軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

113.

広場に戻ると、予想通りジュスタン隊の部下達が真っ先に近付いてきた。

きっと周りから話を聞く役割を押し付けられたのだろう。

「野営の準備は終わったか?」

「終わったよ、それよりも団長は僕達に説明しなきゃいけない事があると思うんだ」

アルノーが無駄にイイ笑顔で聞いてきた。

他のジュスタン隊の奴らも同意とばかりに頷き、他の隊の部下達もチラチラと明らかにこちらに聞き耳を立てている。

「はぁ……、アイツはジェスそっくりの奴と死に別れているんだ。俺とも知り合いでな、ずっと昔で……お互い見た目が全然違っているくらいの……な。まさかアイツとは思わなかったから驚いたが、本人も混乱しているようだったから今日は帰した」

「それにしちゃあ団長の事『お兄ちゃん』って呼んでなかったか? あのアランとかいう奴、絶対団長よりうんと年上だろ?」

「ああ……、まぁそうだな」

シモンの指摘に言葉を濁す。

何か……、何かいい言い訳はないか!?

「あの人泣き止んだ?」

内心焦っていると、ジェスが部下達の隙間からひょっこり顔を出した。

俺はしゃがんでジェスと目線を合わせる。

「ああ、昔の知り合いにそっくりなジェスを見て泣いてしまったらしい。さよならも言えず死んでしまったからな……」

大和に再会できたのは嬉しい反面、助けられていなかったという事実を知って複雑な気分だ。

「ああ、だからジェスが初めて人化した時、団長も泣いてたのか~! ガキの頃に死に別れた奴とそっくりだからだったんだな。誰だよ、ジェスが可愛いから感動して泣いたって言ってた奴」

「「お前だよ」」

「イテッ」

カシアスの発言に同じ部隊のエリオットとアメデオが同時に頭を叩いてツッコんだ。

そして固まっているのは俺の隊の部下達。

「団長が……泣いた……!?」

シモンが驚きの声を上げ、他の奴らも驚いている。

こいつらあの時テントの中にいて、俺が泣いたところを見てなかったもんな。

「タレーラン辺境伯領の森で子供を助けた時といい、あの頃からやっぱり団長どうかしちゃっ……なんだか変わったよねぇ」

「オレは今の団長好きだけどな」

「ボクもジュスタン好き~!」

シモンの言葉を受けて、ジェスが俺の首に抱き着いた。

ああうん、これが本来の全力ギューだよな。ジェスが本当に全力で抱き着いたら俺は確実に死ぬと思うが。

腕の中に収まるサイズのジェスを抱き締め返し、脳内でさっきのアランの感触を書き換える。

前世の大和だったらこのジェスよりもっと小さかったんだけどな。

「段々日が長くなってきたとはいえ、もうすぐ陽が傾く時間だぞ。各自馬の手入れと夕食の準備に取りかかれ」

ジェスをそのまま抱き上げ、エレノアが繋がれている場所へ向かった。

二人でエレノアの世話を済ませると、今度はジェスと手をつないで隣の冒険者ギルドへと向かう。

「ジュスタン、今度はどこへ行くの?」

「騒がしいから気付いているだろうが、一応ギルドマスターに到着の報告と……警告だな」

「ふぅん?」

冒険者ギルドに入ると、ギルドに併設された酒場含めて一斉に視線が集まる。

値踏みするような視線や、ニヤニヤと何かを楽しみにしている態度の奴らが多い。

恐らくアランが俺に対して一発カマしたと思っているのだろう。

逆に言えばこいつらはアランがやってくれるからと傍観していたというところか。

俺に気付いてギルド職員の一人が慌ててカウンターの中から出て来た。

中年男性で苦労していそうだから、事務の責任者と思われる。

「あの、もしや第三騎士団の方でしょうか」

「ああ、団長のジュスタン・ド・ヴァンディエール伯爵だ。貴族だが今回はただの騎士として対応してくれていい。到着をギルドマスターに報せに来た」

「恐れ入ります。ところで……その……そちらの子供はいったい……?」

職員がジェスに視線を向けた。

俺がドラゴンと従魔契約をした事は結構広まっているはずだが、人化できる事は広まっていないようだ。

職員の言葉に反応して、周りから野次が飛ぶ。

「おいおい、騎士団長様はガキを連れていても魔物討伐は余裕ってか?」

「よせよ~、どうせアランに泣かされたあとじゃねぇの?」

アランの名前が出て、ジェスが繋いでいた手をクイクイと引っ張った。

「ん? どうした?」

「ねぇねぇジュスタン、アランってさっき泣いてた人?」

「ああ、そうだな。だけど人が泣いてた事を勝手に話すのはよくないぞ。後でアランが恥ずかしい思いをするかもしれないだろう?」

「そっかぁ。わかった、もう言わない」

ジェスは繋いでいた手を離し、両手で自分の口を塞いだ。

周りは当然ジェスが発した言葉に衝撃を受けている。

「アランが……泣いた!?」

「え? もしかしてあの騎士団長に泣かされたのか?」

「嘘だろ……、あのアランが……」

「そうそう、この子の事だったな。この子の名前はジェス、今は人化魔法を使っているが、俺と従魔契約しているドラゴンだ」

「「「「「「「えええぇぇぇえ~!?」」」」」」」

その場にいた冒険者とギルド職員が一斉に悲鳴のような驚きの声を上げると、その声を聞きつけてカウンターの奥のドアから体格のいい老人が飛び出してきた。

「何事だっ!?」

「あっ、ギルマス、第三騎士団のヴァンディエール騎士団長が到着の報告に来てくれました」

ギルド職員は動揺しながらも俺をギルマスに紹介した。

「ほぅ、お前さんが騎士団長か。支援要請に応えてくれて感謝する。ただこの町の冒険者はアランというA級冒険者が仕切っていてな、そいつに認めさせないと冒険者はお前さんの言う事を聞くか怪しいぜ?」

俺の度量を確かめたいのか、ニヤニヤと人の悪い笑みを浮かべるギルマス。

それまで俺達の話をジッと聞いていたジェスが、再び俺の手を引っ張った。

「ねぇねぇジュスタン、やっぱりアランってさっきジュスタンの事お兄ちゃんって呼んでた人?」

「な、なにぃぃぃ~!?」

今度はギルド内にギルマスの声が響き渡った。