軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第3章-15 運命の再会?

そいつとの再会は突然の事だった。俺が会いたいと熱望していたものと、やっとの事で会うことができた。

そいつはある店の前に、静かに佇んでいた。その姿は、まるで聖人を描いた絵画のように神々しく見えた。

気づいた時、俺はそいつの前に立ち見つめ、撫でてから……

「おばちゃん!この米もっとないの!」

10kg程の麻袋に入った米を、店のおばちゃんに指さしながら聞いた。

この米は、この世界でこれまでに見たことのある、インディカ米では無く。前世で毎日のように食べていた、ジャポニカ米によく似ている。

「奥にまだ50kgはあるよ。あとどれくらい欲しいんだい?」

そうおばちゃんは聞いてくるが、そんなもの決まっている……

「全部!」

元日本人の俺にとって、ジャポニカ米はいくらあってもいいものだ!

おばちゃんは驚いていたが、在庫が全て捌けるのは嬉しいのだろう。急いで奥にいる従業員に声をかけて、手に持っている物と同じような麻袋を5つ持ってきた。

合計で60kg、金額にして1800Gであったが、大量買いしたからか、おばちゃんが100G値引きしてくれた。

こんなにいっぺんに買っていく奴は珍しいのだろう。おばちゃんは笑っていた。

会計を済ませた時に聞いたのだが、この米は北の一部の地域で栽培されているもので、インディカ米に比べて流通が少なく、また粘りが強いのであまり人気が無いそうで、今回はたまたま知り合いの商人に頼まれて購入したのだが、売れないのでどうしようか悩んでいたところだったそうだ。

おばちゃんに手を振られながら、 俺達(・・) は店を後にした……実は今はダンジョンの帰りなのだ。

俺の突然の行動に、ジャンヌとアウラは驚いていたようで、一言も喋らなかっただけである。

「テンマ様、こんなにお米を買ってどうするのです……私は、この種類のお米を料理したことがないんですけど……」

アウラは自分が調理させられると思っているようで、不安そうに聞いてくるが、

「大丈夫、これは俺が料理するから!」

この記念すべき出会いに、何人たりとも邪魔などさせない!と俺は心に決めていたので、アウラにも手出しはさせないつもりだ。

しかし、米を買ってからの俺の足取りは思っていた以上に軽かったようで、後ろについて来ていたジャンヌとアウラは、少し息を切らせていた。

俺ははやる気持ちを抑え、意識して速度を落とす事にした。

それからまもなく部屋についた俺は、バッグの奥底より土鍋を取り出した。

これはククリ村にいた時に、みんなで鍋を食べる為に自作した一品で、ちゃんと蓋もついている。

米と言ったら羽釜で炊くイメージがあるが、俺は炊いたことがないし、羽釜もないので土鍋で代用することにした。

まず、米を研いで水につけておく、三十分後に水から引き上げて土鍋に米を入れ、同量の水を注いで米を平にならす。

次にピザ窯に手を加えて、土鍋をセットできる様にし、魔法で断続的に火をおこす。

初めは強火でグツグツと沸騰するまで加熱し、沸騰すると弱火にして音がしなくなるまで加熱し、その後火から下ろして蒸らしておく……これで完成だ!

まずは炊いた米その物の味を確かめてみる……

「うまい……」

懐かしい味が口に広がる。おそらくは前世のものより、米の質は下であろう。だが、そんな事は関係ない……いや、気にならない!なぜなら、前世と同じようなごはんを食べている、という事が第一であり、味は二の次になっている。

