軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第3章-11 蛇穴の少女達

馬車を囲むようにして、馬に乗った騎士達が移動している。

「マーリン様、もうすぐ中間地点の村に着きます。その村で今日の宿を探し、出発は明日の午前中を予定しております」

エドガーが馬車の中にいるマーリンにそう話しかけた。

「うむ、分かった。そのようにしてくれ」

本音を言えば、マーリンは不眠不休でグンジョー市を目指したかった。しかし、そうすると騎士達や馬の体力はなんとかなるとしても、精神の方が異常をきたしてしまうのがマーリンには分かっていた為、渋々ながら了解するしかなかったのだ。

(こんなことなら、わし一人で強引にでも行ったほうが早かったのう……)

アレックスから直々に騎士達をお供に付けてもらったので、アレックスの王としての面目をつぶす訳にはいかない、と遠慮したのが間違いだったかも、と思いはしたが、いまさら言っても仕方がないことなので、心の中で思うだけに留まった。

報告から1時間程でマーリン達一行は、中間地点の村へと到着することができた。

「マーリン様、私は宿を探してきますのでしばらくお待ちください」

エドガーは村の入口付近で馬を降りて、マーリンにそう告げると、二人の騎士を連れて村の中に入っていった。

その間の指揮権はクリスに預けたので、クリスが残りの騎士達に指示を出して、周囲をそれとなく警戒させていた。

その時、村の中から一台の馬車が出てきた。丁度自分達の馬車が、道を塞いでいる形になっていたので、クリスはマークに指示を出して馬車をもっと端に寄せてやり過ごすことにした。馬車がすれ違う時に、

「騎士様、私達は商人なのですが、何かご入り用の物はありませんか?」

馬車に乗っていた男が降りて声をかけて来た。急な事で少し戸惑ったクリスであったが、

「お前さん達は、どのような商品を扱っておるのじゃ?」

マーリンの言葉に反応し、さりげなくマーリンと男の間に立った。男は気づいていたようだが、特に気にせずに、

「今ある商品は、携帯食料に乾物、香辛料に酒、薬草にポーション、防具に武器、そして奴隷にございます」

ジェイマンと名乗る男は、今販売することのできる商品をスラスラと答えていく。

「ふむ、奴隷はさすがにいらんのう……クリス、ポーションの数は大丈夫かの?」

マーリンは少し考えてから、クリスに確認をした。

「まだ大分残っていますが、全体の二割は消費しています」

ポーションは各々が何本か持ち、残りをクリスが管理しており、それぞれが使った分だけその都度渡し、補充していく、といったふうになっていた。

残りの数を聞いたマーリンは、

「では、ポーションを20ほど貰おうか……もちろん相場より高かったり、品質が劣るようでは買わんぞ」

その言葉に、ジェイマンは頷きながらポーションを取り出す。そのうちの1本をマーリンは受け取り、開けて調べてみた。

「ふむ、なかなかいいポーションじゃな」

そう言って料金を払い、クリスのバッグに詰めていった。料金は相場よりも一割ほど安かったので、追加でもう10本買い取った。

「毎度ありがとうございます……では、私どもはこの辺で失礼させていただきます」

深々とお辞儀をしたジェイマンは馬車に戻り、そのままマーリン達が来た方向へと去っていった。

「マーリン様、たかだかポーションの30本ほどなのに、やけに腰の低い商人でしたね……」

クリスはジェイマンの態度に違和感を感じていたようだが、

「あやつは恐らくじゃが、クリス達が近衛だと気づいておったのじゃよ。近衛に商品を売ったというのは商人にしてみれば、一種のステータスじゃからの……自分からは言いふらしたりはせんじゃろうが」

そういうものですか、とクリスは首をひねっていたが、丁度エドガー達が戻ってきたので考えるのを止めた。

「マーリン様、丁度空きができた宿がありましたので、人数分とってきました。マーリン様と私とクリスが個室で、残りは相部屋です」

そう言って案内されたのは、ジェイマン達が泊まっていた宿で、マーリンの部屋はテンマが泊まった部屋であった……最もマーリン達は知る由もないのだが。

「よし!では今日は十分に体を休めて、また明日からグンジョー市に向かうのに、体調を万全にするのじゃぞ」

マーリンの言葉に一行は宿屋に向かっていった。

(もう少しでテンマに会うことができる!テンマ、もうすぐじいちゃんが行くからの!)

