軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

88話 農園開拓と家作り

翌日。農地予定地に行く前に村長宅に寄った。

好きに開拓していいと言われているものの、オルバさんが当初想定していたより大規模になりそうだし、進捗状況はきちんと伝えておいたほうがいい。

だが村長さんはお出かけ済み。農地予定地を早朝から見に行ったらしい。

農地予定地に着いてみると2,30人くらいの人が集まっていた。昨日作った農地の周りでは小さな子供から、老齢の方までわいわい集まって雑談している。

「人手増やしたんですか?」

オルバさんにそう尋ねる。

「まさか。畑が使えそうだから、昨日のうちに何か植える作物がないかって頼んでただけなんだけど」

「どうせ見学しに来たんでしょ」

そうエリーが断言する。

魔法で農場作るのを見に来たのか。

「あれ半分くらいうちの親戚だ……」

集団を見て、オルバさんがそうつぶやく。

ああ、そういう。田舎の農村だもんな。ご両親はすでに亡くなっているそうだが、親族は村にはいっぱいだそうな。

「オルバ! なかなかいいのが出来たじゃないか」

「村長。わざわざ見に来たんですか」

白髪ひげ面のちょっとお腹がでっぷりとした老人がどしどしと歩いてきた。

「この時期は暇じゃからのう。おお、そちらが魔法使い殿ですかな! ワシはラルガノ村の村長をしております、バハラタといいます」

「どうも」

ぐっと握手をかわす。

「聞いてると思うんですが、マサル君やエリーが手伝ってくれるんで思ったより農地が広く出来そうです」

オルバさんが村長に説明をする。

すでにオルバさんとは借金に関する簡単な協議は行っている。エリーがナーニアさんにたっぷり借りている分、仕事をする約束だ。

ただ金額に関してはひどく曖昧だ。4年に渡ってのことでだし、ナーニアさんにしてもエリーにしてもお金に関しては大雑把だ。適当に使って残った分を送金。オルバさんは稼いでパーティーで分配した額はだいたい把握はしていたものの、2人のお金の詳細な使途までは知るはずもない。

結局冬の間休暇がてら逗留して、農場作りを支援することで借金返済にあてようということになった。

「おお、構わん構わん。どんどんやってくれ!」

たくさんの村人が興味深げに村長と話をしている俺たちを見ている。

昨日魔法使ってるの見せたのは失敗だったかなあ。でも作業手伝ってくれてる人に、あとは俺たちがやるからもう帰っていいよ? なんて言えないし、そんなにまずそうな魔法は使ってないから口止めするほどのことじゃないかと思ったんだが。

「皆の衆! やるぞ!」

村長が村の衆に声をかけると20人ほどの人が、森の木を切り倒しはじめた。

「村長、別に人手をだしてもらわなくても」

「いいからいいから。ちょうど薪が不足しておったんじゃ。ついでじゃよ」

「ギルティ」

俺の後ろにいたティリカがぼそっとつぶやく。だよなー。

森での作業のほうへ行った村長を見送る。

「どうします?」

「この辺り、農地が余ってないって話はちょっとしたよね」

話を聞いてみると、この辺りの農地不足っていうのは一部の人にとっては結構な死活問題なようだ。

近場で開墾しやすそうなところはあらかた開墾し終えている。人口は増えるが、受け継ぐ農地は少ない。

開墾するにしても、畑を作って終わりと言うわけにもいかない。魔物に対する防備や水路の整備も必要だ。オルバさんのように2年や3年収穫がなくても経済的には問題がないならともかく、個人や一家族でやるにはなかなか手に余る大事業である。

受け継ぐべき土地がないものは、小作人として半ば奴隷のような生活を送るか町へ出るしかない。

だが町へ出たところで、農村育ちの田舎者がそう簡単にいい仕事にありつけるわけでもない。

その日暮らしでいいならいくらでも仕事はあるのだが、稼ごうと思えば兵士や冒険者が定番だ。命がけの仕事である。

それならば地元にいて畑を耕して暮らしたいという人間は多い。

俺としては赤の他人の事情などは知ったことではないんだが、今後この村で暮らしていこうというオルバさんとナーニアさんは無下にはできないだろう。

それに彼らにしても別にそういうことをこちらに言ってきているわけでもない。

「魔法使いに仕事を依頼するとなると報酬は高額になるんだ」

なるほど。旅の間みたいにまたタダ働きさせられるのかと思って警戒しちゃったよ。

アンの布教活動に付き合って、困ってる人を助けるのも時々なら別にいいんだけどね。

「私だって何でもかんでも無料奉仕ってわけじゃないわよ。治療院はきちんとお金は取ってるし、孤児院の経営って大変なのよ?」

「だよね。回復魔法覚えるのにがっつりお金取られたし」

「あれでも格安なの」

2日間で3500ゴルド(日本円で約35万円)も取られたんだが、通常は1ヶ月くらいを想定しているし、魔法使いは大抵お金を持っている。

ちなみに教えるのは魔法が使えるのが最低条件だ。魔法が使えない人間に回復魔法を教えるなんてことは、短期間で片手間で出来るようなことではない。もっとちゃんとした教育機関なり、師匠なりを探すことになるそうな。

「あれ? 長い方でも2週間って言われた気がするんだけど」

「1ヶ月って言って1ヶ月で切っちゃうと感じ悪いじゃない? 2週間って言って1ヶ月教えてダメなら諦めてくれるのよ」

結構ひどいな!

