軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

108.

翌日、早速果物を買って天然酵母作り……といきたいところだが、今日は聖国からの使者一行が到着する日だ。

というわけで聖国の使者達に向けて勝手なマネするんじゃないぞ、と警告する意味も含めて王城前で第二、第三騎士団が警備と言う名の圧力係として駆り出されている。

同行させて面倒な事にならないよう、ジェスにはジャンヌ達がいる屋敷に遊びに行ってもらっている。

今は聖女がいるから興味が逸れているようだが、小説には出ていなかったものの、家庭教師から習った伝承でドラゴンは邪竜だの聖竜だの神殿関係で書かれていたりするから油断はできない。

王城を中心に螺旋状のスロープになっている道の脇に一メートルの等間隔で配置されている騎士達は、温度調節が付与された鎧を装備しているとはいえ、寒空の中ひたすら立っているだけという苦行に耐えていた。

俺は団長という事で騎馬で見回りしているわけだが。

「あっ、団長! まだ聖国の使者は来ないの? 立ってるだけだと暇で暇で……もう宿舎に帰っていい?」

「いいわけないだろう、もう王都に到着したという報告は入っているんだ、大神殿に寄って聖女に会ってから登城するつもりじゃないか?」

見回っていると、このアルノーのように愚痴をこぼす奴らが結構いる。

第二騎士団の奴らは普段から門番をしているせいか平気でジッとしているが、第三騎士団は早々に限界が近付いているようだ。

こういう事がわかっているから俺の見回りという役目が必要なんだが。

ソワソワしている部下達の様子にため息が漏れた時、第二の騎士が馬で坂を駆け上がって行った。

「よかったな、もうすぐ来るみたいだぞ。お前達、気合入れろよ! 俺達の役目はわかっているだろうな!?」

部下達が声を揃えて返事をする。出発前に部下達に言ったが、戦力を見せつけるという意味合いが一番大きいのだ。

強そうな顔して直立不動でいろと命令してある、問題は気合が入り過ぎて使者達を睨みつけないかだな。

しばらくすると、騎馬で先導する聖騎士団長アクセルの姿が見えたため、俺もひと足先に王城へと向かった。

「よくぞ参られた、聖国よりの使者よ。我が国はそなたらを歓迎しよう」

「ありがとうございます、今は病床に伏しておられる教皇様もお喜びになるでしょう。教皇様は聖女様をとても気にしていらして、環境をよく見てくるよう仰せつかっておりますので、一週間ほど滞在させていただく予定です」

「ご本人が来られなかったのは残念だが、聖女がここで幸せに暮らしている事をしっかり見て報告されるといい」

使者の一行は謁見の間で陛下と上辺のやり取りをする。

いや、しっかりお互い牽制しまくりだな。

この後も聖国側は聖女を連れて行くと含みを持たせ、陛下は聖女の意思を尊重するのが神の意思だと遠回しに応酬していた。

それにしても、今回の使者団の責任者である高位神官といい、先触れの使者といい、顔で選んでいるとしか思えない。

せっかくだからと滞在三日目に大神殿で説法したらしいが、その日から女性信者の参拝が増えたとか。

そして使者団が滞在して一週間後、結局想定通り聖女は聖国へ行く事となった。

老い先短い教皇が聖女に会いたいと病床で言い続けていると訴えられては、基本的にお人好しの聖女は嫌とは言えないだろう。

そして第三騎士団にも予定通りの仕事が割り振られたわけだが、予定通りじゃない事もある。

「では 妾(わらわ) が戻って来る頃には転居出来る事を楽しみにしておるぞ」

「ああ、とりあえず我々の分の家具は半月後には出来上がっているだろう。ジュスタンをあまり困らせんようにな」

「妾をなんだと思っておる。心配せずとも問題ない」

このやり取りを聞いてわかるように、国内の討伐隊として二十人、聖女の護衛として十人、そしてジャンヌとジェスが同行する事になった。

本当ならジェスも留守番させるつもりだったのだが、今回はジャンヌが同行すると言い出したのだ。

「第三騎士団と大神殿の聖騎士はジャンヌの正体を知っているが、他の奴らは知らないからな、絡まれたら手を出す前に俺に言うんだぞ」

「問題ないと言っておるであろう、これでもたまに人族の町に買い物に行ったりしておるのだ。むしろ今回はジェスがエレノアとかいう小娘が心配だと言うから護衛のつもりで同行するのだぞ?」

「ジェスが?」

おっと、それは初耳だ。

「うん、あのね、この前エレノアとお話しした時に、聖国から戻れなかったらどうしようって心配してたの。お母さんが一緒なら、いざという時お母さんに乗って飛んで王都に帰って来れるでしょ?」

確かに聖国行きの護衛のためにアクセルと打ち合わせしている間、ジェスと聖女が二人でお茶を飲んで待っていたがその時に話したのだろうか。

「…………ちょっと待て、もしかしてジャンヌは聖国に行くつもりなのか? 本神殿に行った時に面倒に巻き込まれたり、面倒事を起こしたり、なんて……」

「くどい、何度も言わせるでない。第一、騎士だけでは小娘と聖国の者だけになる時間が作れてしまうであろう。……何かあっても 妾(ドラゴン) の意思となれば聖国も何も言わぬわ」

確かに聖国からは女性の神官も来ているから、聖女の世話をするという時は神殿の者だけになってしまうのは事実だ。

最後に不穏な事を呟いた気がするが、これ以上言っても無駄だろう。

聖国の使者一行が三十人、帰りの護衛として大神殿の聖騎士が十人、第三騎士団が三十人とドラゴン二体という大所帯で出発する事になった。