軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

57.

ランスロットが俺達から離れた後、聖女に興味を持っている貴族達が話しかけてきた。

万が一にでも聖女を家門に迎えられたらという下心を持つ者達や、田舎娘がチヤホヤされるのが気に入らない貴族令嬢達まで色々だ。

護衛を頼まれた以上、面倒だからと避けるわけにもいかず、歯が浮きそうなセリフすらも口にして、何とか聖女の事は守れたと思う。

気力が限界に達した俺は、聖女に庭園で休憩する事を提案した。

「魔導具の灯りがあるから夜の庭園も綺麗だぞ」

だから俺を休ませてくれ。

そんな本音を隠しながら誘うと、聖女は二つ返事で了承した。

「いいですね! ……ちょっと一人で女性用休憩室に行くのは嫌な予感がするので」

そうなんだよな、本当なら各自休憩室でくつろぐのもいいが、聖女に関しては絶対くつろげないと思う。

さっきから校舎裏に来いと言わんばかりの目力で、聖女を見ている貴族令嬢達がいる。

だからこそ庭園に誘ったんだけどな。

「そういう勘は大事にした方がいい。特に今回の勘は間違ってないだろうから」

広間から庭園へと出られる大きな窓に向かっていると、声をかけられた。

その辺の貴族であれば聞こえなかったフリをして出て行きたいところだが、声をかけてきたのは俺の両親だった。

「これは父上、母上、先日ぶりですね」

「えっ!? ジュスタン団長のお父さんとお母さんなんですか!? え、えっと、あの、はじまして、お父様、お母さま、エレノアといいます。よろしくお願いします!」

ちょっと待て、その言い方だと誤解を生むだろう!

ほら見ろ、父上が二人の関係を確認するようにアイコンタクトをしてきたじゃないか!

俺は小さく、しかし素早く首を振った。

「はじめまして聖女様、息子と仲良くしていただいているようですね。今後ともよろしくお願いします」

「はい! こちらこそ!」

休憩できると思って完全に気を抜いた状態で、とんでもない爆弾を落とされた気分だ。

聖女はあくまで友達として言っているんだろうが、両親はあわよくば、と思っていそうだな。

軽く雑談をしていた三人だが、話題の切れ目を逃さず、聖女を休ませたいからとその場を離れた。

このままだと俺と聖女の仲が噂になってもおかしくない。

だがまぁ、この夜会が終われば、余程の事がない限り俺と聖女が同席する事なんてないだろう。

「うわぁ……、外は寒いですね! 広間は暑いくらいだったのに」

「広間はドレスの女性に合わせて温度管理されているからな」

すっかり陽が落ちた今、吐く息が白くなるくらい外は寒い。

上着を着ている男性と違い、女性はドレス姿だから見るからに寒そうで、俺は上着を脱いで聖女の肩にかけた。

前世の記憶を思い出す前の俺も快適を求めるタイプだったせいか、シャツにも上着にも温度調節の魔法が付与されている。

「あったかい……。ありがとうございます!」

「その服にも温度調節の魔法がかけられているんだ、暑くても雪が降ってもそれ一枚で耐えられる高性能だぞ」

「ふふっ、なんだか宝物を自慢している子供みたいですね」

「……っ! 別に宝物というわけではないが、魔導具なんかは好きではあるな。こういう付与魔法とか」

前世を思い出す前も今もそれは変わらない。

騎士の才能がなければ、魔導具に携わる仕事についていたかもしれないくらいには。

こういう心の奥というか、核心的なものを見抜くのは後半ヒロインの特技なのかもしれないな。

エルネストは見た目で気に入っていたみたいだが、小説内の他のキャラクターは会話で癒されたり、色々気付かされたりして聖女に心酔していったはず。

生粋の貴族であればあるほど、そうやって心の奥を言い当てられるような事もなければ、言い当てるようなマネもしない。

本心を隠して友好的に、正に社交をするのが貴族だからな。

俺(ジュスタン) も前世の記憶がなければ、もしかしたら聖女に惹かれていたかもしれない。

俺を理解してくれるのはこの女だけだ~とかなんとか言って。

今の俺はないけどな。

庭園には寒さのせいか、人の気配がしなかった。

サクサクと芝生を踏む二人の足音だけが耳に届く、窓越しに漏れる広間の灯りと、庭園に置かれている灯りの魔導具のおかげで移動には困らない。

「聖女、恐らく今後邪神討伐に関連して、連れ出される事が増えるだろう。聖騎士に護られるとはいえ、 咄嗟(とっさ) の時に多少動けるように訓練しておいた方がいいぞ。聖騎士に女性がいないから、必ず一人になる瞬間はあるだろう?」

親切心で忠告してやったつもりだが、振り返ると広間でも見たへの字口になっていた。

邪神討伐に行きたくないのか、それとも訓練をするのが嫌なのか?

「むぅっ! どうして聖女呼びに戻っているんですかっ!? 普通は二人きりの時こそ名前で呼ぶものでしょう!」

なんだ、そんな事か。

そう口を突いて出そうになったが、なんとかそれは踏みとどまった。

「わかったわかった。悪かったな、エレノア。これでいいんだろう?」

「ふふっ、そういう事です。気構えずに話すって楽しいですね! もっと友達が増えるといいんだけどなぁ」

可哀想だが広間で見た貴族令嬢達は、とてもじゃないがお友達なりましょうってタイプじゃなかったぞ。

どうやら神殿では結構抑圧されているみたいだし、気晴らしができる相手を探してやらないとな、俺以外で。