軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第3章-17 鍛え直し

「ところで、高ランクの魔物の核を集めてどうするんですか?」

周りを警戒しながらアウラが質問をしてきた。

「新型のゴーレム作りに使うんだ。二人が王都に行った時の保険が必要だろ」

ゴーレムの作り方が分からない二人は首を傾げていたが、気にしてもしょうがない、と考えたようで、特に作り方を聞いてくることはなかった。

ゴーレムの作成方法には、一般的に2通りの作り方がある。

一つ目は魔力を持つ石……魔核、魔石、宝石などで核を作る方法。

二つ目は金属で核を作る方法。

それぞれの作り方に一長一短があり、一つ目の方は小さい核には魔法陣を刻みにくく、失敗したらやり直しがほぼできない上に修復もしにくいが、この方法で作るゴーレムは汎用性が高く、魔力の消費量が比較的少なくて済むので、様々な用途で使われることが多い。

二つ目の方は、金属の形や大きさを自由にできるので魔法陣が刻みやすく、また失敗してもやり直しが簡単で修復もしやすいが、単純な命令しかできず魔力の消費も大きいので、ほとんどが単純作業に使用したり、魔法陣に多くの事を刻んで特化型にする事が多い。

魔力の消費量の違いについてはハッキリと解明されていないが、天然物と人工物の違いではないか、との説が有力だ。

核を作る際に忘れてはいけないのが、ゴーレムの体の素材の指定と主の登録だ。

素材は一般的に、土、石と刻むことが多く、余裕がある場合は数を増やしたりする。これを刻まないと、ゴーレムを召喚する時に体を作ることが出来ずに使い物にならない。

主の登録は、製作者以外に使われないようにするための物であるが、量産された物などには刻まれていない事もある。

「オークが来るぞ!」

すぐ先の曲がり角から現れたのはハイオークで、その数は6匹だったので俺一人で切り込み瞬殺した。

「えっ……はやっ!」

瞬く間に崩れ落ちたハイオーク達を見て、ジャンヌとアウラは驚いた顔をしていた……そう言えば、俺がまともに戦うのを見るのは初めてだったかな……

そんな事を思いながらも、ハイオークの死体をバッグに入れて先に進んだ。

その後も何度か魔物に出会うが、それらはオークやコボルトばかりであり、目的の魔物は見つからない。

最初は驚いていたジャンヌとアウラだったが、次第に慣れてきたようなので、何度か弱らせたハイオークで訓練させたりしながら奥に進んでいった。

39・40階層と突破したのはいいが、Bランク以上の魔物は出てこないので一旦引き上げようかと考えた時、ドーム状の空間になっている場所を見つけた。

「やっといたぞ……1,2,3……Bランク相当は全部で3匹というところか……他にも十数匹の反応があるから、ジャンヌとアウラはシロウマル達と連携して自分の身を守る事に専念するんだ!」

俺はジャンヌ達の返事を聞かずに広場に飛び出した。

俺の気配に気づいて出てきたのは、体長が3m近い大きなサソリであった。

そのサソリは大きなハサミに鋭い毒針の他に、足の先には鎌のような爪が生えており、体の表面は岩のようにも見える。そんなのが3匹おり、それぞれがハサミを振り上げてこちらを威嚇している。

まずは小手調べに、正面にいたサソリにエアブリットを食らわせたが、サソリの表面に傷が付いただけで大したダメージは受けていないようであった。

俺は武器にアダマンティンの剣を選択すると、素早い動きで俺に迫ってきていたサソリ目掛けて、力任せに叩きつけた。

サソリは両方のハサミを交差させて体を守るようにガードをしたが、べきんっ、という大きな音を立てて両方のハサミがへし折れてしまった。

サソリは緑色の体液をまき散らしながらも、毒針を突き刺そうと尻尾を振り上げる。

流石に喰らうとまずいので、大きく後ろに飛んで躱したのだが、その着地点目掛けて残りの2匹が走り込んできた。

「ストーンウォール!」

俺はサソリの進路に土魔法で壁を召喚する。

壁との距離が短かった方のサソリは、その壁に激突してダメージ受けていたようだが、もう片方のサソリは壁との間に距離があったため、壁を飛び越えて俺めがけて飛びついてきた。

