軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

19話 かわいい神官ちゃんの祈り

翌日、森を抜け、街道を歩き、町へと無事たどり着いた。すでに午後半ばということで、本日は簡単な報告のみで、明日また集合ということになった。おれと軍曹どのはドラゴンの件で居残りだ。

「聞いたぞ。大活躍だったみたいだな!」と、ドレウィン。今日はティリカちゃんも一緒だ。

「死ぬかと思いましたよ」

「ドラゴンとやってその程度ですんだのは幸運だぞ!なかなかいい経験になっただろう?」

まあ参加すると決めたのは自分だし、文句も言えない。

「そうですね。でも当分はごめんですよ」

「しばらくはゆっくりして報酬で楽しむといい。色々とな!」

そうですね。色々と。

ギルドの裏手から出て大きい倉庫に案内される。冷蔵倉庫か。冷え冷えだな。他にも数人みたことのない人が同行している。

「ここでいい。ドラゴンを見せてくれ」

アイテムからドラゴンを取り出す。

「おお、なかなか立派なドラゴンじゃないか。これならいい値段で売れるぞ!」

同行していた人たちがドラゴンに群がる。

「こいつはここで調べたあと、解体されてセリにかけられる。告知してからだから数日後だな。ドラゴンの素材の分の報酬はそのあとになる。その他の報酬については明日だな。討伐報酬に関しては受付でギルドカードを見せればいつでも渡す」

「お土産用にドラゴンの肉をわけて欲しいんですが」

「そうだな。おまえには一割の権利と、討伐分の分け前がある。100kgくらいでいいか?」

100kgはちと多い。半分くらいにしておこうか。

「じゃあ50kg分くらいでお願いします」

肉が切り分けられるのを待っていると、「肉」と、ティリカちゃんがつぶやく。

「ん?」

「ドラゴンの肉」と、こっちをみながらさらにつぶやく。

「えっと、肉が食べたい?」

こくりとうなずく。

「あー、それじゃあ今度料理するときに招待するね。それでいい?」

「いい。楽しみにしてる」

ティリカちゃんとお食事会だ。宿は使えないし、これはますます家を手に入れねばならない理由が増えたな。

「よかったなあ、ティリカ!たっぷりご馳走してもらうといい!」

うなずくティリカちゃん。食いしん坊キャラだったのか、この子。

肉を受け取り、ギルドを後にする。肉は二等分して陶器製の容器にいれてもらった。この異世界、当然ビニールやプラスチックなんかはない。食べ物をいれるのは木箱か陶器、あとは植物で編んだ籠や、大きな葉っぱなどである。弁当なんかは葉っぱで包むことが多い。紙はあるものの、それなりに値段がするので包装紙には使ったりしない。それで特に不便は感じないし、ほっとけば土に返るものばかりなので、進んだエコ社会と言えるんではないだろうか。

孤児院に向かう。このくらいだと夕食の準備してるくらいかな。ドラゴン倒したっていったら子供たち驚くだろうな!現物を見せてやりたかったが仕方ない。鱗も1枚もらってきたし、それで我慢してもらおう。

孤児院につくと、やはり夕食の準備中だった。子供たちに目ざとくみつけられ、囲まれる。

「兄ちゃん、おかえり!」「ねえ、お土産は!お土産!」「肉!肉!」「剣かっこいい!剣みせて!」「肉!肉!」

そういえば町中だといつも腰の剣のみで、フル装備でここに来るのは初めてだな。

「よしよし、少し離れてろよー」と、背中の剣を抜いて見せてやる。

「すっげー!黒い剣!」「カッコイイ!」

好評である。きれいなもんだろ?これ、一度も実戦で使ったことがないんだぜ?騒いでるとアンジェラが出てきた。

「ただいまー。無事かえってきたよ」

「マサル!」

アンジェラちゃんは走り寄って抱きついてくるってこともなく、普通に挨拶されただけだった。中に案内される。

「それで調査隊はどうだったの?」

食堂のテーブルにつき話をする。

「行きと帰りはすごく退屈だった。BランクとCランクのパーティーが先行しててね。モンスターはその人たちが全部倒しちゃうんだ。まさしく護衛付きの森林ツアーだったね。1回だけオークの集団がいたけど、魔法を2、3発うっておしまい。楽なもんだよ」

