軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

119.

「準備はいいか?」

「ああ、こっちの準備は万端だぜ」

討伐作戦が終わった三日後、治癒師に治せる怪我は全員完治している。

今はサラモナに行くために整列させているところだ。

「騎士団長殿! 怪我人も全員馬車に乗りました! いつでも出られますよ!」

そう張り切っているのは先日の治癒師……ではなく、その上司である治療院長。

聖女様に治癒してもらうために同行すると報告したところ、同行役を奪われたのだとか。

満面の笑みの院長とは対照的に、怨嗟の表情を浮かべて見送っている先日の治癒師と目を合わせないようにしながら最終確認を済ませ、数日かけてサラモナに到着した。

怪我人の乗っている馬車が貴族の乗るような馬車ではなく荷馬車に布を敷いての移動だったので、腕のいい院長に来てもらって正解だったかもしれない。

実際荷馬車の振動でかなり身体に負担がかかっているようだったからな。

到着した時には院長も怪我人もホッとしていた。

各地への分岐点でもあるサラモナは、それなりに大きな都市でもある。

そこに数日滞在するという事で、戻ってくる聖女や聖騎士達への点数稼ぎついでに宿舎で作っているレシピを広める事にした。

ちなみにこのレシピを広めるにあたって王都出発前に料理長に頼んで商業ギルドに登録済みだ。

とは言っても、他の者が勝手にレシピ登録で稼ぐのを防止するためなのでレシピの使用料は無料にしてある。

小説の聖女もそうしていたしな。

料理長も登録者名が自分になるのを恐縮していたくらいで、最初の発案者ではないからとレシピ登録で稼ぐ事をよしとしなかった。

つまり閲覧料を商業ギルドに支払えば、新しいレシピで商売も可能。

という事で早く広めるためにも商隊などの団体客御用達の宿に泊まる事にした。

「団長だけジェスと二人部屋なのか!? ずるくねぇ!?」

部屋割りを伝えて真っ先に文句を言ったのはシモン。

「ほぅ、それならお前は夜に抜け出さないように俺に見張られながらの同室でいいと? そうか、仕方ないな」

「あっ! いや、あの、団長の優しい気遣い嬉しいなぁ! オレ達四人部屋がいいです!」

コクコクと頷いて同意する部下達。

「え~? シモン達とは違う部屋なの?」

「ほら、オレ達は夜に酒を飲んだり遅くまで話してたりするからさ、ジェスが眠いのに眠れなかったら困るだろ?」

ガッカリするジェスを慌てて宥めるシモン。

「そっかぁ……」

少しションボリしながらも納得するジェスに、部下達は胸を撫で下ろした。

どうやら宿屋に泊まる事になって食事当番をしなくていいマリウスも一緒に遊びに行くようだ。

「俺はこれから支配人にレシピ提供と、門番に第三騎士団の者が来たらこの宿にいると伝言を頼んでくる。お前達は大人しくしている事を条件に自由時間でいいぞ。夕食の時間には戻るように」

そう告げると、他の部下達も返事と共にロビーから蜘蛛の子を散らしたように部屋に荷物を置いて街へと繰り出して行った。

「さて、支配人に話がある」

これまでの第三騎士団の噂を聞いていて心配だったのだろう、受付カウンターからこちらを見守っていた支配人を振り返った。

「な、なんでございましょう?」

「食事について頼みたい事がある。ここに書かれているレシピで作ってほしい。すでに王都の商業ギルドに登録されている使用料無料のものだから安心してくれ。ああ、食事の代金を値上げするならしても構わないぞ」

「は、はぁ……」

最初の頃より数が増えたレシピの束を渡すと、支配人は戸惑いながらも受け取った。

「さて、ジェス、今から門まで散歩でもしようか。それともエレノアと遊ぶか?」

「お散歩する!」

嬉しそうに即答したジェスが差し出した手を握り、手を繋いで宿屋を出て門へと向かう。

長旅で疲れた者のためか、宿屋街と門は歩いて行ける距離だ。

門前にある広場に出ると、広場の向かいの道からアランがこっちに向かって手を振りながら走ってきた。

確かあっちには冒険者ギルドがあったはずだ。

「兄貴! ジェス! どこへ行くんだ?」

「門番に伝言をな。聖女達が聖国を出たら伝令役が来るから、俺達がいる宿を伝えてもらわないとダメだろう?」

「じゃあ俺も一緒に行くぜ! ここの門番は顔見知りが多いしな!」

そう言ってアランはジェスの空いている手と手を繋いだ。

ジェスは少々戸惑っているようだが、アランが嬉しそうにしているのを見て、まぁいいかと言わんばかりに前を向いた。

「そうだ……、ジェスが人化したドラゴンだとは話したが、どうして陽向の姿をしているかは話してなかったな。前世の話は聞かれるとまずい……わけではないが、知られると色々面倒だろう?」

「確かに……下手したら頭のおかしい奴って思われるだろうな」

「だろう? この後にでも俺達の部屋で話すか。ジェスにも俺達の事を知ってもらういい機会だ、ちゃんと話した事はなかったしな」

「ジュスタンとアランの事? 前から知り合いなの?」

ジェスが不思議そうに首を傾げた。

「その事も話そうな。その前に門番に話をしないと」

「じゃあサッサと済まそうぜ! 色々聞きたい事もあるんだ」

アランに引っ張られるように門番の詰め所に向かった。