俺の食べているごはんを一番気にしていたのは、意外なことにアウラだ。

「テンマ様、一口よろしいですか?」

ジャンヌとアウラは俺とは違う夕食を食べている。それはアウラが用意したもので、パンとスープに煮込んだ肉が並んでいた。

最近ではジャンヌとアウラから余計な遠慮がなくなってきており、こちらも変に気を使うことがなくなってきていたので、一緒に過ごして苦痛が無いようになってきていた。

「ほい」

俺は皿ごと(茶碗が無いので皿に盛り付けている)アウラに渡した。アウラは戸惑いながらも、ごはんを口にして……

「美味しい……」

と驚いていた。もしかしたら、米をこんなふうに炊く事はこの世界では珍しいのかもしれない。

しかも、この炊き方は前世で学んだ炊き方で、美味しく炊けていると自画自賛しているくらいだ。

俺とアウラに触発されたのか、ジャンヌも興味を示したようで、お皿をこちらに寄こしてくる。

結局、炊いたごはんは足らず、追加で炊くことにした。

シロウマル達は最初は興味を示していたが、一口食べてその熱さに驚き、欲しがるのを止めた。

これからも、この米を見かけたら買い占める勢いで集めることにしよう!

なにせ、マジックバッグがあれば腐る心配が無く、今の俺のバッグなら1~2tあったところで難なく収納可能である。

久々のごはんの味を堪能して、その夜は極楽気分で布団に潜るのだった。

次の日もダンジョン攻略の続きだ。開始場所は十一階層からである。

前日にG達の巣を破壊したので、そうそう会うことはないだろう、と二人を説得して攻略を開始させる。

開始三十分後、予想通り今のところはGの姿を見ていない。

更に、Gの大群を見た後だからであろうか、二人はイモムシどころか蜘蛛やムカデにヤスデ、といった魔物が相手でも一歩も引かなかった。

そのすぐ後に階段を発見し、下の階を目指した。

十二階層……バッタや蜘蛛が多いが、二人は魔法を使いつつ距離をとって攻撃を加えていく。初めは攻撃がはじかれたりしていたが、次第に関節や腹部などの攻撃が通りやすい所がわかってきたようで、危なげなく勝てるようになってきていた。

十三階層……ここでアウラが攻撃を食らう。二人は辺りを警戒しながら進んでいたが、相手の特性がイマイチ分かっていなかったようで、天井に張り付いていた蜘蛛にのしかかられて噛まれそうになった。

だが蜘蛛の存在に気がついていた俺が、アウラが噛まれる寸前に蹴り飛ばしたので、大きな怪我はしなかった。

虫型は天井にも張り付いている事があるから注意するように、と教え攻略を再開させる。

十四階層……今度はヤスデが天井から襲ってきたが、先程の注意通りに天井も警戒していた二人は、これを難なく避けて、ジャンヌがカウンターを食らわせていた。

二人共、大分武器の扱いになれたようで、そんなに大きくない魔物ならば、一撃で屠ることができるようになってきた。

十五階層……二人に大分疲労の色が見え始めた。集中力が続かなくなり始めたようで、魔物の反撃を食らうことが増えてきた。途中途中で休憩を挟んできたが、そろそろ限界が近いのであろう。

すでに潜り始めて、五時間ほどが経過している。ここまで一階層につき、およそ一時間で突破している計算だ。

ここで戻ってもいいが、この近くに階段があったはずなので、二人にポーションを使わせてからもう少し進ませる。

十六階層……この階層はこれまでと様子が違うので二人共驚いていた。しかし、二人に出会った階層はもっと下の階だったので、おかしいと思い聞いてみると、どうやら二人の前の主人の子爵は道案内の冒険者に無理を言い、三十階層まで便乗してから攻略を始め、階段を降りてすぐの行き止まりで休憩中にムカデに襲われたそうだ。

それならこの場所に驚くのも無理はないだろう。しかし、その子爵もバカだったんだろう。身の程を知らずに、わざわざ 魔物(ムカデ) の餌になりにいったようなものだ。

そんな事はさておき、近くの木の根を掘り起こし、久々にシロコイモムシの採集を始めた。

ジャンヌは何をしているのか気になったようで、俺の手元を覗き込んでいたが、イモムシを見てその使い道を聞いた瞬間、俺からすごい勢いで距離をとった。

アウラはシロコイモムシが食用になることを知っていたようで、何も言わなかったが、その顔には苦笑いを浮かべていた……イモムシ、美味しいのに……

ついでにいーちゃんとしーちゃんの分も確保して、今日は終了にした。

その夜、イモムシ料理を久々に堪能したのだが、ジャンヌの拒否反応が強く、その後しばらく口を聞いてくれなかった。

アウラは料理をする身として興味があったようで、スープを恐る恐る口にして、その美味しさに驚いていたが、バター焼きは無理だった。ジャンヌは、アウラがイモムシ料理を口にしたことに驚愕していた。