「そう。危ないことがなくてよかったよ」

「ほんとそうよねー。アンちゃんなんか、マサルちゃんのこと心配して、毎日お祈りしてたのよー」と、シスターマチルダがやってきて言う。

「な!?し、心配なんか……その……」

アンジェラちゃんが真っ赤になってる。そうか、きっとドラゴン戦での死亡フラグが折れたのは、このかわいい神官ちゃんのおかげだったんだな。アンジェラちゃんのお祈りなら、それはそれは霊験あらたかだろう。ちょっとじーんときた。なんていい子なんだ。

こんなにかわいいアンジェラちゃん。さぞかしもてるんだろうと思い、別の日にシスターマチルダに聞いてみると、「そりゃーもてるわよー。ファンは多いわね」とのこと。神官で白衣の天使で保母さんで美人。なんで男の影がないのか。下心満載で近づく野郎にはもれなく、元神殿騎士で鬼のように強い司祭様の鉄槌が下される。おれはというと、背も低く、童顔だったので子供だと思われてたようで、そのうちにここの人や子供に気に入られたと。治療院の手伝いも何度かしたこともあるし。閑話休題。

「そっか。心配してくれてたんだね。これはちゃんとお礼をしないと」

「はいこれ、お土産」と、ドラゴンの肉を机に置く。25kg分だ。

「そんなに気を使わなくてもよかったのに。これ、何のお肉?」

「ドラゴン」

「ふぁっ!?」

肉をつつこうとして固まるアンジェラちゃん。

「ドラゴンの肉。いやードラゴンは手強かったね」

「ほんとうに?でも危ないことはないって。ああ、そうか。他の人が倒してくれたんだね?」

へー、これがドラゴンの肉かあ、と言いながらためつすがめつ肉を見る。

「いやいや、大活躍だったですよ?おれの火魔法が炸裂!地面に墜落するドラゴン。落下でダメージくらったドラゴンを倒すのは楽勝だったね」

倒したのおれじゃないけど。

「でもいいの?こんなにもらって。ドラゴンの肉って超高級品だよ」

「いいのいいの。まだ自分の分もとってあるから。大活躍だったからね。分け前もいっぱいもらえるんだ」

「そう。どうやって食べようこれ。ドラゴンの肉なんて料理したことないよ」

「そのままステーキで焼くかシチューがいいって。倒した日にみんなで食べたんだけど、どっちも絶品だったよ」

「ステーキにシチューか……あ、みんな!お兄ちゃんがお土産持ってきてくれたよ!ドラゴンのお肉だ!」

ああ、あれは忘れずにやるんだね。子供達があつまってきてお礼を言う。

「「「おにいちゃん、ありがとー」」」

うん。やはりこれがないとな。

そのあとは夕食をお呼ばれし、食後、中庭にでて子供達に大自慢大会である。

「その時、風メイジとともにおれは空に飛びたち、ドラゴンを追いかけた。逃げるドラゴン、追いかけるおれ達2人。ついに詠唱が完了し、エクスプロージョンがドラゴンの翼に炸裂した!翼をもがれ落下するドラゴン。だがやつは最後にこちらに向けてブレスを吐いた。おれはとっさに……」

子供達はきらきらした目で話を聞いている。うむ、楽しいぞ。ちょっと話は盛ったがそれくらいいいだろう?

「そしてこれがドラゴンの鱗だ」と、子供達に見せる。

「うおおおおおおお」「ドラゴン!すげー!」「すげー!にいちゃん!にいちゃん!」

うははははは。いいぞ、子供達。もっとおれを称えるがいい!アンジェラも感心した顔で話を聞いている。これでちょっとは見直しただろう。どうも弱そうに思われてるからな。まあチート取ったらこの子供達と変わらんくらいなんだろうけど。

気分よく、いつもの宿に戻って明日のことを考える。報酬をもらったらまずは家探しだな。異世界にも不動産屋ってあるんだろうか。なにげに、一人暮らしは初めてだ。宿は一人暮らしって感じじゃないしな。家事は苦手だが、料理はそれなりにできる。庭のある家がいいな。家庭菜園とか作ってみたい。そしてメイドさん!奴隷商の場所は聞き出してある。いかん。わくわくが止まらない!色々妄想にふけっているうちにいつの間にか寝ていた。