軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

覚悟を決めました

エリザベートからとんでもない誤解を受けていた。

「あの……何でそんな誤解を?」

「何でも何も、口を開けば、シンが、シンは、シンの奴が、シンには……シンシンシン! ちょっとでも時間があればシンさんのお家に行かれてしまうし、そう考えるのも無理ありませんわ!」

「いや! 無理があるでしょう!?」

「そうかしら?」

「そうでしょう!」

何で俺とオーグがそんな関係だと誤解を受けないといけないんだ、気持ち悪い!

はっ! もしかして、腐った脳をお持ちなのか!?

そんな新たな疑惑を感じていると、オーグが溜め息混じりに話し始めた。

「はぁ……よりにもよってシンとは……研究会には女もいるはずなんだがな。まぁそれより、確かにシンという全く気兼ねをしない友人が初めて出来て、浮かれてしまったのは事実だな」

「浮かれ過ぎですわ! シンさんと知り合ってから私の所にはあまり来て頂けなくなりましたし……」

「確かに男友達と連るんでるのって気兼ねしなくて良いから楽なんだよなあ」

「……アウグスト様は私といると気を使われますの?」

「そりゃそ……モガッ!」

「いや! そんな事は無いぞエリー! お前といるのは心が安らぐ」

「でも……」

「確かに男と女では対応が違う事はある。男同士だと馬鹿な事も出来るしな。私にとって初めての体験だったから、ついはしゃいでしまったのだ」

「そ、そうでしたの……」

オーグは俺の口を手で塞ぎながら捲し立てた。

必死だな。

ついニヤッとした事がオーグの手を通して伝わったんだろう。

「何を笑っている?」

口を塞いでいた手を離しながらそう問いかけてきた。

「別に? 必死だなとか思ってないよ?」

「くそ! まさかシンにからかわれる日が来るとはっ!」

何か痛恨の極み! みたいな顔してる。失礼な!

「……やっぱり怪しいですわ」

「そんな事ないって!」

「そうだ、シンにはもう女がいるからな。他にかまけている暇など無いぞ」

「そうなんですの?」

「オーグ! お前何言ってんだ!」

「シン、お前そろそろハッキリしろ」

オーグが突然言い出した事に抗議しようとするが、意外にも真剣な顔をしながら返された。

「ハッキリって……」

「その態度だ。お互いに好意を持っているのは分かっている。なのにいつまでも……いい加減見ているこっちがイライラしてくる」

お互いって……確かにシシリーは俺に優しくしてくれるけど、それはシシリーが優しいからであって……。

「シシリーが俺に好意を持ってるって何で分かるんだよ」

「そんな事、見ていれば分かる」

「実際に言葉にして聞いたのかよ?」

「それは聞いていない」

「じゃあ何でそんな事言い切れるんだよ。もし勘違いだったら、これからどうやって接していけばいいんだよ」

「じゃあお前は、ずっとこのままで良いという事か?」

「そ、それは……」

「相手の気持ちが分からないなんて当たり前の事だ。現に幼い頃からずっと一緒にいて、今は婚約者にまでなったというのに、未だにこんな誤解を受けているんだからな」

「確かに」

「ちょっと! そこで私を引き合いに出さないで頂けます!?」

「それともお前は相手から言わせるつもりか? 女の方から。自分にはその勇気が無いから」

「そ、そんな事!」

「じゃあいい加減にハッキリしろ。向こうだって待ってるんじゃないのか?」

「……」

「まあ決めるのはお前だがな、出来ればハッキリして欲しい所だ。そうしないと……」

「しないと?」

「……いつまでも誤解されたままだぞ?」

「それは困るな」

「だから! 私を引き合いに出すなって言ってんでしょうがあ!!」

「エリー姉様、口調が乱れてるです」

「はっ! 私とした事が」

オーグから言われて、自分が逃げていた事に気付いた。

断られたらどうしよう。勘違いだったらどうしよう。そんな事ばかり考えていた。

相手の気持ちが分かった上でないと行動出来ないのか?

