ギブアップする?」

俺は魔法使いにそう聞いてみたが、魔法使いは俺の質問に答える前に俺に向かって走り出した。

走り出す瞬間、背後左右の三方向に半円状のファイヤーストームを放ち目くらましにしていたが、三匹には通用しなかった。

「うおっ、へぶっ、ぐえっ!」

ファイヤーストームで三匹を抑え込んだと思い、油断した魔法使いはスラリンの触手に足をからめとられてバランスを崩し、シロウマルの肉球によるはたき込みをくらい倒れ込み、ナミタロウのボディプレスで潰された。

その結果、魔法使いは気絶した。

今回の俺の役割は、調子に乗って少し失敗したソロモンを睨んだだけで、ほとんど終わってしまった。

「勝者、『オラシオン』!」

俺の思いなど知らない審判が、俺達の勝利を告げた。

観客席から歓声が聞こえるが、さっさと引き上げて次の試合を見学する事にした。

次の試合は『暁の剣』と前回の優勝チームで、勝った方が俺達の相手となるからだ。

しかし……

「ジン達が負けるだろうな」

先ほどと同じ見物スペースに入り、客観的に見た試合予想を呟いた。

「なんや、テンマは冷たいのう……わいもそう思うけどな!」

俺とナミタロウの考えは、両チームとも万全の状態ならば、暁の剣が人数で劣っていても互角以上の戦いが出来る。ただし、今回はジンとガラットが万全ではないので、数の差がそのまま力の差となってしまう。というものだ。

そして、その予想は的中してしまう。

試合序盤はジン達が押しているように見えたが、中盤辺りから徐々に押され始め、終盤では完全に押されてそのまま負けてしまった。

終わってみれば、相手チームの掌の上だったという感じだ。

それが分かっているようで、暁の剣の面々も悔しそうだった。

「さすが前回の優勝チームやな。最初から最後まで、暁の剣をコントロールしとったな」

「ああ、ジン達も分かってはいるが他に打つ手がない、っていう感じだったな」

ジン達が悔しそうな顔をしながら引き上げていく。これでジン達の試合がすべて終わった。

チームとしてベスト8、個人でジンがベスト4、ガラットが本選出場は、はたから見たら上出来の結果ではあるが、実力的にはまだ上を目指せただけに後悔はあるのだろう。

残りが二試合となった所で一時間程の休憩をはさむことになり、ジン達と鉢合わせない様に時間をずらして控室に戻る事にした。

負けた相手に、まだ勝ち残っている俺が言う事はないだろう……と思っていたのだが……

「くそっ!いいとこ無しじゃねぇか!」

「せめて体調が万全だったらな……」

「ジンとガラットのせいだな。私とリーナは悪くない」

「そうですね!責任を取ってもらいましょう!」

負けて控室に戻ったと思っていたジン達が、何故か俺達の居る見物スペースにやって来た。

やけに明るいジン達に面を食らっていると、係員からうるさいと注意を受けたので、仕方なくオラシオンの控室に場所を移す事になった。

「しかし、変に明るいけど、負けて悔しくないのか?」

控室でお茶を出しながらジンに聞くと、ジンはお茶を飲んでから口を開いた。

「そりゃ悔しいさ。だけどな、掌の上だったとしても、全力を出して負けたんだ。そこに悔いはない。それにいつまでも悔しがっている訳にもいかねえからな」

「とか言ってるジンが、この中で一番引きずるんだけどな」

ガラットの言葉に、爆笑するメナスとリーナ。

「そう言うお前こそ、今日の夜は悔しくて眠れねえ癖に!」

言い争うジンとガラットを見て、変に落ち込んでないだけいいか、と思う事にして、あまり気を使わない事にした。

「今気が付いたんだけど、俺って、ジン達の敵討ちをしないといけないんだよな……個人戦とチーム戦で」

個人の決勝では、ジンとガラットを破ったアムールで、チーム戦の次の試合は暁の剣に勝ったチームとだ。

「あっ、言われてみればそうですね~。ジンさんとガラットさんは、テンマさんを人一倍応援しないといけませんね!」

リーナの言葉を聞いて、じゃれ合っていたジンとガラットが同時に嫌そうな顔をする。

雑談などで時間を潰し、そろそろ準決勝の第一試合の開始時刻が迫ってきた。

「じゃあ、そろそろお暇するか……がんばれよテンマ!」

ジン達は自分の控室に戻り、俺は見物スペースに向かう事になった。

ジン達と別れてしばらく歩いたところで、ジン達が向かって行った方向から大きな音が聞こえて来た。

おそらくジンが壁を殴った音だろう。口ではどうのこうの明るい事を言っていても、やはり悔しい物は悔しく、簡単に気持ちの切り替えは出来なかったのだろう。

音を聞いて駆けつけて来た係員達とすれ違いながら、振り返る事などせずに目的地を目指した。

見物スペースに入ってしばらくしてから鬼兵隊が入場してきた。

バッグから出て来たガリバーの調子は良さそうで、木で出来た太い棍棒を準備運動代わりに振り回している。

鬼兵隊にとって、ガリバーの活躍がこの試合の勝利のカギになっていると言っても過言ではない。ガリバーはその事を理解しているからこそ張り切っているのだろう。

対する相手チームは前の試合と同じように、少し遅れている。

その事を鬼兵隊のメンバーは気にしていないようだが、観客席の方がざわめいて来た。

観客席がざわめき出してから間もなく、相手チームが入場してきた。だが、入場してきたのはテイマーと魔法使いだけである。

戦士が居ないのは何かトラブルがあったからなのか?

皆がそう思い始めた頃、歩みを止めたテイマーがバッグを開いた。