軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

13層 やっとこさ配信要素

水没した階段を歩き13層へ降りると、そこは変わらず――いや、今度は頭上まで完全に水だけの空間であった。だが、水中にモンスターは見えない。とりあえずマッピング、と思ったが、よく考えたらいつも描いてるスマホは配信サイトで生配信中であり、画面や処理の重さのことを考えるとマッピングできない。

特に目印とかも無さそうだし、一旦海底の宝箱探しだけすることにした。

「さっきより明るいなー」

サメのいたところの方が海っぽい感じがしたのだが、こちらは光が近いような気がする。

「水没した階層で宝箱に擬態したモンスターの……あ、思い出した、ミミックか。あれで足とか噛んで窒息させる戦法とかありだし、やられる可能性もあるよなー」

残念なのは、【罠作成】にモンスターを組み込めないところと、モンスターを相手取るのに、水中階層とそれに適したモンスターでは窒息が狙えそうにない点だろう。

俺はされても問題無いが、戦闘中にやられたら厄介だし一応警戒しておこう。今のところダンジョンで罠らしい罠が無いのが逆に怖いまであるからな。

「ふむ、宝箱、無し!」

というか狭すぎる。

上の階層の十分の一もないくらいの狭さだ。階段も見当たらないし。逆転の発想かと思い、浮力が作用しないので地上と同じようにジャンプして天井をタッチ。

「おろ?」

見渡してみると、一際光が強い地点があった。

そちらに転移してみると――光の先には地上が。

「よっこいせっと。階段の先は湖の中だったってわけか」

とはいえ、俺の這い上がってきた音を聞きつけてモンスターがお出ましだ。

階層の特徴としては、洞窟の中にさっき出てきた湖のような場所が点在している感じ。そして俺を囲っているモンスターは――――。

「えー、君たち喋れたりしない? ほら、ファンタジー作品だと、リザードマン系って割と友好的だしさ」

「ラゥァァア!!」

「リヤァウ!!」

「はい。今度はラ行ですかそうですか。いや、待てよ? ゴブ共は“ギ”から始まってたから進歩している、のか……?」

数は10、警戒するように威嚇している彼ら? の手には金属製のサーベルが握られていた。

「うん! やるやんリザードマン君! あ、ドラゴニュートとかそこら辺の似た呼び方あるか。違い知らんけどっ!」

枕から相棒の“ 塵舞(じんぶ) ”を抜いて駆ける。

一点突破で二体まとめて首を飛ばす。

「っぱデカブツで飛ばすなら首よな! しゃおら! ゴブ以外の人型久しぶりで滾ってくるなァ! こいよ爬虫類! 哺乳類様が格の違いってのを教えてやるよ!」

接敵してまとめて武器を横薙ぎで吹き飛ばし、そのまま突きで串刺しにする。背後を強襲してきた個体もいたが、それは潜ませていた強化突っ張り棒で脳天を小突いてノックバックさせる。そのまま回し蹴りで顔面を抉って吹き飛ばした。

息絶えて黒い霧になったのを確認して残り五体。

お次は弱点探しのお時間だ。

「さぁ、本日もやって参りました! モンスター解体新書のお時間です。いやー、どうでしょう、解説の 八百枝(やおえだ) さん。今日のターゲットはリザードマンのようですが」

あ、そういえば配信してる……ま、いっか。苗字くらいね。どうせ誰も見てへんみてへん。

「そうですねー。実況の 八百枝(やおえだ) さん。今回は……おっと危ない。基本的に攻撃は近接攻撃がメインでしょうか。パッと見個体差もありませんし、ゴブリンのようにドロップ全種集める地獄を味わうこともないといいのですが。軽く切ってみましょうか」

今の武器だとオーバーキル気味だったので、市販のナイフに持ち替える。攻撃を回避しつつ正面から攻撃してみると、通常のゴブリン並の耐久だと分かった。だが、少し角度をつけるとナイフが折れる。