だが魔法には向き不向きがあり、魔力があるからって覚えられるものでもないそうな。

「わりとなんでも使えるエリーって実はすごいんだな」

「そうよ? わかったらもっと尊敬しなさ……いや、いいわ……」

だ、大丈夫だ、俺のはチートだから! エリーはすごい魔法使いだから!

オルバさんが手伝いに行ったあと、ちょっとおだてたらすぐに機嫌が治った。やっぱりチョロい。

「そうよ! 私は空間魔法を極めた究極のメイジなのよ!」

うん。すごいすごい。

■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■

20人以上で作業を進めているだけあって、俺たちが話し込んでる間にかなりの数の木が切り倒されていた。とりあえず切るだけ切ってその場に転がしてある。そのせいもあってずいぶんとペースが早い。

倒れてくる木に注意を払いつつ、切った木を回収してまわる。歩き回りながらアースソナーで周辺を探り、邪魔なものがないか確認していく。細かいものは大丈夫だが、大きな岩などはさすがに魔法で一気にやる時に邪魔になる。

作業をしている村人たちの間を縫うように歩いても、気配を殺しておけば彼らは気がつくこともない。

丁度切ったところで倒れてくる木を回収したら、突然消える木にビクッとされた。すまん。

村長の人の、休憩するぞーという声でみなが戻ってくる。

俺たちももちろんがんばって手伝ったので、二時間ほどの作業で森が大きく切り開かれた。しかしまだ大木を切ったのみで雑草や低木だらけで、場所によっては分け入るのにも苦労するくらいだ。だがもちろん問題はない。

全員退避したのを確認して、もう一度アースソナーで周辺をさぐる。邪魔なものはもうなさそうだ。

俺の場合、注目されると集中が乱れるので今回は隠密を発動しっぱなしだ。村人たちは誰も俺の動きに気がついていない。

範囲はたぶん昨日の倍くらい。

昨日のを思い出しながら魔法を発動――

はい、上手に出来ました!

いきなり森の跡地が消滅し、柔らかい土が現出する。雑談していた村人たちが徐々に気がついてポカンとした表情を浮かべ、そして色めき立った。

「話を聞いた時は半信半疑じゃったが、こりゃあ……」

おっかなびっくり村人たちが出来立ての農地に入っていって土を調べたりしている。

「次はどうしますかね」

村人と一緒に農地を見に来たオルバさんに声をかける。

「水路をひかないといけないんだけど、農場が広くなるから新しく作らないといけないかもしれないね。ちょっと村長と相談しないと」

元からある水路から引っ張ってくる予定だったそうだが、農場の規模が大きくなればそれでは足りなくなる。元の水路を拡張するか、近くの川から新規に引いてこないといけないようだ。

「じゃあ壁でも作りますか」

壁くらいならとりあえず作ってあとでいくらでも修正がきく。

農地の境界でオルバさんと相談しながら壁の高さを調整する。

普通の農地だと壁や柵を作るとしてもせいぜい1m程度なんだが、それはあくまでコストの問題だ。高く頑丈ならそれに越したことはない。

結局3mくらいの壁を作ってみた。村の周囲の壁と変わらない高さだ。

エリーと手分けして壁を作り上げていくのを村人が見学について回ってくる。土魔法で壁がぽこぽこ生まれるのが珍しいのだろうか。

さすがにこう近くで見られると隠密も効果がないが、大部分がエリーの方へ行ったのでほんの数人だったし、邪魔をしないようにというのか遠巻きにしていてくれたのであまり気にしないですんだ。