そんな情けない話は無い。

恋人同士になれるかどうかは分からないけど、今はシシリーにこの想いを告げたい気持ちでイッパイになっていた。

オーグに諭されたってのがどうかと思うけど、恋愛に関しては婚約者までいる先輩だ。

意見は素直に聞き入れよう。

「ところで、そろそろ向こうへ戻らないか? 早くしないと二人分の夕食も追加で作って貰わないといけないしな」

「あ、そうだな」

二人追加になるんだから早めに言っとかないと。すっかり忘れていた。

「じゃあ戻るか」

そう言って二人の荷物を異空間収納に入れてゲートを開く。

既に何度か見ている警備兵の皆さんやディスおじさんは驚いていないが、初めて見た二人はゲートの魔法を呆然と見ていた。

「じゃあディスおじさん、明日また来るから、メイちゃんはこっちで責任持って預かるよ」

「では父上、合宿に戻ります」

「うむ、気を付けてな。それからシン君」

「なに?」

「くれぐれも自重するようにな」

「……」

「父上、残念ですが……既に手遅れです」

「やっぱりか。注意するのが遅いと思ったんだよ」

「そ、それじゃあ戻るね! 二人とも、このゲートを潜って!」

話がおかしな方向へ向かいそうだったので呆然としている二人を促しゲートを潜った。

ゲートを潜り抜けた先はもう湯煙の立ち上がるクロードの街だ。

クロード家の屋敷まで一気にゲートで行っても良かったのだが、折角温泉街に来たんだから街の門に程近い場所にゲートを開いた。

「ほ、本当にクロードの街ですわ……」

「凄いです! さっきまでお城にいたのにもうクロードの街に着いたです!」

唖然としているエリザベートとゲートの魔法にはしゃいでいるメイちゃん。

俺の魔法を素直に喜んでくれるメイちゃんにホッコリしていた。

「メイ、ハシャギ回ってはぐれても知らないぞ」

「はわ! ま、待って下さい!」

皆を置いて行こうとするオーグに知らない街ではぐれたら大変だと後を付いていくメイちゃん。

「メイちゃん」

「なんですか?シンお兄ちゃん」

「はぐれたら大変だからね、ホラ」

「え? ハイです!」

差し出した手を握ってきたメイちゃんにまたもホッコリしていた。

「……そういう事は自然に出来るのに、何でいざとなるとヘタれるのか……」

「あら、そう言うアウグスト様も、中々私を婚約者にして頂けなかったじゃありませんか」

「ばっ! そんな話をするな!」

俺達の前の方でオーグとエリザベートが腕を組みながら何か楽しい会話をしてるっぽい。

聞きたいけど、手を繋いでニコニコしてるメイちゃんを放っていけないので今は我慢するか。

後でからかってやろう。

「シン……今のは聞かなかった事にしろ」

「えー? 何の事?」

「くっ! いい気になるなよ……」

「どこの悪役の台詞だよ、それ」

「シンお兄ちゃん凄いです!」

メイちゃんが尊敬の眼差しを向けてくれるのがこそばゆい。

そして、前を歩くオーグとエリザベートは腕を組んで仲良さそうにしている。

どうもさっきのオーグとのやり取りで誤解は解けたみたいだ。

あの気持ち悪い誤解をされなくなったのは良かったのだが、シシリーのいるクロード家の屋敷が近付くにつれて何か緊張してきた。

「シンお兄ちゃん、どうしたですか?」

「ん? いや、何でもないよ」

口数が少なくなった俺に、メイちゃんから心配そうな顔で声を掛けられた。

イカンイカン、こんな小さい子に心配掛けるなんて。せめて普段通りにしないと。

なんとか心を落ち着かせた頃、クロード家の屋敷に着いた。

「ここがクロード家の屋敷だよ」

「おや、お帰りなさいませシン様、アウグスト様、今日はこちらからお戻りなのですね」

