軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

142話 王都の休日

話の流れでヒラギスのことが出たんだが、ウィルが一緒に行きたいと言い出した。

「お前、家出してきてんのに帝国方面に戻って大丈夫なのか?」

「それは……」

それにいくらウィルが強くなったといっても、こいつのところは新人ばかりのパーティだ。ヒラギスは危険過ぎる。

「ヒラギスは危険だぞ? お前の仲間も連れて行くのか? それとも仲間を捨てるのか? 仲直りしたばっかなんだろ?」

せっかく加護がついたのだが、こいつのことは一旦保留。現状維持だ。もうシラーちゃんがいることだし。

「いいか? お前が俺を信頼するのは、俺が常に信頼に足る行動をしていたからだ」

俺は家族の前以外では滅多にボロを出さないからな。

「もし俺が、力がついたからってすぐにそれまでの仲間を捨てるような人間なら、お前は信頼したか? しないだろう?」

「はい」

「そんな顔をするな。剣の聖地に着いたらゲートで迎えに行って修行はさせてやるから」

経験値もどこかで機会をみつけてがっつり稼がせたほうがいいかもな。シオリイの町がベースなら捕まえるのは難しくないだろう。

もし戦力がどうしても必要となったら何か考えよう。

「いずれお前の力が必要になる時がきっとくる。その時まで修行を怠るなよ?」

「はい、兄貴!」

とりあえずこの場はサティに任せて撤収することにした。

シラーがサティに挑んでいるが、付け焼き刃のレベル5ではまだまだ相手にならないようだ。だがさすがにレベル5だけあって、やるなら本気を出さないといけないだろう。いまの体調では付き合いきれない。

「先に休んでるからほどほどにな」

みんなは居間にいるだろうか? シラーちゃんのことを報告しないと。

居間に行くとみんな集まって、帝国行きルートの相談中のようだ。

「二つルートを考えたの」と、エリー。

元からの帝都を経由するAルート。帝都、エリーの実家、剣の聖地、砦と回る。

Bルートはまずは砦に向かい、剣の聖地、エリーの実家と回る。

Aルートは遠回りになるが利点もある。

「Bルートだと辺境を通るから魔物が出やすいのよ。帝都を回るルートだと、少なくともうちの実家近辺までは安全だし、道も宿もかなり整備されてるわ」

道はともかく、宿が整備されているのは利点だな。それにリリアの精霊フライなら移動速度もあるから、遠回りもさほど問題にならない。だが、

「Bだな」

シラーを鍛える必要があるから、魔物が出るなら都合がいい。

「シラーに加護がついた。魔物をついでに狩っていこう」

「あら、おめでとう」と、エリー。

「驚かないんだな?」

「サティがもうすぐだろうって言ってたしね。それで当の本人はどうしたの?」

「スキルを上げたからサティと力を試してるよ」

「加護がついたのにマサルを放置なんて、なかなかやるわね」

「シラーはずっと強くなりたがってたしな。今は舞い上がってるんだろう」

期待してなかったというと嘘になるが、まあ別にお相手には困ってないし? ガツガツすることもないし?

「今日は私の日」

そう言って、隣に座っていたティリカが身を寄せて腕を絡ませてきた。

お、ティリカが相手をしてくれるのか。俺もサティもここ数日大会にかまけてたし、ちょっとさみしかったのかな?

でもまだ午前中だけど……

「ルートの詳細は詰めておくから、休んで来ていいわよ」

「マサル、ほんとはまだあんまり動き回っちゃダメなんだからね?」

「我らに任せて休め休め」

昨日の説得が効いているようだ。

「じゃあお言葉に甘えようかな」

ティリカに引っ張られて俺の部屋へ。

服を脱いで寝てればいいの?

「マッサージしてあげる」

俺がサティにやってやったのを聞いて、どこかから教えてもらってきたようだ。

足からか……って、いて、いててててて。痛いよ!?

「体に悪いところがあると痛む」

足つぼマッサージだ、これ!?

