軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

87.

朝議に参加すると、わかりやすくボロボロの大臣達が並んでいた。

連日の被害や討伐の報告、そして家に帰れない状況だったり、逆に護衛を差し向けられて魔物が徘徊する中、無理やり登城させられていたりと神経を削られているのだろう。

「 皆(みな) ご苦労だった。昨日をもって魔物は全て討伐され、後始末は残っているが王都は平和を取り戻したと言えるだろう。エルネストと共に騎士達が頑張ってくれたおかげだ、よくやった」

まだエルネストを王太子の地位につけておきたいのか、陛下はエルネストの活躍を強調していた……が。

「父上、今回の功績は第三騎士団が受け取るべきだと思います。あの時ラルミナ副団長が第三騎士団を率いて王都に戻って来てくれなければ、壊滅していたのは我々の方だったでしょう。それに今回の元凶は……」

事前にエルネストが自分が原因だと告白すると言っていたが、俺はそれは余計に混乱を招くだけだからやめろと止めた。

だがどうやら罪悪感からかすべてをぶちまけようとしているようだ。

「今回の元凶は邪神の部下でした。禍々しい魔導具のようなものを破壊した時、邪神の右腕だと名乗る黒いローブの男が現れてすぐに姿を消したのです。もしかすると前神官長もその男にそそのかされた可能性があります」

俺が言葉を継いで報告すると、エルネストは驚いたように俺を見た。

だが嘘は言っていない。エルネストにも俺が説明する事を言っておいたのに、罪悪感を抱えていたくないからって、場を混乱させる余計な事は言わないでほしい。

第二王子派の奴らが騒ぎ立てて、陛下の派閥がエルネストを庇って朝議が長引くどころか終わらなくなるだろ。

かと言って怒りをぶつける先がないと貴族達の不満が溜まるというもの、ここはロドルフと画策した通り大神殿の聖騎士団に泥をかぶってもらおう。

これも大神殿の護りを薄くするわけにはいかないとかほざいて、王都で暴れる魔物を放置した聖騎士副団長が悪い。

聖騎士団長のアクセルであれば、恐らく大神殿の守護役をある程度残して討伐に参加していたはずだ。

今頃ロドルフの息がかかった奴らが、騎士達が最初苦戦していたのは聖騎士達が傍観していたせいだとか、王太子の迅速な判断がなければ王都は第三騎士団が到着する前に壊滅していただとか、噂を広めているだろう。

「何と!! そのような者がいたとは!」

「これは由々しき事態ですぞ!!」

陛下には報告が届いていたらしく驚いていないが、昨日の出来事なせいで大臣達にまでは伝わっていなかったようだ。

邪神復活が近いという事も伝えてあるが、それを公表するかどうかは陛下の判断にまかせよう。

「静かに。更に由々しき事態になっておるとヴァンディエール騎士団長の報告が届いておる」

どうやら大臣達にも伝えるようだ。

大臣達や騎士団の総長、緊急事態で謹慎を解かれた第二の騎士団長を含めて各団長と副団長が固唾を飲んで陛下の言葉を待っている。

「…………邪神の復活が近い、と」

陛下の言葉でざわつくというより、どよめく謁見の間。

そのどよめきが静まらない間にエルネストが歩み出た。

そしてエルネストに視線が集まり、その場がシンと静かになってから口を開く。

「それに関連して父上に……、いえ、陛下にお願いがあります」

あえて陛下と言い直したのは、国王として判断して欲しいという意思表示だろう。

同時になぜか嫌な予感がした。

「邪神討伐に専念するためにも、私は王太子の座を降ります。そして第三騎士団に所属してこの国を護ります!!」

ちょっと待てーーーー!!

さっきの話し合いでもそんな事ひと言も言ってなかっただろ!?

再びどよめく謁見の間、そりゃそうだろ。

「な……っ、いや、しかし……」

陛下も初耳だったらしく、戸惑っている。

嬉しそうにしているのは第二王子や第三王子の派閥の人間だけだろう。

「お待ちください。王太子が我々第三騎士団に入る事は賛成できません」

「なぜだ!?」

遺憾とばかりに声を上げるエルネスト。

いや、なぜだじゃないだろ。

「考えてもみてください、第三騎士団はほとんどが平民です。育った環境だけでなく、考え方や文化すら違うと言っていいでしょう。そんな集団の中に王族である王太子が入っては和が乱れるのが目に見えてます」

「だがヴァンディエール騎士団長もラルミナ副団長も貴族ではないか!」

「次男ですらない者と、王族でしかも王太子として育ってきた方が同じだとお思いですか? 私も副団長も 貧民街(スラム) の酒場でも楽しめますが、王太子は足を踏み入れる事すらためらわれるでしょう。……しかし王太子の座を降りて戦力になりたいというお気持ちは国を護る者として嬉しいです。どうしてもとおっしゃるのならば価値観も近く、お互いをよく知っている第一騎士団に所属するのはいかがでしょうか? ガンズビュール団長もそろそろ後継者を決める事を視野に入れねばならないでしょうし……、その点王太子であれば実力的に申し分ありませんからね」

団長の座を狙っていたであろう第一の副団長二人が凄い顔で睨んでくるが、知った事ではない。

エルネストが第三騎士団に入るなどという事を阻止できるのであれば、何だろうと利用させてもらうぞ。

「ですがまぁ……、今すぐ決めずとも総長や第一の方々でしっかり話し合って決めればよいかと」

問題を先送りさせる俺のひと言で、その場の空気が緩んだ。

そして誰よりホッとした顔をしていたのはオレールだった。

安心しろ、俺も絶対に第三にエルネストを入れたくないからな。