軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

商会がオープンしました

アールスハイド王都へ戻ってきた翌日、俺は、今度開店する商会がある建物に来ていた。

五階建てで、気圧される程デカい建物だ。

外装・内装の工事は終わり、今は商品の納入作業をしている。

一番多いのはトイレだ。次に大きな冷蔵庫。

店のトイレにも設置し、使用感を試して貰おうという意図がある。

他には、まだ完成していないが、風の魔法を応用した掃除機を開発中だ。

吸い込むところまでは上手くいった。けどその後、吸い込んだゴミを上手く分離出来ず、親父さん達と試行錯誤しながら開発中だ。

これが完成すれば、今まで掃除用の魔道具は無かったから市場を独占出来るし、世の奥様方に絶対支持されると、工房で開発中の製品の中で一番気合いが入ってる。

洗濯機も開発したいところだけど、洗濯、すすぎ、脱水と行程が多くて、どうすればいいのか、まだ構想も出来てない。

……家電メーカーか?

店の中は精算カウンター以外に、許可証を持った人が通信機を購入する為の特別カウンターも設置してある。

ちなみに、バイブレーションソードは陳列していない。

ロイスさんやグレンさん……シシリーのお兄さんとアリスのお父さんな。二人が開店前に既存の各店舗と打合せをした際に、これだけは販売するのを止めてくれと懇願されたらしい。

なぜなら、バイブレーションソードの切れ味が既存の剣を大きく上回ってしまっている上に、付与によってどんなナマクラでもバイブレーションソードにする事が出来るとなれば、大量生産・大量販売が可能となってしまい、今ある市場を奪ってしまう可能性がある事。

なによりナマクラでも構わないのなら鍛冶技術の後退が懸念される……などが理由らしい。

納得出来る理由だし、どうしても売りたい訳じゃないから別に構わないけどね。

その代わり、軍の制式装備であるエクスチェンジソードは販売許可がおりた。

ベテランハンター達には見向きもされないかもしれないが、新人ハンター達に安価で刃の交換の出来るエクスチェンジソードは需要が出るだろうという事だ。

ベテランハンターは、やはり名のある鍛冶師の造った鍛造品の一振りというものに拘り、大量生産品や鋳造品は敬遠するとの事で、他の武器・防具店と競合はしないとの判断らしい。

ジェットブーツは……ネタ枠として販売するらしい。

というか、俺達がリッテンハイムでやっていたビーチバレーがアールスハイド王都で行われるようになってる。

あの時にいた家族の人や護衛さん達が、王都に帰ってから周りの友人達と始めた事が切っ掛けだ。

ただし、俺達がやっていた『マジカルバレー』は無詠唱で魔法を使える事が前提となるので殆ど行われていない。しかし魔法を使わなくてもいわゆる普通の『バレーボール』は出来る訳で、娯楽の一環として行われているそうだ。

となると、跳躍力が増すジェットブーツはそこで需要があるかもしれないとの事。

ジェットブーツを駆使し、立体的なコンビネーションを行うバレーボール……『エアーボール』とでも言うべきか? 超見てみたい。

今はそれどころじゃ無いけど、世界に平穏が戻ったら各街や各国にチームとか出来ないかな? ホームアンドアウェイでリーグ戦とかやったり、何年かに一回ワールドカップとかやれば、娯楽の一つとして盛り上がると思うんだけど。

ちなみに、魔道具ではないけど、新しいボールも陳列されている。

以前使ってた魔物化した兎皮ではなく、もっと弾力性に富んだ魔物化した蛙の皮に変更になっている。

と、そんな事を考えていると、こちらに近付いて来る人に気が付いた。

アリスのお父さんで、この度『ウォルフォード商会』の代表取締役に就任したグレンさんだ。

「やあシン君! どうだい、素晴らしい出来だろう?」

「こんにちはグレンさん。そうですね、予想より立派でビックリしてます」

「フフ、世に名高い『魔王シン=ウォルフォード』の創った商会だからね! 皆、下手なものは造れないって張り切ってくれたよ!」

「それにしても……ウォルフォード商会ですか……他に無かったんですか?」

「他って言うと『シン商会』とかかい?」

「もっと無いです!」

「まあ、通常商会ってのは創立者の家名を付けるものだからねえ。ハーグ商会だってそうだろう? 元々はトム代表のお父さんがやっていた小さい『ハーグ商店』をあそこまで発展させて今に至るんだから」