「エルフに教えてもらった伝統のマッサージ」

足が終わったら順番に上のほうも満遍なくやってもらって、そっちは普通に、いやかなり気持ちいい。

この世界にマッサージ屋なるものは存在しない。回復魔法のほうが早いし確実だしで、商売にならないんだろう。

で、エルフが何のためにやっているかというと、ぶっちゃけエロ目的である。長命で長いこと夫婦をするエルフには、倦怠期をやり過ごすために色々な技術があるそうな。

「色々あるの?」

「色々。これはソフトなほうらしい」

エルフなんだからリリア経由じゃないのかと思ったが、実家には滅多に戻らないし、下々の者が王族に気軽にエロ話も出来ないと。

そうか、ここではマッサージはエロいのか。

ここからエロくなるのかと期待してたら、ソフトなマッサージは眠気を誘い――

気持ちよくて寝ちゃったらしい。そのまま寝かしておいてくれたようで、お昼もとっくに過ぎている。

もぞもぞしていると、隣で寝ていたティリカも起きだした。

マッサージは気持よくてすっきりしたけど、エロがなかったから下半身のすっきり感が足りてないな。

「ん、お腹すいた……」

どうしてやろうかと考えてると、起き抜けにティリカがそう呟いた。昼抜きだったから確かにお腹がかなり空いてるな。

「夕飯前だし、軽いのがいいかな?」

「何かもらってくる。待ってて」

食事が済んだらマッサージの続きをやってもらおうかな。それとも俺があれをティリカにやっても……

しばらく待っているとドアがノックされ、サティとティリカ、そしてシラーちゃんが食事を運び込んできてくれた。それがシラーちゃんがメイド服姿である。

「練習はもういいのか?」

「うん。ウィルが魔力の使いすぎで倒れた」

あいつも浮かれてたのかね。アホだなー。

それにして、シラーちゃんのメイド服姿。普段仕事用の装備か、私服もラフなのばっかだから新鮮だな。それにスリムなエルフのを借りたせいか、胸のあたりがきつきつで、誰の入れ知恵か知らないが実にいい。

「その……こんなひらひらした服着るのは初めてなんだが……」

「うんうん、よく似合ってる」

恥ずかしがる姿も新鮮だ。いいサプライズだわ。

だがしかし。給仕もするの? そりゃメイド服姿なんだし、そうするのが当然だろうけど。

たぶん初めての給仕。不器用。準備してるのは熱そうなスープ……もしかしてすっごく危険なんじゃ?

「それは自分で……」

「え、あっ!?」

「あっちぃいいいい!」

声をかけてしまったのがまずかったのだろう。俺の言葉で注意をそらしたシラーちゃんは、手に持ったアッツアツのスープの器を手から滑らせ、見事に俺にぶっかけてしまった。

「熱い! 水! 水!」

さらにパニックになったシラーちゃんが、水を取ろうとして運んできたワゴンを料理ごとなぎ倒す。

ようやく水で冷やしてヒールをかけた時には、部屋はひどい有様になっていた。

「うぅ……ごめんなさい、ごめんなさい……」

「ほら、これでマサル様を拭いて。こっちはやっておきますから」

サティは泣いてオロオロしてるシラーちゃんにタオルを渡すと、ティリカと一緒にてきぱきと後片付けを始めた。

しかしこれは……

シラーちゃんには悪いが、ひっくひっくと涙をすすり上げる猫耳メイドさんが、濡れた俺の各部を丁寧に拭いてくれるシチュエーションはそそるものがあるな。実にムラムラする。

シラーちゃんが泣いてるところを初めて見るから余計にだな。

「これはお仕置きが必要かな?」

「……しかるべき罰を与えるべき」

ティリカが乗ってくれた。俺がやるお仕置きとは基本エロいお仕置きである。

「おしりペンペンにしよう」

泣くのを止めて戸惑った顔のシラーちゃんの手を壁につかせてお尻を突き出させた。長いスカートを自分でめくらせる。鍛えたスラリとした足がとても素晴らしい。尻尾もスカートの中に隠れていた。

やばいな。嫌われちゃうかもしれないけど、がまんできない。

「パンツも邪魔だな」

もっさりとしたかぼちゃパンツが余計だ。お尻も見たい。

「そのままじっとしてる! これはお仕置きなんだから」

「は、はい……」

シラーちゃんのパンツに手をかけて、ゆっくりと――

■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■

シラーちゃんにマゾっけでもあったのか、サティとティリカと三人がかりでたっぷり可愛がったお陰か、フルコースが終わったあと恐る恐るメニューを確認してみると、むしろ忠誠度が上がっていた。

ミスに関しては奴隷が主人にあんなことをやらかしたのに、この程度の罰で済ませてもらって拍子抜けしたというところなようだ。

こっちの罰としての尻叩きは、棒で力いっぱいぶん殴る、時には死人が出る程のきっつい刑罰で、内心かなりびびっていたみたいだ。

怖がらせてごめんね、シラーちゃん。

その後の流れるようなエロ展開に関しては、エロ目的もありな奴隷なのはシラーちゃんもとっくに納得済みなこともあり、特に嫌がることもなく非常に協力的で、とても楽しませていただいた。

しかしこれで加護のテストケースとして買った奴隷ちゃん三人の結果が出揃ったわけだが……

最初の二人は明らかな選定ミスとして、シラーちゃんを落とすのにほぼ二ヶ月。最後はかなり強引にやってしまった。

成功といえばかなりな成功だし、いい戦力が手に入ったのだが、ウィルにもやったこの手法を推し進めると完璧宗教になってしまうな。

俺はガチで神の使徒なんだし、宗教でなんら問題もないんだろうけど、俺の理想としてはひとつ屋根の下で自然に愛が芽生えるみたいな感じがいいんだけどな。

でも自然に出会って信頼を育む、みたいなことを言っていられる状況でもないのは確かだ。

それに……たまたま出会っただけの俺に好意を抱いてくれた娘がいたとしても、間違いなく戦いの渦中、最前線に巻き込むことになる。

それならいっそシラーちゃんみたいな最初から戦う意志を持った娘を選んで行くのもありなのか?