エイミィのところの雛達は、最近では体も大きくなり、イモムシをすり下ろさなくても食べられるようになったそうで、エイミィの精神的負担が減ったそうだ。

ちなみに、エイミィにイモムシや魔核をあげる代償に、俺の部屋の掃除などをやってもらっていたが、アウラが来てからはその必要がなくなったので、現在はツケになっている……本当は代金などいらないのだが、世間体もあるので、弟子だからツケで、という事にしている。

イモムシでアウラとの距離が縮まったように感じたが、逆にジャンヌとは距離が開いたように感じた。

うまくいかないものだ、と思いながら風呂の準備をする事にした……ちなみに、今のところはお風呂関連でラッキースケベ的なイベントは起きていない……というより起こすつもりはない!

そんな事を考えていたのが悪かったのであろうか……遂にお風呂のイベントが起こってしまった……まあ、被害者は俺なんだけどな!

珍しく最初に入ろうとしたら、俺が居る事に気がついていなかったジャンヌが、馬車に入ってきてしまい、バッチリと俺の息子をロックオンしました……馬車の真ん中で素っ裸になっていた俺にも非はある……

だがしかし、悲鳴を上げてまで、アウラを呼ばなくてもいいではないか!

そのせいで、アウラとエイミィまで馬車に乱入してきたぞ!

まあ、その時には風呂場に身を隠したが、その後、エイミィの誤解を解くのに苦労した……

最終的にはアウラが説明してくれたが、それまでは精神的なダメージがすごかった……

ちなみに、エイミィは俺にイモムシの礼を言いに来た時にジャンヌの声を聞いたので、反射的にアウラの後を追ったそうだ。

しかし、ジャンヌよ……君、悲鳴をあげながらも、しっかりと俺の息子から目を離さなかったね……武士の情けで追求はしないが、今後は色々と気をつけようと誓った夜だった。

次の日の朝、本日もダンジョン攻略なのだが……

「ジャンヌ、おはよ……」

ジャンヌに声をかけた瞬間に、俺の目の前から消えた……いや、布団にもぐっただけなんだけどね。

その後も、折を見てジャンヌに話しかけようとするが、アウラの後ろに隠れたり、シロウマルの後ろに隠れたり、ソロモンで顔を隠したり……って、ソロモンじゃ体は隠せてませんよ、ジャンヌさん……