「そういうものですか」

この世界の社名の決め方は、家名をそのまま使う。それが常識であり、奇をてらった名前だとそもそも商会として認識されないかもしれないらしい。

恥ずかしいんですけど……。

ちなみに俺は『取締役会長兼開発責任者』らしい。

代表はグレンさんで、ロイスさんは専務取締役になるらしい。

その他、経理部長、営業部長、広報部長、総務部長、法務部長と、グレンさんとロイスさんの知り合いで、信用出来る人を役職付きとしてスカウトしたらしい。皆二つ返事でオッケーしてくれたそうだ。ありがたいな。

まあ、部長って言っても、まだ商会が立ち上がっていないから総務部と営業部長以外に部下はいない。営業部が店舗販売員の管理もするから、販売員が部下って事ね。

ちなみに商品の生産はビーン工房に依頼しているが、その管理は総務部になるらしい。生産品の受注・発注・納品のために、最初からある程度人を雇ったらしい。

そのビーン工房は、ウチからの受注の為に工房を拡大した。

新しい工房では、製作から、魔法の『付与』まで行う。

この付与だが、無線通信機にも使われている『回路』を使用する事で、今までより格段に付与出来る文字が増えた。なので、俺みたいに漢字で文字を省略して付与を行わなくても、工房の人間で付与まで出来るようになったのだ。

