軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

7層 下振れの極み

奇声で怯ませた。

ほんの一瞬だけ。そしてヘイトを買ったのか、振り向きざまに左手を素手で振り抜いてきた。

思ったより復帰が早かったがこれも回避。

コマンダー10体に、明らか動きが段違いのジェネラルとか――ジェネラルさんが酷使されてるのが想像に易い。

バフゴリ押しとは、乱数の神は脳みそが筋肉でてきているんだろうか。俺はジェネラルがこちらに急接近したのを確認してからコマンダーの背後へ転移。

「危ないっ!」

「は? っ……!!」

助けた人の一人が危険を知らせてくれて、咄嗟に元の場所へ転移。

その直後、コマンダーの背後で砂埃が舞う。

転移の速度に、素の速度で追いついてきたらしい。

ハッキリ言おう。俺の手に負えなくね?

「……あの、一旦逃げません?」

「そうねぇ。そうしたいのは山々なんだけど――」

「私は残ります。ここで倒さないと、犠牲者が出ます」

おっとりした性格がその茶髪ゆるふわウェーブにも表れている魔女コスプレさんは俺に賛成らしい。一方、そんな彼女のお仲間、透き通るような青い髪を肩下まで垂らした眼鏡っ娘は見た目通り真面目らしく、聖剣と言われても納得するほど豪華な装飾の剣を構えてジェネラルを睨んでいる。

ま、悠長に自己紹介してる暇はない。ジェネラルは舐めプ気味なのか、誰から殺そうかとニヤニヤ気持ち悪い表情を浮かべながら選んでいるようだったが、その気になれば瞬きの後には目の前にいてもおかしくない。

「決定打は?」

「……この剣なら傷はつきます」

「わたしの魔法スキルは無理ねぇ。何度かバフ要員狙ってみたんだけど、あいつら同士でも強化して、強化したバフで範囲を広げて全体にバフしてる感じみたいだから――魔法か何かで防がれたわ」

なるほど、コマンダー同士で強化することで強化スキルを強化、ってことか。ややこしいな。結果的には全員がとんでもない強化を受けててコマンダー自体も自己防衛の手段があるということだろう。

俺も接近して倒そうものならその防御系の魔法でもたついてる間にジェネラルに殺されそうだ。

よし、これは俺らだけでどうにかなる相手じゃないな。そうと決まれば作戦も決定だ。

「じゃあ協力して倒す方向で! お姉さんは階段で寝てる自衛隊員を起こして連れてきてください! メガネさんは俺と耐久戦!」

「分かったわ」

「……了解です」

俺は調子に乗っているジェネラルの気を引きつけるため、やつの股下に横向きに転移。

「へいへーい!」

拳が降ってくるので今度はヤツの頭上にマーキングして転移、攻撃はせず頭に足を乗せる。

「あっれー? ここ土足でいいっすかねー?」

ペシペシとバランスをとりながら踏みつけると、イラッときたのか、ジェネラルは殴ってきた。

今度はヤツの背後にかがむ形で転移。

股間を蹴り上げて遊んでいると、メガネさんが剣を振り下ろす。

「避けてください、【光煌龍】!」

「わお」

彼女の横に転移で回避すると、光り輝く龍が奔流となってジェネラルを飲み込んだ。めちゃくちゃかっこいい。

それはそれとして――ジェネラルは健在だ。

一応守る体勢はとっていたようだが、大した消耗は見られない。まだムカつく余裕な笑みを浮かべている。もしかして強さに応じて知能も高くなっていたりするんだろうか。先程のジェネラルより人間くさいというか、野生の殺意よりも弄ぼうという嗜虐心がチラついているように思える。

「グギャィ♪」

ジェネラルの姿がぶれる。

速すぎて目で追えなかった。

「上です!」

そう言いながらメガネさんは剣で攻撃を防いでくれた。ジェネラルの体重を乗せた両手を組んだ振り下ろしは、剣で完全に防がれているものの威力を殺しきれずダンジョンの床が砕けていた。

俺なら足が粉砕骨折してそうなものだが、青い髪色からして何かしらの強化系のスキルを使っているのだろう。苦虫を噛み潰したような表情で睨んでいるものの痛がっている様子はない。

今のうちにとコマンダーへ転移。

しかし空中を蹴ってこちらにジェネラルが文字通りカッ飛んできた。

鍔迫り合い(片方生身)の押し負けから彼女を解放しただけよしとして退避。

するとまた高速移動で攻撃を仕掛けてきた。

だが、妙なことに走り出す直前で足元が光っていたように見えた。

さっきと同じように空中からの攻撃をメガネさんが防ぐ。同じ流れで対策もできたようで、鍔迫り合いの状態で剣先から光の龍を飛ばして回り込ませて攻撃していた。

「同じ手が通じるとでも?」

ああ、マズイ。気付いていない。コマンダーへの攻撃を仕掛けようか迷っていたが、それどころではなさそうだ。

避けろで通じるか?

いや、そもそも地面の中を走る影の範囲的に、油断している彼女では間に合わない。

これだからチーム戦は嫌いなんだ、なんて心の中で軽く愚痴りながら俺はその場で回し蹴りを始め――

「グギャギャ!」

「何……っ!?」

嗤(わら) うジェネラルに、足元に迫る影に顔が強ばるメガネさん。

俺は渾身の回し蹴りをかますところで転移した。

座標は当然 メ(・) ガ(・) ネ(・) さ(・) ん(・) 。

「 足蹴(あしげ) 失礼しゃっす!」

俺は彼女を蹴って敵の攻撃を無理やり回避させ、転移で脱出――したはいいが、吹き飛ばしたメガネさんの方にジェネラルが追撃をしに行っていた。

吹き飛ばしたことで剣を構える余裕もなく、歪な笑みの将軍によって、その有り余る膂力をもってホコリでも振り払うかのように吹き飛ばされた。

――俺が。

「ライフでうけ……いっだぁ!!?」

情けなく吹っ飛ばされて剥き出しの壁に激突して色んなところから血が出るわ、骨がバキバキで変な方に腕が曲がってたり肋骨が内臓に……といった重症具合で転がされた。

いやー、体が勝手にって実際あるもんなんですなー。

なんて馬鹿なことを考えているが、もはや立つことはできない。

「っ、【光煌龍〗】!」

なんとか隙を作ってピンチは免れたようだ。加勢したいところだが申し訳ない。しかしまずいな増援、それも自衛隊員に動いてもらうとなると往復でここまで来るのにまだ時間は欲しい。

……よく考えたら俺が転移で呼ぶだけ呼べばよかったのでは?

動けなくなったからこそ無駄に頭が回ってしまう。もう今更だからどうしようもないけどさ。

あーまずい。あっちはあっちで囮役の俺がいなくなって押され気味。こっちはこっちで自分が死に近付いていっているのヒシヒシと感じ――あれ、思ったより平気かもしれない。

ま、まあ、体がしばらく動きそうもないのは事実だ。

「くっ……」

「グギャギィャ!」

高速移動を活かしたジェネラルによる変則的な打撃がメガネさんを襲う。かろうじて受け止めているが、防戦一方で疲労は蓄積していっている。

――だが、その防戦は無駄ではなかった。

「【五行拳・ 焔(ほむら) 】!」

絶望的な戦場に、太陽のような花が咲き誇ったのだ。