軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

147.

「うおぉぉぉぉ!! すげぇ!!」

この世界では皆無であろう飛行体験をしたシモンは、さきほどの強打したダメージを忘れたかのように興奮して景色を眺めている。

俺としてはテレビ塔の展望台程度の景色で興奮はしないものの、むき出しの状態で棘に掴まって立っているせいでかなりスリリングだった。

「興奮して落ちるなよ! それといつ邪神の手下が現れてもおかしくないんだから気を抜くな!」

「わかってるって!」

『主殿はまるで上空に慣れているような落ち着きっぷりだのぅ』

感心したようなジャンヌの声が脳裏に響いた。

いつかはジャンヌにも話していいとは思うが、シモンもいるし今はその時ではないだろう。

「そうでもないさ。今はそれより邪神の拠点と襲撃の方が気になっているだけだ」

実際いつ襲撃されてもおかしくないからな。

この視界に入っている景色のどこかに拠点があるはずなんだ。

そう思って辺りを見回していたら、不自然に木が生えていない箇所があるのに気付いた。

「ジャンヌ、ジェスの父親の気配はあの木がない辺りからじゃないか?」

『それが……、気配が弱すぎてよくわからぬ。だが、別の気配があの辺りから感じられる……というか、来るぞ』

「シモン! 襲撃の可能性だ! 警戒しろ!」

「うぇっ!?」

シモンはジェスの棘に左手で掴まったまま、慌てて右手を柄にかけたが襲撃者の姿は俺にも見えていない。

『来たな』

ジャンヌはそう言うと頭を少し逸らし、一瞬身体を停止させた。

「うおぉぉぉぉ!! すげぇ!!」

上空に移動した時と同じような声を上げるシモン。

俺の視界からだと正面はジャンヌの首しか見えないせいで、何があったかさっぱりわからない。

「シモン! 何があった!?」

「今さ! グリフォンの群れが来たの! でっかい変異種もいたんだけどよ、ドラゴンブレスで一発!!」

「グリフォンの群れだと!?」

俺は四天王の一人(?)が変異種のグリフォンだったと、『あやつは四天王の中で最弱』というセリフと共に思い出していた。

まさかそのグリフォンだったんじゃ……。

『お母さんすごーい!』

『妾にかかればあのような者達なんぞ羽虫も同然よ、ほほほ』

ジェスのドラゴンブレスでもすごかったからな。ジャンヌであれば更に強力だろう。

しかも群れを一撃だとしたら、かなりの範囲だったはず。

『主殿、とりあえずあやつらが出て来た所へ向かうぞ』

「わかった」

降りるために滑空しながら旋回したおかげで、さきほどジャンヌがブレスを吐いた場所が見えた。

木が生えていなかった場所が更に広がり、新たに 縁(ふち) となった部分は黒く焦げ、地面は溶けたようになっている。

だが、その溶けた地面の中に数本の柱が飛び出していた。

「あれは……ジャンヌのブレスでも溶けなかったという事か」

『ジェスの父親が言っていた古代遺跡というものかもしれぬ。恐ろしく頑丈な造りで、邪神に関連する物を封印している神殿の遺跡があると……』

そういえばタレーラン辺境伯領の遺跡も邪神の欠片があったから、あの遺跡の大規模な神殿がここにあって邪神が封印されていると考えたら辻褄は合う。

ドラゴンブレスにより、まるでガラスのように硬くなったまだ熱い地面に俺達は降り立った。

夏だったらいつまでも熱くて降りられなかったかもしれない。

「うえ……っ、なんか胃がフワッとして気持ち悪い……。なんで団長は平気そうなんだよ」

フラフラしながらジェスから降りたシモンが、けろりとした俺を見て文句を言う。

確かに飛行機の着陸時の旋回や、エレベーターで到着時の浮遊感みたいな感覚はあったがそこまでダメージはない。

「羽ばたいて飛ぶわけじゃないから馬や馬車より揺れないし、快適だっただろう?」

「あっ、それそれ! 実際に乗ってみて驚いたぜ! どうやって飛んでんだ?」

「ドラゴンは基本的に魔力で飛ぶのでな。翼は補助的にしか使わぬのだ」

シモンの問いには人化したジャンヌが答えた。

さすがに森の中であの大きさでは大変だと思ったのだろう。ジェスも人化している。

「お父さん……」

父親の気配が濃くなったのか、地面を見つめてジェスがポツリと呟いた。

その姿が前世で父親が亡くなった事を聞き、実感できずに戸惑っていた 陽向(ひなた) のようで胸が痛む。

「まだ生きているなら助けられるはずだ。急いでお父さんを探そうな」

「うん!」

ジェスの頭を撫でていたら、シモンが剣を抜いた。

「団長、どうやら出迎えが来たようだぜ?」

「ククク……、よくぞ気付いた。そこなドラゴンよ、よくも我が同胞を消し炭にしてくれたな」

焦げついた木の陰から現れたのは上半身が裸の美女で、下半身が蛇のラミアーだった。

「ヒュ~! 美人じゃ~ん! けどジャンヌの方が美人だな。しかも下半身蛇だしよ」

剣を構えながら口笛を吹くシモン。

同意だが余計なひと言のせいで余裕げな笑みを浮かべていたラミアーの目が吊り上がり、丸太のように太い蛇の部分がシモンに向かって伸びた。

「無礼な人間め! 絞め殺してくれるわ!!」