マーリン達の旅路はまだまだ続くのであった。

一方夕暮れどきのセイゲンでは、

「くそっ、どいつもこいつも、私の顔を見て笑いよって!」

裏路地を一人の少年が歩いていた。その少年の名はゲイリー、サモンス侯爵の次男でセイゲンに来て早々にテンマにちょっかいを出して大恥をかいたのだった。

ただし、確かに住人から笑われてはいたが、半分以上はゲイリーの被害妄想だった。確かにテンマにちょっかいをかけた貴族の息子、としては噂は広がっていたが、大半の人々はテンマを知っている人からは、またバカが出たか、くらいに思われ、知らない人からは、そんな奴がいたのか、くらいにしか興味が無く、また、ゲイリーの顔もあまり知られていなかった。

しかし、ゲイリーにしてみれば、自分より年下で目立つ子供に、貴族の自分が恥をかかされて、あろう事か父親にまで怒られるという不測の事態が起きた為、自分が思っているほど皆が気にしていない、という事に気が付くことができなかった。

「それもこれも あのガキ(テンマ) が悪いんだ!黙ってドラゴンを差し出していればいいものを!」

自分に、 ドラゴン(ソロモン) を眷属にするほどの力が無い事に気がつかないまま、ゲイリーはテンマへの不満を募らせていた。

だからであろう、いつの間にか自分が道に、迷っている事にゲイリーは気がつかなかった。

セイゲンは大通りを通っていけば、そう簡単に迷うことはなく、最悪大通りを中心に向かって進めばダンジョンにたどり着くため、滅多なことでは迷子になることは無い。

しかしゲイリーは、見知らぬ土地で、人を避けるために裏路地を通り、考え事をしており、頭に血が上っていた為、迷子になってしまった。

その為ゲイリーは自分が知らない内に、街の西側……つまり、スラムへと迷い込んだことに気がつかなかった。

ようやく気がついた時には、辺りは汚れた建物ばかりで、路地のいたる所にゴミが散乱しており、ゴミの影に隠れるようにしている、孤児や浮浪者を見かけるような所まで足を踏み入れていた。

「何だここは?汚らしい、こんな所にいて、変な病気でも移されてはたまったものではない」

そう言いながら、これまで進んで来たと思われる道を戻っていくが、一向に大通りに出ることができなかった。それもそのはずで、この辺りは違法な建て増しなどで、他の地区とは造りが全然違っており、ここらで長年住んでいる者くらいしか道が分からないようになっていた。

当然のように、この街に来たばかりのゲイリーに道が分かるはずなど無く、いくら進んでも大通りに出ることは無かった。

いい加減苛立っていたゲイリーは、近くに寝転んでいた男に、

「おいっ、そこのお前!俺を大通りまで連れて行け!」

命令をした。しかし、男はそんなゲイリーを一目見て下卑た笑みを浮かべた。

「へいっ、少々お待ちください」

男はそう言うと、近くにいた男に何やら耳打ちをしてからゲイリーの元に戻ってきた。

「では、案内しましょう。しかしながら、ここいらは複雑になっておりますので、少々時間がかかります」

そう言いながら、男はゲイリーの前に立って道案内を始めた。

それから20分は歩いただろうか、一向に大通りに出ない事にゲイリーが苛立ちを覚え始めた頃、

「ここを曲がったら大通りはすぐです」

男がそう言って横にずれた、ゲイリーはなんの警戒もせずに、男を押しのけるようにして角を曲がると、

「おいっ!これはどういうことだ!ただの行き止まりではないか!」

ゲイリーの目の前には、半ばゴミ置き場と化している広場があった。

ゲイリーが男の方を振り返ると、

「このガキ、本当に馬鹿だな。こんな所で見ず知らずの奴の言う事を簡単に信じて、ホイホイと後をついてくるんだからな!」

そこには案内した男とは別に、四人の男が立っていた。ゲイリーが咄嗟に腰にあった剣を抜こうとすると、

「危ねえな~、このガキ」

突然、背後から現れた男に取り押さえられてしまった。その男の後ろからは、数名の男がゴミの影から出てきた。

「離せ、この私を誰だと思っている!サモンス侯爵の次男、ゲイリー様だぞ!」

わざわざ自己紹介をしたゲイリーに、男達は大笑いをして、

「こりゃいいや!身代金でもいただこうぜ!侯爵ならいくらでも出すだろうよ!」

そう言いながらゲイリーの後頭部を殴り、気絶させてから手足を縛り、猿轡を噛ませる。

「おいっ!誰か首輪をもってこい!」

男が持ってこさせた物は、本来なら奴隷の首に嵌める物で、これを嵌められた者は所有者の言う事に逆らえなくなる奴隷の首輪だ、男はその首輪を気絶しているゲイリーに嵌めた。

