軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第3章-2 ダンジョン都市

ジェイマン達と別れて五日後、ようやくダンジョン都市についた。

ダンジョン都市・セイゲン、20年前のダンジョン発見より急速に栄えた街。人口およそ16万人で、その内ギルド関係者が5万人程を占めている。

ダンジョン都市の発展には、常に冒険者が関わっているため、冒険者のトップクラスの者達の発言力は高く、尊敬すらされている。逆に弱い冒険者は、子供からも馬鹿にされることがあり、それはセイゲンも例外ではない。

この街は周囲を塀で囲っており、出入り口は東西南北に一つずつある。出入り口には門番がいて、24時間体制で立っている。

俺が来たのは南門だ。門の周辺には、街に入るための手続き待ちの人達が100人近く待っていた。

このまま待っていては、かなり時間がかかってしまう。しかし、冒険者には裏ワザがあった。それは、

「ちょっとすいませんね。門番さん、これ冒険者ギルドのカードです」

「確認します……Cランク冒険者テンマ、で間違いありませんね。こちらにどうぞ」

周りの人達は、初めこそ順番を抜かした俺を批難していたが、門番がCランクだといった瞬間に、何も言わなくなった。むしろ歓声が上がる。

ダンジョン都市での裏ワザとは、Cランク以上の冒険者は優先的に手続きがしてもらえる、というものだ。これは、冒険者の地位が高いダンジョン都市ならではの事だろう。

その手続きも、これまでの簡単な経歴と、どんな依頼をこなした事があるかなどを簡単に聞かれるだけだ。

それらの確認が終わると、有効期限付きの市民権が与えられる。これは冒険者に税金の替わりに払わせる為の処置で、半年で1万Gが必要になる。これが払えなければ街から追放され、あまりにも悪質な場合は奴隷に落とされる。

1万Gは入場時に払わなければいけないが、払えない者はギルドで借金させられる。借金は低金利だが、踏み倒そうとすると大陸中のギルドを敵に回しかねないので、そんな事をした者はこれまでいないそうだ。

ちなみにこのような制度は、冒険者にしか適用されない。

俺はその場で1万Gを払い、証明書を貰った。

「ようこそダンジョン都市、セイゲンへ!」

その言葉を受けて、俺は人生初のダンジョン都市に足を踏み入れた。

セイゲンの街の造りは、前世の世界のパリにあるエトワール広場に似ている。

街の中心にダンジョンの入口が有り、そこから放射線状に道が伸びていて、街の規模は一番広いところでおよそ30kmくらいあり、都市としてはかなりの面積がある。

街の北側には富民層が多く住んでおり、南は庶民層が多い、西側にはスラムなどがあり治安が悪く、東は工房やその関係者が多く住んでいる。商店にしても高級店は、街の北側の方に集まっている。

そしてダンジョンに近い中心部には、騎士団の本部や冒険者向けの商店、宿屋、食事処などが集まっている。

俺はまず、ダンジョンの入口を見に行くことにした。

ダンジョンの入口は高い塀で囲まれており、塀の周り500mほどには大きな建物は無かった。

「まあ、陥没でもしたら大変なことになるからな」

陥没は小さなダンジョンで、数例だが起こったことがあるそうだ。

しかし、ここまで大きなダンジョンになると、ダンジョン自体が一つの魔物のようだ、とよく言われる。

その理由は、中にいる魔物や冒険者達から出る魔力を溜め込み、ダンジョン核がその魔力でダンジョンの強化や再生を行うらしい。そのおかげで大型のダンジョンになるほど頑丈にできている。

昔からその仕組みを解明しようと、多くの学者達が研究の命題にしているが、その真理にたどり着いたものはいない。

「今度神達にでも聞いてみるか」

俺は裏ワザを使ってみようと考えながら、入口に近づいた。

入口を囲ってある塀の中には、ギルドカードを見せると簡単に入ることができた。

入って最初に見えるのは、入口であるだろう岩山を囲むようにしてある建物だ。

そしてその周りには、臨時のパーティーを募集している者や直接依頼を出そうとしている者、有料で回復魔法を使い商売している者などがいる……その中でも目を引くのが、大勢の子供達だ。

俺は、近くにいた同業者にその事を聞くと、

「ああ、お前はダンジョンは初めてか……あいつらは荷物持ちで雇われようしているスラムの子供達だ。ダンジョンでは珍しくないぞ」

俺は礼を言って、情報料変わりに銀貨一枚を渡した。

「ありがとよ!」

そう言って、男は出口に向かっていった。俺が男に金を払ったの見て、子供達が集まってこようとしていたが、それよりも早く建物に入った。

どうやら、あの子供達は建物に入ってはいけない決まりになっているようだ。

建物の中は割とシンプルな作りになっていた。

依頼や注意事項などの紙が貼られた大型の掲示板に、ダンジョンに潜るための受付が五つほど、他には休憩所や相談窓口があるくらいだ。

俺は相談窓口でここのダンジョンの使用方法を聞いてみた。

まずはじめに、登録料の1000G払わせられた。

次に、ダンジョン内部では基本的に自己責任である事、10人以上のパーティーで挑む時は、必ず申告する事、外で雇った子供は出来るだけ責任を持つ事、などが書かれた登録書にサインをさせられた。