ちなみに、この『回路』は特許を取ったらしい。

今後、絶対真似されるから特許を取得するべきだとロイスさんに熱弁されて取った。特許制度あったんだな……エクスチェンジソードはすでに特許取得済みだそうだ。

正直、全部の商品に俺が付与をしなきゃいけなかったと考えると……ゾッとするな。回路を開発しといて良かった。

この『回路』を開発した事で大量生産の目処も立ち、その内店舗の拡大も視野に入れた業務形態になっているそうだ。

その為に、商会は五階建ての建物を購入し、一、二階部分を店舗。三、四階部分を本社とするらしい。

五階は? というと……。

「将来はアルティメット・マジシャンズの本拠地になる訳だからね。そりゃあ皆の気合いも入るよね!」

そういう訳だ。

将来この本拠地に事務所を構え、各国からの派遣員を常駐させ、依頼を受けたり各員に仕事を割り振ったりするとの事。

その運営形態自体はこれからの閣僚会議で決めるらしいけどね。

「もう商品の搬入で終わりだからね、明日か明後日にもオープンさせようかと思ってるんだけど」

「そうですね、明日一日を宣伝期間として明後日の正午にオープンという事でどうですか?」

「よし分かった! それで決定という事で!」

そう言うとグレンさんは店舗の中に入って行ってしまった。

中では販売員の人達が陳列や研修を行っているので、明日宣伝を行う事を告げに行ったんだろう。

さて、予定も立った事だし、ユーリの宿に行ってナバルさん達にオープンの日取りを伝えに行こうかな。

「こんにちは」

「いらっしゃっ……ああ! ウォルフォード君、どうしたんだい?」

ユーリの実家の宿屋に行くと、ユーリのお父さんで宿の支配人のリンドさんがカウンターに立っていた。

「エルス使節団の皆さん、いらっしゃいますか?」

「ああ、さっき家族にアールスハイドのお土産を買うって言って出ていったねえ。昨日の内に通信機購入の許可証を貰ってきていたみたいだし、暇だったんだろうねえ」

「そうですか。なら、伝言を頼んでも良いですか?」

「構わないけど、私が聞いても大丈夫な内容なのかい?」

「ええ。というか、リンドさんにも関係のある話ですよ」

「私にも関係があるというと……もしかして!?」

「ええ。明後日の正午にウォルフォード商会、オープンします」

「そうかい! ようやく例のアレをウチの宿に設置出来るんだね!」

リンドさん、嬉しそうだな。でも、ユーリはウチで使った事があるから使用感を知ってるけど、リンドさんは知らない筈なんだけどな。

「いやあ、ユーリが珍しく興奮して話してたからねえ。どんな物か気になってしょうがなかったんだよ」

「そうだったんですか。店のトイレに設置してあるんで、一応購入する前に、試した方がいいですよ?」

「そうかい? じゃあそうするかな」

「それじゃあ、伝言宜しくお願いします」

「分かった。じゃあ明後日、お店に伺うよ」

さて、ナバルさん達とユーリん家に伝言もしたし、帰るとするか。

そして二日後、ついにウォルフォード商会オープンの日を迎えた。

ちなみに、俺は学院があるのでオープンには立ち会っていない。

ばあちゃんから、金儲けは他の人に任せて、学生は学生の本分を全うしろと言われているので、商会の運営はすべてグレンさんとロイスさんに丸投げなのだ。

「さて、商会の方はどうなってるかな?」

「お父さんは、開店と同時に買いに行くって言ってたよぉ」

「フフーン。ウチはお父さんが商会の代表だからね、社員価格で先行販売してもらったよ!」

「え? 本当かい?」

「家にあのトイレがある生活……もう離れられないね!」

そういえば、社員さん達には商品説明をする為にも、希望者には先行販売したんだった。

グレンさんが、社員にはかなり好評だって言ってたな。

そんな話をしながら商会のある区画に辿り着くと……。

「……ねえ、この辺りってこんなに人通り多かったかしら?」

「いえ……商会がある地域ですから、それなりに人通りはありますけど……」

「ここまでではなかったで御座るな」

一昨日来た時にはここまで人通りは多くなかったと思うんだけど……まさかな……。

もしかして、という思いを抱きながら商会に向かうと。

「これって、行列?」

「そうみたいねぇ。ひょっとしてぇ?」

「あ! やっぱりそうですよ!」

行列の先は『ウォルフォード商会』に繋がっていた。

「あ! シン君! 見てくれ! 凄い盛況振りだろう!」

「ちょっと予想外ですね……というか、ロイスさんまで人員整理に駆り出されてるんですか?」

「はは、ちょっと店内は凄い事になってるからね。販売員達は店を離れられないんだ」

「そうなんですか……あ、エルスの人達はもう来ました?」

「ああ。彼らなら……」

「あ! 魔王さん! ちょっと、これ何ですのん!?」

噂をすれば、エルス使節団のナバルさんが声を掛けてきた。

正午開店なのに、まだいたのか。

「ナバルさんこんにちは。もう戻ってると思ってましたよ」