もちろんこれは違法なものであり、本来なら正式な奴隷商人しか取り扱いが許されていないのだが、裏世界に生きる者達にとっては関係のないことだった。

「いい金ヅルが手に入ったことだし、誰かこいつの情報でも集めてこいっ!いいか、絶対にヘマするんじゃねえぞ!」

その言葉に何人かの男が走って行き、残った男達は何処かにゲイリーを運んでいったのだった。

地上でそんな事が起こっているとは露程にも思わない俺は、今日もダンジョン攻略に勤しんでいた。

現在は38階層を攻略中で、只今、攻略最短記録を絶賛更新中であり、俺の名前も大分知れ渡るようになってきた。

そうなると皆が不思議に思うのが、俺の冒険者ランクだ。

38階までソロ(厳密には違うが)で潜れる俺が、いつまでもCランクのままであるのに周囲の人々は興味を覚え始め、様々な憶測が飛び交う様になりだした。

曰く、テンマは国の密偵であり、あまりランクを上げずに各地を巡り、各地の有力者を密かに調べ上げて国に報告している。

曰く、テンマは魔法で創られたホムンクルスであり、若く見えるが実は数百年を生きており、外見に似合わない強さはその為である。

曰く、テンマはさる貴族の隠し子であり、あまりの強さに次期当主が危機感を覚え、テンマを放逐した為、テンマはいずれ復讐をする為に各地を巡って力を蓄えている最中なので、目立たないようにランクを上げないのだ。

などといった噂話が流れるようになった。本当に迷惑な話だ。

中でも最後の噂を聞く事が一番多く、その理由として、俺がサンガ公爵と知り合いであり、尚且つサモンス侯爵が頭を下げたので、俺は大物貴族の隠し子、又は今生陛下の隠し子では?という風に勘繰る者が噂を流したようだ。俺の記憶にある限りでは、セイゲンでサンガ公爵の名を出した事はないので、ジン達の様にグンジョー市で俺を知った者が噂を流した可能性が高い。

ちなみにその噂はジン達から聞かされたもので、一瞬俺はジン達を疑ったが、必死に首を横に振るジン達を見て犯人ではないと思う事にした。

「なんであんな噂が流れるかなぁ?」

俺はそんな噂を避けるように、ここ2~3日は長めにダンジョンに潜っている。

そんな風に考え事をしていると、

「ウゥゥ~」

シロウマルが突然唸り始め、ソロモンも警戒を強めた。

俺は動きを止めて、腰に提げていた小烏丸を抜き、周囲の気配を探った。

(確かに、何かがこちらを狙っている……場所は……)

探索で位置を探ろうとした時、俺の頭上から殺気が生まれた。

「そこかっ!」

俺は頭上に向かって小烏丸で切りつけた。小烏丸からは確かに何かを 叩きつけた(・・・・・) ような手応えを感じた。

叩きつけられた何かは、俺から少し離れたところに弾かれて、その姿を現した。そこには、

「蛇か!今の手応え……まるで、ゴムタイヤを棒で叩いたような感じだったが……」

俺が見たものは、真っ黒で大きな蛇だった。

鑑定では、ダークラバーアナコンダ、Bランク、だそうだ。今の感じでは、半端な打撃や斬撃ではダメージが通らないようだ。

現に不完全な一撃だったとは言え、小烏丸の斬撃があまり効いていないように見える。

「少し本気で行くか……」

俺は小烏丸を鞘に収めて、居合の構えをとった。ジリジリと間を詰める中、アナコンダは身を縮ませると、その次の瞬間に凄まじい勢いで矢のように飛んできた。

「ふっ」

俺は短く息を吐き、アナコンダ目掛けてカウンター気味に抜刀した。

この小烏丸は反りが少ないため思った程の速度が出なかったが、半ば強引に振り切ると、その刃はアナコンダの下顎の半分辺りから食い込み、そのままアナコンダの後頭部まで切り裂いた。

頭を切り落とされたアナコンダの体は、勢いを殺すことなく俺の背後に飛んでいき、壁にぶつかった所で勢いを無くして地面へと落ちた。そのままウネウネと動いていたが、さすがに再度襲って来ることはなかった。

「刃をちゃんと立てないと斬撃の効果は薄いか……」

そう呟いた後で俺は小烏丸を鞘に収め、アナコンダを回収した。

切り口を見ると、体の表面は厚さ5mm程のゴムのような皮膚に覆われており、その肉は綺麗なピンク色をしてぱっと見では鶏肉のように見えるが、触ってみると鶏肉より弾力があった。