そして、ある特殊なアイテムを推められた。

「これはなんですか?」

「これはこのダンジョンで使える、ワープカードです」

簡単に言うと、セーブ機能があるアイテムらしい。ダンジョン内には。所々に外へと一方通行で繋がっている空間があるらしく、昔はいくら奥の方まで潜っても、その空間に間違って入ると外に出てしまい、一からやり直しとなっていたそうだ。

しかし、このアイテムが開発されてからは、その空間のあった場所を記録する事ができ、一方通行ではなくなったそうだ……まるで、どこでも〇アのようだ。

ダンジョン内のワープ地点に法則はなく、一階層に複数ある場合もあれば、全くない事もある。しかも、ダンジョン内のワープゾーンを使うと、必ず入り口のワープゾーンに戻ってくるそうで、ダンジョン内から他のワープゾーンへ行くには、一度入口のものに戻ってから、再度入口のワープソーンを使わなければならないそうだ。

「でも、それだと楽して下の階まで行く奴が出てくるんじゃないですか?」

その質問の答えは、出来なくはないが、それをやるとほかの冒険者に批難されて仲間はずれにされる、との事だ。さらに言えば、そのような冒険者に限って実力以上の場所に進みたがり、結果として命を落とす者が後を絶たないという。

ワープカードの値段は10万G、かなり高いが、今の俺にとっては気にならない値段だったので購入した。

ワープカードには盗難防止の為、登録をした本人にしか使えないようにする魔法がかけられていた。

他に使用法上の注意点として、自分が思い出すことの出来る場所しか行けないようになっているそうだ。

その後は、掲示板などを見てからギルドに向かった。

ギルドは、塀の出入り口からまっすぐ500m程歩いた所にあり、グンジョー市の倍以上はある大きさの建物だった。

中に入り情報を集めることにしたが……

「ガキが来る所じゃねえぞ!さっさと帰りやがれ!」

早速絡まれました。相手はかなり酔っ払っているようだ。

酔っぱらいを相手にする気は無いので無視していたら、

「このガキが聞いているのか?Cランクの俺の言うことが聞けないのか!」

と騒ぎ出したので、

「Cランクでしたか。こんな時間から酔っ払っているので、てっきりDランクで仕事がない方なのかと思っていました!」

と、さも驚いた、という感じで叫んだ。周りからは笑い声が聞こえる。Cランクで威張っている上に、子供にまで馬鹿にされているのだ。

「このガキがっ!」

男は腰に提げていた手斧を構えようとしたが、

「危ないですよ」

と、男が手を振り上げるより早く、俺は男の喉元にナイフを突きつけた。

「動かないでくださいね。手元が狂ったりしたら、大変なことになりますから……あなたの方が、ですけど」

男は何が起こったのか最初は分かっていないようだったが、僅かに動いた際に、喉に軽く触れたナイフの痛みで状況を把握したようだ。

「理解したなら斧から手を離せ。でないと喉にナイフが刺さることになるぞ」

俺の言葉に、男は両手を上げた。

「分かればいいんですよ。飲みすぎには注意しましょうね」

と言ってカウンターの方へと向かった。

あの時、ほとんどの冒険者は、何が起こったか分かっていないような感じだったが。何人かは驚いた様子を見せなかった。むしろ、それくらいは出来て当然、といった目で、こちらをうかがっていたのが気になった。

「すいません。ダンジョンの情報が欲しいのですけど」

「はい、ダンジョンの情報ですね。地図が公開できるのは10階層までで、後は魔物の出現例などになります」

1階から10階まではほとんど魔物は変わらず、ゴブリン、スライム、スケルトンなどが多く、たまにオークを見かけるくらいらしい。

11階から虫型の魔物が増えていき、パーティーを組む者が多くなるそうだ。虫型の魔物はしぶといものが多く、食用には向かないが、素材が武器に防具にと人気がある。

20階前後からCランクの魔物がほとんどになっていき、情報もここまでだった。

これはケチっているわけでは無く、ただ単に、20階あたりから魔物の出現に統一性がなくなってくるため、下手に断定するよりは危機感が出るので、逆に生存率が上がるためらしい。

