軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

20層 トカゲは所詮トカゲ

一区切りとなる20層、そこは異様な程に広く、家が何軒もすっぽり入ってしまいそうな具合であった。さらには洞窟のような地形で膝下まで浸水したフィールドとなっている。

今まで同様裸足なので靴下が濡れる心配は無いが、なんか浸水って汚いから嫌な気持ちにはなる。

顔をしかめつつ剣と棒を構えた。

「お、ボスですかいな」

ボスらしき敵影が部屋の端の方に居た。

途中出くわしたリザードマンのでかい版。

ドラゴンとはいかないにしても、かなり圧を感じさせる歴戦のリザードマンといった風貌であった。

「シュァァ!」

「お、元気だな! あーた、見ない間にこんなに大きくなって、遺言はそれで大丈夫そ?」

「シュゥアア!!!」

耳をつんざくような奇声が響くと、ヤツと俺の間に大量の取り巻きリザードマンが湧きた出した。

その数、いち、に……十、――あれ止まんねぇな?

叫び声は止んでいるのに、雑魚が無限に湧いてくる。このままだとボス部屋が埋め尽くされて窒息死してしまうかもしれない。

「物量作戦にも限度があるだろ! どうせ窒息死するなら無限のおっぱおがいいっ!」

駆け出す。

幸いなことに湧きの範囲は親玉の周囲だけらしく、湧いて前進、空いた隙間に湧いて前進を繰り返した進軍をしている。今の段階ならまだ囲まれる物量ではない。

「ふんっ! ですよね、埒が明かないやつっすよねー」

攻撃でまとめて倒せる数を、湧く数が大きく上回っている。範囲攻撃系のスキルでもあれば別だろうが、一点突破でボスを討伐するのが最適解だろう。転移で背後をとれなくもないが、それは俺のマイルールに反する。あれはピンチ過ぎて死ぬ時か、楽するための移動手段としてしか使うつもりはない。だっておもんないし、万が一転移が使えなくなった時にどうしようもなくなってしまうから。

――剣を収納して突っ張り棒を槍のように構える。

タイミングはこの際いつでもいい。ただ、走る。

リザードマンの雑兵の間合いに入る直前、突っ張り棒を地面に叩きつけ、一気に跳ぶ。

「ふらいはーい!」

棒高跳び世界記録を超えた自信しかないほど跳躍し、クルッと回って無駄に広い空間の天井に足の裏をつけた。

無限湧きしようと、そこに高さの伸びは生じない。

上がお留守ってワケだ。

―― 天井(足場) を蹴る。

剣に持ち変え、真上から重みを乗せて叩き斬る。

「…………色んな技名思い浮かんだけど全部怒られそうだからやめた斬り!」

リザードマンのボスは呆気なく縦に真っ二つになった。

そして取り巻きと一緒に薄黒い霧となって消えていく。ドロップは、当然のように無い。

「時間は……よし、学校まであと八時間近くあるな」

ギリギリまでボスの周回をしよう。

ドロップを拝むまでは勉強なんて手につかない。

ま、俺の豪運にかかれば次辺りで出るだろうけどな。

「せーの」

「はい。出ないね、知ってた」

この世にフラグという現象の存在証明が成ってしまった。QED、証明終了。

ともあれ、時刻は月曜の朝七時。始業のチャイムがあと二時間近くで鳴るだろう。これでラストにしようかな。

「階段リターン! そして舞い戻りし俺!」

階段に戻って再度ボス部屋へ。

通算二百くらい。めんどくさくて数えてない。

どうせ一、二分で片付くので数える価値も無い。

「即殺……あれ、リザードマンさんどこ?」

見敵必殺と駆け出していたところなのだが、ボス部屋には誰も居なかった。

困惑していると、部屋の四方の壁、その上部から急に滝のように水が流れ落ちてきた。

「なになになになに!?」

異変を感じて、大慌てで 正装(水着) に着替える。

まず間違いなく水没する気がしてならなかったのだ。

清らかな水が部屋を満たすと、 そ(・) れ(・) は陽炎のようにゆらりと出現した。とんでもなく無駄にでかいボス部屋だと思っていたが、この時のためだったらしい。

東京ドームほどの巨大な空間の部屋に見合ったサイズの、大きな大きな漆黒のクジラが満を持してお出まししてきたのである。