軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第八話  情報交換と考察

パーティーから邸宅の自室に帰ったソラはラゼットから報告を受けた。

「ウッドドーラ商会か。場所を把握できたのは僥倖だな」

「王都にあるのを知ってたんですか?」

ラゼットが驚いて訊くとソラは頷いた。

「去年まで宝くじで稼いでいたらしいが、今は教会派の貴族が主導で宝くじを開催しているらしい」

ソラが調べたところ、一年前に詐欺が横行して枢機卿を務める教会派貴族が騙されたらしい。

手口は比較的単純な物だが、この世界では実に斬新な部類だったようで、庶民を含む様々な人が騙された。

ウッドドーラ商会は教会の庇護を受けて王都に店を構えたが、その商売を利用されて教会の大物が損をしたので賠償として宝くじを取り上げられたのだ。

「道理で閑古鳥が鳴いてるはずですね」

ラゼットはウッドドーラ商会の様子を思い出す。

立地条件は良かったのだが、商人は避けている風だった。柄の悪そうな男が多数、商会の周りを行き来していて商会の者も怖がっていた。

「それは教会か枢機卿の仕業だな。見せしめだろうさ」

枢機卿は教会の名誉職的な意味合いがある。面子に関わるので教会も強気に出たため、ウッドドーラ商会は教会という後ろ盾を失った。

ソラの予想ではウッドドーラ商会は新しい後ろ盾を得なければ潰れる。タイムリミットもごく僅かで、クラインセルト伯爵領を逃げ出したかの商会には強みになる商品もなければツテもない。

「それじゃあ、あの商会は潰れるんですね」

ラゼットが興味を失って、どうでも良さそうに言う。

ざまあみろ、とは思っても同情する事はあり得ない。ラゼットですらこうなのだから、薪を奪われたサニアやリュリュなら手を打ち鳴らして喜ぶかもしれない。

だから、続くソラの言葉はあまりにも意外だった。

「潰さねえよ。もったいないからな」

意味が分からずにキョトンとして首を捻るラゼットにソラは何事かを企んだ顔で羊皮紙を持ってくるように言う。

意味が分からないながらも言われた通りに羊皮紙を持ってきた。

「心情的にウッドドーラ商会を助けるのが嫌なのは俺も同じだが」

ソラは羊皮紙を受け取ると手紙をしたためる。

文字を連ねながらソラは話を続けた。

「ウッドドーラ商会を利用すればベルツェ侯爵に恩を売れる。ついでに一儲けできるぞ」

「どういうことです?」

「ベルツェ侯爵領の火事現場を覚えてるか?」

質問を返してくるソラにラゼットは林業都市の様子を思い出しながら頷いた。

「あれは火事場泥棒の仕業らしい。いや、火事場盗賊団といった方が正しいか」

街のそばで大規模な火災を起こし、消火活動で人が出払った隙を狙う組織化された盗賊だ。

最初は王都で活動していた普通の火事場泥棒だったらしいが、取り締まりから逃げてベルツェ侯爵領に入りいくつかの街を襲っている間に手下を増やし、街のそばで火災を起こす手口に変わったらしい。

「辺りの森を燃やすその手口でベルツェ侯爵領の林業がかなりの打撃を受けている。材料不足を解決する手段を探していても輸入が上手くいかない」

木材はかさばる上に重量がある。そのため輸送費が掛かり遠方から輸入しても赤字になるのだ。

必然的に近隣の領地から輸入する事になる。

加えて、ベルツェ侯爵は魔法使い派貴族であり、教会派の貴族領からの輸入が難しい。

当然、相手も事情を知っているため足下を見てくる。それで値段交渉が難航しているのだ。

ソラはそこに食い込んでベルツェ侯爵領に木材を供給、恩を売るつもりでいる。

「敵対派閥を助けても良いんですか?」

ラゼットが質問するとソラは苦虫を噛み潰したような顔をした。

確かに、クラインセルト伯爵家が魔法使い派のベルツェ侯爵家を助けると教会から難癖を付けられるだろう。

教会に妨害されないような手を打つ必要がある。

「だが、仮に教会に睨まれたとしてもベルツェ侯爵を助ける。お父様がやらかして教会派から爪弾きにされそうなんだ」

七歳とは思えない疲れた顔でため息をつく。

「だから、教会派から離脱しても他家の食い物にされないよう、ベルツェ侯爵に恩を売っておくのさ。お父様は教会にしがみつく気満々だけどな」

馬鹿なので仕方ないと、ソラはとうに割り切っている。

手紙を書き終わったソラは丁寧に封筒に入れた。

封蝋の代わりに何かないかと考えて、ソラはふと悪戯心を出した。

とある絵を封筒に描いて、ソラはラゼットに手渡す。

「これをウッドドーラの商会長に届けてくれ。お父様に気取られるなよ」

「今からですか?」

すっかり暗くなった外を見てラゼットは嫌そうに言う。

「王都に到着するまでずっと寝てたお前なら、まだまだ眠くないだろ」

「昼寝と睡眠は別物なんですよ。こう、行き先が違うというか」

「……つべこべ言わずにさっさと行け」

半ば追い出すようにソラはラゼットに命じた。

扉に向かって気だるそうに牛歩を進めていたラゼットはふと振り返ってソラを見る。

「魔法書はどうしますか?」

「加熱とペーパーウェイトだったか? 素材その物を加熱するなら加熱の魔法書、素材その物に重力がかかるならペーパーウェイトの魔法書も買ってこい」

ソラは秘密箱を開けると真珠をラゼットに渡す。

「釣りはいらねえよ」

「ソラ様、大好きです」

「ゼズに言え」

「ゼズのことは愛してます」

「ここで言うな。本人に言え」

ラゼットの背中をぐいぐい押しながら下らない会話を繰り広げる。

因みに本人ことゼズはサニアやリュリュと共に王都の宿に泊まっている。

獣人のサニアは貴族に嫌われ易く、リュリュは美人なので豚領主やその妻に会わせると問題になる。治安が安定している王都とはいえ、女二人を放っておくのは物騒なのでゼズが護衛を務めていた。

どの道、ソラが有する数少ない部下なので把握されない方が良い。

王都への道中、ソラに付けられた護衛隊から話が及ぶ可能性もあるが、真っ先に真偽をソラに確認するはずなので誤魔化せる。

「あぁ、ついでにゼズ達へ伝言だ。帰りは自力になるかもしれないからお土産は程々にしろ、とな」

豚領主と一緒に帰る事態も考えて、ソラは忠告する。

ラゼットの目が泳いだのには気付かない振りをした。