てな具合に、ジャンヌから避けられ続けている。

それはダンジョンに潜っていても同じだ。アウラに相談しようにも、

「ジャンヌ……可愛いですね」

とにこやかな笑みを浮かべながら、俺の相談には乗ってくれなかった……アウラはこの状態を楽しんでいるのか、時折、俺とジャンヌを見比べては微笑んでいた。

頼みの綱が機能しないまま、ダンジョン攻略は続いていく……

十一階層では、Gの襲撃を警戒しながら進んだが、昨日でほとんどを駆除できたのか、今のところはその影すら見えない。

そうなると、ジャンヌとアウラはいつもの調子を取り戻し、攻略速度が上がっていった。

二人の実力は、出会った頃よりもかなり上がっており、武器での強化と魔法技能の上達により、おそらくはCランクの冒険者に匹敵するであろう。

ただし、正面から魔法有りで戦った場合で、尚且つ戦闘行為に限ってではあるが、それを差し引いてもDランクの冒険者として、今からでもやっていけそうである。

十二階層でもGは見当たらず、二人は(俺もだけど)明らかに安堵していた。

安堵した、と言っても、以前のように周囲に気を配るのを忘れてはいない。現に、二人の真上から、蜘蛛型の魔物が襲いかかろうとしたが、二人は難なく避けてこれを迎撃した。

ちなみに、以前食べた蜘蛛だったので、死体は俺が責任を持って回収しました。

その後、時間はかかったが、十三・十四・十五階層を突破することが出来ていたが、

「ジャンヌ、そろそろ休憩に……」

と声をかけると、相変わらずアウラの後ろに隠れてしまう……

そしてアウラは相変わらず、あらあら、と微笑んでいる……

ここまで来るといい加減、俺の心が折れるぞ……と、そんな感じの念を送ってみると、アウラの後ろからこちらを見ているジャンヌと目があった……が、またも隠れてしまう。心なしか顔が赤いようにも見えたが、気にする余裕はなかった。

もういいや、と半ば諦め気分で休憩場所を作っていく。

いつも通りに行き止まりで壁を造り、中で新調した休憩用のベッドを取り出して置くと、ジャンヌが急いで二つのベッドの距離を広げだした……流石に凹む……

その様子を見て、アウラがジャンヌを隅の方に引っ張って行き、話し合いを始めた。

話し合いの結果がどうなったのか分からないが、ジャンヌは顔を赤くしており、アウラはいつも以上にニヤついていた。

二人共、俺に話の内容を教えてくれる気は無いようなので、こちらも聞かないようにして食事をする事にした。

今日も屋台で売られていたものばかりだが、なかなかに美味しかった。

食事の後は、ジャンヌに俺の血を混ぜた薬を飲ませて休憩に入った……薬はジャンヌだけだと、アウラが怪しむかも知れないので、アウラ用に同じ色に着色したモノを渡して飲ませる事にした。

二人には体力回復を早める薬、と言って飲ませている。他にも、魔力回復を早める薬や抵抗力を高める薬の三種類作っており、その通りの効果もあるので嘘は言っていない。

しばし休憩の後、十六階層の残りを攻略し、十七・十八階層を突破したところで今日の攻略は終了だ。

ダンジョンの外に出ると、俺達を見てひそひそ話をする者が何人もいることに気がついた。

中には俺達を指で差しながら話している者もいて、流石に気になりだしたが、少しでも近づくと俺達から距離を取るので確かめようが無かった。唯一分かっていることは、俺達を馬鹿にしている、というよりも、俺達に注目している、といった感じなので、今のところは厄介事に巻き込まれる心配は少ないと思う。

そのままギルドに向かうと、丁度ジン達と鉢合わせたのでさっきの事を話してみると、

「何だ、知らないのか!お前達は、今注目の若手パーティーにして、テンマはこの街最強の冒険者、とか言って話題になっているぞ」

ジンの言葉に俺は驚きを隠せなかった。注目の若手パーティーというのはなんとなく分かるが、なぜ俺が最強だと噂が流れているのかが分からないのだ。

確かにジャンヌとアウラが入る前から、ソロで潜ったりドラゴンを従えたりで話題になっていたようだが、一度も最強だとかいう噂は流れなかったからだ。

その様子を見たジン達が、

「そりゃテンマが、貴族の息子をボコったり、オーガを怯えさせたりしたからだろう」

「それに加えて、テンマさんが、ジンさんを気絶させたり、ジンさんを土に埋めたりしていたのと、ジンさんが、テンマが怖い、テンマには逆らわない、テンマを相手にして死にたくない、とかよく酒場で愚痴っていましたから」

「お前が原因か!」

リーナの密告で噂を拡散させた犯人が判明した……なので、いつも通りジンにスタンを食らわせようとしたら、

「さらばだ!」

と、ジンはこの場から全力で逃げだした。

あまりの行動の速さに多少の驚きはあったが、ジンが走り出すと共に、シロウマルが追いかけたので、五十mもいかないうちに、ジンはシロウマルに押しつぶされていた……余談ではあるが、この光景を見ていた者から、テンマからは逃れられない、との新たな噂が広がったそうだ。

