軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

179話 剣聖の弟子たち

「今日は休む」

まだ夜も明け切らない薄暗い中、俺を起こしに来たエリーに言う。朝起きてこんなにどこかへ行きたくない気分になったのは久しぶりだ。

体は最大級に気怠いし、ひどく寝不足だ。修行とか行きたくない。このままずっと寝ていたい。

昨日はパーティ会議が終わってから、さすがに参加自体はしなかったが、サティたちの剣の修練に暗くなるまで付き合った。

途中でタチアナカチューシャ姉妹が戻ってきて、上で何があったか知りたがった。オーガのスタジアムから結構距離はあったけど、さすがに最後のフレアは隠しようがない。

「剣聖の腕試しがあったんだ。俺たちもちょっと本気を出したし、結果はまあ引き分けってところだな」

「うっそだあ」

「そりゃ俺一人じゃどうにもならんけど、うちのパーティは全員一騎当千だからな。さすがの剣聖も手を焼いて、最後には俺たちのことをとびっきり強かったって言ったんだぜ」

「ほんとに!?」

「なんならうちの真偽官殿に聞けばいい。な、ティリカ」

ティリカが頷いて話はじめた。

「剣聖との戦いが終わって去り際――」

そして新居への訪問者はそれだけで終わることなく、俺たちのことはもう街中で噂になっているようで、見物人がひっきりなしにやってくるようになった。

中には手合わせどころか入門希望も現れだした。まあここも元が道場だしな。

門を閉じて無視しようとしたところで、どんどんと遠慮なく門を叩き、大声でこちらを呼び出そうとする。

数人相手をしたところで面倒になって門を土魔法でがっちりと閉鎖。一つある玄関はタチアナに警備を命じてその後は平和に過ごせた。

エリーたちと新しい魔法の研究もあったし、夜は夜でいい加減疲れているはずが妙に目が冴えて、深夜までアレとかナニをしてしまったのも悪かったのだろう。そのお相手のエリーは珍しく俺の気が済むまで相手をしてくれて同じく寝不足のはずだが、元気いっぱいだ。

「昨日はあんなにやる気だったじゃない」

「そりゃみんなの手前、ヤダヤダってわけにもいかないだろ」

その場のノリってものがある。

「まあねえ。でもとりあえず朝食を食べましょ。急がないと朝一に間に合わないわよ」

エリーにずりずりと容赦なくベッドから引っ張り出される。

「大丈夫だって。さすがに体調が悪いのくらい考慮してくれるわよ」

そうだろうか? あの剣聖がそんなことを考えてくれるのだろうか。だがとりあえず行くだけ行ってみるか……

サティたちが朝食の準備を終えていたので手早くかきこみ、辺りがまだ薄暗い中リリアのフライで出発した。

オーガの闘技場を越え昨日の戦闘跡あたりまで進むと、今日も出迎えらしき反応があるので一応上空で止まって確認することにした。

「出迎えじゃないな。木陰に隠れてる」

またサプライズか。まさか剣聖のリベンジでもあるまいが。

「降りてみましょう」

エリーがそんなことを言う。

「面倒そうだしやり過ごそうぜ……」

「まあまあ。挨拶をしたいならさせてあげましょうよ。新しい魔法を試してみたいし」

「万全の装備なら、たとえ剣聖が相手でも持ちこたえて見せる!」

リベンジしたいのはエリーとシラーちゃんか。今日はみんなフル装備だし、そういうことならと手前に降りて慎重に近づいてみることにした。

「隠れてないで出てきなさい!」

エリーが呼びかけても出てくる様子がない。

「敵だな。でも反応はたぶん剣聖じゃないからやりすぎないようにな」

気配察知にかかる反応は剣聖より少し小柄だ。

「ええ。ゆっくり進んでちょうだい」

隊列は昨日と同じ。先頭のサティもシラーちゃんも、フル装備の戦闘態勢で警戒しているから、剣聖でもそう簡単には突破できないだろう。今日は俺も前に出るし、三人がかりなら足止めには十分だし、そもそも不意打ちでもなければ接近する前に対処できるのだ。

