軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第五話  決闘のルール。

次代の国王の発言となれば、それは極めて重要な意味を持つ。

それを知る貴族達とソラはすぐさま現国王を見た。

次代国王である王太子の発言を翻せるとしたら現国王のみ。だが、国王は口を噤んで微動だにしなかった。

王太子の発言を否定してケチがつくのを嫌ったのだ。

それを見て取った大人達は問題のソラ、チャフ、王太子の三名を見守る。

王太子は反応を返さないソラとチャフを見て、意図が伝わっていないと勘違いした。

「君達の名前を出して国軍から参加者を募れば互いへの期待の違いによる戦力差になる。その上で自らの才覚で将兵を指揮して戦えばいいよ」

十歳とは思えない明快な解決方法である。帝王学のなせる技か、はたまた王太子の才覚か。いずれにしても、ソラには覆すことが出来ない。

この期に及んで決闘を逃げるのは王太子の好意を無駄にするのと同義であり、王太子の誕生日祝賀会でそれをするのは王家に喧嘩を売ったも同然だ。

──完全に外堀を埋められた……!

ソラは状況を理解するやいなや即座に頭を急速回転させる。

まずは勝率を五割以上にもっていかなくてはならない。

“貫陣のトライネン”の息子と“脂豚のクラインセルト”の息子、どちらかにつけと言われた将兵の選択は決まっている。圧倒的な人数差になるのは間違いない。

「殿下、人数に上限を設けるべきです。死者は出なくとも精鋭である国軍の将兵がぶつかれば怪我人が多数出る事が予想されます。いたずらに国力を落とすのは私どもの望むところではありません」

ソラが人数上限の設定を促す。

王太子はソラが乗ってきたのが嬉しいのかすぐに頷いた。

「分かった。人数は二十人までにしよう」

チャフに視線を向けると異論はないらしく余裕綽々といった様子で頷いた。

当然だろう。武人に絶大な人気を誇るトライネン伯爵家の跡継ぎだ。一回くらいその指揮に従ってみたい将兵が大勢名乗り出てくるのは想像に難くない。とびきり優秀な武人を選りすぐれば一兵の実力差から勝ちは揺るがない。

ソラとチャフで人数差がつき過ぎれば決闘をするまでもないと判断されてなあなあで済まされかねない。人数の設定はチャフも望む所だった。

次はチャフが口を開く。

「魔法に関してはどうしますか?」

ソラは内心で焦った。魔法を使用可能なら、攻撃的な魔法を知らないソラと武家のチャフとでは採れる戦略に大きな差がでてしまう。

「魔法はなしにしよう。将兵を傷つけるのは良くないとの事だからね。勿論、魔法を使って作られた武器を使ったりするのは問題なし。大将を抵抗できない状態にするか、降参させれば勝ち」

王太子の言葉にソラは内心ほっとした。

「抵抗できない状態を誰が判定するのですか?」

チャフがソラを睨みながら王太子に問いかける。王太子は小さく唸ると会場を見回した。

「こちらで見届け人を用意するよ」

王太子は国王を振り返る。

「練兵場を使っても構いませんか?」

「いますぐには無理だな。王都の警備等の人事もある。決闘は一月ほど先になるだろう」

国王の返事に王太子は少し残念そうな表情を浮かべたが、我が儘を言っている自覚はあるらしく素直に頷いた。

「では、1ヶ月後にチャフ・トライネンとソラ・クラインセルトの決闘を行う。双方、正々堂々と戦うように」

ソラとチャフが礼をする。

王太子は満足そうにその場を去った。

「クラインセルト伯爵家に言っても無駄だと思うが、裏工作などするなよ」

チャフがソラに手を差し出す。

皮の厚い大きな手を握り返しながら、ソラは口を開く。

「領地経営を監督すると言いましたが、展望はあるのですか?」

「まだない。だが、貴様らよりも領民の為の政治をする」

遠ざかるチャフの背中を見送りながら、ソラはため息を吐いた。

「……話にならない。勝つ他ないな」

展望もなしに手を出しても火傷する。クラインセルト伯爵領はそういう場所だ。

トライネン伯爵領へ難民が押し寄せるのがオチだろう。

「決闘如きで死んでる暇はない。勝つ方法を考えないと」

ふと、王太子を見ると国王に連れられて一時退出するところだった。

国王の雰囲気から察するに、王太子は不用意な発言に大目玉を食らうのだろう。

自業自得だと、ソラは心の中で舌を出した。

取り敢えず、会場の警備をしている兵に声をかけてみるが、間髪を入れず断られた。兵の視線は真っ直ぐにチャフへと向けられている。

断られ続けている内に祝賀会は終了した。

隙を見てベルツェ侯爵に口添えを頼んだが難しいとの事、派閥が違うため公的には協力できないそうだ。

クラインセルト伯爵家が属する教会派はただでさえ軍閥と相性が悪い。その中でも悪名高いクラインセルト伯爵家に味方する物好きが国軍にはいない。

「教会派の重鎮もこの流れは予想外だったようだ。何かこそこそ動いていたが、おおかた、決闘をけしかけて自らの精鋭を貸し、恩に着せるつもりだったのだろうさ」

ベルツェ侯爵が顎で教会派の重鎮を示す。

教会派に国軍への口添えを期待するのは止めた方がいいだろう。たいした人材は紹介出来ないであろうし、恩に着せて何を要求してくるか知れたものではない。

「まさに、殿下が言うように俺の才覚でどうにかするしかないのか」

「そうなるな。それに、陛下に言ってしまってな」

何を言ったのかと視線で問うソラに頬を掻きつつ明後日の方向を見たベルツェ侯爵は歯切れ悪く白状する。

「副官で収めるには器が大き過ぎる、と」

こんな事になるとは思わなかったのだと、言い訳するベルツェ侯爵にソラは天井を仰いだ。

「ハードル上げないでくれ」

「済まんな」

ばつが悪そうにベルツェ侯爵は謝罪した。