軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

43話 ゴルバス砦の危機 【地図ラフ画像】

その日、サティと一緒に訓練場で修練に励んでいると、急に招集がかかった。皆、ギルドホールに集まるようにと。嫌な予感がする。またハーピーのような襲撃だろうか?

ギルドホールには沢山の冒険者が集まっていてざわざわしている。おれはサティを連れて受付のおっちゃんのところに行った。

「何があるんです?」

「もうすぐ発表があると思うけど、ギルドの緊急依頼が発令されるんだ」

「緊急依頼?」

「そう。Dランク以上は何か理由でもない限り強制になるから、マサル君も参加になるだろうね。ほら、そろそろ始まるよ」

今のランクはおれがDでサティがEだ。しかし強制か。ますます嫌な感じだ……

副ギルド長がティリカちゃんを伴って出てきた。ギルドホールがしんと静まりかえる。

「聞け!冒険者の諸君!先ほど、転移術士より急報が入った。現在、ゴルバス砦はモンスターの大集団に包囲されており、我々はこれの救援にあたる。これは緊急依頼である!」

ゴルバス砦!?それってエリザベスが……さーっと顔から血の気が引く。

「知っての通り、ここから砦までは急げば2日。砦が落ちれば次はこの町が危険だ。王都にも知らせが走り、今頃は軍の準備がされているだろう。我々の役目は軍が来るまでの間、なんとしても砦を守ることである。第一陣の出発は3時間後。詳細はギルド職員に尋ねて欲しい。以上だ!」

「砦が……」「何年ぶりだ?」「だがあの砦がそう簡単に……」「家族を避難……」

周りが一斉にばたばたと動き始めた。おれはどうすればいいんだ?受付のおっちゃんに……

「マサル君、マサル君」

「あ、はい」

「副ギルド長が呼んでるから行ってくれるかい」

「わかりました」

副ギルド長とティリカちゃんのところへ行くと軍曹どのもいた。サティがティリカちゃんところへ行き、2人でぼしょぼしょと話し始めた。

「おお、マサル。よく来てくれた」

「はい」

「念の為に聞いておくが、おまえ緊急依頼には参加するよな?」

「拒否はできるんですか?」

「できる。ただしギルドから除名されたり罰則は重いぞ」

「もちろん参加します」

エリザベスを助けにいかないと……

「よし。では今回も貴様には物資の輸送を頼みたい」と、軍曹どの。

「物資ですか。でも転移術士なら空間魔法を使えますよね?アイテムボックスにいれて運べばいいのでは?」

「そう簡単にはいかんのだ。転移の際には重量で魔力消費が増える。それはアイテムボックスの中身も除外されない。転移をするときにはアイテムボックスを空にして、服も軽装にする。自分以外を運べる転移術士は滅多におらんのだよ」

空間魔法は取ろうと思っていたけど、荷物も運べない、サティも連れていけないとなるとちょっと考えないとな。それともおれの魔力とスキルレベルでいけるようになるんだろうか。エリザベスがたぶん詳しそうだけど、空間魔法の話題は鬼門で出来なかったしな。

倉庫に案内されるとそこには武器とか防具が山積みだった。そして沢山の矢。

「これとこれと。それとこれも。まだいけるか?じゃあこれと……」

言われるままに物資を収納していく。

「前から思ってたけど、おまえのアイテムボックスすごいな……こんなに入るのみたことないぞ」

「あー、さすがにそろそろ限界ですかね」

まだアイテムボックスは半分ほど埋まったあたりだ。ティリカちゃんはサティと一緒でこっちを見てない。

「まあいい。これだけ運んでもらえれば馬車に空きができて冒険者を乗せられる。助かったぜ」

次はおれのほうの準備を急がないと。時間はあまりない。ティリカちゃんと話をしていたサティを呼ぶ。

「サティ!」

「はい、マサル様」

「サティは……」「嫌です。一緒に行きます」

残れと言う前に即答された。

「サティはEランクだ。緊急依頼に参加する義務はないぞ」

「どこだろうと付いていきます。それに砦が落ちたらここも危ないんですよね?危険は変わりません」

正直いまのサティは魔法を除けばおれよりも強い。だが戦力にはなるが危険には晒したくない。孤児院かティリカちゃんに預けようと思っていたんだが。

「危険だぞ」

「わかってます。でもわたしも冒険者なんです。覚悟はできてます」

ハーピー戦を経験してでの言葉だ。本気だろう。

「わかった。一緒に行こう」

「はい!マサル様!」

ギルドを出て商店街に行くといつもの倍以上の人で賑わっており、既に物資の買い占めが始まっていた。だがなじみの店で砦に行くと言うと、残っていた商品を売ってもらえた。備蓄している食料も十分にあるしこれで2人分くらいなら当分は大丈夫だろう。

