軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

12話 理想と現実

飲みすぎた。起きると二日酔いだった。【ヒール】をかけてみる。違うな、これじゃ治らない。

なんて言ってたっけ。体内の毒素を消すのか。体内に残っているアルコール分をとばす。魔力を体内に巡らせ【ヒール】を発動。うむ。痛みが消えた。

やっと頭がすっきりしてきた。アイテムから水を取り出し飲む。今日の予定を考える。まず治療院にいって訓練。終わったら商業ギルドに行って大猪を売る。売ったお金で防具を新調する。結構忙しい。2日後には調査隊も控えているし、日本にいた頃には考えられない忙しさだ。あの漫画の続きはどうなっただろうか。もう2週分読んでない。あのアニメも途中だ。ネットもしたい。某掲示板に書き込みしたい……ああ、いかん。考えると鬱になってきた。やめやめ。アンジェラさんに会いに行こう。

治療院につくと人だかりができていた。何かあったんだろうか。裏口に回り中に入るとアンジェラたちが待っていた。

「遅いよマサル」

「外、人がいっぱいでしたが何かあったんですか?」

「あれね。マサルのために特別に集めた練習台たち。存分に回復魔法をかけてやって欲しい」

改めて様子を見る。待合室はすでに人でいっぱいで、外にまで行列が続いてる。

「昨日のうちに子供たちに宣伝してもらってね。魔力切れるまでの先着順で無料って言ったら来るわ来るわ」

「ほんとびっくりしたわー。さすがにこんなには無理よねえ。少し帰ってもらおうか?」

「いえ、やります。少し待ってください。覚悟を決めますので……」

スキルリストを開く。まずはMP消費量減少を取る。レベル1で10%、レベル2にして20%で7P消費。MP回復力アップレベル1で50%、レベル2で100%の増加。これで7Pで残り6P。

あれ?回復魔法知らない間に2になってたな?いつのまに……。とりあえず回復魔法を3にあげる。残り3をさらにMP消費量減少にいれる。これで使い切った。

【MP消費量減少Lv3】MPの消費量を30%減らす。

【MP回復力アップLv2】MPの回復力を100%増加。

【回復魔法Lv3】ヒール(小) ヒール 解毒 リジェネーション 病気治癒

総力戦だ!出し惜しみはしない。

「準備できました。順番に通してください」

まず入ったのは腰の曲がったしわくちゃのお婆さんだった。

「腰が痛くてのう。朝一から並んどったんじゃ。ただで治してくれるちゅうて、ありがたやありがたや」

どうすんのこれ……病気じゃなくて老化現象だろ、これ。

わからないときはまず【ヒール】ついでに【解毒】と【病気治癒】もかけておく。

「おおおおおおお、腰が!腰が治ったわあああ。ありがたやありがたや」

腰を伸ばしてまっすぐ出て行った。アンジェラにお茶を渡されたので飲む。

「あんな感じでよかったの?」

「いいんじゃない?すごく喜んでたじゃない。それよりも」

序盤はジジババ連中らしい。連れ立って暗いうちからやってきて先頭を確保してたんだそうだ。

MPをチェックする。いまので9消費だが、すでに2ほど回復してるようだ。計算では2分で1MP回復の計算だが、お茶の効果だろうか。思ったより早い。

次のじじばばが入ってくる。同じように【ヒール】【解毒】【病気治癒】かけると「体が軽い!」といって喜んで出て行った。どんどん人を入れていく。残りMP230。思ったより減るペースが早い。

