軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

167.

翌日、昼食を済ませて正装に着替えた俺達は、王城の謁見の間へと通された。

先頭には今回の主役である第三王女クラリスと、身内であるエルネストだ。

謁見の間にはすでにエルドラシア王国の重鎮と思われる者達が並び、王以外の王族も並んでいる。

顔には出していないが、ラフィオス王国とは違って衣装だけじゃなく建物も開放的な造りな上、かなりの金が使われた装飾に部下達もソワソワしているのが伝わってきた。

豪華な調度品も見慣れている第一騎士団ですら、きらびやかな装飾に息を飲んでいたから、平民出の部下達からしたら仕方のない事だろう。

それにしても、神託の通りならこの国にも俺と同じように悪役だけど転生している奴がいるか、処刑ルートの悪役を闇落ちから救うかしなきゃいけないはずなんだが、問題はそれが誰かわからないって事だよな。

神託をよこすなら、もうちょっとわかりやすく教えてほしいものだ。

とりあえず、王都で嫌われている奴を探し出せるだろうか。

そんな事を考えていたら、エルドラシア国王が姿を見せた。

「よくぞ参られた。ラフィオス王国のクラリス王女、エルネスト王子、 此度(こたび) の婚姻は末永い両国の友好の証となろう。邪神討伐を成しえた英雄と親族になる事、光栄に思う」

「恐れ入ります。ですが邪神討伐は私だけの成果ではありません、ここにいる我が国の騎士は全員討伐に参加した英雄達です」

「おお! 世界を救った英雄達ならば、今宵の歓迎の宴は盛大に催さねばな! まずは今後顔を合わす事が多くなる王族や城の重鎮達を紹介しよう」

そう言ってエルドラシア王はすでに嫁いだ王女以外の王族を紹介してくれた。

とりあえず王には子供が六人。第一王子は側室の子供らしく、五人目の子供で第二王子だが正妃の子であるフェリクスが王太子になったというわけか。

ちなみにあとの四人は王女で、この場にいない二人はすでに結婚して王族籍から抜けているらしい。

その後は国の重鎮である宰相や大臣、魔導具や魔法の研究をしている魔塔の魔塔主が紹介された。

王族や大臣達は涼し気な恰好をしているというのに、魔塔主として紹介された壮年の男は一人だけ暑そうな黒いローブを身に着けている。

しかし本人は涼しい顔をしているので、俺達の鎧やマントと同じく温度調節魔法が付与されているのだろう。

ぜひとも魔導具について色々話してみたいものだ。

今のところ、前世の便利な電化製品はあまりない。ラフィオス王国では開発が無理だと諦めていたが、エルドラシア王国だったら開発が可能かもしれないからな。

謁見が終わり、俺達は宴の時間まで城内を案内してもらう事になった。

クラリスとエルネストは色々話す事があるらしく、数人の第一の騎士と共に別行動だ。

本来なら道中の魔物対策のための護衛である俺達第三の騎士は、城内での護衛のためにされる案内は必要ないが、単純に豪華な建物の見学がしたいという全員一致の意見により同行している。

「夜になっても灯りの魔導具のおかげでほとんど死角はありません。ラフィオス王国から輸入される魔石は質がいいので、数年交換せずとも問題ないと言って開発者の先代の魔塔主様も好んで使っていました」

「先代? 灯りの魔導具はもっと前からあるのでは? それに我が国で魔石は一年もせずに交換していたはずだが」

案内係であるエルドラシア王国の近衛騎士の説明に、第一の副団長が問いかけた。

「ああ、灯りの魔導具自体は以前からありますが、今国外にある物は古い世代なのです。先代の魔塔主が開発した魔力を節約する回路を使った新世代の物は数年使えるのですよ。どうしても新しい魔導具は国内に優先的に広まりますから、国外に輸出するのはもう少し先になるでしょう。今回の婚姻でエルドラシア王国には多少輸出されるかもしれませんが」

「改良されるとそんなに変わるものなのですね。そういえば先代の魔塔主が亡くなったとか。彼がいなければ我が国も不便な生活がまだ続いていたでしょう……」

「もしや先代魔塔主というのはゼフィール様ですかっ!? いつの間に亡くなって……!」

近衛騎士と第一の副団長の会話にマリウスが割り込んだ。

「ええ、よくご存じですね。彼は三年前に病で亡くなりました」

「商人の間では有名なのか?」

興奮気味のマリウスに聞くと、凄い勢いでこちらを振り返った。

「何を言っているんですかっ! 団長の部屋にある魔導オーブンも魔導冷蔵庫も魔導コンロもゼフィール様の開発された魔導具ですよ! 正確には以前から冷蔵のみの物はあっても、冷凍庫と一体型の物を開発したんですけどね。ゼフィール様が魔導師として活躍される前は、もっと大きな魔導具ばかりで輸入するにもごく少数しか運べなかったんです。それを 魔法鞄(マジックバッグ) の改良により容量が大幅に上がって魔法鞄の数だけ輸入できるようになったんですから、正に商人達の革命となった魔導具です! ちなみに時間遅延仕様の物もゼフィール様の開発ですからね!」

ちゃんと息継ぎをしているのかと心配になるほど、怒涛の勢いで熱弁したマリウス。

近衛騎士だけじゃなく、この場の全員がポカンとしている。

「そうか……、そんなに恩恵にあずかっていたなら、一度会ってみたかったな」

「ええ、本当に……」

「はは、我が国の者に対してそこまで言っていただき、ありがとうございます。城内には彼の改良した魔導具がまだまだありますから、それも紹介していきますね」

「「ぜひ!」」

こうして再開した城内見学の様子を窺っている人影に、俺達は気付かなかった。