「がんばっておくれよ。そして怪我しないようにね」

「はい。戻ってきてまた買い物に来ますよ」

そう、八百屋のおばちゃんに別れを告げる。

孤児院もなにかばたばたしていた。疎開でもするんだろうか。食堂にシスターマチルダがいた。

「ああ、マサルちゃん!マサルちゃんも砦に行くのね」

「はい、それで留守の間、家のことを見てもらえないかと」

「わかったわ。任せておいてね。ああ、ちょっとまってね。アンちゃーん。アンジェラちゃーん」

待ってるとアンジェラが出てきた。

「マサル!あなたも行くのね?」

「うん、それでお別れを言っておこうかと」

「わたしも司祭様と一緒に行くのよ」

「えええ!?大丈夫なの?」

「神殿の仕事よ。大丈夫だとか大丈夫じゃないとか関係ないよ。それに後方で治療だから砦が落ちない限り危険はないし」

「そうか。そうだな」

おれが頑張ればいいんだ。

「それよりもマサルのほうが心配だよ。サティ、こいつをちゃんと守ってやってね?」

「はい、アンジェラ様」

むう。なんでおれの周りの人はサティのほうにおれのお守りを頼むのか。普通は逆だろ……

「じゃあね。わたしも準備があるし。また向こうで会いましょう」

アンジェラは第二陣の出発だ。向こうでの再会を約束してその場は別れた。

家に戻り、まずは冷蔵庫の中身を全部収納する。調理器具も持って行っとくか。それと何がいるだろうか。テントがあれば2人くらい寝れる。そうだ、最近寒いから布団も一式持っていっておこう。

家の戸締りをしていく。

「マサル様。お隣さんにも声をかけてきますね」

サティはいつの間にか近所の人と知り合いになってたみたいだ。

準備に漏れはないかな?テントと食料があってサティもいる。装備も万全だ。いや、矢が足りるか?十分にあると思ったが長期の防衛戦ともなれば足りなくなるかもしれん。サティ用にもっとあったほうがいいだろう。

ギルド横の武具店は混雑していた。まあそうだよな。ちょっと出遅れたか。どうしようか考えていると、いつもの店員さんがこちらを見つけて寄ってきた。

「砦に行かれるので?」

「ええ、それで矢が残ってないかと」

「お待ちください」

そういうと奥に行って、一山の矢を運んできてくれた。

「お客さまが来るかと思ったので取っておいたのです」

なんて良い人だ。

「ありがとうございます」

「いえ。我々残るものにはこれくらいしかできませんから。あなたも」と、サティに声をかける。

「しっかり主人を守るのですよ」

「はい!」

これはあれか。おれが頼りないとかそういう問題じゃなくて、奴隷が主人を守るのが当たり前ってことなのか?じゃなければ会う人会う人サティにこんな声かけないよな。うん。決しておれが頼りなく見えるからとかそういうことじゃない。そうだよね?

ギルドの前には大量の馬車が用意されていた。うろうろしていると軍曹どのがいたので声をかける。

「おお、マサル。貴様はおれと一緒だ」と、先頭から2台目の馬車に乗せられた。

ほどなく出発。道には町の人達が出てきて、がんばれ!しっかり!などと馬車の列に声をかける。門を通るとき、門番の兵士もおれをみつけて手を振ってくれた。

街道を馬車に揺られて進んでいく。なんかどんどん不安が膨らむ。

「あの、軍曹どの……砦は大丈夫なのでしょうか」

「大丈夫だ。と言いたいところだが、わからんな」

エリザベス……

「砦には行ったことあるか?ないか。あそこは砦自体の城壁の他に2層の外郭が備わっておる。ちょっとやそっとでは落ちんのだが……」

だが?なんだ?

「この話はここだけの話にしろよ。おまえらもだ」と、周りで聞いてた冒険者にも釘を刺す。

「最後の情報では敵に地竜が最低でも2匹混じっていたらしい」

「地竜って……」

「森で見た奴の地上版だな。飛びこそしないが、紛うことなき大型種だ。うまく止めないと城壁を食い破られる危険は大きい。不安を煽りたくはないが、到着したら砦が落ちていたということもありうるのだ」