「わたしも土魔法覚えようかな」

アンが出来上がった壁を見ながらそう言う。

「空間魔法は?」

「難しいね」

「難しい」

アンに続いてティリカもそう言う。空間魔法の習得は難航しているようだ。

「新しい魔法を覚えるって大変なのよ? 特に空間魔法は難易度が高いし」

そのあたりがレベル1のポイントが高い理由なのかね。

黙々と壁を作っていき、エリーのほうと合流して壁が完成した。一応2箇所で壁は開けてある。門はあとで誰かに作ってもらえばいいだろう。

「いい感じのができたわね!」

「そのまま家を建てて住めそうじゃのう」

家か。俺らの家はどこにつくろうかな。あんまり農地に近くても騒がしそうだし、ちょっと森の方に行ってみるか。

一応村長さんに家を建てていいか確認を取ると、やはり好きなところに建てても問題はないようだ。

「このあたりの魔物とかはどうなんですか?」

オルバさんに聞いてみる。

「砦は近いし周辺に村は多いから駆除はするんだけど、魔境が近い分結構流れこんでくるんだよね」

基本的には弱い魔物しかいないが、ときおり魔境方面から強いのが紛れ込んだりするから油断はできないらしい。

微妙な……やっぱ森は怖いから近場にしとくか。

オルバさんたちと村人たちに森の伐採は任せて、俺たちは家を建てる場所の選定にかかることにした。

とはいえ近場に決めたし、今日中に作りたいのでそう選択肢もない。

サティを抱えてレヴィテーションで飛び上がり、周辺の地形を確認する。

「あ、あそこなんかどうですか、マサル様」

サティの指差す先は森の中でそこだけ小高い丘になっている。距離はここからたぶん1kmもない。農地から近からず遠からずといったところだ。

「そうね。いいんじゃないかしら」

エリー、アン、ティリカも続いて上がってきた。

エリーは小高い丘ってところがポイントが高いようだ。あの丘に高い建物を作ればさぞかし見晴らしのいい家ができそうだし。

「とりあえず見に行ってみましょう」

アンがまっとうな意見を述べる。

そのままレヴィテーションで移動する。

丘に降り立って周囲をさぐる。小動物はちらほらいるが、魔物はいないようだ。

だけどここに家を構えるなら安全確保はしておいたほうがいいだろうな。暇な時に周囲の魔物を狩り尽くしておこう。

アースソナーで地下を探ってみれば、水脈もあった。水の供給も問題なさそうだ。

「とりあえず邪魔な木を切っていくか」

「はい」

俺とサティでがしがし伐採をしていく。斧は専門ではないが、剣術レベル5と肉体強化のパワーをもってすれば楽な仕事だ。

あっという間に丘が禿げ上がった。

さて、どんな家を作ろうか。このまま普通に建ててもいいが、せっかく高い位置にあるんだから見晴らしのいい家がいいな。塔かビル、三階建てにお城……城だ!

和風の城を建てよう。うん、すごくいい考えだな。天守閣も作ろうか。作りも城を参考に石垣とかを作れば防備もいい感じになりそうだ。

「お城(和風)を建てようと思います」

「お城ね。いいわね!」

エリーはたぶん洋風の、塔とかついたお城を想像してるんだろうな。だが残念。完成するのは日本の城だ!ちょっとワクワクしてきたぞ。

「お城? そんなに大きいの建てちゃったら管理が大変じゃない?」

我が家の主婦のアンは掃除の手間や管理が心配なのだろう。

「サイズは住むのに手頃なくらいにしておくよ。でも魔物とかも出るみたいだし、町の外に住むんなら頑丈なのを建てたほうが安心だろ?」

「それもそうね」

まずは城の土台部分だ。普通に城を建てるなら、石を組んで石垣を作っていくんだろうが、土魔法ならもっと簡単だ。

土魔法ならなんでもできる。そう思っていた時期が俺にもありました。だが現実は厳しい。

石垣はなんかつるっとした感じの壁になった。まあそれは仕方がない。防犯上、石垣だととっかかりから侵入されてしまうかもしれないし。

城の壁も白い漆喰などないから茶色っぽい普通の土の色だ。大理石とか白っぽい石でもあればよかったんだが、適当に選んだ場所の土だしね。仕方がない。

屋根も城なら瓦なんだけど、一個一個瓦を作るのも面倒だし、普通の斜めの屋根になった。材質も壁と同じだし茶色い。

形もなんだか日本の城とは似ても似つかないまっすぐなビルのような造形だ。城だと一層ごとに瓦の屋根がついてるんだが、実際に作るとなると面倒で省略した。

時間をあまりかけるわけにもいかない。今日中に作らないと、またオルバさんの家で泊まりになってしまう。

かろうじて天守閣だけはそれっぽく作った。屋根にシャチホコもつけてやった。これも茶色で地味な色になっちゃったけど。

金貨や銀貨もあるから潰して上からメッキもできるが、素人が作ったかろうじてシャチホコに見える程度の作品に貴金属を使う気にはならなかった。

土台部分が5m。その上に3層の居住区があり、屋上には天守閣。地下室はあとで作る予定だ。

結果どういうことになったか?

高い建物がいいというエリーの要望と城っぽくしようという俺の思惑と、アンの掃除が大変だから手頃なサイズがいいという希望により、完成した我が家は城というより縦に細長い、塔かビルのようだ。そしてその屋上に天守閣というより茶室風のペントハウスが乗っかっている。

なんだこれ? どうしてこうなった……

なお、嫁たちにはシャチホコ以外は好評だったようである。