「まあまあ、そのへんにしときなよ。でも最近のテンマ達は好調じゃないか。女の子を二人も連れているのに、大した怪我をせず早いペースで潜り直しているって評判になっているよ」

メナスは、女の子を二人、というところを強調しながらニヤついていたが、俺は表情を変えずに、

「そうだったのか……」

と無視をした。どことなくつまらなそうな顔をするメナスをよそに、今度はガラットが、

「そう言えばテンマ達は武闘大会に参加するのか?」

という話を振ってきたが、

「なんだそれ、初耳なんだが……」

聞き覚えのない事だったが名前だけで想像がつく。そんな俺をガラットは意外そうに見ていたが、

「まあこの頃のテンマは、そんなのに興味を持つ暇がなかっただろうからね。知らなくてもおかしくないか」

とのメナスの言葉に、ああそうか!と納得していた。

「何なんだ、その武闘大会って?」

メナス達に素直に聞いてみると、なぜかリーナが横から、

「正確には、王家主催の、戦勝祈願御前武闘祭、ですね」

そう教えてくれるのはいいが、やけに仰々しい名前であるとしか分からない。

見かねたメナスが、

「言いにくい名前だから、皆『武闘大会』って言っているのさ。これは昔、まだこの国が小さかった頃に、景気づけの為に行っていた騎士達による模擬戦が形を変えて、現在では娯楽の一種になったんだよ。でも娯楽と言っても、この大会は王家主催だけあって実力者が揃いやすく、大会上位入賞者の中には爵位を授かったり、騎士に任命されたりすることが多いから、参加人数も毎年千を超える大きな大会になるんだよ」

とわかりやすく説明をしてくれた。

「さらにこの大会では、個人、ペア、チームと三部門に分かれているから、名前を売りたい冒険者が大勢集まるな」

とガラットも付け加えた。この場合のチームとは最大五人で戦い、補欠として一人の交代要員が認められているそうだ。

「で、テンマも参加するのかい?」

「参加は考えていないな……というか、テンマ も(・) 」

俺は言葉の一部に反応し、メナスを見ると、

「ああ、私達、暁の剣も大会に参加する予定さ!」

と胸を張ってそう言った。暁の剣は去年、おととしとチーム戦に参加しており、おととしは予選敗退、去年はリーナの加入で本戦出場を果たしたが、リーナが加入したばかりというのも有り連携が不十分で、一回戦負けだったそうだ。

ちなみに去年は、大体の参加が、個人戦は四百五十人、ペア戦は二百組、チーム戦は百チーム程であったらしい。

参加人数が軽く千人を超えているのだが、これは参加に制限が無い為、個人戦に出たものがペアやチームでも参加したからであるそうだ。

中には、ペア戦に参加した者達が、チーム戦でも同じペアの二人だけで参加した者もいるそうだ。

予選は、個人戦では何十人かのバトルロイヤル方式で行い、最後まで残った二人が本戦出場であり、最大三十二人が選出される。

ペアも同じくバトルロイヤル方式で、同じように最大三十二組を選出したそうだ。

チーム戦だけは、全チームを十六のブロックに分けて予選からトーナメント方式で戦い、各ブロックの勝利チームが本戦出場である。

本戦はトーナメント方式で、対戦相手は試合開始前にくじ引きで決まる。

ただし、個人戦に限っては、前回の大会で準決勝以上まで進んだ者のみにシード権が与えられ、予選免除で本選からの出場となる。

大会の日程は9日間あり、最初の3日でそれぞれの予選を行い、次の3日で本戦の準決勝まで、それから2日の休憩をはさんで最終日で決勝戦を行うらしい。

この大会では、公認、非公認の賭け事が行われているらしく、優勝者を当てるものや優勝から3位までを当てるもの、本選出場者を当てるものなどいろいろあるらしい。

開催はおよそ二ヶ月後、その時にオークションも行われるそうだ。

内心では行ってみようかな、と思っている。なぜなら王都に行けば、村の生き残りの話も聞けるだろうし、王様達にも俺が生きていることを知らせようかな、との考えが浮かんだからだ。