地図に関しては、冒険者からの苦情と、あまり教えすぎると無茶をするものが出てくるため、比較的安全な10階までとしているそうだ。

受付でシロウマル達の事を話し、眷属と証明するための物をもらおうとしたら、この街では必要ないと言われた。

最後に、この辺りでおすすめの宿屋と料理屋を教えてもらいギルドを後にした。

案の定というか、ギルドから出ると数人の男が後をつけてきた。どうやら、先程のCランクの仲間達のようだ。

俺は、男達を誘うように裏路地へと入って……

「おいっ、あのガキがいねえぞ!どこに隠れやがった!」

姿をくらませた。正確には飛空魔法で屋根の上に飛んだだけだが、俺をちょっと強いくらいのガキだと思っている男たちは、俺が宙に浮いている可能性を考えていなかった。

男達があたりを探している間に、俺はギルドで教えてもらった宿屋へと屋根伝いに移動した。

「すいません。ここ数日は満室となっていまして……」

一発目……不発。まあ、予想していたことだ。次っ!

「申し訳ありません。先程全ての部屋が埋まってしまいました」

二発目……不発。タッチの差だったか……次、いってみよー!

「今日からしばらくの間、空きはないぞ」

三発目……不発。そろそろやばいな……次こそは!

「あら、可愛いぼうやね!あたしの部屋でよかったら空いてるわよ!」

四発目……回避っ!オカマと同室は嫌だっー!ってか、なんでこんな所を紹介するんだ!次だ、次っ!