「せいっ!」

俺は気合とともに、押しつぶそうとしてくるサソリ目掛けて剣を振るった。

予想外な事にその一撃は、ズバンッ、という音を立てて、サソリの腹部を縦に切り裂き、緑色の雨を降らせた。

「こいつら、背中と違って腹部は柔らかいのか……」

そんな事を呟きながら、切り裂かれても襲いかかろうとしてくるサソリの頭部目掛けて、剣を叩きつけた。

グシャリッ、と頭部を潰すことに成功したのだが、未だにサソリは動いている。いずれ死ぬだろう、と思い、近寄らない事にして他の2匹を見ると、ハサミを潰された方は逃げ出そうとしており、もう一匹の方は俺の背後を取ろうと動いているところであった。

そこでまずは逃げ出そうとしているサソリを、土魔法で作った箱に閉じ込めて周りを固めておくことにし、もう一匹を先に始末することにした。

背後を取ろうとしていたサソリは、俺と目が合うと背後を取るのをやめて襲いかかってきた。

このサソリは他の2匹と違い、ハサミよりも尻尾を振り回して攻撃してくる。

おそらくは3匹の中では一番強い個体であろうが、尻尾で攻撃してきた後に隙ができていたので、そのタイミングで攻撃をすると、意外と簡単に尻尾を切り飛ばすことができた。

痛みで動きが止まったサソリに攻撃を加えていき、ハサミ、足、頭と順番に潰してけば怪我なく簡単に倒す事ができた。

その頃には最初に頭を潰した個体も息絶えており、残るは箱の中の1匹だけであった。

箱に近づくと、中から何かで叩くような音が聞こえてくる……恐らく、尻尾で箱を壊そうとしているのだろう。

このままではいずれ壊してしまいそうであったが、すぐに殺すから問題ないか、と思い、箱の上の一部に穴を開けて、中にブリザードの魔法を放った。

ブリザードを放ち続けることおよそ5分、完全に凍りついたサソリが出来上がった。

サソリを鑑定してみると、アーススコルピオ、Bランクと目的のランクの魔物であった。

とりあえず他のサソリと一緒にバッグに入れておいてジャンヌ達の所へと戻ると、そこには唖然とした表情のジャンヌとアウラが立っている。

ジャンヌ達の所には魔物が来なかったようだが、未だに周囲には十数匹の魔物の反応がある。

そいつらがどう動くか分からないが、とりあえずは先に進んでみることにした。

改めてこの空間を見てみると、直径200mくらいの大きさのドーム型になっており、天井までの高さは20mくらいありそうだ。

ソロモンはダンジョンにしては珍しく、自由に飛びまわることができる空間なので、少しハシャギぎみに遊び回っている。

その後、警戒しながら進んだが、反応にあった魔物達の襲撃はなく、無事に通り過ぎることができた。

「とりあえず一旦休憩をして、近くのワープゾーンを探して地上に戻ろう」

俺はいつも通りに休憩所を作り、ベッドとテーブルセットを取り出して、お茶の準備をアウラに頼んだ。

お茶が出るまでの間に、俺はある食品のレシピを考えてみたが……

「ダメだ……どう考えても、ラーメンの麺とカレーのルーの材料が思い浮かばない……」

正確には、麺に加える『カン水』とカレーの香辛料の組み合わせだ。

うどんの麺なら前世で作ったことがあるが、ラーメンだと作るよりも買ってくる方が楽だったので自作したことがなく、大まかな作り方と材料しか知らない。

カレーの方はもっと深刻だ。なにせ前世では非常に優秀な、カレー粉やカレールー、おまけにレトルトまで簡単に手に入ったので、材料に使う香辛料などは数種類しか知らないのだ。

「だが、諦めたくはない!王都に行けば何か手がかりがあるかも……」

王都に行けば、この国の中心と言われるくらいの都市であるから、何か似たような料理かもしくはそのものがあるかも知れないと思い、セイゲンで再現をするのはやめることにした……そんな時間もないしね。

