軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

256.

「東宮様が食後の昼寝をするから、少し離れたところで護衛するぞ」

交代での食事が済み、 烈陽(リエヤン) に声をかけられた。

下働きと違って、俺達は特に片付けも準備も必要ないから、離れて護衛するだけだ。

今の内に 烈陽(リエヤン) から情報を引き出して、夜に藍之介と情報のすり合わせをしよう。

複数の情報源があった方が正確に把握できるというものだ。

「ところで 烈陽(リエヤン) 、どうして東宮様はこの香蓮府に来ていたんだ?」

「ああ、それが後宮に引きこもっているという皇女様が、 占卜(せんぼく) で皇太子が香蓮府に行かないと帝国が滅びると出たと言ったらしい。内緒だぞ」

「占卜というのは占いの事だよな? 皇族がそんなものを信じるのか?」

俺の言葉に、 烈陽(リエヤン) は何を言っているんだとばかりに、目を瞬かせた。

「皇女様は龍力をお持ちなのだ。あ、他国では魔力と言うんだったな。エルドラシア王国では貴族で半分、平民でも時々持っているらしいが、黄鱗帝国では皇族でも稀だ」

「へぇ。だったら色々と不便な事も多いだろう」

「まぁな。だが、幸い皇族に仕える俺達は、エルドラシア王国の魔導具を使えたりするからマシな方だ。普通は魔導具なんて 高価(たか) すぎて手が出ないからなぁ」

途中の村で妙に生活水準が低そうに見えたのはそのせいだな。

昨夜泊まった屋敷は皇族が使う前提だから、普通に魔導具があったというわけか。

「それでさぁ、東宮様はこっちで何かしたのか? もしかして、ここに来て帰るだけ?」

俺と 烈陽(リエヤン) の話を聞いていたシモンが口を挟んだ。

烈陽(リエヤン) はポリポリとこめかみの辺りを指でかく。

「それがさぁ、特に何もなかったんだよ。いや、誘拐未遂はあったけど、それ以外は……って。もしかして、あんたらに会う必要があったって事か!? あっ、すまない」

烈陽(リエヤン) は慌てて口を押さえた。

他国の貴族に乱暴な口をきいたからだろう。

「気にするな。一緒に護衛をするんだから、敬称もいらない。言葉遣いも楽にしろ。どうせ部下のこいつですら敬語ひとつまともに使わないんだからな」

そう言って、隣にいるシモンの頭をぺしぺしと叩く。

「ははっ、そう言ってもらえると助かる。それにしても、ジュスタンはえらくおおらかなんだな。部下が敬語を使わなくてもいいなんて、俺達じゃあ考えられない事だぞ」

「団長がおおらか!?」

「何だシモン、異論があるのか」

「とってもおおらかです!!」

ひと睨みで発言を翻すなら、最初から言うんじゃない。

「うん、考えれば考えるほど、その通りな気がしてきた。東宮様を誘拐から助けてくれた事といい、東宮様に気に入られている事といい、きっとジュスタン達と出会うために来なきゃダメだったんだよ!」

興奮気味に話す 烈陽(リエヤン) の目は、キラキラと輝いていた。

運命の出会いに興奮しているらしい。

だが、実際それは間違いではないのだろう。

俺達が関わらずに放っておけば、きっとあの夢の通りに黄龍の呪いによって黄鱗帝国は滅びると思う。

「……そうかもしれないな。ところで 烈陽(リエヤン) は黄龍についてどれだけ知っているんだ?」

「黄龍? あの初代皇帝と友誼を結んで帝国の発展に力を貸したっていう伝説があるのは有名だぞ」

「伝説……。実在していないのか?」

恐らく黄龍は実在している。

そして城の地下に封印されているのだろう。

しかし、 烈陽(リエヤン) はキョトンとしてから笑い出した。

「あっははは! ジュスタンは龍の存在を信じているのか? 純粋だなぁ!」

「では過去にもいた形跡はないんだな?」

「そりゃそうさ! 誰も見た事がないんだぞ? 皇族の人気のための御伽噺さ」

どうやら一部の者以外には秘匿されていると見た。

少なくとも、夢に出て来た黄龍の世話をしている少女がいるはず。

「え~? ドラゴンならいるぜ? なぁ、団長」

俺は咄嗟にシモンの頭に拳を振り下ろした。

ゴッ、という鈍い音と共に、シモンは頭を押さえて蹲る。

「お前は考えてからしゃべるという事ができないのか。ああ、悪い、できないんだったな」

状況が全て把握できたわけじゃないが、黄龍が地下に封印されているのなら、ジェスやジャンヌも危険かもしれないんだ。

そんな状況でドラゴンと従魔契約をしていると知られたら、面倒な事になるのは間違いないだろう。

最悪の場合、黄龍の代わりに封印されて魔力を搾り取られる可能性すらある。

封印された挙句に魔力を奪われる……黒と同じような事をされている龍がいると知ったら、黒だけじゃなくジャンヌやジェスもかなり怒るだろうなぁ。

協力を仰ぐにしても、近寄らないように言うにも、まずは現状を正しく把握する必要がある。

それまでは不用意にジェス達の事は言わない方がいいだろう。

焦ったせいで少々力が入りすぎたのか、シモンはまだ蹲ったままだ。

馬車に同乗していた関係で、天幕の近くで護衛をしている藍之介にもシモンの発言は聞こえていたらしく、もの凄く呆れた目を向けている。

エルフの耳が長いのは伊達じゃないようだ。

「もしかしてジュスタンとシモンは龍を見た事があるのか!?」

さて、この少年のようにキラキラした目をした 烈陽(リエヤン) をどう誤魔化そう。