ある程度近寄ったところでまずはエリーが詠唱を始めた。

「サンダー!」

高く掲げたエリーの杖からサンダーが発射され、暗殺者二号の隠れている木にぱしっと直撃する。その威力は控え目なようだ。

次の瞬間、暗殺者二号が木陰から飛び出てきた。まだ少し距離がある。魔法のいいカモだな。若い。ウィルと同じかもう少し下くらいだろうか。

エリーの二発目のサンダーが発射され、そいつの投げた枝に払われたが、前衛まで半分の距離も縮めないうちにエリーの三発目のサンダーが命中して、そのままの勢いでごろごろと転がって倒れた。

「な……」

だが気絶はしなかったようで、よろよろと立ち上がろうとする。

「あらしぶといわね。ちょっと威力を弱めすぎたからしら?」

そう言いながらもう一発発射する。ぱしんと命中してそいつは崩れ落ちた。ようやく気絶したようだ。やはり昨日の剣聖との戦闘が異常だったんだな。油断するつもりはないが、多少腕の立つ程度では危なげなく勝てる。

リリアやティリカも詠唱していたが、出るまでもなかった。

「いいな、それ」

「一晩で考えたにしては使えるわね、この対人制圧用サンダー。なんて名付けようかしら」

エリーの杖には未だ雷がまとわり付き、いつでも発射できる状態になっている。

サンダーを常時展開させていて、好きなタイミングで連続して発射することができる。強さの調節も思いのまま。

欠点は展開している間魔力がダダ漏れで恐ろしく魔力を消費する点で、一般の魔法使いには使いこなせないことだろう。むろん俺たちの魔力なら何の問題もないが、雷をキープするのに杖が必要で俺も使うことはできない。

「スタンボルトなんてどうだ?」

「いいわね!」

「こいつはどうする、主殿?」

「縛り上げて運ぶか。起きて暴れられても面倒だし、放置して魔物でも来たらもっと面倒だ」

ロープを出して適当に縛り、ウィルに運ばせることにした。

そして少し歩くと平地に開けた場所があって、建物がいくつかあるのが見えた。

煙が上がっているのは朝食の準備だろう。フランチェスカはいないが、今度こそ普通の出迎えだな。建物前の広場で朝の稽古だろうか。いまは手を止めて、俺たちを待っている。

剣聖は……いるな。また気配を消しているが、居ると分かっていれば探知で位置を特定し、見つけるのは簡単だ。

「姿が見えないと思ったら」

中の一人が言う。体格のいい女性の剣士だ。

「待ち伏せして襲ってきたのよ」とエリーが言う。

ウィルが縛り上げていたのを地面に横たえ、ロープを解いてやる。

「それで返り討ちかよ。情けねえ」

そして腰の剣を引き抜いた。殺気。手にしているのは真剣だ。

「あらやる気?」

エリーの言葉に女性剣士とチンピラの二人が前に進み出た。

「待ちなさい、あなた達」

殺気立っていた二人がその声で止まった。妙齢の美しい女性だ。ひらひらとしたパーティにでも行くような衣装を着ているが、やはり腰には剣を差している。

「やるなら一人ずつよ」

そこは止めろよ……剣聖も面白そうに事の成り行きを見守っている。

「……仕方ない」

チンピラと女剣士がしばし睨み合って、女剣士のほうが引いた。

「弟弟子がやられたとあっちゃ、落とし前はきっちりつけておかねーとなぁ」

とんだ言いがかりであるが、こっちもシラーちゃんが臨戦態勢だ。さっき何も出来なくて欲求不満なんだろうが、いくらフル装備だとはいえシラーちゃんの腕じゃ厳しいだろうか。

