軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

81.

「これで……最後だっ!」

商人街の路地から飛び出して来た 角兎(ホーンラビット) の首を斬り落とし、剣に付着した血を振り払って鞘に納める。

魔物の気配は感じないから、周辺の魔物は全て片付いたはずだ。

「ロッシュ隊報告します! 北の区画、討伐完了!」

「エリオット隊報告します! 東の区画、討伐完了!」

「オレール隊報告します! 西の区画、討伐完了!」

王都全体の確認に行った部下達が次々と戻って来て報告が届いた、やはり発生源で大神殿のある南の区画が一番魔物が多かったようだ。

だが平民街への魔物の流出を真っ先に喰い止めるというエルネストの判断のおかげで、捜索範囲が王都の半分以下で済んだのは大きい。

「ご苦労、南の区画も今ので討伐完了だ。王都民に告ぐ!! 魔物の殲滅は完了した!!」

思い切り息を吸い込んで大声で告げる、人が少ないせいで建物の間に声がよく響いた。

数秒空けてわぁっと周辺から歓声が上がり、人々が飛び出してくる。

「ありがとう騎士様!!」

「やっと外に出られるぞ!」

「うわっ、魔物の死骸だらけだ! こんなにやっつけたのか……!」

「食料……水も汲みに行かないと……」

どうやら今回勝ち組だったのは食品を扱っている店だったようだ。

服や小物を扱っている店の者達は、食料が尽きてフラフラになっている者もいる。

「ジュスタン! 部下達の報告から平民街の被害は確認されなかった、これから門へ向かわせて開門するように指示した」

「ああ、門の管理は第二の管轄だからな、任せた」

平民街の確認をしに行った第二騎士団が戻ってきて、コンスタンが報告してくれた。

今回真っ先に魔物の対応しただろうし、これで副団長から団長に昇格するんじゃないだろうか。

「それにしても今回の事で第三騎士団は対魔物の専門家だと思い知らされたぞ。魔物に対する知識も、闘い方も対人戦とは何もかも違った。ラルミナ副団長達の到着があと数時間遅ければ、王都は今頃壊滅状態だったかもしれない」

交代で休憩していたとはいえ、心は休まらなかったであろう事がやつれた顔から察せられた。

「それはジェスとジェスの母親に礼を言うべきだな。王都の方から不穏な気配がすると教えてくれたのはジェスの母親だし、山の上からオレール隊が待機している領地まで飛んで手紙を届けてくれたのはジェスなんだ。人化魔法を覚えたから手紙だけでなく、伝言もしっかり伝わったのも大きいな」

「人化魔法!? あのチビドラゴンが人間になるのか!?」

「チビって……、普段は魔法で小さくなっているだけで、本来かなり大きいのは知ってるだろう? 十歳くらいの子供の姿になっているぞ」

「ジュスタ~ン!」

噂をしていたせいか、そのご本人が手を振りながら登場した。

エレノアにちゃんと一人で乗っているが、手綱を持っていない。

もしかして意思疎通ができたりするのだろうか、そうだったら羨ましいぞ。

「ジェス、無事に王太子を送り届けてきたか?」

「うん! 門の前まで行ったら、中からお迎えが来たから預けてきた! えらい?」

「ああ、偉いぞ~! ありがとうな」

「えへへ」

ぐりぐりと頭を撫でると、嬉しそうに笑うジェス。

明日時間があったら、ジェスのお気に入りのクッキーを焼いてやろう。

「ジュスタン……、その子が……ドラゴンなのか?」

あ、コンスタンの事を忘れていた。

目と口を閉じるのを忘れたかのような顔でジェスを見ている。

「ああ、この子がドラゴンのジェスだ」

「すごいな、どこからどう見ても普通の人族の子供じゃないか」

「すごいでしょ! ちゃんとお母さんに人化の魔法教えてもらったからね! だけどね~、ドワーフとエルフは狙われるようになっちゃうからダメなんだって。あと小さいドラゴンでいるより、人間の姿の方が安全だから、できるだけこの姿でいなさいって」

「へぇ……、だが確かにそうかもしれないな。ジェスのお母さんは賢いんだな、さすが二百年生きてるだけはある」

コンスタンに母親を褒められて胸を張るジェス。

そのドヤ顔は弟そのままで、思わず口元がほころぶ。

「さぁ、おしゃべりはここまでにして、コンスタンは門の最終確認もあるだろう? 俺達は冒険者ギルドに行って落ちている魔物の解体を依頼してこないとな」

「そうだな。冒険者ギルドが門に近い平民街にあるからって、ただ働きを避けるためか冒険者の奴ら全然出て来なかったんだぞ。平民街に魔物が来たら対応するためとか言っていたらしいが、それも本当かどうか」

吐き捨てるように言うコンスタンだが、俺からしたらそれも仕方のない事だと思う。

「王都にいるような冒険者に、今回出てきた大物の相手は無理だろう。せいぜい盗賊相手の護衛か、点在している小さな森の魔物しか相手にした事がないだろうからな。むしろ出て来られた方が足手まといだった可能性すらあるぞ。だが簡単な仕事だけで依頼料を渡す気はない、だから討伐した魔物は第三騎士団で回収してギルドに持ってってやるさ」

ニヤリと笑うと、コンスタンも笑い出した。

「ははは、そりゃいい! あいつら魔物の死体回収で小銭を稼ぐつもりだろうからな! ギルドにも釘を刺しておいた方がいいだろう、騎士団が討伐した魔物を持ち込んだ奴がいたら、迎えをよこすから拘束しておくようにってな!」

「ああ、俺も入ったあの地下牢にご招待してやってくれ」

「ぐ……っ、だ、だからそれは謝っただろう」

冗談で言っただけだが、コンスタンには突き刺さったようだ。

言葉を詰まらせながら抗議してきた。

「ククッ、ただの冗談だ。さぁ、第三騎士団! 魔物の回収をして冒険者ギルドに持ち込むぞ! 傍観していた奴らにも苦労させてやらないとな! 各自持ち込んだ魔物の種類と数を確認しておくように!」

さすが元は問題児集団の第三騎士団、ギルドへの嫌がらせになるとわかった途端、喜々として行動を始めた。

さて、俺はギルドマスターに先に話をつけておかないとな。

ジェスと一緒にエレノアに乗って冒険者ギルドへと向かった。