丁度結論を出したところで、アウラがお茶を並べ始めたので、ついでにお菓子の残りを出して、ティータイムに洒落込むことにした……場所がおかしいのは気にしない方針で……

「テンマ、さっき何を考えていたの?」

幾分なれたようだが、まだまだぎこちない感じのジャンヌがそう聞いてきたので、ジャンヌとアウラにラーメンとカレーに似た料理を知らないか聞いてみることにした。

「そういった料理は私は知らないわ……アウラは?」

「カン水とやらは聞いた事がありませんが、その……カレー?という料理のように、何種類もの香辛料を使った料理があるというのは昔聞いたことがあります。中には、テンマ様の思っている料理と同じものがあるかもしれません」

と少し自信なさげに教えてくれた。

今は香辛料を使った料理がある、というだけでもありがたい情報だ。

麺についても同様で、パスタの麺くらいしか思いつかなかったらしい。

先は長いだろうけど、いつか実現してやる、そう心に決めた。

その後、近くで見つけたワープゾーンで外に出て、今度は秘密基地まで飛んでいき、ゴーレムの制作に取り掛かる事にした。

まず、アーススコルピオの解体からだ。どこがどう使えるか分からないが、このサソリの甲は強度が高そうなので剥いで保管しておくのがいいだろう。

毒は何かに使えるかもしれないから、なるべく瓶に集めておけばいずれ使うことがあるだろう。

肉に関しては最初は食べてみるか?と思ったが、実際に解体してみても食べれるかわからなかったので、今回は焼却処分とした。

このサソリの魔核はおよそ5cm程の大きさで、そのうちの一つは運悪く割れていた。

だがこの魔核の色は黒真珠を思わせるような輝きで、宝石と言われても信じてしまいそうであった。

今回の新型ゴーレムの作り方は、2つの作り方のいいとこ取りを狙ってみるつもりだ。

つまり、魔核と金属を組み合わせ、さらにその両方に魔法陣を刻んでみようというものである。

デザインとしては首飾りを予定しており、チェーンの部分や金具は専門店で買ってきており、その時に参考にする首飾りも見てきた。

今回のゴーレム作りでは、魔核に魂の、金属に肉体のイメージで魔法陣を刻み、それぞれの魔法陣の一部には二つをつなぎ合わせる仕掛けを施すつもりだ。

魔核にはつなぎ合わせる為の仕掛けと魔力回路を細かく魔法陣に刻み、ある程度は周囲から魔力を吸収できるようにした。

金属の方にはミスリルを使い、熱いうちに魔法陣を刻んでいく。こちらは時間との勝負になり、火魔法で温度が下がりにくくして作業をしたが、何度か失敗をしてしまった。

失敗するたびに銀を混ぜてやり直していたので、二つ作るつもりだったのが、時間が足りずにひとつしかできなかった。

ちなみに、金属に魔法陣には、体の材質には土、石、鉄にして、形はアーススコルピオそっくりのサソリにした。これは、この形が魔核と相性がいいかも、と思ったのと、実際に戦ってみて、サソリが攻防に優れ、なかなかの速度を持っていたので、それに触発されたためだ。

今日のところはおよそ5時間で、魔核2個と装飾品の台座型が1個の魔法陣が完成した。残りと調整と試運転は明日する事になった。

部屋に戻ると、部屋の前にエイミィといーちゃんしーちゃんがいたので、今後の事を話した。

「えっ、先生、ここを出て行くんですか!」

と驚いていたが、

「ここを完全に引き払うわけじゃないんだ。王都に行くけど、こっちに戻ってくる予定だし……それで相談なんだけど、前払いしておくから半年ほどこの部屋をキープしといて欲しいんだ」

まだダンジョンを攻略したいので、部屋の確保だけはしておきたかったのだ。

「お母さん達に聞いてきます!」

そう言ってエイミィは家に走っていった。

いーちゃんとしーちゃんは、シロウマルとソロモンにじゃれついていたのでここに残っている。

しばらくして、エイミィが母親のカリナを連れて戻ってきた。

「半年分を先払いされたいんですか?」

とカリナが聞いてきたので、まだセイゲンのダンジョンに挑戦したいので、部屋の確保をしておきたい事や、ジャンヌの親戚が王都にいるが反りが合わないため、いざという時の避難場所にしたい事などを話した。

