軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

225.

「問題って!? 団長元に戻せねぇの!?」

噛みつかんばかりの勢いでシモンが聞いた。

「うむ、腹が減って考えがまとまらぬのじゃ。……冗談じゃ、そんな目をするでない」

スン、と表情の消えたシモンから目を逸らす萌。ちなみに俺も同じ顔をしている。

それにしても、シモンは余程以前のジュスタンが怖いんだな……。

お菓子を作ってもらえなくなるから、なんて理由じゃないと信じたい。

「とりあえず世界樹の所へ行こうかの。正確にはわらわが知っておるというより、世界樹に聞けば大抵の事はわかるのじゃ。女神がこの世界を作ってからの全てを見守っておる存在じゃからのぅ」

世界樹ってアカシックレコードみたいな機能もあるのかな?

俺と大和がこっちの世界に転生した理由がわかるなら聞いてみたい。

「蘭が世界樹のところへ行って術が失敗した原因を聞いている、という事はないのか?」

「いや、世界樹の声を聞けるのはハイエルフだけじゃからのぅ。蘭が行ったところで何も起きぬよ」

ジャンヌの問いに萌は首を振った。

確かにエルフが誰でもホイホイ知りたい事が聞けるなら、白狼が外界と接触しようとは思わないだろう。

普通に人族を見下していたしな。

「では里に戻るのですね。この人数だと一度では無理でしょうから、我々は先に戻ります。菊、藍もここに残って連絡を待つか?」

明らかにふさぎ込んでいる藍を一瞥し、蓮が聞いた。

へぇ、あの転移魔法陣、大人数だと使えないのか。

「そうね、もしかしたら後から行くかもしれないけど、今はやめておくわ」

「わかった。荘、蕉、先に戻ろう」

そう言って蓮達は玄関へと向かった。

俺はふと不安になる。

この状態で俺もちゃんと転移できるのだろうか、と。

ジュスタンの身体からは離れられないみたいだけど、転移の場合は魂もカウントされるのかな?

転移した瞬間俺との繋がりが切れて戻れないとかないよな!?

「さて、エルフの里に戻るとしようかの。ジュスタンよ、今は失った記憶の事がさぞかし不安であろうが、わらわにまかせるとよい。里に戻って食事でもすれば多少気持ちも落ち着く……、そうじゃ、食事! 今のジュスタンでは新たな料理を手本を見せる事ができぬではないか! 早く! 早く戻るぞ! 皆ついてくるのじゃ!」

ドタバタと玄関へ向かう萌。

『ちょっと待て、さっきまでと随分態度が違わないか!?』

『ふふふ、エルフは、特に萌は悠久の時を過ごしておるでな。食事が娯楽のひとつなのであろう。特に主殿が教えたこれまで食べた事のない料理は』

『はぁ……、できれば最初から同じくらいやる気を出してほしかったな』

「団長、行こうぜ。萌が何とかしてくれるみたいだしよ」

「ふん、俺はこのままでも問題はないがな」

ジュスタンはそんな事を言いながらも、素直にシモンの誘導で玄関へと向かった。

「まったまたぁ、オレ知ってるぜ! 団長が花街で飲みすぎて記憶飛ばしてさぁ、あのあとすげぇ焦ってたじゃん! それなのに一晩どころか一年以上記憶飛ばしたぐぁっ!」

……どうしてシモンは自ら墓穴を掘りに行くんだろう。

目の前で何度もゲシゲシと蹴りを入れられて、亀状態のシモンを見下ろす。

幸い靴を履いていなくて自分の足を傷めるのを気にしているのか、ある程度加減されてはいるようだ。

「ジュスタン! シモンを蹴っちゃダメだよ! 可哀想でしょ! いつもはグーで頭グリグリしてるじゃない」

ジュスタンの後ろから抱き着くようにしてジェスが止める。

だが、助けられたはずのシモンの顔色はよくない。

「あっ、いや、ジェス、そっちの方が……」

「グーで頭グリグリ?」

ジェスを止めようとするシモンの態度に、ピクリと反応するジュスタン。

興味を持ったのか、ジェスを見下ろしながら聞いた。

「えっとね、こうやって頭を挟んでグリグリ~ってしてたんだよ」

エアーでウメボシを実演するジェスに、顔を引きつらせるシモン。

ジュスタンは悪役らしい笑みを浮かべてシモンに向き直る。

「ほぅ、こうか?」

「ぎゃあぁぁぁ!!」

「そうそう」

しゃがんで見事にウメボシを再現するジュスタンに、シモンの叫びが聞こえていないかのように頷くジェス。

ジュスタンはといえば、シモンの悲鳴に満足そうな笑みを浮かべていた。

「何をしておるっ!? さっさと来んか!!」

先に玄関で待っていた萌が、ジュスタン達のやり取りに痺れを切らして怒鳴った。

「チッ、うるさいガキだ」

ジュスタンは舌打ちしながらもシモンを解放する。

「主殿、そなたの言うガキは萌と言ってな。先ほど自分でも言っておったが、ハイエルフであり、エルフの里の長ゆえ、適度に敬意は 払(はろ) うておいた方がよいぞ」

「エルフの長だと!? あの子供が!?」

ジャンヌの説明に、ジュスタンは萌を二度見した。

「あ~、その説明も忘れてんのか。エルフは魔力量によって老化の速度が変わるんだってよ。だから見た目と年齢は関係ねぇんだってさ」

早くも復活したシモンの補足説明を聞いて、ジュスタンの眉間にシワが深く刻み込まれる。

これまでの常識が通じない事の連続で、理解が追いつかないのだろう。

ジェスに手を引かれながら、ジュスタンは大人しく玄関へと向かった。