軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

9 自慢

ローズマリーは、王都のパーティーにアルフレットとともに参加した。

兄のエスコートは兄自身も慣れているので気兼ねなく楽しむことができる。

華やかな音楽に、楽しげに身を揺らすカップル、アルフレットもよそではキレイな外面をかぶって、ローズマリーを揶揄うようなことはしない。

むしろ、溺愛していると見えるような献身ぷりなのである。

これで、ローズマリーで遊ぶと言う悪癖がなければローズマリーだってなんでも相談して慕っていたかもしれないのに。

そんなことを考えながら、接触を待っていると喜色を孕んだ声がローズマリーのことを呼んだ。

「ローズマリー! 久しぶりだな。君の屋敷で話をしたとき以来か」

そこにいるのはレジナルドで、やはりアルフレットに聞いたとおりそばには少女が立っており、小さな淑女礼をした。

気さくにそばに来ようとするレジナルドに、アルフレットが前に出て、外面のハンサムな笑みを浮かべた。

「……し、失敬、アルフレット様。つい懐かしい顔にご挨拶を忘れてしまいまして」

「かまわんぞ」

「あ、改めて、お久しぶりでございます。……メイスフィールド侯爵家の方々には私の不適切な振る舞いで多大なご迷惑をおかけしまい、申し訳ありませんでした」

レジナルドは、ローズマリーを見つけた喜びをしおしおとしぼませて、アルフレットに対してぎこちない笑みを浮かべて謝罪をする。

「あのときは自分も若く、周りが見えておりませんでした。……ですが、今は違うのです。ほら、挨拶しろ」

レジナルドは、隣にいるベアトリスの腕をぐいっと引っ張り、彼女はそれに驚いて少しつんのめってふらついたが転ぶことなく持ちこたえた。

そして今度は、アルフレットに向かって頭を下げる。

「ケンドール伯爵家のベアトリスと申します。私からも兄が取り返しのつかないご迷惑をおかけしたことを謝罪させていただきます。アルフレット様」

「すでに、父が問題を片付けているからな、俺からは言うことはないな。君……”元”婚約者君も妹に話があるだろう。俺のことは気にせずともかまわない」

「……ありがとうございます」

アルフレットの”元婚約者”という言葉にレジナルドは反応し頬を引きつらせるがローズマリーと会話する許可は出た。

レジナルドは、ローズマリーへと視線を移し、胸を張って見据えた。

「……ローズマリー、私はずっと君に会いたかったんだ」

「なぜでしょうか」

「当たり前だろう、ローズマリー。私は、君に言われて、目が覚めたんだ。見てくれ!」

いいながら、レジナルドは強引にベアトリスの腕をひっつかみ自分の方へと寄せる。

顔を上げたベアトリスは以前会った時にはあった瞳の光が消え、焦点が定まっていない。

目元には酷い隈がついていて、兄が幽霊のように青白かったと言った言葉がとてもしっくりときた。

「反省し、私はこのベアトリスを支えることにした。父は母も私の潔さを喜び、一家総出でベアトリスを育てている最中だ。そうだろ?」

「うれしい、限りです」

「いったんは大きな失敗をして地位も名声も地に落ちた。しかし、今は違う。心を入れ替えて、新しい自分になった。すでにベアトリスは魔法学園に入学できるほどの魔法の知識を持ち、多言語の習得も、領地経営も大人並みだ」

「……」

「いつかその名声が、君のところにも届くはずだ。私も驚いているよ、私にこんな才能があったなんて」

レジナルドの言葉は一見反省しているように見えるが、その本質は一つも変わっていない。

「やはり持つものというのは、どんなことがあっても最終的には成功するものだ。……君にもわかるだろ私の才能が、今まで君はその恩恵にあずかってきた」

ふと問いかけられて、彼が何を言っているのかよくわからなかった。

数秒おいて、彼が自分のことを、人を導き使う天才だと思っているのだと気がついた。

自身は素晴らしきリーダーシップを持っていてそれは、あのローズマリーを魔法学園に入れた一件以外では正しく発揮されていたはずだと考えているとわかる。

「……」

ローズマリーが彼のあまりに見当違いな改心に驚いていると、アルフレットが口を挟んだ。

「さて? ……俺は近くでローズマリーのことを見てきたが、元婚約者君の恩恵を受けていたこと? 元婚約者君の才能? 俺の知らない話だな、元婚約者君」

「え、は」

「元婚約者君がそんなにすごい男だったとは、いや、元婚約者という立場が惜しいな。元婚約者君」

アルフレットはキラキラとした笑みで”元婚約者”を連発し始めて、それにローズマリーは、心の中で再熱した怒りとは別に、つい「っ、ふふっ」と声を漏らして笑ってしまう。

ローズマリーが笑うと、レジナルドは目を見開いて拳を握り怒りで顔を赤くする。

まさか馬鹿にされるとは夢にも思っていなかったのだろう。

レジナルドのプライドはどんな山より高いのである。

「し、失礼する! 後から後悔しても、私は知らないからな」

「そうですか。残念ですわ」

「っ~!……ふんっ」

レジナルドは、そのままきびすを返して去って行く、小さなベアトリスの腕をやっぱり強引につかんで、ぐいと引っ張る。

すると、突然引かれて、ベアトリスはつんのめり、それからぐらっと揺れてドサリと倒れ込んだ。