「事情は分かりましたが、半年分を一括ですと四万二千Gになりますけど……」

「これでいいですか」

そう言って、マジックバッグよりお金を取り出して渡した。

「……そう言えば、テンマさんは凄腕の冒険者でしたね。失礼しました」

カリナは家から持ってきていた契約書を取り出して、受け取ったお金を確かめてから色々と書き込み、俺に渡してきた。

俺は契約書にさっと目を通してからサインを書き、カリナに返した。

「はい、確認しました。では、今の契約期間が切れた時から半年間キープしておきます。こちらに帰ってきた時には一言知らせてください」

カリナはそう言って頭を下げ、家に戻っていった。エイミィはシロウマルを撫でながら、

「何だか寂しくなるね……」

と言っていたが、絶対にまた戻ってくるから、と約束した。

「ああ、そうだ……エイミィ、俺達がいない間、何日か置きに部屋の空気の入れ替えをしておいてくれ。これは依頼だ。報酬はこれまでのツケで」

そう言うとエイミィは、

「はい!分かりました、先生!」

と挙手をしながら承諾してくれた。

部屋に入る直前に、

「あっ、今日の夕飯の買い物を忘れてました!」

とアウラが叫んだ。マジックバッグにはまだ材料があったはずだが、アウラが言うには、

「今日はいつもの商店で大安売りの日です!」

と時間を気にしながら言っているので、何か残っているかもしれないとの事で、皆で買い物に出かけた。

その商店は、以前にも俺が買い物をしたジェイ商会の系列店で、中では人……というか、主婦で溢れていた。

「では、行ってまいります!」

流石に中に入る気にはなれなかったので、外で待つ事にしてシロウマルの相手をしていると、

「おや?そこにいるのは、テンマさんではありませんか?」

と聞いたことのある声に名前を呼ばれたので振り返ると、

「ジェイマンさん?」

そこには以前、盗賊に襲われていたところを助けた奴隷商人が立っていた。

「やはりそうでしたか!見覚えのある狼だと思ったんですよ!」

そう笑っていたが、なぜここにいるのか不思議だったので聞くと、

「この店は私の兄弟がやっている系列店なんですよ。ああ、丁度きました。紹介します、弟のジェイクです」

とジェイマンにどことなく似た男を紹介された。ジェイクと呼ばれた男は俺を見た後、何かに気づいたようで、ジェイマンと軽く話してから自己紹介をしてくれた。

「初めまして、私はジェイマンの弟のジェイクです。テンマさんのお噂は聞いております。今後共ご贔屓に」

と紹介したところで、ジェイマンが噂についてジェイクに聞き、ソロモンのことやサモンス侯爵との事を聞いて、目を丸くしていた。

そのことで俺に話をしようとした時、

「おい、どうでもいいが、俺の事は放ったらかしか?」

とジェイクの後ろにいた男が話に加わってきた。

「あっ、すいません、親方。テンマさん、こちら鍛冶師のガンツ親方です。親方はこの街一の鍛冶師と言われているお方でなんですよ」

そう紹介された親方は、よく見ると、背が低くいが筋骨隆々といった感じで、顔にはもさっとしたヒゲを生やしている、いわゆるドワーフと言われる種族の男だった。

「初めまして、テンマといいます」

「おお、噂は聞いているぞ!俺はガンツだ、よろしくな!」

そう言って手を差し出してきたので握手をすると、親方は俺の腕に装着されている手甲を見て、

「おい、これはお前が作ったのか?」

と急に低い声になって聞いてきたので、そうです、と答えると、

「お前は防具を馬鹿にしているのか!こんな粗末な作りにしやがって、せっかくのミスリルが泣いているぞ!」

と大声で怒鳴り始めた。あまりの大声に、店の中にいた客までもが外に出てきたが、その騒ぎの中心が冒険者とドワーフだったので、いつものことか、みたいな感じで戻っていった。

「そ、そんなにひどいですか……」

そう気圧されながら聞いてみると、

「まず、バランスが悪い。そして、サイズがあっていない。さらに、接続部に問題がある。さらに表面加工が拙い」

とぱっと見でダメ出しをしてきた。他はともかく、サイズはあっているが、と言うと、

「お前は、なまじ実力が高いために、そこらの雑魚ではそんなに気にならなかったんだろう。ミスリルの強度が高いのもあるが、弱い相手ばかりで自分でも知らないうちに妥協したんだろう」

