軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

137.

「どうだっ!? これで俺の言っている事が本当だとわかったか!?」

「くっ、確かに……、だがまだまだぁっ!!」

訓練場へ行くと威勢のいい声と、木剣がぶつかり合う音が聞こえてきた。

この声はリュカとシモンだな。

囲いがあるため入り口まで回り込んで覗くと、ちょうど尻もちをついたシモンにリュカが木剣を突きつけているところだった。

「リュカ!」

「ジュスタン! やっと俺も王都に来たぞ!」

声をかけるとリュカが笑顔で振り向いた。

「来たぞ! じゃない! 手紙と同時に来るっておかしいだろ!!」

さっき受け取った手紙には、もうすぐ王都に行くと書かれていたのだ。

「へ? あれ? 俺が出る二日前に出したんだけどな」

「……その二日の間に雨が降らなかったか?」

「あ~、そういや手紙を出した次の日が雨だったような」

俺だけでなく、部下達にもジトリとした目を向けられているリュカ。

雨が降っている間、手紙を運ぶ馬車が移動しない事を忘れていたのだろう。相変わらずの脳筋っぷりだ。

とりあえずほとんどの部下達が集まってるようだし、紹介しておくか。

「みんな聞け! ここにいるリュカは今後は事務中心となるオレールの代わりに、戦力的な意味で副団長となる! 実力は今見ただろう? 剣の腕だけなら俺と同等の実力を持っていると、俺が保証する!」

俺の言葉に騒つく部下達。

「団長~、そいつの実力はわかったけどよ、何者なんだ?」

立ち上がり、尻に付いた土を払いながらシモンが聞いてきた。

周りもそれが聞きたいとばかりに頷きながらこちらを見ている。

「リュカはヴァンディエール侯爵騎士団で中隊長をしていた俺の乳兄弟だ」

「団長の乳兄弟!?」

「どうりで強いはずだぜ」

「団長の弱味も知ってるかもしれないね」

「あの実力で中隊長って、ヴァンディエール侯爵騎士団ってどんだけ精鋭ぞろいなんだよ」

どうして新しい副団長と聞いた時より、俺の乳兄弟だと聞いた時の方が騒がしくなるんだ。

そして今、俺の弱味がどうとか言ったのはアルノーか!?

「ヴァンディエール侯爵騎士団の団長は侯爵の弟だし、副団長は次男のシリル様だからな。上の役職は身内で固められているんだ」

「なるほど。だったら納得だぜ」

ガスパールの言葉に答えるリュカ。

恐らく俺がいない間に訪ねて来たリュカに対して、シモン達が疑って実力を見ようと手合わせしていたのだろうが、馴染むのが早過ぎないか?

「リュカ、食事は?」

「まだだ」

「じゃあ食堂へ行こう。最後に訓練場を出る奴は灯りを消して来いよ。ジェス、待たせたな」

訓練場には夜間に訓練ができるように魔導具の灯りが取り付けられている。

実際今も灯りを消すと真っ暗なはずだ。

俺は大人しく待っていたジェスと手をつないで宿舎へ向かおうとしたが、ジェスは振り返って後ろにいるリュカを見ていた。

「どうしたジェス」

「あの人ジュスタンの仲良し?」

「そうだな。リュカの母親が俺の乳母で、兄弟のように育った仲だ」

「ふぅん……」

興味深そうにジェスを見つめ返しているリュカの視線を振り切るように前を向くと、なぜか繋いだ手に力がこめられた。

もしかしてこれまで俺にここまで親し気に話しかける奴がいなかったから、ヤキモチだろうか。

リュカはそんなジェスの気持ちがわかっているかのように、あえて話しかけてこない。

脳筋の割にこういう心の機微には敏感な奴なんだよな。

「ジェス、抱っこして行こうか?」

「うん!」

ジェスを抱き上げると、嬉しそうに首に抱きついてきた。

なんだか自分より下の子が生まれた時の弟達みたいだな。

自分よりリュカを優先されると思って不安になったのかもしれない。

抱っこをしての移動が功を奏したのか、一度部屋に戻るとジェスは食事の間部屋で待っていると言った。

リュカはアルノーに食堂へ案内するように言ってある。

俺の弱点を聞き出そうと話したがっているせいか、喜んで引き受けていた。

食堂へ行って料理を受け取り、リュカと部下達が座っているテーブルへと向かった。

リュカの向かいの席が空いているのは、俺が座ると思っての事だろう。

一心不乱に料理を口に運ぶリュカの前の席に着くと、やっとその手を止めた。

「リュカ、とりあえずお前の部屋は二階にある俺の向かいの副団長用の部屋を使え。清浄魔法ですぐに使えるようにしてやるから。ちなみにもう一人の副団長の部屋は俺の隣にある。ここの二階は団長と副団長達の部屋の他に、俺の隊と副団長のオレールの隊の直属の部下達の部屋がある。他の者は三階の部屋だ」

「もぐもぐ……ごくん。ここの料理美味いな! 王都まで来た甲斐があるってもんだ! それにしても、騎士団の宿舎ってどこも似たような造りなんだな。食堂の向かいって風呂だろ?」

「そうだ。ところでアルノー……、俺の弱味は何か聞けたか?」

ニヤリと笑ってアルノーを見やると、ヒュッと息を飲む音が聞こえた。

「や、やだなぁ団長。団長の弱味なんてないだろうから聞いても無駄でしょう? だからそんなの聞くはずないじゃないよ、あはは」

「ジュスタンの弱味? 猫舌くらいか? 熱いお茶とかすぐに飲めなかったよな」

さらりとリュカから放たれた言葉に、その場の空気が一瞬凍りつく。

確かに昔の俺も今の俺も火傷で上あごの皮がめくれるのは嫌いだし、熱すぎるのは冷ますけど!!

騎士団長が猫舌って恰好がつかないだろ!!

「い、今はそこまでじゃない!」

「ふぐ……っ、猫舌……!」

アルノーが口を押えて俺から顔を背けた。

「団長熱いの苦手だったのか? 言われてみれば熱いスープとか、パンにつけたりしてゆっくり食べる事多かったっけ」

「シモン……このバカッ」

余計な事を言ったシモンをガスパールが 窘(たしな) める。

静かにしているが、マリウスも肩を震わせて笑いをこらえているのはわかっているぞ!

「恥ずかしかった時にすぐ耳が赤くなるのも変わってないな、ははは」

「お前もう黙れ!!」

思わず出た心の叫びのせいで、他の部下達の注目を集めてしまった事はこの日最大のミスだったと思う。