この事は今日の夜にでも、皆で話し合ってみることにした。

でも今はジャンヌとの仲を元に戻すのが優先事項かな、と思い、ジャンヌを見るが、未だに目が合うと隠れてしまう。朝よりは良くなってきているが、それでも今だに避けられているのには違いがなかった。

今日は夕食を簡単なものにし、手早く済ませてから今後の事を話し合った。

話し合ったといっても、立場上ジャンヌとアウラに拒否権がないので、王都に行く際のルートや出発の日取りなどを決めるだけであった。

その時に、知り合いが居るから会いに行く、と二人に言ったが、流石にこの国の王様が知り合いだ、とは言いづらかったので、俺と同郷の人に会いに行く、と適当にごまかした。

「あの……テンマ様、恐らく王都にはジャンヌの親戚がいます……」

とアウラが言うので、

「じゃあ、そこでお別れかな」

と二人をその知り合いに引き渡すつもりで言ったら、

「それだけは絶対に嫌です!」

ジャンヌが珍しく大声を出して反対した。

ジャンヌが大声を出した事と、奴隷の身分から解放されるのを嫌がったのに驚いていたら、ジャンヌは続けて、

「あんな男の処に行くなら死んだほうがましです!テンマ……様の奴隷の方が幸せです!」

と猛烈な嫌がり方をするので訳を聞こうとしたが、ジャンヌは話すのも嫌なようで、かわりにアウラが、

「その親戚というのは、ジャンヌの母の従姉妹の結婚相手の事で、名前はポドロ・イル・クロライド準子爵と言って、最低の男です」

ジャンヌだけでなく、アウラもそのポドロとやらを嫌っているらしく、はっきりとした嫌悪感を示していた。

アウラの話の続きでは、そのポドロとやらは、ジャンヌの家の分家筋の家に婿入りしたのに、ジャンヌの家が傾いた時には真っ先に見捨てたそうで、それ以前にも会うたびにいやらしい目でジャンヌ達を見たり、女癖がかなり悪く、愛人が十人程いるそうだ。

さらにはポドロの奥さんは、ポドロの女癖の悪さで精神的に弱っていて、その上あっさりと主家を見捨てた事が原因でほとんど寝たきり状態になってしまったそうだ。

「そんな訳で王都に行くのはかまいませんが、私達をあの男に渡すのだけはご勘弁ください」

とアウラは頭を下げて懇願してきた。俺としても、流石にそんな男に二人を引き渡す訳には行かないと思い、何があっても引き渡さないとはっきりと了承した。

そんな俺を見てジャンヌが、

「あの……テンマ、様……」

「テンマでいいぞ」

と呼び捨てでいいと言うと、ジャンヌはしばらく考えてから、

「じゃあ、テンマ……その、ありがとう……」

そう言って、恥ずかしそうにしていた。

アウラはジャンヌが俺を呼び捨てにしたのを注意しようとしたが、俺が自分で許可したことだから、と納得させた。

一応アウラにも呼び捨てでいいと言ってみたが、

「私は奴隷である前にメイドですから、主人にそのような無礼な事は出来ません」

と断られてしまった……

そんな感じで話し合った結果、早めに宿を確保する為に今日から一週間後に王都に向けて出発、武闘大会は今のところ出場する予定なし、ポドロには二人を引き渡さない、いざという時は全力でセイゲンまで逃げて良い、などを決めた。

王都に行く時には、二人に特製のゴーレムの核を護衛替わりに持たせるとも約束をした。

二人はかなり安心したようで、特にジャンヌは布団に入って早々に寝付いたようだ。

明日からはダンジョン攻略に加えて、王都行きの準備も始めるので早く寝るのはいい事だと思い、俺とアウラも早めに眠る事となった……それが翌朝の騒ぎにつながるとも知らずに……