見た目はまるっきりギルドに良くいるチンピラだが、こいつはシラーちゃんが勝てなかったオーガクラスの上位ランカーのさらに上。ドラゴンクラスにいるのだ。

「メシだ」

だが建物の方からした声に、またもチンピラの足が止まった。恐る恐るというふうに声のほうを見る。

「聞こえなかったカ? メシだッ、小僧ドモッ!」

包丁を手に持ったオーガの咆哮に、チンピラが素早く剣を納めた。

人間か? 厳つい風貌に、上背こそボルゾーラに劣るようだが、その巨躯はこれまで見た中でも最大級で、体に纏うのは膨大な筋肉の鎧。

しかしエプロンは付けているし、たどたどしいがちゃんと言葉もしゃべってる。よく見るとちゃんと人間だ。

「キサマラは……?」

「昨日話しただろう。ヴォークトの弟子だ」

そう剣聖が答える。

「オオ、ヴォークト。覚えているゾ。ヤツはゲンキか? メシはちゃんと食ってイルか?」

「ええ、元気ですよ。ご飯もちゃんと食べてると思います」

見た目は恐ろしいし、チンピラは怯えていたが案外気さくな感じだな。

「ならイイ。キサマラもメシはどうダ?」

「ありがとうございます。でも朝ごはんは食べてきたので」

「ソウカ……」

俺の返事に巨大な肩を落としてガッガリした様子だ。やはり見た目に反していい人なのか。

「少し食べていきなさいな。珍しい獲物が取れたし、ああ見えてブルーの作るご飯は絶品なのよー」

「はあ」

別にお腹は空いてないし、まだ眠気も完全に覚めてない。軽く手合わせでもしながら……

「ん? ティリカお腹空いたの?」

ティリカが後ろから俺をつついて訴えかけてきた。今日は時間がなくて軽くで済ませたし、絶品、珍しい食材と聞いて食べてみたくなったのか。

「あー、では少しだけお邪魔しようかな」

「オオ。ならコッチだ」

巨大なブルー氏がいそいそと案内してくれた先の食堂は、俺たちが急に押しかけても十分な広さがあって、フランチェスカともう一人が忙しく給仕をしていた。

「見たことのない食材」

冷静にティリカが述べるテーブルの上を見た瞬間に後悔した。そこには虫料理が所狭しと並べられている。

「キノウ手に入れた、コガネグモの大物ダ」

黄金というだけあって黄色い警戒色の巨大蜘蛛が足をもがれ、テーブルの中央にでんと鎮座し、あとは何かの幼虫に黒焦げにまで焼かれた甲虫らしき虫。どれも大皿サイズで、本日は虫料理のフルコースのようだ。

パンやスープは普通……いや待て。スープにもなんか浮いてるな。

朝食は済ませてあるし、適当にお茶を濁そうかと思ったら、ブルー氏自ら蜘蛛の胴体部分を切り分けて、食べやすいようにその中身を各人の器に盛り付けてくれた。そこが特に美味な部位らしい。

「すごく美味しいわよ、マサル」

「旨いっすね!」

「絶品」

さっそく食べ始めたみんなが口々に言う。てんこ盛りにされた小鉢に一杯分くらいのやわらかい感触の何か。食べればきっと美味しいんだろうなってのはわかってるんだ。でも心のどこかが拒否するんだよ……

幸いにも剣聖と弟子たちは奪い合うように残りのコガネクモの他の部位に手を出し食べるのに忙しそうで、こちらを気にする様子はない。この隙にこっそりサティかティリカにと思ったのだが、ブルー氏に見咎められた。

「ドウシタ? 食べないのカ?」

「イタダキマス」

意を決して口に入れる。むにゅっとした歯ごたえと、口に広がる……ウニか牡蠣が近いだろうか。だが海産物とは違う独特の風味がある。馴染みのない味だが、滋味を感じる複雑な味で、決してまずくはない。