「こんなん見せられて戻れますかいな! そんな事より、このトイレ!」

「はい」

「こんなトイレまで開発しはったんですか?」

「ええ、ウチのトイレをこれにしたら、随分評判が良かったもんですから。なら売ってみるかって……」

「こら凄いでっせ! トイレ革命や!」

そ、そんなに興奮するほどの事なのだろうか? メチャメチャテンション上がってる。

「そこで、ものは相談なんやけど……このトイレ、ウチの商会に卸して貰われへんやろか?」

「ああ! ナバルさん! また抜け駆けして!」

「ええ加減にしてくださいよ!」

「早い者勝ちや言うとるやろうが!」

またエルス使節団同士の喧嘩が始まった。 本当に、売れそうなものにはトコトン食らいつくな。

「確かに、俺が開発したものですけど……商品の販売とか卸しとか、経営自体にはノータッチなんですよ。なので、交渉なら代表のグレンさんか、専務のロイスさんに……」

「ロイスはんってアンタやったかいな!? 言い値で構わんさかい、ウチに卸したってんか!」

「ウチもお願いしまっさ!」

「ウチも!」

「ちょ、ちょっと待って下さい! そんな大口取引、この場で決められませんから! 営業時間が終わってから代表も交えてお話を聞きますので、落ち着いて下さい!」

「営業時間って何時までやねん?」

「午後六時ですね」

「後三時間もあるやんか!」

「ええ、ですから、それまでお待ちください」

ナバルさん達とロイスさんの商談が行われる事がいつの間にか決まっていた。

初日から大忙しだ。これは大変な役目を押し付けちゃったかな……。

「すいませんロイスさん。なんか大変な目に遭わせちゃって……」

「何を言ってるんだい、こんなに充実している事なんて今まで無かったんだ、今は楽しくて仕方がないよ!」

本当なのかな? 見た限り、相当忙しそうなんだけど……しかも閉店後にエルス使節団との商談もある。

今日、家に帰れるのか?

「お兄様のあんな溌剌とした顔、初めて見ました……」

……今まで、相当抑圧されてたのかな? シシリーがそう言うなら間違いないんだろう。

商会では、エルス使節団だけでなく、スイードやその他の周辺国から、追加の通信機を購入する許可証を持った使者達がカウンターで通信機を購入している。

まあ、許可証って言ったって、一般販売する前のテストを信頼できるもので行いたいってだけの話だしな。

最初に配ったのが国家間同士の緊急連絡用だった為、そのまま各国家にテスト販売するって話で、購入する人の身元がしっかりしてれば、割と簡単に許可はおりるらしい。

一般に販売するのはもう少し先だな。交換局作らないといけないし。その為の装置を作んなきゃいけないんだけど、どういう形態にするのか、交換士を配置するのか、最初から自動で交換するのか、何も決まってない。

大幅なインフラ整備が必要なので、各国の国家プロジェクトになるとディスおじさんが言ってた。

まずはアールスハイドでテストして世界中に広めるらしい。

またやらないといけない事が増えちゃったな……。

通信機のこれからの展望を考えていると、店内から販売員さんが血相を変えて走って来た。

「専務! 大変です! 洗浄機能付きトイレの在庫が無くなりました!」

「な、なんだと!?」

まさかの売り切れですか?

「お客様! 大変申し訳ございません! ただ今、洗浄機能付きトイレの在庫が無くなってしまいました! 誠に残念ではございますが、本日のお渡しは出来かねます!」

「ええ!? そんな!」

「カールトンの宿で評判聞いて買いに来たんだぜ!? そりゃねえよ!」

「俺は石釜亭で使ったんだ。あんな凄いものが一般販売されてるのに買えないなんて、そんな非道い話はねえぜ!」

「誠に申し訳ございません! こちらでお並びのお客様は、引き続き予約の受付は可能でございますので、それでも構わないというお客様はお残りください!」

結局、品切れになっても、予約する事により優先的に手に入ると聞いた人達は、予約注文をする為に、そのまま列を作っていた。

「はあ……予想外だった……」

「そう? 私はあのトイレの評判が広まればこれくらいは売れると思ってたけどね」

「こんなに早く?」

「カールトンの宿と石釜亭って、アールスハイド王都で有名な二店が揃って導入したからね、あっという間に広まったんじゃないの?」

正午にオープンして、夕方にはこれか……ビーン工房にはまた負担掛けちゃうな。

「これは、父ちゃん大喜びっッスね」

「そうか? 大変じゃないか?」

「こんだけ注文が入るって事は、当然利益も出ますからね。ホント、ウォルフォード君には足向けて寝れないッスよ」

「あ、それ分かる! ウチなんて、お父さんが代表だよ? ホント、シン君様々だよ!」

マークとアリスの二人から拝まれた。やめてよ。

それにしても、トイレでこれか。掃除機とか洗濯機とか完成したらどうなるんだろ?

奥さん達の行列が出来るのかな?