「あ、ただいま。うん、この二人にクロードの街を見せてあげたかったからね」

「そんなに我が街を気に入って頂けたのですね。嬉しいです!」

「まあ……そうなんだけどね……」

門番さんが凄い感動してる。よっぽどこの街が好きなんだろうな。

「ところで、そちらのお二方は?」

「申し遅れました。私、アウグスト様の婚約者でエリザベート=フォン=コーラルと申します」

「アウグストお兄様の妹のメイ=フォン=アールスハイドです!」

それを聞いた門番さんはしばらく固まった後、唐突に膝をついた。

「も、ももも申し訳御座いません! 殿下のご婚約者様と姫様とは露知らず、御無礼を致しました!」

頭が地面につきそうな勢いで頭を下げる門番さん。

そうか、普通はこういう態度になるのか。

「突然来たこちらにも非はありますわ。どうか頭をお上げになって」

「はっ! 恐縮で御座います!」

そう言って門番さんは立ち上がった。

「ねえ、エリザベートさん。俺もこういう態度で接した方がいい?」

「エリーで結構ですわシンさん。アウグスト様とド突き合いの漫才をされてる方からそういう態度を取られると、こちらがどうしていいか分からなくなるので止めて下さいな」

「そうです! シンお兄ちゃんはそのままが良いです!」

「今更シンからそういう態度を取られるとか……何か企んでるんじゃないかと疑ってしまうな」

漫才があるのか……。

それよりオーグの言葉はともかく、お許しが出たのでそのままでいいや。

「これからこの二人も滞在するから伝えといて貰えるかな?」

「はい! 畏まりました!」

そう言って、別の人が屋敷に走って行った。

「じゃあ、中に入ろうか」

「ハイです!」

「分かりましたわ」

「フフ、すっかりこの家の住人みたいじゃないか」

「だからそういう事を言うな!」

また緊張してきたじゃないか!

「ふっくっくっく」

「アウグスト様……」

「お兄様、性格悪いです!」

折角普段通りになってきたのに、直前で元に戻っちゃったじゃないか。こんな状態でシシリーに会ったら……。

「あれ? シン君、表から戻って来たんですか?」

館に入ってすぐシシリーに会った。

こういう時に限って!

「あ、ああ、いや、ええと……そう! この二人にクロードの街を見せてあげたかったから……」

そう言ってエリザベートとメイちゃんを紹介する。

「お久しぶりです、エリザベート様、メイ姫様」

シシリーは知ってたらしい。

「お久しぶりですわシシリーさん、今日からしばらくお世話になりますわね」

「お久しぶりですシシリーさん! 私も宜しくお願いします!」

「え? お二人も合宿に参加するんですか?」

「いえ、私達はアウグスト様に会いに来ただけですわ」

「折角お休みになったのに遊んでくれないからです」

「訓練のお邪魔はしませんから、許して頂けないでしょうか?」

「私からも頼むクロード。この二人も世話してやってくれないか」

オーグからもお願いされたシシリーは俺の方を見た。

「あ、ええと……オ、オーグを研究会で随分引っ張り回してるから、二人ともあんまり一緒にいられないらしくて……だからその……いいかな?」

「シン君と殿下が良いなら私は良いですけど……」

「な、なに?」

「シン君どうしたんですか? 何か態度がおかしいというか……」

「べ、別に普通だよ!」

「そうですか?」

シシリーが首を傾げる。後ろではオーグが笑いを堪えているのが分かった。

くそ! 後で覚えてろよ!

「ああ、さっき言っていたのはシシリーさんの事でしたか」

「シンお兄ちゃんとシシリーさん、お似合いです!」

「はい?」

「ちょおっと二人とも! 何を言っているのかな!?」

何を口走ってくれちゃってますか!