「折れたー! ……どうやら体の後ろ側はあの鱗で頑丈になっているようですね。それっ、はい、やはり関節の隙間に刺すと深々と入りますね」

しばらく検証して匂いや音には鈍く、視覚と痛覚が鋭いように感じた。

最後の一体も仕留めて魔石を回収。

「これでリザードマンジェネラルとか出てきたら焼き増しでダンジョンの製作者を訴えよう。覚悟の準備をしておいて下さい」

せっかく水フィールドで面白そうなのにこんなのが続くようだったらセンスがカス過ぎて聖人の俺でも罵る。

時間の確認のためスマホを防水の袋から出した見てみる。昼を過ぎたくらいの時間だった。

「キリもいいし、実質地上だしメシにするかー」

そう思い、枕からサメの背びれを取り出した。

調理法を調べるも、お湯やら出汁やらが必要らしい。

「…………めんどいし丸かじりでいっか。高級食材なら素材の味も美味いだろ」

そうしてそのままかぶりついた。

食べたことのない味に眉をひそめながら配信の方のトラブルは無いかと確認してみると、そこには驚愕の数字が映っていた。

めちゃくちゃ驚いて思わずフカヒレ(生)を落とし――なんてことにはならず、【平常運転】のせいで表情筋を特に動かすことなく眺めた。

いちじゅう……

「これ何人見てんすか? バグ?」

コメント欄を開いてみる。

――上位チャット(一部翻訳済み)同時接続数:218,781――

:やっと気付いた!

:うお

:みってる〜?

:やおえだお前ネットやとバリおもろいやん笑 たまには学校来いよ! とりあえず明日は球技大会やから絶対来い笑

:20万人やぞ

:外国人も結構いるし、内容的にも残当

:ちくわ大明神

:あなたはとても勇敢です。しかし、私はその危険性について問いたい。あなたの思考は危険なものになりつつあります。

:平日昼、学生……妙だな?

:とりあえず服着ろ

:すげぇ、今のチャットって自動翻訳機能あるんやな。精度はともかく

:年収いくら?

:人類の最前線やぞもっと誇れ

:フカヒレ生かじりとはイカれてやがるぜスライム愛飲ニキ! そこにシビれる憧れるぅ!

:昼休みで見てるんだけどみんなもそんな感じ?

:こんにちは!

:服着てくれ

――――

流れが速くて読む気起きねぇ。

三行以上読んでられるか。俺はバクバクと食べ切り、枕からタオルを取り出した。

「ちょいまち。いいこと思いついた」

――上位チャット(一部翻訳済み)同時接続数:223,039――

:ん?

:なんだなんだ

:ザワザワ……

:く、くる

:お、カメラ伏せた?

:何も見えないよー

:ん?

:布……

:おいおい嘘だろ

:衣擦れ音ASMRですか?

――――

一応カメラを地面に向けてタオルで体を拭く。ちなみに今全裸なのでカメラが転がったりしたら――――

「〇び太さんのドブルイニャ・ニキチッチ!!」

――上位チャット(一部翻訳済み)同時接続数:241,560――

:理不尽すぐる

:四次元っぽい枕? との関連性もあるな! よし!

:あいついつからドラゴンスレイヤーに? 映画ならありそうだけど

:草

:この一般人、生配信初回でやるボケの難易度が異次元すぎる

:勝手に着替えてるだけだろ

:水着姿よかったのに

:これ以上のいいことってなんだろ

:やおえだパイセンの偉業(スライムドリンク、人類最前線、20万人を前に初配信で生着替え←new!)

――――

よし、制服に着替え直してっと。

枕からサングラスを手に取った。そしてカメラを持ち上げ、岩場に設置。スマホで見た感じアングルも完璧だ。

「20万人だっけ?」

――上位チャット(一部翻訳済み)同時接続数:250,823――

:もう25万やで

:お、おう

:なんだなんだ

:ザワザワ

:ザワザワ

――――

俺はサングラスをかけて高笑いしてからできるだけ声を寄せる。

「見ろ! 人がゴミのようだ!」

言えたぜ!