アンジェラからお茶を渡される。飲もうとして気がついた。なんかどろりとしてるけど。

「何これ?」

「マギ茶(魔法回復のお茶)の濃縮液よ。さあ、ぐっと飲んで!」

思い切って飲む。どろりとして苦い。とんでもなくまずい。急いでお茶で流し込む。

「すっげえまずい……」

「でもよく効くでしょ。どうしてもってときの最終兵器なんだよ」

「MPポーションは?」

「あれは高いからね……。ほら次の患者が待ってるよ」

ジジババが減らない。心を無にして回復魔法をかけていく。濃縮マギ茶を飲む。

「あれ?次は?」

患者の波が途絶えた。待合室をのぞくと誰もいない。終わった?いや、そんなはずはない。

「なんか人がどんどん増えちゃってね。道にもあふれてどうしようもなくなったから、神殿のほうに移ってもらったんだよ。あそこのホールは広いから」

神殿は人であふれてた。ホールの一番奥。でかい中央の神像の前に机やら台やらがセットしてあった。みんなから丸見えである。あそこで治療すんのか?くらくらしてきた。

「ちょっと無理。あんなに人がいっぱい……」

「そうねえ。ついたてでも立てましょうか?」

尼さんが準備してくると言ってどっかにいった。

「おれ目立つの苦手なんだよ!もう吐きそうになってきたよ!」

「あ、ちょっと待ってね。いいものがあるよ」

アンジェラも取ってくる!と言ってどこかに行った。おれは神殿ホールの脇で一人震えていた。

急にメニューが開く。

【緊急クエスト 全力で治療せよ!】

力の限り治療せよ!撤退は許されない。報酬スキルポイント10

クエストを受けますか? YES/NO

尼さんがついたてを準備している。アンジェラも戻ってきた。

「ほら、これ」

帽子と仮面、ゆったりとした白いローブ。アンジェラにつけてもらう。

「うんうん、帽子とローブは司祭様のだけどなかなか似合ってるじゃない。仮面もしておけば中が誰だかわからないよ。ほら、あっちも準備できたみたいだよ」

クエストが点滅している。NOを選択した。力の限りやっても無理なものは無理だ!

嫌がるおれを神父とアンジェラは、連行されるグレイのようについたての向こうに連れて行った。あああ、アンジェラのおっぱいがあたってるよ!ちょっと嬉しい!

「さあそろそろ人をいれるからね。がんばりなさい」

最初の患者が入ってくる。指に包帯を巻いている。単なる骨折だったのでさくっと【ヒール】をかける。次の患者は喉が痛いという。口をあけて喉をみてみれば扁桃腺が腫れている。風邪のひきはじめか?ヒールと病気治癒をかける。合間合間にお茶を飲む。残りMP150。

患者が次々にやってくるのを淡々とヒールをかけていく。おおむね軽症か、持病の類だ。持病などヒール一発で治るはずもないんだが、症状は軽くなるみたいなのでそれで満足して帰っていく。包丁で指をきったというおばちゃんが来たときはイラっときたが、黙ってヒール(小)をかけて帰ってもらった。

「小さな怪我でも回復魔法かけてもらうとなったら、それなりにお金がかかるからね。普段は自然治癒で治すような人がいっぱい来てるんだよ」

かすり傷ごときで貴重なMPを消費させられるほうはたまらんが。

「何事も経験だよ、経験」

数人、何事もなく治療したあと男の人に抱っこされた小さな子供がやってきた。えらく具合が悪そうだ。診察台に寝かせて様子を見る。

「ここ数日、咳がひどくてだんだん……」

何故こんなになるまで放って置いたのかは聞かなかった。父親も子供もずいぶんと貧しい身なりをしていたからだ。子供は痩せこけている。栄養状態も悪いんだろう。ヒールと病気治癒をかけ、アイテムから野ウサギの肉を取り出し、包んで渡す。

「他の人には秘密ですよ?お子さんに食べさせてあげてください」

男の人はぺこぺこ頭を下げて出て行った。

「なあ……」

「言いたいこともわかるよ。でも全員救うことなんて神様でもなければ無理なんだよ。うちはかなり格安でやってるんだけど、それでも治療を受けるお金はないって人はたくさんいる。あんたが気に病むことはないよ」

「じゃあ、せめて具合の悪そうな人は優先して連れて来るようにしてくれ」

「わかった」

そこからは具合の悪い人が何人も運ばれてきた。自力で歩けないような人ばかりだ。状態のひどい場合、ヒールを何度もかけないといけないし、それでも治らないほど重篤な人もいた。無理ですと告げてもこちらを責めるようなことはなかった。最後に治癒士様に回復魔法をかけていただいてよかったと喜ぶ始末だ。何度回復魔法をかけても、まったく具合のよくならない患者とか相手をさせられるこっちが災難である。医者でもなんでもない、魔法を覚えたての素人にやらせるようなことじゃないだろう……

