軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

201.

「今のは地下か!? 確認しに行くぞ!」

フェリクスが走り出し、俺達も追いかける。

恐らく今魔塔にいるのは、俺達以外には魔塔主のフレデリクだけだろう。

しかも今の震動の原因は地下、地下といえばアリアが動物実験をして怪我をした場所だ。

嫌な予感しかしない。

「バカ、アリア! お前は部屋にいろって!」

シモンの声に振り返ると、アリアが必死に走って俺達を追いかけていた。

「だって、あいつが何かしてるんでしょ!? だったらあたしも協力する! それに魔塔の事ならあなた達よりあたしの方が当事者だもの!」

絶対引かないというアリアの決意が伝わってきて、隠れてついて来るくらいなら目が届く範囲にいてくれた方がマシというものだ。

「危なくなったら退避しろよ! シモンとマリウスはアリアの護衛をしておけ」

「「了解!」」

地下への入り口に到着すると、焦げ臭い……正確には魔物が焼けた時と同じような臭いがする。

足音を殺して階段を下りて行くと、地下二階からフレデリクの声が聞こえて来た。

『はははは! ついに成功だ! やはり人間を使って正解だった! お前なら王宮の造りは把握しているだろう? そのまま王の首を取って来い。ついでにお前の元主のフェリクスの首もな!』

次の瞬間、何かが破壊される音の後に、何かがこちらへ移動する気配がする。

フェリクスも気付いたようで、動きを止めた。

「何かが来る。 階段(ここ) で迎え撃つのは危険だ、下りるぞ!」

急いで階段を下りると、廊下の角から形の崩れた 鬼人(オーガ) のような魔物が現れた。

その途端、フェリクスと近衛部隊が息を飲んだ。

「フェリクス様、あの服は……」

「ああ。……恐らく連絡が途絶えたと言っていた者だろう……」

「ガァァァッ!」

服とも言えないボロボロの黒い布が引っかかっている程度だったが、フェリクス達には見覚えがあるらしい。

さっき聞こえてきたフレデリクの言葉からして、フェリクスの手の者が実験体として魔物化させられ、身体が肥大化して服が破れたのだろう。

そんな実験体がフェリクス目がけて襲いかかって来た。

「フェリクス様、お下がりください!」

ガキン!

デジレが間に入り、異常に発達した爪の攻撃を剣で受け止めた。

どう見ても人間には見えないが、元の人物を知っているであろうフェリクス達は手を出すのをためらっているようだ。

「デジレ、元に戻るようには見えん。殺すぞ!」

「くっ、わかった!」

俺が斬りかかると、素早い身のこなしで避けられた。

「さすが暗部の精鋭だな。身のこなしは以前と変わらない……いや、更に素早くなっているかもしれん。フェリクス様を守れ!」

デジレの言葉から、手の者というのは王家や高位貴族が抱える情報収集や陰からの護衛をする、暗部と呼ばれる者だとわかった。

近衛部隊がフェリクスを囲むように守りを固め、ジュスタン隊も後方で構える。

こちらを攪乱するためか、実験体は床を、壁を、天井を足場に飛び回り、一人、二人と近衛部隊が吹き飛ばされていく。

「うわっ! なんだコイツ!? 団長並みに 速(はえ) ぇ!」

ギリギリで攻撃を防ぎながらガスパールが叫んだ。

決定打がないまま、また一人近衛部隊が倒れる。

その時、フレデリクが実験体の現れた角から姿を見せた。

「おや、騒がしいと思ったら、標的がわざわざ出向いてくれたのですか。ヴァンディエール騎士団長、あなたとのお話は楽しかったのですけれど……、見られたからには死んでください。私を追わせるな、全員殺せ」

フレデリクがそう言うと、手に持っていた魔導具らしき物が淡い光を放つ。

同時に実験体が咆哮を上げ、再び襲い掛かって来た。

どうやらあの魔導具で操っているようだ。

「待て! 叔父上! なぜこんな事を!」

フェリクスの言葉に答えず、フレデリクは通路の奥へと姿を消した。

「何かをするつもりだろう、早く追いかけねば……!」

「あの先は師匠から受け継いだ研究所のある、下の階への階段が……きゃぁっ」

フェリクスが動き出すより早く、アリアがフレデリクを追いかけようとすると、実験体の爪が迫る。

シモンがギリギリでアリアを攻撃から守り、アルノーが実験体の腹部を薙ぎ払った。

「硬い……! 鬼人より硬いかも! 皮膚が骨くらい硬い!」

実際アルノーの攻撃では、わずかな切り傷にしかなっていない。

残った護衛のデジレともう一人の近衛隊員は身体強化で応戦している。

「こっちの剣はドワーフ製だ! 攻撃は俺達に任せろ! デジレ、隙を作ってくれ!」

「わかった!」

正確に言うと俺の剣は違うが、その代わりジェスの鱗を使っているからな。

アルノーの剣も当然ドワーフ製で、それでも傷程度しかつけられないなら突くしかない。

「ジュスタン隊は斬るんじゃなく突け!」

「「「「はい!」」」」

フレデリクが先代の遺したもので何をするために地下三階に向かったのかわからないが、絶対にろくな事じゃないだろう。

不意に実験体の動きが鈍る。その隙を見逃さず、身体強化を使った近衛部隊の二人は息の合ったコンビネーションで正面からの攻撃と、後方からの足元への攻撃で転ばせた。

すかさず俺が喉元に剣を突き立てると、ほぼ同時にガスパールとマリウスも心臓と腹部を刺す。

それでも数秒間腕や足をばたつかせて暴れ、徐々に力尽きていった。

フェリクスは動かなくなった実験体に対し、エルドラシア王国式の黙とうを捧げてから顔を上げる。

「仇は必ず討つと約束する。……みんな、怪我の具合はどうだ? 動けないならここで待機してくれ」

「「「問題ありません!」」」

先ほど吹っ飛ばされた三人は、剣を支えにしながらも立ち上がった。

強い意志を見せる三人に、隊長であるデジレも頷き、このまま進む事を決めたようだ。

「次は何が襲って来るかわからない、アリアはここで待機するか?」

「いいえ、あたしも行きます! 師匠の遺したものを好き勝手されてたまるものですか!」

フェリクスに対し、きっぱりと言ったアリアの目は、怒りに燃えていた。