そのまま二口、三口と口に運ぶ。時折当たるぷちぷちとした感触が何かは考えたくないが、悪くないな。

味わいながら食べていると器が空になっているのに気がついた。

「美味しかった?」

ティリカがそう聞いてくるので頷く。慣れれば美味しいな。

「じゃあこれも」

そう言ってちゃっかり確保していた足らしき部分の中身をほじり出し、あーんしてくれる。

ふむ。こっちも美味しいな。貝柱やカニに近い味がする。中身も足も、酢飯で海鮮丼風にしたら美味しそうだ。

「もっといる?」

「いやいいわ。残りはティリカが食べるといい」

食わず嫌いは何事もいけないな。今度蜘蛛を獲ったら試してみてもいいな。

「これもどうですか?」

でもサティ、まるごと芋虫をそっと差し出されてもさすがに困る。

「もうお腹いっぱいになったよ」

見れば蜘蛛はすっかり食い尽くされ、剣聖や弟子たちは他の料理に取りかかっている。手持ち無沙汰になってそれを見てると、チンピラと目があった。

「おいお前。マサルと言ったな? リュックスさんにたまたま勝ったからっていい気になってんじゃねーぞ!?」

いい気にってそんな素振りは欠片も見せたことはないんだが。

「あれは勝ちを譲ってもらったんですよ。腕試しもあって、かなり手加減もされてたし、まともにやったら勝てませんって」

「お、ちゃんとわかってんじゃねーか」

チンピラはころっと機嫌を直したようだ。こいつはリュックスの舎弟か何かかだろうか。賭けを仕切るヤクザの親分に舎弟のチンピラ。実にしっくりくる。

「それでもさすがだな。あのリュックス殿に勝ってしまうとは」

フランチェスカも話に加わってきた。

「昨日のは見てたんだ?」

「無論だ。サティの一〇〇人抜きは見逃したが、後は全部見せてもらったぞ。ウィルとシラーもなかなかの戦いぶりだった」

ブルー氏だけは狩りに出て見なかったらしい。

「フランチェスカちゃんは知り合いなのよね? せっかく揃ってるんだし、食べながらでいいからみんなを紹介しなさい」

フランチェスカは口止めの約束を守って、ほんとに何も言ってないみたいだな。

「はい、ホーネット殿。こちらの方がホーネット殿、そしてあちらがブルーブルー殿。我々を指導してくださる師範代がただ」

チンピラはザック。体格のいい女性の剣士がアマンダ。そして悔しそうにこちらを睨んでいる先程の襲撃者がコリン。もう一人の門下生がデランダル・カプラン。

「カプラン伯爵家の方?」

そうエリーが尋ねる。貴族か。他は冒険者と変わらない格好だが、こいつだけは身なりも身だしなみも良い。

「当主の甥にあたる。君とはどこかで会ったことがあったかな?」

「ないと思いますけど、私はエリザベス・ブランザよ」

「ああ……ウェイン・ブランザ殿とは何度かお会いしたことがある」

「その妹よ」

元の領地が近くだったの。そうエリーが補足してくれた。

それと給仕をしてくれている老人がジェロームという名で、剣聖の付き人のようなことをやっている人らしい。

あとはアーマンドも師範代の一人で、他に弟子も何人もいるらしいが、ある程度修行をしては実戦に出るのが通例で、今は人が少ない時期らしい。

「それでそちらがマサル・ヤマノス。このパーティのリーダーでヤマノス家の当主だ」

「お前、お貴族様だったのか?」

そうザックが言う。

「今は冒険者だが我が国に領地を持っていて、何年かしたら子爵位を賜ることになっている」

フランチェスカの口ぶりでは子爵はほぼ確定事項のようだ。

「あとは端からシラー・ヤマノス、エリザベス・ヤマノス、リリアーネ・ヤマノス……」

「ちょっと待て。みんな家族なのか?」

当然の疑問だな。ていうかフランチェスカ、名字までバカ正直に言うこともないのに。

「女性陣はみんなマサルの嫁だ。サティ・ヤマノスにティリカ・ヤマノス。そこのフルプレートがウィルで、ただのパーティメンバーだ」

「お前、すげーな」

「どうも」

まあいずれわかる話か。

「あの、そちらのティリカちゃん? 片目が赤いように見えるんだけど……」

ホーネットさんの言葉にティリカが頷いてフードを外した。

「ティリカ・ヤマノス。三級真偽官だ」

その言葉に場が急にざわめいた。

「わ、私は最近は何もしてないわよ!?」と、ホーネットさん。

「お、俺もここんところは大人しく……」

ザックも言う。こいつらよっぽど後ろ暗いことがあるのか。