しかし、不思議なのは6m程のアナコンダが上から降ってきたという事だ。これが森なら問題ないのだが、ここはダンジョンでこの場所は岩だらけなのだ。

アナコンダがいたと思われる場所をよく見てみると、そこには横穴があった。

試しに浮かんで覗き込んでみると、奥から風が流れてきているのがわかる。

そこでスラリンに頼んで様子を探ってきてもらうと、2~3分程で戻ってきた。どうやら奥の方にスペースがあるみたいだ。

そこで俺は土魔法を使って穴を広げて行き、ほふく前進で進めるくらいの大きさまで広げてから中へと入って行くことにした。

ほふく前進でスラリンの後をついて行くことおよそ5分、その先にはゴツゴツとした岩が多く存在する場所に出ることができた。

降りた辺りを見て回っていると、一箇所だけ妙な気配を感じる場所があった。

その場所は、丁度今いる所から大きな岩をはさんで反対側にある。何か気配を消しているようにも感じるので、小烏丸を抜いて、シロウマル達には待機を命じてから、足音と気配を消してゆっくりと近づいた。

岩陰から見た限りでは何も見当たらないが、気配を感じた所だけは結界のような物を感じることができた。

そこで俺はその場所に向かって、対抗魔法の『ディスペル』を唱えて切り込んだのだが、結界が解けた場所にいたのは……

「女の子……なんでこんな所に……」

二人の薄汚れた服を着ている少女だった。

片方は小柄な白髪の少女で、もう片方は汚れてはいるが金髪のようで、少女というよりは女性と言った方が正しいようだ。

二人は俺に気がつかなかったのか、急に結界を解かれて驚いていたが、我に帰った白髪の少女が近くにあったボロボロの剣をこちらに向けて睨んできた。

もう片方の女性は虚ろな目で俺を確認した後、白髪の娘を庇うように動こうとしたが衰弱しているらしく、そのまま倒れてしまった。

「待ってくれ!俺に敵対の意思は無い!」

そう言って俺は小烏丸を足元に捨てて、両手を上げた。

白髪の少女はそれでも構えを解かなかったが、

「こちらには、多数のポーションや数種類の薬を持っている!剣を収めるならそちらの女性の治療につかう分を渡そう!」

その言葉に少女は迷いを見せた後、

「ならその薬だけこちらに寄越してください!」

そう言って剣を下げた。剣から手を離すような事は無かったが、それでもいくらかは警戒を緩めたようだ。

「取り敢えずポーションと、解毒薬なんかの薬を一通り入れてある」

俺はコボルトの毛皮でポーションなどを包み、少女に向かって軽く投げた。

毛皮は少女から3mほど手前に落ちたので、俺はその場から10m近く下がって座った。ただし、万が一に備えて、シロウマル達には少女達を囲むようにして配置してある。

少女は警戒しながら毛皮の所まで俺に背を向けないようにして近づき、素早く毛皮を回収してポーションを取り出した。

少女は取り出したポーションのビンを開けて、中の液体を軽く舐めて中身を確かめてから女性に飲ませようとした。

「アウラ、飲みなさい!」

しかし女性は飲み込むだけの力がないのか、それともポーションが効かないほどに衰弱しているのかはここからでは見えないが、どう見ても回復の兆しが見えない。

「アウラ!お願いだから飲んで!」

少女はそう叫んでいるが、女性の反応は徐々に弱くなっていく。

このままでは女性が危ない、そう思った俺は即座に少女達との間合いを詰めた。

「何をするの!」

いつの間にか目の前まで来ていた俺に向かって少女が剣を振るうが、

「今はそれどころじゃないだろ!」

俺は左手の甲で剣を受け止めて遠くへと弾いた。俺の左手の甲からは血が流れたが、軽く服で拭っただけで放っておいた。

少女は腰を抜かしたかのように、地面に尻餅をついていた。

その隙に女性の様子を確かめてみると、かなり顔色が悪く、呼吸も荒い。恐らく弱い毒などで体が弱っていたところで感染症にかかったみたいで、正直このままではいつ死んでもおかしくはなかった。