それとも……旦那さんが買いに行かされるんだろうか? この国、奥さんの強い家が多いからなあ……。

「なんだ!? スゲエ列ができてんじゃねえか!?」

「本当ですね。どういう事ですか?」

「お、シン! ちょっと!」

オルグラン魔法師団長とクリスねーちゃん、ジークにーちゃんが三人で商会にやって来た。

そういえば、オルグランさんは、ディスおじさんが絶賛するのを聞いて購入するって言ってたし、ジークにーちゃんとクリスねーちゃんは、ウチであのトイレ使ってる。本日の業務が終わって買いに来たんだろうけど……。

「さっき、売り切れたって言ってたよ」

「な、なあにいい!?」

「そ……そんな……手遅れだったのですか?」

ジークにーちゃんとクリスねーちゃんが、膝をついて絶望している。オルグランさんは残念そうだけど、そこまで落ち込んでない。

「お前ら……高々トイレで大げさだろう? 別に数量限定販売じゃねえんだ、次入荷した時に買えばいいじゃねえか」

「団長は、あのトイレを使った事がないから、そんな事が言えるんすよ!」

「一度使ったら、抜け出せません……自宅にアレが設置されると、昨日から楽しみにしていたのに……」

「そ、そんなにか?」

熱く語るジークにーちゃんと、激しく落ち込んだクリスねーちゃんに、若干引き気味のオルグランさん。

それにしても、ちょっと二人とも可哀想だな。

「ジークにーちゃん、クリスねーちゃん、ちょっと」

「なんだ?」

「なんですか?」

「これ」

他の皆さんに見えないように、異空間収納から予備の洗浄機能付きトイレを取り出す。

「ちょっ! お前、コレ!」

「ウチの予備。ジークにーちゃんとクリスねーちゃんにあげるよ」

その言葉に一瞬嬉しそうな顔をするジークにーちゃんだが。

「イカンイカン! 弟分に施しを受けてどうする! ここは兄貴分として我慢しなければ……でもなあ……」

またプライドと戦ってた。

「ありがとうございます。さすがはシンですね。お姉ちゃんは嬉しいです。でも貰うのは駄目です。ちゃんと料金は支払いますよ」

「お前は! 何をアッサリ受け取ってんだよ!?」

「何って、可愛い弟が、お姉ちゃんの為に用意してくれたんですよ? 好意をありがたく受け取って何が悪いのですか? 馬鹿なのですか?」

「んだと? コラ」

「何ですか? ああん?」

また始めたよ。あれは放っておこう。

「オルグランさんも、どうぞ」

「おい……良いのかよ? アッチに並んでる人一杯いるぞ?」

「まあ、開発者と知り合いだった特権という事で」

「そうか。そういう事なら遠慮なく」

「ちょっとお! 団長まで何やってんスかあ!?」

「うるせえなあ、ウォルフォード君が売ってくれるって言ってんだ。遠慮する方が失礼だろうがよ」

「くっ! シン! 俺には!?」

あ、結局折れた。

「最初からあげるって言ってんじゃん。はい」

「おお……これで……家にあのトイレが……」

「まったく、アナタがシンに勝ってるものなんて最早何一つ無いのに、何を妙な意地を張っているのですか?」

「そ、そんな事ねえ……よ?」

「魔法技術は言うまでもなく、財力まで。おまけにこんなに可愛い婚約者もいて」

「あう……」

「フフ、可愛いですねえ。シシリーさんも、私をお姉ちゃんと呼んで良いんですよ?」

「お、お義姉様?」

「……何でしょう? 呼ばれ慣れてる筈なのに、このくすぐったい感覚は……」

お義姉様だからじゃね?

シシリーの頭を撫でていたクリスねーちゃんが急に照れだし、妙な雰囲気をかもし出し始めた。

ちょっと! その娘、俺んだからね!

「こんなに可愛い娘を婚約者にしてしまうなんて……手当たり次第のアナタとは大違いですね」

「余計なお世話だ!」

「一体どこに気にする威厳が……ああ、そういえば年齢だけは威厳がありましたね」

クリスねーちゃんはクスクス笑ってるけど、その台詞って……。

「お前……その台詞、ブーメランなの知ってるか?」

「……殺しますよ?」

「お前が言い出したんだろうが!」

「何ですか? ああん?」

もう好きにしてくれ。

ちなみに、この日の予約だけで、初日に用意していた洗浄機能付きトイレの販売予定数の倍あったそうだ。