「はぁ、そうなんですか……」

「明日、俺の工房に来い!一日で手直ししてやる!」

と有無を言わせぬ迫力で、自分の工房場所を書いた地図を俺の手に握らせて、親方は帰っていった。

「いや~怒鳴られたのは災難ですけど、テンマさんは運がいいですよ。ガンツ親方は気に入った者しか相手にしませんからね……初対面であそこまで言われるのは珍しいですよ」

そうジェイクは言うが、信用して良いのかが分からない。

その考えを読んだのか、

「あの親方は信用できますよ。なにせ気に入らなければ、貴族ですら敵に回すほどの頑固者ですからね」

最も、それ以上に味方が多いですけど、との事だ。

ジェイマンの弟がそこまで言うなら、一度訪ねてみてもいいだろう。

その後はたわいもない話をしながら、二人がソロモンを見たがったので呼ぶと、警戒しながらバッグから出てきてシロウマルの背中に移動した。

二人共初めて見るドラゴンに感動していたが、ソロモンが触られるのを嫌がったのにはがっかりしたようだ。

「テンマ様、買い物が終わりました」

丁度アウラとジャンヌが買い物を終わらせて戻ってきたので、ジェイマン達に挨拶をして、その場を去る事にした。

帰る途中で明日の予定を変更して、ドワーフの工房に行くことにした、と伝え二人の装備も相談に乗ってもらえるかも、と思ったので、同行させることにした。

ちなみに買った物は、アウラにあずけてあるマジックバッグに入れてあるので、荷物持ちをする、などと言うことは無かった。

次の日、朝早くからガンツ親方の工房を訪ねてみる事にした。

場所は東地区の中心部あたり、部屋から歩いて1時間ちょっとかかるくらいの場所にあり、馬車などの交通手段は無い。

東地区に近づくに連れて、朝だというのにかなり騒がしい音が聞こえてくる。

丁度俺達が通っている道沿いには鍛冶屋の工房が多いようで、金属を叩く音や炉の熱気があちらこちらから溢れている。

東地区に入って20分ほどで親方の工房が見えてきたが、

「……本当にここか?」

「ここみたいだけど……」

「地図ではここになっていますね……」

と首をかしげたくなるくらいの普通の家だ。もっと頑丈な作りで、中から金属を叩く音が響いてくるような工房をイメージしていた俺達は、地図が間違っているんじゃないか?と疑ってしまった。

念の為、探索で中を調べると、昨日のガンツ親方と数人の反応があったので、思い切って扉を開けると、

「何やってんだっ!炉の温度が下がってきてるぞっ!」

「お前は鉄の叩き方が一定になっていない!」

「バカ野郎!最後の工程で気を抜いてどうする!全部台無しにするつもりかっ!」

「「「すいません、親方!」」」

と表からは信じられないくらいの、大きな怒鳴り声が響いていた。

「おう、テンマじゃないか!さっさとお前の防具を出しやがれ!」

こちらに気づいた親方が、汗をぬぐいながら手招きをする。

「見れば見るほど荒い作りだな!そんなんじゃ一流の鍛冶師にはなれんぞ!」

「いや、俺は冒険者で、それは冒険の合間に作ったものなんだけど……」

と言うと、親方は動きを止めて、

「なにぃ!お前素人か!道理で雑なはずだ!」

と驚いたような顔を見せた後、大声で笑い始めた。

どうやらこの親方、俺を鍛冶師志望と勘違いしたそうだ。何故勘違いしたか聞くと、装備している金属製の物は造りが拙いことから自作だと分かり、さらにミスリルを加工する技術を持っていたので、身内か近しい者に鍛冶師がいて教わったのだろう、と考え、冒険者でミスリルの加工法を知り、自作する者は鍛冶師見習いくらいだろうと結論づけたそうだ。

