軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

36.

「じゃあ返してもらおうか」

「…………」

裁判所から俺を第三騎士団まで送る馬車の中、コンスタンに手を出すと、無言で俺の剣と 魔法鞄(マジックバッグ) を差し出した。

「ところでお前達に指示したのは王太子だったのか? それとも第二騎士団長か?」

受け取った剣を剣帯から外し、剣帯だけを装着しながら聞くと、コンスタンはいきなり頭を下げた。

「…………すまなかった! 私達は濡れ衣で貴殿を捕えて投獄したというのに、貴殿は我々の名誉を守ってくれた……、ありがとう。今回の指示は団長から出たものだったが、法廷での王太子を見る限り王太子が指示したと思う」

「まぁ、そうだろうな。恐らく俺の予測のほとんどは当たってると思うぞ」

「という事は、聖女の話も本当なのか?」

近衛騎士である第一騎士団ならば、もしかしたら情報共有されているのかもしれないが、第二騎士団には何も知らされてないようだ。

あくまで騎士爵は貴族相当の扱いなだけであって、貴族ではないと線引きされているのだろう。

「確証はない、だが確信はある。考えてもみろ、法廷にいた神官といい証人といい、明らかに神殿が関わっていただろう。普通に考えて神殿が王太子の婚約者を排除する必要はあるか?」

「……ないな」

「だろう? 婚約者を排除する理由としては、ディアーヌ嬢自身を消したいか、婚約者という立場から引きずり下ろしたい時だけだ。だがこれまでディアーヌ嬢は貴族として神殿に貢献はしても、不利益を与えた事はないはず」

「確かに……、王太子の婚約者としての公務で神殿にいるのを見たが、二か月前のその時は関係が良好に見えたな」

コンスタンは記憶を辿っているのか、顎に手を当てて外を眺めながら言った。

「ではその後に聖女が見つかったと報告が入ったのかもしれないぞ。お前もここ最近の魔物の増え具合はおかしいと思っていたんじゃないか? 未遂に終わったとはいえ、タレーラン辺境伯領でもスタンピードがあったわけだしな。邪神の復活……いや、その前に 竜(ドラゴン) か」

邪神の復活という言葉に、コンスタンはヒュッと息を飲んだ。

「邪神の復活だなんて……神官にでも聞かれたら 大事(おおごと) だぞ!?」

「だが聖女が現れるのは、邪神に対抗するために神が遣わすからだと王立学院でも習っただろう? 貴族であれば子供の時から家庭教師に習っている常識だぞ」

「だがまだ聖女は現れていないだろう」

「そりゃ王太子の婚約者がいる状態で聖女が現れて、ディアーヌ嬢を押しのけて婚約者の座についたら印象がよくないからだろう? 婚約者に不幸な出来事があって、空席になった婚約者の座につく方が民衆からも受け入れられるというものだ」

「だからといって神殿が本当に……? 聖職者だぞ?」

「お前……、純粋だな」

「なっ!? バ、バカにしているのか!?」

つい生温かい笑みを浮かべてしまったせいか、コンスタンが顔を真っ赤にして怒り出した。

実際はバカにしたんじゃなくて、サンタさんを信じている頃の弟達みたいな純粋さを微笑ましく思っただけなんだが。

「おいおい、また濡れ衣を着せる気か? 貴族をやってると、どれだけ上っ面がお綺麗だろうと、汚いところを隠している奴らがわんさかいる事を知ってしまうだけだ。聖職者だろうと……な」

「貴族の事はお前の方が詳しいからな、私が知らない事もよく知っているだろう」

「おや、貴殿と呼ばなくなったな?」

長く話したせいで気が抜けたのか、物言いが砕けてきた事をニヤニヤと笑いながら 揶揄(からか) ってやると、途端に眉間にシワを寄せた。

「ククッ、冗談だ。昔のようにジュスタンと呼んでもかまわないぞ。邪神が現れるのなら第一だろうと第二だろうと垣根を越えて協力し合わなきゃいけないからな。俺の方も第三のやつらを躾け直すのは大変だが、今よりは礼儀正しく周りに接するように叩き込むつもりだ……おっと、着いたようだな」

話している内に第三騎士団の宿舎前に到着したので、サッサと馬車から降りた。

部下達に事の顛末を話して、再び実家に向かわないと。

「すまなかったな、ヴァンディエール侯爵領へ帰るところだったんだろう? 気を付けて帰れよ……ジュスタン」

すっかり口調が学院生だった頃に戻っている。

本当に真っ直ぐな奴だ。

「ああ、もう気にするな、お前も職務だったんだから。ああそうだ、後日地下牢の奴らに食事に一品差し入れしていいか? ついでに真面目に罪を 償(つぐな) ったら、また食わせてやらなくもないって伝言付きで」

「まぁそれくらいなら……。一晩であいつらに情でも 湧(わ) いたのか?」

「飯テロ……いや、食事の時にちょっとした嫌がらせみたいになったからな、その 詫(わ) びと激励みたいなもんだ。それじゃあ、またなコンスタン」

それだけ告げると、俺は宿舎へと駆け出した。

きっと俺が捕まってヤキモキしていることだろう、無罪放免になった事を早く知らせてやらないと。

宿舎の玄関に入ると、俺の隊の部下達が怖い顔をしてこちらに向かって来るところだった。

「戻ったぞ」

「「「「団長!!」」」」

俺に気付くと、驚いた顔で駆け寄って来た。

「今日から通常訓練のはずだが、どうしてお前達はここにいるんだ?」

「そんなの団長が心配で、裁判所に殴り込みに行くところだったに決まってるでしょ」

「やめろ、決めるな。そんな事をしたら余計に俺の印象が悪くなるだけだぞ」

アルノーの言葉を即座に否定する。

最近少し大人しくなったと思っていたが、根本が全然変わってない。

「それより捕まって今日裁判って聞いたけどよ、団長こそどうしてここにいるんだ?」

「元々理由が濡れ衣だったんだから、無罪放免に決まっているだろう。でもまぁ……、心配してくれてありがとうな!」

部下達の頭を順番にワシワシと乱暴に撫でた。

乱暴だとか、痛いとか言っているくせに逃げないところがちょっとだけ可愛いとは思う、ちょっとだけな。