「シン君……やっぱり変ですよ?」

「そ、そんな事ないって! それより、ばあちゃんの講義は終わったの?」

「あ、はい。今丁度終わってこれから夕食の前にお風呂に入ろうという事になりまして……」

シシリーがそう言った時、奥の部屋から皆が出てきた。

「メリダ様、とっても素晴らしい講義でしたぁ」

「そうかい? シンの付与を見た後じゃ大した事無いだろ?」

「ウォルフォード君の付与は、ちょっと意味が分からないというかぁ……」

「ああ、確かにねえ、普通の人間ならアタシの講義で丁度いいか」

「決してメリダ様が劣ってるとか、そういう意味じゃないんですけどぉ……」

「気を使わなくていいよ、あの子が異常なだけだから」

「そうですねぇ」

「うぉい! 人のいないところで俺を異常者にするな!」

ビックリするくらい好き勝手言ってんな!

「おや、お帰り。遅かったねえ」

「普通に対応された!?」

「シン、何を騒いでる?」

「あれ? さっきの会話、おかしかったよね?」

「何がだ?」

「まさか……俺は異常者扱いなのか?」

「今更何を言ってんだい。アンタの魔法が異常なのは皆知ってる事だろう」

「そうだな、本当に今更だな」

分かっちゃいたけど突っ込まずにはいられなかった。

「ぷっ……くく……あははは!」

そんなやり取りを見ていたエリーが笑い出した。

「ああ、可笑しいですわ。アウグスト様は普段からこんなやり取りをされてるんですのね」

そう言ってエリーはオーグを見ていた。

どうやらオーグが研究会に入り浸っている理由が納得いったらしい。

「あの……シンお兄ちゃん……」

メイちゃんが俺の袖をクイクイと引っ張る。

ああ、そうか。この子、ばあちゃんに憧れてるんだっけ。

「ばあちゃん」

「ん? なんだい?」

「この子、オーグの妹でメイちゃんって言うんだ」

「はわ! あの、あの、アウグストお兄様の妹でメイです! あの……あの……」

「ばあちゃんに憧れてるらしいんだよ」

「おや、そうなのかい? 本や舞台と違って、こんなお婆ちゃんでがっかりしたろ?」

「いえ! そんな事ないです! 私のお婆様より全然若いし、綺麗だし、それに……」

そう言ってばあちゃんの身体を見る。

「申し遅れましたわ、私アウグスト様の婚約者のエリザベート=フォン=コーラルと申します。メイの言いたい事は分かりますわ。そのお歳でその体形……是非ともご教授して頂きたいですわ」

エリーもそう言って同意した。

エリーもばあちゃんを見る目に尊敬の念が見える。

本当に王国中の女の子の憧れなんだな、ばあちゃん。

「フフ、ありがとさん。さて、これから夕食の前に皆で温泉に入りに行こうかと思ってたんだよ。アンタ達も来るかい?」

「ハイです! 行きたいです!」

「私もご一緒致しますわ」

「よし、それじゃあメイちゃんと言ったね?」

「ハ、ハイ!」

「ホラ、一緒に行こうかい」

「え!? あの、あの」

ばあちゃんの差し出した手に、どうしていいか分からなくなった様子のメイちゃんが、俺に助けを求めるような視線を向けて来た。

「ばあちゃん、メイちゃんの事よろしくね」

「ああ、任せといで」

「ホラ、メイちゃん」

「し、失礼します……」

おずおずとばあちゃんの手を取る。

するとばあちゃんは満面の笑みを浮かべてその手を握った。

「女の子は何とも可愛らしいねえ」

「悪かったな、可愛くない男で」

「本当だよ。アンタは目を離すと何をしでかすか分かったもんじゃ無かったからねえ、小さい頃手を繋いでたのは拘束する為だったからね」

「うそ!? マジで!?」

「さあメイちゃん、温泉に行こうかい」

「ハイです!」

そうして二人連れ立って行ってしまった。

驚愕の事実に呆然としていると、皆が同情の視線を向けて来た。

「メリダ様の気持ち、分かるわあ」

「シン君みたいな子供じゃ拘束しとかないと心配でしょうがないよね!」

「確かに、効率的。よく分かる」

「ごめんねぇウォルフォード君。私もよく分かるわぁ」

「私の子供はそんな事が無いように祈ります」

同情の視線はばあちゃんにか!

