軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

151.

ジェスの父親……黒と呼ばれたドラゴンは、俺に興味はないと言わんばかりに無言で横を通り過ぎて行った。

あれは父さんなんかじゃない、ジェスの姿に似せただけのドラゴンだ。

そう自分に言い聞かせながら動揺を押し殺す。

「ジュスタン大丈夫?」

気付くとジェスが心配そうに俺を見上げていた。

「ああ。父親を助けられてよかったな」

「うん!」

「主殿、ジェス。まだ邪神を討伐できていないのだから、助けられたとは言えぬぞ」

そう言うジャンヌの視線は次々と崩れる彫刻に向けられたままだ。

後方では黒に戸惑いながらも、エルネストが陣形の指示を出している声が聞こえる。

そしてとうとう最後の彫刻が崩れ落ちた。

「邪神が出て来るぞ! ヴァンディエール! そこでは聖女の障壁が届かないから戻れ!」

いつの間にか一行の前に聖属性の障壁が展開されていた。

「ジェス、ジャンヌ、俺達も王太子達のところへ行こう」

「うん!」

「わかった。だがもう来たぞ」

百メートルもない距離を走っている時、ジャンヌが呟いた。

それと同時にこれまで感じた事のない恐怖と悪寒に襲われ、とっさに身体強化でジェスとジャンヌを両脇に抱えてエルネスト達の元へ走る。

「ふふっ、我らを置いて走ればいいものを……。時々主殿は我らを人族として扱っているように感じるな」

「別に……、ドラゴンだからと言って邪神に攻撃されても平気とは限らないだろう」

本当は見た目が人族と同じなせいで、つい人族と同じように扱っているという自覚はある。

ジャンヌとジェスは嬉しそうに微笑みながら俺を見るのはやめてほしい。

そんな俺達のところへ守りの要である聖女が駆け寄って来た。

「ジュスタン団長! ジェスちゃん達も間に合ってよかった! みんなの事は頑張って守るからね!」

まるで邪神の圧を感じていないような態度で、全く目立たない力こぶを作る聖女。

やめろオレール。この状況で聖女が可愛くて仕方ないという表情をするな。

だが次の瞬間には甘い空気を吹き飛ばす声が次々に上がった。

「なんだあれは!?」

「少女……?」

「まさか……あれが邪神か!?」

第一の騎士達の声に振り返ると、挿絵で見た美女の邪神ではなく、目を閉じた少女が一人立っていた。

見ているだけで背筋が凍るような悪寒が走り、本能が告げている。あれは危険だと。

それにしても、なぜ大人の女性ではなく少女の姿なのだろう。

そんな疑問を持ったが、すぐにそれどころではなくなる。

閉じられた両目が開かれると、そこあったのは瞳ではなく 黒闇(こくあん) だったのだ。

「うわっ、なんだあれ!? 気持ち 悪(わり) ぃ!!」

シモンが言う事はもっともだ。闇が両目からあふれるように広がり、少女の姿を包み込んでなお大きくなっていく。

それと共に洞窟内の気温がどんどん下がって吐く息が白くなり始め、否が応でも緊張感が高まる。

最終的に邪神はさきほど見た黒……ジェスの父親とそっくりな黒竜の姿になった。

《おのれ……! 贄が足りぬ! なぜ贄の 古竜(エンシェントドラゴン) が消えた!? これでは不完全ではないか!》

洞窟全体に響き渡る男とも女ともつかない声。

どうやらさっきの少女の姿は生贄が足りなくて成長しきれなかったせいらしい。

「ふん。黒の力のほとんどを吸収したおかげで、まがい物程度にはなっておるようだの」

ジャンヌが邪神を憎々しげに睨みつけている。

ここまで嫌悪を表に出している姿は初めて見た。

「聖女! 邪神の動きを封じてくれ! 聖騎士達は障壁の維持を! 騎士は聖水を剣にかけろ!」

エルネストの指示で各自打ち合わせ通りの行動を取る。

聖女が手を組み祈るような仕草をすると、今にも羽ばたいて飛ぼうとしていた邪神のドラゴンが、まるで見えない鎖に囚われたようにもがき始めた。

「聖騎士はそのまま聖女の護衛を! 第一、第三は私に続け!」

エルネストに続いて一斉に邪神に向かうと、邪神はドラゴンブレスの予備動作に入った。

「ブレスが来るぞ!」

警告すると第一の前衛が最前列に飛び出すと障壁魔法を展開し、第三の部下達は障壁の陰に入る位置に移動する。

貴族だけの第一ならではの戦い方だな。

だが邪神が出したのはドラゴンブレスのようだが、闇を吐いたというのがぴったりだった。

吐き出された闇は障壁を飲み込み、前衛の騎士達をも飲み込んだ。

闇が霧散した時には数人が膝をついたり、倒れていた。

その全員が目の焦点が合っておらず、悪夢でも見ているかのようにブツブツと独り言を言ったり、パニック状態になっている。

「もう終わりだ……っ!」

「すまない、すまない……!!」

「やめてくれっ! いやだぁぁぁ」

「落ち着け!!」

エルネストが一喝するも、見たところ魔力の少ない者ほど影響を受けているようだ。

第三が最前列にいたら大惨事になるところだった。

「うわぁ、あの黒いのに当たるとやべぇな。団長、次が来る前に突っ込もうぜ!」

そう言い出したのは予想通りシモンだ。

まぁ、俺の隊の全員がやる気の顔をしているのだが。

「王太子! ここは先に第三が突っ込ませてもらう! そいつらは聖女に浄化してもらえば元に戻るはずだ!」

ぶっちゃけ今の状態の第一は足手まといになるからな。

ブレス系の攻撃はインターバルが必要なのがお約束だから、数分程度は同じ攻撃はないだろう。

エルネストが頷いたのを確認して、 第三騎士団(俺達) は飛び出した。