「っておい、コリン。お前真偽官に襲撃をしかけたのかよ! それはまずい。まずいぞ!?」

「そ、そんなつもりじゃ。だって師匠も昨日……」

コリンの顔色が青ざめ、ひどく狼狽えている。

「真偽官に手を出したとなれば、死刑か、良くて終身奴隷だな。わしはちゃんと許してもらったが」

澄ました顔で剣聖が言う。弟子を助けてやる気はないようだが、まあ勝手に行動したのだ。仕方のないことなのだろうか。

「そ、そんな……俺、いつかエルド将軍みたいに剣で身を立てて……」

コリンは絶望的な表情を浮かべ、涙すら流している。帝国に仕官したいなら、もう一人ヤバいのがうちにはいるな。

「あー、ティリカ殿。できればあまり大事には……」

そう言ってフランチェスカが取り成してきた。

ティリカがこっちを見るので、別にいいんじゃないかと頷いておく。

「私の存在を知らなかったことでもあるし、今は私用でもある。謝罪があれば受け入れよう」

「あ、ありがとうございます。いえ、すいません。申し訳ありませんでした! このようなことは二度と致しませんのでどうかお許しを、真偽官様!」

「許す」

そう短くティリカが言い、コリンがようやくほっとした表情になった。

「良かったなあ、コリン」

そうザックがしみじみと言った。

「はい、ザックさん」

「ま、襲いかかって来たといっても、近寄るまでもなく私が倒したしね」

そうエリーが言う。自業自得とはいえ踏んだり蹴ったりだな、コリン。

「どうやって襲撃したか話してみなさい、コリン」

「はい、ホーネットさん。暗いうちから木陰に隠れて――」

コリンはあそこでかなり長いこと待っていたようだ。それを素通りしなくて良かったのか、悪かったのか。

見つかった時点で勝ち目はなかったはずだが、接近戦に持ち込めばどうにでもなると思ったらしい。やはり腕はかなりいいんだろうか?

そもそも何故襲撃したかというと、剣聖の真似がちょっとしてみたかったとか、昨日挨拶もなしに帰ったのが生意気だとかいう、割りとどうでもいい理由だったようだ。

それで人生終わりかけたのだから、さぞかし先程はショックだったことだろう。

「そうだ。マサル、プリンをだしてちょうだい。美味しいものを頂いた礼をしないと」

話してるうちに食後のお茶になり、エリーが言った。

そして配られたプリンを皆、うまいうまいと食べていたのだが、ブルー氏だけは動きが止まっていた。

「ナンダ……ナンダコレは」

そう言ってゆっくりとプリンを一口、巨大な手で器用にスプーンを使い、慎重に口に運んでいる。

「砂糖を使っているのはワカル。ダガこの食感に香り」

ひとしきり味わってからつぶやく。

「材料は砂糖に卵に馬乳に、香り付けはブランデーですね」

「卵に馬乳? 火を通すノカ?」

「砂糖と卵と馬乳をよく混ぜて蒸すんですよ」

「ムス?」

「ええとお湯で茹でるんですが……そんなに難しくはないし、あとで作り方を教えましょうか?」

細かい手順もあるし、やってみせたほうが早いな。

「オオ、頼む。コノようなモノは食べたことがない」

まあこっちではなかった料理だ。あとで唐揚げとかも作って差し入れようか。

「それで新しい子たちが増えたけどこの後は? 師匠」

ようやく食事も終わってホーネットさんが言った。

「修行の前に直に腕を見せてもらう」

「なら俺が!」

「いや、私が相手を」

ザックとアマンダが争うように言う。コリンはもう突っかかる元気はないらしいし、デランダル・カプランは興味がないようだ。

「マ、テ」

だがそこに地響きを立てるような野太い声がかかり、騒いでいたザックとアマンダがぴたりと動きを止めた。ブルー氏は恭しいと言っていいほどにゆっくりと味わって食べていたプリンの容器をコトリと置き、言った。

「ウマイものの礼ダ。ブルーブルーが相手をシヨウ」

そう言って普通の倍のサイズはあろうかという大きな椅子からその巨躯を持ち上げ、歯をむき出して獰猛な笑顔らしきものを俺たちに見せた。

「文句ハ、ナイナ?」

ブルー氏の体躯がミシリミシリと音を立て、ただでさえ巨大な体が倍ほどにも膨れ上がる。

ザックやアマンダはコクコクと頷きながら、一歩二歩と後ずさっている。

こっちには文句はあるのだが、とてもじゃないが言い出せるような雰囲気ではなさそうだ。

「死んだな、あいつら」

コリンが小さな声で呟いた。おいそこの、不吉なことを言うんじゃない!?

やっぱ今日は休むんだった……