あまりの仕打ちに膝をついてしまった。

「あ、あの……私は……」

シシリーだけ言い淀んだ。言い淀んだって事はそう思ってるって事か……。

「いいんだ……シシリーもそう思ってるんだろ?」

「そ、そんな事ないです! シン君の 子供なら(・・・・) 可愛いでしょうし、私は喜んで手を繋ぎますよ!」

……。

あれ?何か話の主旨が違うような……。

周りもその事に気付いたのか一瞬の静寂が降りた。

「シシリー……アンタ……」

「あ、あれ? 私、今何を?」

「盛大な自爆。ビックリした」

「え? あ、ああ!」

自分の発言に気付いたシシリーは顔どころか首から上を真っ赤にし……。

「い、いやあああ!」

温泉の方へ走り去ってしまった。

皆はその様子を生温かく見ていたが、俺とオーグだけはそれに乗れなかった。

「シン、分かってるよな」

「ああ、あそこまで言わせて分からない程鈍感じゃないよ」

「あそこまで言われないと分からない鈍感なんだよ」

「うぐっ……」

「まあ……頑張れ」

「ああ」

そう言って俺達も温泉に行こうとして……。

「あれ? じいちゃん、いたの?」

「ほっほ……ずっとおったわい……」

爺さんの空気化が進んでいた……。

若干落ち込んでいる爺さんを慰めながら温泉に入る。

そして温泉から上がってからの夕食は、シシリーが真っ赤な顔のままでこちらを見ようとしないので、何とも微妙な雰囲気のまま食べ終わった。

使用人さん達もニヤニヤしっ放しだったしな。

夕食の後は各々の自由時間となる。

今日やって来た二人は、ばあちゃんの所で話をしてるし、爺さんの所にもリンやトールといった魔法を上達させたい組が集まっていた。

良かったね爺さん……忘れられてないよ……。

かくいう俺は特にやる事もないし、温泉と食事で火照った身体を涼ませようと、外に出た。

この屋敷の庭には池があって、その側に東屋があるのでそこで涼もうかな。

すっかり日の落ちた夜の空は満点の星空だった。

こうして星空を見ているとここが地球では無い事を実感する。見慣れた星座が一つも見当たらない。

「やっぱり……地球じゃないんだなあ……」

「え? シン君!?」

「ん? あ、シシリー?」

東屋には先客がいた。

「ど、どどどうしたんですか? こんな所で」

「ああ、温泉と食事で身体が火照っちゃったから涼もうかと思って。シシリーは?」

「わ、私も……そう! 温泉で火照っちゃって!」

「そっか、ねえシシリー」

「は、はい!」

「隣いい?」

「ハ、ハヒ!」

何かシシリーの返事が変だったけど、気にしないで隣に座った。

シシリーはさっきの失言を気にしているのか、真っ赤なまま無言だし、俺も何と切り出していいのか分からずお互い無言の時間が流れた。

やがてその無言の時間に耐え切れなくなったのか、シシリーが口を開いた。

「あ、あのシン君……その、さっきはすいませんでした」

「え? ああ、別に気にしてない……っていうか……俺、嬉しかったし」

「え!?」

「ねえシシリー、初めて会った時の事覚えてる?」

「はい、覚えてますよ。マリアと二人で男の人に絡まれててとても困ってました」

「そうそう、俺が『お困りですか?』って聞いたら……」

「『はい! 超お困りです!』って……なんて返事するんだろうって思っちゃいました」

「アハハ! そうそう、俺も思った」

「それから……あっという間にシン君が男の人をやっつけちゃって……その後も紳士的に接してくれて……」

「俺さ、あの時のシシリーを見て頭に雷が落ちたんだ」

「え……」

「なんて可愛い娘なんだろうって」

「え! あぅ……そ、その……私も思いました、なんて格好いい人なんだろうって……」

「そっか……」

「はい……」

「シシリー」