いやそもそも、戦う気が薄いのって俺だけな気もするな。

魔物と戦うのが日常なこの世界では、それを納得するしないは別として、いつか戦いで命を落とすのも当然のことで、それに対して拒否反応を見せる俺のほうが異端なのかもしれない。

今度タマラちゃんにでも聞いてみるか。もし剣を持って戦えって言われたらどうするって。

それもまずいか? 俺がそんなことを言うと、悲壮な覚悟でやりますとか言いそうだ。

暗い中、ベッドで物思いに耽っていると、隣で寝ていたシラーちゃんがごそごそと抜けだした。おトイレかな?

今はすっかりやることもやり終わって、サティとティリカも自室に戻って、俺とシラーちゃんの二人きりだ。

ひゅん、ひゅんと音がしたので見ると、素振りをしていた。

「すまない。起こしてしまったか?」

「いや、今日は昼寝もしたからあんまり眠くないんだ」

「……もう一回するか?」

ちょっと声が嬉しそうなのは気のせいじゃないだろう。

「それもいいけど話をしよう」

「何を話す?」

「んー、これからどうしたいとか」

「もっと強くなりたい」

即答だな。というかこの娘はそれ以外ないのか?

「それならもうかなり強くなったよな」

「サティ姉様や主殿にはまだまだ及ばない」

「じゃあ俺たちくらい強くなれたら?」

「主殿もそれだけ強いのに修練は続けているではないか。もっと強くなりたいのだろう?」

「俺は別に」

ほどほどでいいなら修行なんていつでも打ち切るんだけどな。

「じゃあなんでいつもあんなに激しい修練をしているんだ?」

「俺は強くなりたんじゃなくて、強くならざるを得ないからやっているだけだ」

「どう違う?」

「例えばタマラは弱くても生きていけるだろう? でも俺は強くならないと死ぬんだ」

下手したら俺だけじゃない。世界ごと全滅もありうる。

「冒険者ならそんなの当たり前じゃないか。それが嫌なら領主の仕事をしていればいい」

そういえばシラーちゃんには、クエストが来たことをまだ言ってなかったのか。

「神様からクエストが来るから仕方ないんだよ」

「神様からクエストが来る?」

「ヒラギスに行けっていう神託が来たんだよ」

「それは……神殿が神託を受けて、主殿に命令を……?」

神殿? シラーちゃんにはどこまで……ああっ!? シラーちゃんにはスキルとステータス関連の話だけで、何にも話してない。

シラーちゃん、スキルを振ったらすぐに試したがって、話す隙がないんだもの。

「昼間与えた力はなんだと思ってたんだ?」

「主殿はなんだか素晴らしい力を持っているなと……」

どういうことなのか気にならなかったのかよ。ウィルはすぐに根掘り葉掘り聞いてきたのに、これは性格の違いか?

「だって普段から色々と秘密にしてるじゃないか。これも聞いちゃダメなのかと」

それもそうだ。

「つまりだな、俺は神に遣わされた神の使徒で、直接神託を受けたりこんな力があったりするような人間なわけだ」

「いや……なんだか、それは」

すぐには信じがたいようだ。

「疑わしい? ならアンとティリカに聞いてみたらどうだ?」

「神官に真偽官……エルフも?」

「エルフも知っている。あそこも神託があって助けに行ったからな」

「だからみんな、サティ姉様やティリカ姉様も主殿にあんなに……」

「いやいや、違うよ。シラーだって、今の今までこのことは教えて貰わなかっただろう? 加護が付かなきゃ、神様のことは話さないんだ」

力のお陰はあるにせよ、俺が愛されてるのは神様のお陰じゃ断じてない。

「そうだな。私も主殿の戦いぶりを見て……」

「惚れた?」

シラーちゃんが顔を赤くしたのは、暗くても暗視でよく見えた。

「私は、主殿がラザード殿との決着を、やるからには勝つと言ったのを……」

ああ、そんなことも言ってたな。あれはそのうちって思って言ったのに、結果としてすぐに決着を付ける時がきちゃったけど。

「ラザード殿があれほどの相手だとは思わなかったのだ」

ほんとにな。

「だが主殿は私との約束を守ってくれた」

サティがもうひと押しだと言っていたのはこのことだったのか。

シラーちゃんのことを考えて戦っていたわけではないが、ああやって必死で戦って、死にかけてまで勝った価値は十分にあったようだ。