濃縮マギ茶も我慢して飲んだがみるみるMPが減っていく。アンジェラや神父さんたちも協力してくれたが焼け石に水だ。

ついにMPが尽きた。

「魔力が切れた」

神殿ホールの入り口は閉鎖して人はもういれないようにしてあったが、まだ半分以上人が残ってる。

「具合の悪い人だけ残してあとは帰してくれないか。その人たちだけは休憩してからみるよ」

「別に無理してみる必要はないんだよ?みんなには魔力が尽きたら終わりだってちゃんと言ってあるからね」

「大丈夫。無理はしてないよ」

来る人来る人、みるからに貧乏で、痩せこけて、すがるような目でこちらを見てくるのだ。それを追い返せるほどおれの心臓は強くない。

ホールにいた人たちは特に不満を口にすることなく解散していった。もとより無料での治療など奇跡のようなもの。途中からは具合の悪い人が優先されたのを見ていたが、ここにいるもののほとんどは似たような境遇のものたちばかり。明日は我が身である。

食欲はなかったので野菜の入ったスープだけで食事を済ませた。

「なあ、なんであんなのがたくさんいるんだ?」

「そりゃあ貧乏でお金がないから治療を受けられないんだよ」

「治療してやったらダメなのか?」

「だめだね。治癒術師は数が足りない。あそこにいる人を全部治したとしても、別のところの病人が困るだけさ。マサルもうちがかつかつでやっているのを見てるでしょ。無理して魔力を使い切るまでやると確実に寿命が縮むよ」

「もっと回復魔法の使い手を増やせばいいんじゃないか?」

「魔法使い自体数が少ないし、そのなかで回復魔法の適性があるのはもっと少ないんだよ。ヒールくらいなら使える人はそこそこいるけど、上位の回復魔法までとなるとね」

レベル4、5まで回復魔法をあげたらもっと救える人が増えたんだろうか。

「増やす努力はしているよ。だけど優秀なのは前線に送られるんだ。こんな平和な町よりもよっぽど必要だからね」

「前線?」

「ここだとゴルバス砦が近い。あそこが抜かれたらここも危ないから、人が欲しいって言われたら断れないし」

どこかと戦っているのか。

「そんなにやばいの?」

「心配することはないよ。あそこはがっちがちの要塞だからね。モンスター風情には落とせないよ」

伊藤神の言ったことが思い出される。20年以内にこの世界は滅亡する。その要塞も落ちるってことだろう。この町も全然安全じゃない。伊藤神は好きにしろと言ったが、こんな前線に配置するとかやらせる気まんまんじゃねーか……伊藤神め。

濃縮マギ茶はMP回復にとてもよく効く。苦くてまずいけど。しかもどろりとしているのだ。喉越しは最悪である。

「子供たちに作ってもらってるからどんどん飲んで」

ありがたいことである。まずいけど。まずいけど!

だがそうでもしないとMPがかつかつである。

休憩後の治療も困難を極めた。そんな今にも死にそうな子供とか連れてくんなっつーの!MPを使い果たしても助けられればそれでもいい。だが2人ほどは匙を投げるしかなかった。アンジェラたちも黙って首を振る。泣きそうである。たぶん泣いていた。仮面をしていてよかった……

午後なかばくらいでようやくホールの患者はいなくなった。

ふらふらになりながら宿に戻って、その日は泥のように眠った。

翌朝、メニューで確認すると、魔力とMPが少しだけ上がってた。

山野マサル ヒューマン 魔法剣士

【称号】野ウサギハンター

野ウサギと死闘を繰り広げた男

ギルドランクE

レベル5

HP 208/104+104

MP 302/151+151

力 28+28

体力 29+29

敏捷 18

器用 22

魔力 43

スキル 0P

剣術Lv4 肉体強化Lv2 スキルリセット ラズグラドワールド標準語

生活魔法 時計 火魔法Lv3

盾Lv2 回避Lv1 槍術Lv1 格闘術Lv1 体力回復強化 根性

弓術Lv1 投擲術Lv2 隠密Lv2 忍び足Lv2 気配察知Lv2

魔力感知Lv1 回復魔法Lv3 コモン魔法 MP消費量減少Lv3

MP回復力アップLv2