「ハ、ハイ!」

俺はシシリーの顔を見た。

真っ赤になって、何か必死な感じのシシリーを見ながら……俺は……。

「好きだよ、シシリー」

俺の想いを告げた。

告白を聞いたシシリーは、しばらく固まり、そして……涙を流し始めた。

「う、嬉しいです……シン君は優しいから……私の事、何とも思ってないんじゃないかって……」

「……そんな風に思わせちゃったか……」

「でも! でも……そうじゃないって……そうじゃないって今言ってくれました」

「……」

「私も……私も好きです……大好きですシン君」

「シシリー……」

「シン君……」

「シシリー……俺と……俺の彼女になってくれる?」

「はい。シン君の彼女にして下さい」

やった! 俺は内心で叫び出したい心境を抑えてシシリーと見詰め合った。

すると……シシリーがスッと目を瞑った。

これは……いいのか? いいのか、シシリーはもう俺の彼女だもんな!

そうしてシシリーの顔に俺の顔を近付けていき……。

「ちょ! ちょっと押さないで!」

「ホラ! そこだよ! 一気にいっちまいな!」

「あわわわ!」

池の畔の木の影からドサドサと皆が倒れ込んで来た。

研究会の面々に爺さんばあちゃん、エリーにメイちゃん、使用人さん達まで。

なんてベタな! それより、どうやってその木の影に隠れてた!

「な、ななななな!!」

皆に見られていた事にパニックになるシシリーの頭を撫でながら皆に視線を向ける。

「あのさ……覗き見ってどうなのよ?」

「こんなビッグイベント、見過ごせる訳無いじゃない!」

何故かマリアに怒られた。何故だ?

「私はシンを焚き付けた張本人だからな、責任を持って見守る必要がある」

「私はアウグスト様の婚約者ですから、同じく責任が」

「はわわ、大人の情事です!」

オーグは分からんでも無いけど、エリーのはなんだ? そしてメイちゃん! 十歳の女の子が情事なんて言っちゃいけません!

「シン! 良くやった! 良くやったよ!」

ばあちゃんが超嬉しそうだ。

「はあ……そっとしといて欲しかったけど……まあそんな訳で、シシリーと恋人になりました」

『おお~』

何故か拍手が起きた。

「これは早速お祝いをしなければいけませんね! 今日の夕飯は終わってしまったので明日ですね」

そう女中頭さんが提案した。

お祝いって……。

「そうじゃシン、シシリーさんの両親も呼んではどうかの?」

「え……俺が呼びに行くの?」

「シシリーさんと二人で報告に行けばいいじゃろう。そのまま連れておいで」

何かドンドン大事になっていく。

シシリーはそれでいいのかと視線を向けると……。

「シン君……」

何か、潤んだ目でこっちを見てた。

あ、ずっと頭撫でっ放しだった。

「シシリー、明日セシルさんとアイリーンさんの所にお付き合いの報告に行って、そのまま連れて来いってさ。どうする?」

「お付き合い……」

その言葉に照れてしまって俺の胸に顔を埋めてしまった。

うわ、ナニコレ? 超可愛い。

「凄いわね……付き合い出した途端に超ラブラブじゃない」

「付き合う前からアレだったからな、恋人同士になったらどうなるのかと思っていたが……」

「これはアレだね! モザイクがいるね!」

誰がモザイク案件か!

「まあ、とりあえずおめでとうと言っておく。だが、今は非常事態の最中だからな。付き合いにかまけて訓練を疎かにしないようにな」

「は、ハイ! 分かってます!」

「そう言うなら、何で今のタイミングで焚き付けたりしたんだよ?」

するとオーグは真剣な顔をして答えた。

「だってお前……物語なんかじゃ『この戦いが終わったら告白するんだ』って言った奴は……大抵死ぬだろう? その前にと思ったのだ」

……。

死亡フラグ回避かい!!