「アンチドート、キュア、レジスト、アクアヒール」

俺は立て続けに魔法を使う。アンチドートで毒を消して、キュアで消毒及び回復力を上げ、レジストで抵抗力を上げ、アクアヒールで傷を癒していく。

そこまでしてようやく顔色が良くなり、呼吸も収まっていった。試しにポーションを飲ませてみると、今度は飲み込むことができたようだ。

取り敢えず一安心、と言ったところだろう。その時になって尻餅をついていた少女が起き上がり、俺から女性を奪うようにして抱き寄せた。

少女は女性の顔色が良くなった事に喜んでいたが、未だに俺に対して警戒を解いてはいなかった。

俺は少女が女性を抱き寄せたのを見て立ち上がり、バッグからベッドを取り出した。

「俺が使っていたもので悪いが、その女性を地面に寝かせるよりはいいだろう。使うといい」

そう言って少女達から離れて、シロウマル達を呼び寄せた。

近くの岩陰などから飛び出してきたシロウマル達に、少女は怯えていたが、シロウマル達には十分に言い聞かせてから伏せさせて、少女には危害を絶対に加えさせない、と約束した。

その後はシロウマル達に周囲の偵察に行かせて、俺は左手の治療をした後、料理を作り始めた。

メニューはアナコンダの肉を使ったシチューだ。

アナコンダの肉は最初に生で味見してみたところ、脂肪が少なく味は蛋白で、体が弱っている少女達にも食べられると思い、野菜などと一緒に細かくして煮込んでみた。味付けは牛乳と小麦粉でホワイトソースを作って、少し薄めにして香辛料を使わずに野菜の旨みと、ほんの少しの塩と醤油で整えて里芋(と俺が呼んでいる芋)をすりつぶしてとろみを出してみた。

ただ、それだけだと俺やシロウマルとソロモンには物足りないので、アナコンダの蒲焼とオーク肉の串焼きも追加した……なお、いつもならシロウマル達のおやつになるオークの骨は、俺の野望のためにバッグにしまいこんでおいた。

匂いに釣られたのか、シロウマル達が俺の所に戻ってきた。

その中でスラリンが俺の前に陣取り、ドサッ、と魔物の死体を吐き出した……いや、ディメンションバッグが体内にあるのは分かってはいるのだが、スラリンの行動はどうやっても、ゲ〇しているようにしか見えない。

気を取り直して獲物を見てみると、小型のダークラバーアナコンダ(2mサイズ)が一匹とコボルトが五匹、オークが一匹に角うさぎが三羽だった。取り敢えず俺のバッグに移し替えて、三匹を褒めながら餌を与えていく。

それを見ていた少女が、突如顔を赤らめてお腹を押さえていた。恐らくお腹がなったのでだろう。聞こえた訳ではないが、俺はお椀にシチューを入れて少女に近づいた。

「消化にいいように調理しているから、食べても大丈夫なはずだ」

そう言ってスプーンと一緒にお椀を差し出したが、少女は受け取ろうとしなかった。

お腹は空いているのだろうが、俺をまだ信用できない、といった感じの目で見ていた。仕方がないので近くの地面に置いてから鍋の所まで戻り、自分の食事を開始した。

一口食べて思ったのは、

(アナコンダ……うめえーー!)

だった。最初味見したときは、脂肪分が少なくて味は蛋白、くらいに思っただけだったが、煮込むと肉の繊維の間にあるゼラチン質の部分が溶けて、口に入れると肉がほどけていくのだ。さらにゼラチン質の所に隠れた旨みがあるらしく、シチューの味も良くなっていた。

俺は夢中で口の中に掻き込んで、おかわりまでしていた。当然ながらシロウマルとソロモンも、シチューの肉だけのおかわりを要求してくる……さすがの一号と二号である。

しかし、悪の親玉である俺は肉と同時に野菜も大量に入れてしまう。その時のシロウマルとソロモンのがっかりとした顔は見ていて面白かった。仕方がない、といった感じで野菜ごと食べていくが、結局は二匹とも、ペロリッ、と全部食べるのだった。

そんな様子を見ていた少女は、恐る恐るシチューを口にして行き、徐々にスプーンの速度を上げていく……どうやらお気に召したようだ。

あっという間に全て食べたようで、少し物足りなそうな顔をしていたので、鍋を持っていきおかわりをするか聞くと、少女は少し迷いながら、コクン、と恥ずかしそうに頷いた。

少女のお椀に二杯目を注いでいる最中に、

「う、う~ん……ここは……」

女性が気がついたようだった。

「アウラ、気がついたの!私がわかる?」

少女はシチューを放り出して女性に駆け寄った。女性はしばらくの間、呆然としていたが、

「ジャンヌ……ここはどこ?どうして私達はこんな所にいるの?」

と返事を返していた。