軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

100.

「魔法で建築だなんて……、初めて聞いたぞ。もしかしてドワーフの集落にあった家や工房は全て魔法で造ってあったのか?」

だとしたらドワーフの魔力量はとんでもないのかもしれない、王宮魔導師ですら数枚の土壁を造ったら魔力切れを起こすんじゃないか?

この世界ではゲームみたいに派手な攻撃魔法を人族は使えない、イメージとしてはレベル一桁で覚える程度の威力のものしか撃てないのだ。

実際俺も身体強化や魔力を剣にまとわせて攻撃力を上げる程度の事しかできない。

それを宿舎サイズの建物を土魔法で造るというのだ、どれだけすごい事をしようとしているのかわかるだろう。

てっきりドワーフは手仕事で造り上げる職人ばかりだと思っていたので意外だった。

ぜひとも建築する当日は見学に行こう、ジェスも見たら喜ぶかもしれない。

「集落の家は儂らの土魔法で建てておるぞ。もちろん窓やドア、家具なんかは別で作らんといかんがな」

「すごい……! それなら施工日程がかなり短縮できますね! 当日は私も立ち会わせていただきますので!」

どうやらジュールは建築関係が好きで今の部署にいるタイプらしい。

建物の話になってから目の輝きが違う、これはいい仕事をしてくれそうだ。

「ああ、すぐに家具や内装を作るためにも、先に工房から造りたいのだが、いいか?」

「わかりました。とりあえず今見せていただいた間取りを考えると最低限これだけのベッドとタンス、テーブルや椅子が必要になりますね。あと窓の大きさなんかは出来上がってからですが、窓とドアの数はこちらに」

差し出された書類には、必要な物の名前と数がキッチリと書かれていた。

昨日の考えなしの行動をした奴と同一人物とは思えない仕事ぶりだ。

「よし! では早速建てに行くか! コーム! ユーゴ! 工房を建てに行くぞ!」

「うわっ」

いきなり大声でドワーフを呼び出すバシル、その声は屋敷がビリビリと震えるほど大きい。

ジュールは思わず声を上げて両耳を押さえている、俺もびっくりして声が出そうだったけどな。

しばらくしてドスドスという重そうな足音と共に、バシルが連れてきた四人のドワーフの内の二人が姿を見せた。

この二人がコームとユーゴなのだろう、集落で見た気がする。

「長、工房を建てるんだな!? 早く建てて作業しないと腕が鈍っちまう、こっちはいつでもいけるぞ」

「工房は一人ひとつ持てるのか? 工房を五棟建てる程度ならコームと二人で十分か……」

二人の話しぶりからして、土魔法建築はドワーフとして当たり前にできるらしい。

そして少し遅れてシャトーブリアンが姿を見せた。

「バシル様、御用の際はそちらのベルを鳴らしていただければ、我々が承りますので……。その、あまり大きなお声はお控えくださると助かります」

そう言ってシャトーブリアンはサイドテーブルに置かれたベルを指した。

表情は控えめだが、戸惑っているのがわかる。

この屋敷にいくつも離れた部屋に届くほどの大声を出す人物が滞在した事はなかっただろうしな。

「わははは! すまんすまん、いつものクセでやってしもうたわ! 小さい集落だと作業中でなけりゃこの声で大体聞こえるからな」

元々声の大きいドワーフ達の大声は、貴族の使用人達にとっては未知の体験だっただろう。

シャトーブリアンの様子から、びっくりして何かをひっくり返した者でもいたのかもしれない。

どうやらバシル達の準備は万端らしく、俺はジュールが乗ってきた馬車に、ドワーフの三人は別の馬車で工房に向かう事になった。

馬車用の馬達を連れ出す時に俺の姿が見えると、エレノアが寂し気に見てくるのがわかっているので玄関前で待機しておいた。

本当は俺だけエレノアに乗ろうと思ったのだが、ジュールにまたこの屋敷に戻って来るんだからと説得されてしまったのだ。

俺が馬車に乗らないとドワーフが二人と、ドワーフの誰かとジュールに分かれるか、四人で一台の馬車に乗る事になるだろうからな。

ガッチリとした体格の髭面ドワーフ三人と一台の馬車に乗るのは俺でも厳しい、物理的にも精神的にも。

国お抱えの職人達がいる工房に到着すると、馬車から下りたドワーフ三人は体格からは想像できないほど機敏な動きで何やら建設予定地を動き回り始めた。

「昨日設計した通りでいいのならここからとそっちから同時に造り上げた方がよさそうだな。ここに造っていいんだよな?」

コームがジュールに確認を取る。

「はい、ここからこっち側であれば好きなように土地を使っていいと許可をもらっていますので」

「よし! ユーゴ、やるか。 ドワーフの腕の見せ所だ!」

「おう!!」

二人は顔を見合わせてニヤリと笑うと、建築予定地の端と端に分かれた。

そして聞いた事のない言語をブツブツ言ったかと思うと、最後に声を合わせて呪文を唱えた。

「「『 創造(クリエイション) 』」」

同時に地面が持ち上がった……ように見えたが、震度二程度の地響きと共に二階建ての石造りの建物ができていく。

慌てて飛び出してきた職人達も、その様子にあんぐりと口をあけて固まっていた。