「おい、お前ら!ちょっと来い!」

親方は弟子のような3人のドワーフを呼び付け、俺の装備を見せた。

「お前らの中で、これを作る方法を知っている奴はいるか!」

そう親方は弟子たちに聞くが、その弟子達は一様に首を横に振る。

「素人の……それも鍛冶師とは関係のない子供も知っているのに、お前らは何を学んでるんだ!」

と一喝をした。弟子達はその迫力に驚き身を縮こませたが、

「まあいい。今日は機嫌がいいから、特別にお前らにも鍛錬方法を見せてやる!」

と言って、弟子達を連れて奥の方に歩き出したが、

「何をしている?お前達も来ないか」

と俺達にも声をかけて、再度奥に進んでいった。

「……とりあえず、ついて行ってみよう……」

俺の言葉にジャンヌとアウラも頷き、俺の後について奥に歩き出した。

奥の部屋には先程の部屋にあった道具よりも、さらに使い込まれた感じの道具ばかりが並んでいて、その道具は普通のものよりも大きいようだった。

「よしっ、じゃあ始めるか!おい、テンマとか言ったな。まずはお前の腕のサイズからだ」

そう言うと親方は俺の腕を触り始め、その大きさと形を丹念に調べ始めた。

「だいぶ手直しをすることになるが、まあ、形はできているから、三~四時間あれば完成するだろう」

と言って、下地を外してバラした手甲を熱し始めた。

真っ赤になるまで手甲を熱すると、今度は銀が液体状になるまで溶かしたものに、手甲を漬け込んでから叩いて鍛え直し始めた。

流石に親方の手際はよく、熱しては叩いて、冷めてきたらまた熱して銀に漬け込み、また叩く、といった具合に一時間半程繰り返していき、

「今度は反対の手甲だ!」

と休憩もとらずに続けて作業に入った。

こちらも先ほどと同じ手順で鍛えていき、一時間程で完成させた。

「後は表面を磨いて組み合わせれば完成だ!」

と言って表面を磨きながらすすを落としていく、

「ああ、他にお前が作った物がまだあるのなら、そこのテーブルの上に並べておけ!」

そう言うので、これまでに作った小烏丸や、ジャンヌとアウラの手甲などを置いていく。

それらを横目に見ながら親方は、

「おいっ、お前ら!表面を磨くのだけでもやってみろ!」

と弟子にミスリルの手甲を渡して、テーブルの方にやってきた。

「ほう、これは珍しい形の剣だな……作りはまずまずか……」

と小烏丸を鞘から抜き出して、その出来を見ている。

そんな親方を見て、俺は知らないうちに緊張していることに気がついた。

「まあ、手甲に比べたら出来はいいほうだな……だが叩き方が甘い!」

と怒られた。

親方はそう言うと、小烏丸を熱して叩き始めた。

「見たことの無い形だが、剣の基本は同じはずだ!」

と形を崩すことなく鍛え直していき、

「ほれ、完成だ」

これもわずか一時間足らずで鍛え直した。

小烏丸を磨いて刃を研いでいくと、何だか前よりも刀身の色が濃くなったようだ。その事を親方に聞くと、

「その剣の素材は龍が持つ金属だろ?あの手の金属はしっかりと鍛えてやると、色が濃縮される感じで濃くなっていくんだよ!」

と豪快に笑っていた。そして魔鉄の手甲を持って、

「これは嬢ちゃん達のやつか?これも鍛え直してやるが、流石に今日は無理だ。明日また来い!」

と言って渡してきたのでバッグに入れ、代金を払おうとすると、

「俺が勝手にやったのに、金なんか取れるか!」

と言うが、流石にそんなわけには行かない、と押し問答する羽目になってしまった。

最終的には、金はいらん、と譲らないので、ミスリル三kgと銀を十kgで強引に支払った。

ミスリル三kgは流石に多いと言われたが、勉強代とジャンヌ達の手甲代も込で、と言うと、納得して引き下がった……その顔が僅かににやけていたので、鍛冶師としては自由にミスリルを扱うことが出来るのが嬉しいのかもしれない。

ミスリルを見ながら、何を作ろうか、と呟きながら考え込む親方に礼を言って、工房を後にした。

ちなみに、ジャンヌとアウラは流石に工房の中が暑かったのか、ほとんど客間の方に避難して、時折、飲み物などを持って来るだけであった。