押し黙る冒険者達。

「だが、まあ。あそこには凄腕が揃っておる。そうそう落ちはしない。あまり今から心配しても仕方がない。今のうちにしっかり休んでおけ」

「あの、軍曹どの」

「なんだ?」

「開拓村は大丈夫でしょうか」

軍曹どのは首を横に振る。

「わからん。うまく逃げ延びてくれればいいのだが……」

エリザベス……

馬車に揺られながらメニューを開く。残り10P。リセットは先週使ったばかりだ。

スキルの選択肢は2つ考えた。火魔法レベル5に10P。

MP消費量減少、魔力増強、MP回復力アップのどれか2個。または1個に10P振る。

少し考えて魔力増強、MP回復力アップに振った。火魔法レベル5はどんな魔法があるのかわからない。練習をする暇なんか取れないだろうし。

スキル 0P

スキルリセット ラズグラドワールド標準語 時計

体力回復強化 根性 肉体強化Lv2 料理Lv2

隠密Lv3 忍び足Lv2 気配察知Lv4

盾Lv3 回避Lv3 格闘術Lv1

弓術Lv3 投擲術Lv2 剣術Lv4

魔力感知Lv1 高速詠唱Lv5 魔力増強Lv1 MP回復力アップLv1

コモン魔法 生活魔法 回復魔法Lv4

火魔法Lv4 水魔法Lv3 風魔法Lv3 土魔法Lv3

これで長期戦でもMP切れを起こしにくくなる。あとはその場で経験値を稼いでどれに振るか考えればいいだろう。おれはそれで満足してサティと一緒に毛布にくるまって寝た。

馬車は夜通し走って砦への道を進んだ。そして夜が明ける。

小休止で朝ごはんを食べていると軍曹どのがおかしいと言い出した。

「昨日はあれだけすれ違っていた避難民が途絶えた。砦で何かあったのかもしれん」

ちなみにすれ違う避難民に砦のことを聞いてみたのだが、かなり初期に逃げ出したようで新しい情報はなかった。

「何かとは……」

「敵を撃退したのか――もしくは逃げ出せないくらいに包囲されたのか」

その情報は馬車の列が進みだしてからまもなくもたらされた。一隊の避難民が砦のほうからやってきたのだ。避難民は着の身着のままで怪我をしているものも多かった。

「おい、何があった!?」

「第二城壁まで突破された……それでモンスターが砦の最後の城壁の周りにまで溢れかえったんだ」

話を聞きながら、何人かの冒険者と一緒に怪我をした避難民に治療を施す。

「それ以上詳しいことはわからん。モンスターに追われて必死に逃げてきたんだ。逃げ遅れたやつはもう……」

「このまま進む。だが斥候をだそう」と、軍曹どのが宣言する。

「近づけるだけ近づいて様子を見る」

その後もぱらぱらと逃げてきた人とすれ違う。どの人もみんなひどい格好をしている。その度に少しだけ止まって治療をする。新しい情報はほとんどない。

斥候部隊に助けられた人もいた。少数だが避難民を追ってこちらのほうまで流れてきたモンスターもいるらしい。

午後遅く、斥候部隊が戻ってきた。

「敵を押し戻して第二城壁は既に修復されている。だが、突破してきたモンスターが周辺をうろついていて、砦側には対処する戦力を割けない。我々でどうにかするしかないだろう」

レヴィテーションを使える冒険者が危険をおかして砦内部まで飛んできたらしい。

「こっち側にいる敵はどの程度だ?」

「多いがばらけている。突破だけなら容易だ。殲滅もできるだろうが、時間はかかるだろう」

「突破しよう。殲滅するなら一度砦に入ってからすればいい。砦のほうに話はついてるな?」

「ああ、おれたちが来たら門を開けてくれる手筈になっている」

馬車の列が速度を上げる。走りながら弓と魔法で敵を倒しつつ砦を目指す。もし対処しきれない数が来たら冒険者を臨機応変に投入し戦う。

「見えました。オークです」

サティが言う。当然おれの目ではまだ見えない。鷹の目、おれも欲しいな。

「動いてる馬車から狙えるか?」

「わかりませんがやってみます」

少しすると接近してきたオークが数匹おれにも見えた。サティが弓を構える。放つ。

見ているとオークの1匹が転んだ。どうやら命中したらしい。おおお、と冒険者達から歓声があがる。動いている馬車からの遠距離射撃、他の人には当てるのは不可能だろう。

「いいぞ、どんどんいけ」

「はい」

左側はサティに任せて、冒険者に位置を変わってもらって右側に移動する。右側には敵はまだ見えない。

先頭の馬車がペースを落とした。どうやら前から敵が来ているらしい。おれは少し考えて、フライで先頭の馬車に乗り移った。冒険者達は驚いたようだったが、魔法使いだというと馬車の前に押し出してくれた。弓を撃っている人の脇から身を乗り出す。

またオークか。【火槍】詠唱――発動!矢をかいくぐって接近しつつあったオークを倒す。魔法は揺れていても照準は難しくない。それでとりあえずは進路上の敵を全部排除できた。死体は放置していく。ちょっともったいないけど仕方ない。

その後、時々出てくる敵を倒しながら進むと砦が見えてきた。どうやら無事到着できそうだ……