軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1章-5 賢者登場

天馬が拾われて4年、魔法の勉強を始めて1年がたったある日の事、

「テンマ、本だけでの勉強も今日で終わりよ。よく頑張ったわね、明日からは初級の魔法を基礎から練習を始めていこうと思うわ」

と、シーリアからの許しにテンマは、

「ホントに!魔法を使ってもいいの?やった~!」

と、喜びの声を上げた。

「ただし!今後はこれまで以上にお母さんの言いつけを守る事、むやみに魔法を使わないこと、辛いことがあっても決して練習を投げ出さないこと、わかったわね」

「はい!」

「明日はお父さんも一緒に、近くの川まで行ってそこで練習するわよ。だから今日は早く寝て調子を整えるのよ」

「は~い」

と、返事はしたものの、魔法が使える嬉しさと興奮でなかなか寝付けない天馬だった。

次の日、村から歩いて10分程の川へ天馬たちは朝からやって来た。

「いいテンマ、まずは水の魔法から教えるわ。見ていてね『水よ』」

シーリアが川の流れが緩やかな所に手を入れ言葉を発する。すると川から1メートルほどの水の柱がたった。

「いい?これが水の魔法の基礎よ。最初は緩やかな所から始めて段々に流れの速い所でも水柱を維持できるようにするの、やってみて」

天馬が川に手を入れようとした時、不意に視線を感じた気がして後ろを振り向いた。それと同時にリカルドも振り向き驚愕した、

「ほっほっ、気付かれてしまったようじゃな。邪魔するつもりはなかったんじゃがすまんのう」

リカルドの10メートルほど先、天馬からは15メートルほどの距離にいつの間にやら頭から黒いローブを被った男性が立っていた。

男が近づいて来ようとするとシーリアはかばう様に天馬の前に立ち、リカルドは一歩下がりながら腰に下げていた大振りのナイフを抜き出し天馬達と男の間に立った。

「何者だっ!」

警戒するリカルドに対し男は特に気にした様子もなく立ち止まり、声を掛けて来た。

「そんなに警戒をするなリカルド、わしを忘れたのかシーリア」

と、言いながらローブから顔を出した。

「マーリン!」

「おじさん!」

リカルドがマーリン、シーリアがおじさんと呼んだことに男は顔の皺を深めながら笑った。

「そうじゃよ、マーリンじゃ。分かったならナイフを下してくれんかのう、リカルド?」

「あ、ああ、すまない」

と、ナイフを腰の鞘に戻すリカルド。それを見てからマーリンと呼ばれた男はゆっくりと歩み寄って来た。

「久しぶりじゃな二人とも、何年振りかのう?」

「もう11年は経つぞ、マーリン」

「そうよおじさん、何年も連絡が無いし心配したんだから!」

との二人の言葉にマーリンは笑いながら、

「すまんすまん。手紙を出そう出そうとは思っていたんじゃが、すっかり忘れておってのう」

と言って頭を掻いていた。

「相変わらずね、おじさんは」

「まあ、たまに旅人から話は聞いていたから死んではいないと思っていたが」

と言っている二人の後ろにいる天馬にマーリンが視線を向けた。

「ところでこの子は二人の子か?いつ産んだんだシーリア?」

と天馬と目を合わせながら聞いてきた。

リカルドはマーリンを連れて天馬達から少し離れて小声で

「半分は正解だが、半分ははずれだマーリン」

「何じゃと?」

「この子は赤子の時に大老の森に捨てられていたんだ。狩猟中に偶然発見して保護して、養子にしたんだ」

「そうじゃったのか」

「まあ、今では俺達の宝だがな」

と笑うリカルドを見てマーリンは微笑んだ。

話が終わった二人が戻ってきてから改めて自己紹介をした。

「テンマじゃったな。初めまして、わしはマーリンじゃ。シーリアの叔父にあたる。世間では『賢者』とも呼ばれる事もあるがの」

ほっほっと笑うじいさんの言葉を聞いて天馬は思わず、

「賢者ってあの変人の」

と言ってしまった。言ってからしまった、と思ったがマーリンは気にせずに、

「そうとも呼ばれておるな」

と、しれっと言った。

「ごめんなさい、僕名前はテンマ、歳は4歳です」

「おお、そうかそうか、気にする事は無い。変人と呼ばれるだけの事はしてきたからの」

と笑っていた。

「ところでシーリア、何をしてたんじゃ?」

「ええ、テンマに魔法の基礎を教えようとしていたの」

「そうかそうか、テンマやってみせてごらん」

「わかった」

そう言い天馬は川に手を入れ『水よ』と唱えた、すると目の前には1メートルほどの水柱が出来ていた。

「テンマすごいじゃない、一回で成功させるのはすごいわ!」

「ああ、普通は水が反応しないか、形を保つことが出来ないかなんだけどな!」

と二人はほめていたが、マーリンは険しい表情で、

「テンマ、お前はこの練習よりも先にやることがある。このままでは体を壊しかねん」

と言った。天馬達が何かを言う前にマーリンは続けて、

「お前は年の割に魔力が高すぎる。だから魔力をコントロールする練習をみっちりとやってからの方がいい」

「でもおじさん、普通はある程度魔力を放出させることを体に覚えさせてから、魔力のコントロールに入るのが一般的じゃない?」

「確かに、普通は魔力を体から放出する感覚に慣れさせてからコントロールの仕方を覚えさせるのが一般的とされているが、それはあくまでも普通の素質を持った子供の場合じゃ」

「テンマは普通ではないと」

リカルドの言葉にマーリンは頷きそして、

「この子の魔力と魔力量は一流に手が届くところまで来ているじゃろう。だが体はまだ子供じゃ、下手に魔力を放出したら制御しきれずに暴走を起こすじゃろう。結果、良ければ廃人、悪ければ辺りを巻き込んで木端微塵じゃろう」

マーリンの言葉に天馬達は青ざめた。

「じゃあどうすれば」

泣き出しそうなシーリアの声にマーリンは、

「そうならないためにも、魔力を放出させずに体内で循環させ、魔力をコントロールさせる術を身に付けさせるのじゃ」

マーリンの言葉に少し落ち着いたシーリアだったが、自分では教える事が出来ないことに気が付いた。その様子を見たマーリンが、

「なに、心配するな、わしがテンマに教えよう。もしテンマが暴走しかけてもわしなら鎮めることが出来るじゃろうて」

そう言いながら天馬の頭をなでるマーリン。その顔はまるで孫をなでる祖父のようでもあった。

「マーリン、テンマをよろしく頼む!」

「おじさん、テンマをお願い!」

「うむ、わかった。お前たちの子ならわしにとっても孫のような者じゃ、全力を尽くそう。テンマもそれでいいかのぅ?」

マーリンがそう聞いてくるが、天馬には今のところマーリンに教わる以外に道がなく、さらに危険が少なく『賢者』から直接指導してもらえる事はいい事尽くめであるため、

「はいっ!よろしくお願いします!」

と、元気よく答えていた。