「残念だけど、ここは女性専用よ」

五発目……不発。……だから、なんでこんな所が混じってるんだよ!次が最後だ……神よっ……いや、あれは役に立たないな……

「すまんが他をあたってくれ」

ラスト……終わった……はぁ、どこかないかな……

教えてもらった宿は全てダメだった……二軒ほどおかしな所が混じっていたが……

最悪、どこかの空き地で馬車を出して寝泊りするかな……いらんトラブルを招きそうだけど、などと考え事をしていたら、

「あいたっ!」

背中に軽い衝撃と共に、可愛らしい声と少し遅れて、ガラガラ、と何かが転がる音がした。

慌てて振り返ると、俺より少し年下くらいの女の子と薪が転がっていた。

「大丈夫?」

俺が手を差し伸べると、

「ご、ごめんなさい!私の不注意でぶつかってしまって!」

何だか、半分おびえているようにも見える。改めて手を差し伸べると、

「……怒っていませんか?」

と聞きながら、恐る恐る手を伸ばしてきた。

俺は女の子を怯えさせないように気をつけながら、手を掴んで起き上がらせた。

「このくらいでは怒らないさ。それに、俺も考え事をしていて立ち止まっていたからね」

そう言いながら、転がっている薪を拾っていく。

「ごめんなさい!私も拾います!」

と言っても、ほとんど拾い終わっていたので、後は括り直すだけだった。

「はぅ~、ごめんなさい……ご迷惑をかけて……」

女の子は落ち込んでいたが、括った薪を渡すと少しずつだが慣れてきたようだ。

「じゃあ、気をつけてね」

そう言って、少女とは反対の方向に歩き出すとすぐに、

「見つけたぞ!あのガキだ!」

と執念深い男達に見つかってしまった。めんどくさいなぁ、と思いながら振り向くと、

「邪魔だ!どきやがれ!」

「きゃあっ!」

丁度、男達が先ほどの少女を突き飛ばしたところだった。

「てめぇ、さっきは良くも……グボッ!」

少女を突き飛ばした男が何か言う前に、男の腹部に俺の左拳が突き刺さった。

「なにしや、ガッ!」

隣にいた男の仲間には、右のアッパーを食らわせた。

「なにしやがる、は俺のセリフだ!関係のない女の子に暴力をふるっておいて、ふざけた事をぬかすな!」

俺の一喝に、周りで一部始終を見ていた人達からも、批難の声が上がった。

男の仲間は他にも二人いたが、その二人は周りからの圧力に戸惑い、逃げ出そうとした……が、

「お前らも一人前の冒険者を語るのなら、この場の責任を取らねえか!」

と男達の背後から現れた、大柄な筋肉質の男性に投げ飛ばされた。

「おいっ、あいつはAランクのジンだ。ジン・ジードだぞ」

「ああ、もう少しすればSランクに上がるって噂のやつだろ」

そんな声が周りから聞こえてくる。

名前…ジン・ジード

年齢…32

種族…人族

称号…名誉準男爵・一流の冒険者

HP…25000

MP…10000

筋力…A+

防御力…A+

速力…B+

魔力…C+

精神力…B-

成長力…B

運…B+

能力値だけ見るなら父さんを凌駕している。いかにも前衛をやってます、といった感じの男だ。

俺はあのジンとか言う男にあいつらを任せて、突き飛ばされた少女の元に駆け寄った。

「もう大丈夫だよ。怪我は……膝を擦りむいているね。少しじっとしてね」

そう言って、少女の膝に手をかざして、回復魔法をかけていく。少女は最初うちは怯えていたが、魔法で傷口が塞がるの見ているうちに落ち着いてきたようだった。

「ありがとうございます。もう大丈夫です」

「いや、こちらこそごめんね。あいつらは俺を狙っていたみたいだから、俺が君を巻き込んでしまったようなものだよ……本当にごめんね」

その言葉に少女は笑顔になり……

「ひいっ!」

かけていたが、俺の背後に来たジンを見て、また怯えだした。

「嬢ちゃん、坊主、こいつらどうする?」

ジンは逃げ出そうとしていた男二人の頭を鷲掴みにし、宙吊りにしながら歩いている……これは子供でなくとも怯え……いや、夢に見るレベルだろう。

宙吊りの男達は気を失っているらしく、四肢がダランとなっており、ジンが動く度にゆらゆらと揺れている。

俺は少女の視線を手のひらで遮り、

「邪魔なんでそこらへんにでも捨ててください。この子も怖がっていますし」

「おう、分かった」

ジンはそう言うと路地裏に向けて、

「そいっ!」

二人を投げ捨てた。その後、手をはたきながら、

「で、こっちの二人は?」

と、未だに悶絶している二人を指さした。

俺は無言で近づき、しゃべれる程度まで回復魔法をかけて、

「まずは、謝れ」

と突き飛ばした方の男に向かって、低い声でそう告げた。

「すまなかった……許してくれ……」

と俺に向かって言うが、

「誰が、俺に謝れといった。お前が謝るのはあの子だ」

と少女を指差して訂正させた。

「す、すまなか……」

「もっと、丁寧に!」

「す、すみませ……」

「心がこもってない!」

「ひぃーーっ!申し訳ありませんでした!もう二度とこのようなことは致しません!どうか、お許しをーー!」

とそこまで言わせてから、

「こう言っているけど、どうする?」

と少女に訊ねた。少女は呆然としていたので、

「許さないって」

と男に言うと、

「許してください!お願いします!お願いします!お願いします!」

と、土下座のように地面に頭を擦りつけていた。

「も、もういいですから!怪我も治してもらいましたし、どこも痛くありませんから!」

と少女は慌てて言い出したので、

「良かったですね、許してもらえて。ダメですよ、一般人に……それも子供に無闇に手を上げては……これからは気をつけてくださいね……次があれば、ですけどね」

と最後だけは、ボソッと男だけに聞こえるように付け足した。

「あっ、それとお仲間さん達も、忘れずに連れて帰ってくださいね」

そう言うと男は、怯えながら横に転がっていた仲間を引きずるようにして、路地裏の仲間の方へと消えていった。

「俺からも謝らせてくれ。すまんかったな、嬢ちゃん」

ジンは微笑んだつもりなのだろうが、その顔を見た少女の反応は、

「ひっ!」

俺の後ろに隠れた。

その様子を見たジンは、かなり凹んだようだ。

「ぶほぉ!」

「プッ!」

その時、人ごみの中から、二つの笑いをこらえるような音が聞こえた。

「何がおかしいんだ!メナス、ガラット!」

ジンは、笑いをこらえているのが誰だか分かっているのだろう。人ごみに向かって名前を呼んだ。

「いや、だってさぁ。その顔はなんて言うか……その……」

「悪人面だよな。いかにも、獲物を見つけた、みたいな顔だよなぁ!」

それそれ、と女の方が隣の男に賛成する。

名前…メナス

年齢…28

種族…人族

称号…一流の冒険者

HP…15000

MP…14000

筋力…B

防御力…B-

速力…A+

魔力…B+

精神力…B-

成長力…B-

運…C+

名前…ガラット

年齢…30

種族…獣人族(狼)

称号…一流の冒険者

HP…21000

MP…10000

筋力…A-

防御力…B-

速力…A-

魔力…C-

精神力…A-

成長力…B

運…B+

一流にふさわしい力の持ち主達だ。多分パーティーを組んでいるのだろう。先ほどのギルドでも見かけた……と言うか、俺の強さに驚いていなかった奴らだ。でも、たしか……

「先程ギルドにいましたよね。でも、あと一人いませんでしたか?」

その言葉に三人は話を中断し、真剣な表情になった。

「ほぅ、気づいていたか……流石だな」

「やっぱり只者じゃあなかったね」

「まあ、当然だろう」

どうやら、この三人は俺の事を知っているようだった。どこで俺の事を知ったのかは分からないが、警戒したほうが良さそうだ。